日経ビジネス特集「東レ、勝利の方程式」と、「マトリックス営業『領域複合化戦略』」

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日経ビジネス2014.10.27号の特集『東レ、勝つまでやり切る経営』において、「東レ、勝利の方程式」と言う記事が載っていました。大変啓発される内容でしたが、実は私の「マトリックス営業戦略の『領域複合化戦略』」の考え方と近い部分があり、その内容について今回解説したいと思います。

 

<ブログ目次>

―表:【東レ、勝利の方程式】(P.35~)

―記事内容「パート2:石の上にも50年。執念で生き残る」-

―長期的なライフステージ戦略をもった事業展開の大事さ―

―東レの勝利の方程式「3つのステージ」と『マトリクス営業、4つの領域』の関係―

―「東レ、勝利の方程式」は『領域複合化戦略』―

参考:

『事業展開戦略』

『領域複合化(包括化)戦略』

 

 

雑誌では以下の表があり、次のような記事でした。

 

―表:【東レ、勝利の方程式】(P.35~)

 

 1ステージ用途開発 [例:水なし印刷]

    ・研究所で開発した先端素材や要素技術の

事業化方法を、10年単位で考える。

 

 2ステージ競合駆逐 [例:水処理技術]

    ・先端素材の事業化に成功したら、徹底的なコスト削減と

性能向上で競合他社を圧倒する。市場から撤退させてシェア増大

 

 3ステージ最強連合 [例:炭素繊維、合成繊維]

    ・素材をグローバルに供給できるサプライチェーンを整備。

     異業種のパートナーと強固な関係を築き、障壁を作る

 

―記事内容「パート2:石の上にも50年。執念で生き残る」-

「上の表を見てほしい。東レのそれぞれの事業は、3つの段階に分けることが出来る。全く新しい素材の用途開発に取り組む第一ステージに始まり、徹底的なコスト削減と機能向上を同時に進めて競合の追従を断ち切る第二ステージに進む。そして、強力なパートナーとともにグローバルなサプライチェーンを構築して参入障壁を作る第三ステージに達する。

  ・・・繊維事業は「ユニクロ」を擁するファーストリテイリングと強固なパートナーシップを構築、競合他社が入り込めない参入障壁を作り上げ、東レが世界一の総合繊維メーカーにのし上がった。

  この勝利の方程式に沿っていれば、数十年と言う期間がかかってもあきらめないのが東レ流。時間とカネを十分に投じて、ステージを一歩ずつよじ登っていく。勝つまでやり切る執念が、東レの成長の原動力になっている。

 

第一ステージは『種まき』から始まる。素材メーカーである東レには『素材が変れば世界が変わる』と言う信念がある。社会の課題を解決するためにどんな素材が求められているかと言う長期的なビジョンに基づき、文字通りゼロから素材開発に取り組む。

  当然のことながら最初は市場も立ちあがっておらず、顧客のいないに等しい。どんな用途で利用できるのか、10年以上先まで見越して研究や用途開発を地道に進めていく。

  金食い虫の厄介者。・・50年前から研究が始まった炭素繊維は長い間、社内でこう陰口をたたかれていた。

  1961年・・アクリル繊維を使った現在主流の炭素繊維を発明。・・量産化へ向けた研究を始めた。軽くて強固な素材が普及すれば航空機や自動車の軽量化を劇的に進められるという読みがあった。・・

  しかし、複雑な炭化工程に悩まされ量産化のメドが立たず、・・一時中断していた時期もあった。

  種から芽は出たものの、すぐに新素材として採用されるわけではない。需要がないなら自ら作り出すしかない。炭素繊維を使った釣りざおやゴルフシャフトの試作品を作り、メーカーにサンプル出荷を繰り返す日々が続いた。・・・

  東レも苦しかったが、これは競合を駆使する期間でもあった。・・ライバルが次々と脱落していく中で、スポーツ分野での採用実績がボーイングの目に留まった。ボーイングの厳しい安全基準をすべてクリアーして、炭素繊維の長期供給契約に結びつけたのは2006年。・・・赤字でも辞めずに何十年も続ける執念が、ボーイングとの独占契約を手繰り寄せた。・・・」

 

―長期的なライフステージ戦略をもった事業展開の大事さ―

  なかなか読ませる事業ストーリーですね。長期的視点で戦略的な事業展開を意図して進めることの大事さが、ひしひしと伝わってきます。確かに多くの日本企業が近視眼的な経営に陥っている中、忘れていた大事なことを気づかせてくれる記事と思います。

 それは

 「自社事業の特性にあわせて、独自のライフステージ戦略を設計する。

そして事業ステージの違いをはっきり意識しながら、その時々のステージの特性にあわせて、異なる戦略作戦をメリハリつけて実行する。

そして粘り強くあきらめず事業展開を進め、最終目標の独占的で高収益な事業ポジションを確立する。」

と言うことでしょう。

 

 まさに私の唱える市場の変化多様化を大前提とした「マトリックス営業戦略」の考え方と

一致します。そしてそのステージ毎の戦略作戦の中身を見るなら、「マトリックス営業戦

略、4つの領域」とほぼ同様の特徴が見られるのです。

 

―東レの勝利の方程式「3つのステージ」と『マトリクス営業、4つの領域』の関係―

 

具体的には各ステージは、「4つの領域」の次の象限に対応するよう思います。

 

第1ステージ【用途開発】「ハイスピード対応」:魅力ある鮮明な商品コンセプトの設定

第2ステージ【競合駆逐】「エンジニア対応」:専門技術練磨による圧倒的な差別化

第3ステージ【最強連合】「パートナーシップ対応」:最強企業同士のパートナーシップ

 

 第一ステージは新素材開発での『用途開発』とありますが、見方を変えるなら「魅力ある

鮮明な商品コンセプトを設定する」と捉えることが出来るでしょう。そう捉えるなら、「マ

トリックス営業戦略、4つの領域」では、「ハイスピード対応領域」と言うことになりま

す。

 第二ステージは徹底して技術的な開発を進めて『競合駆逐』とありましたが、専門技術を

練磨してお客様の問題解決を追求すると捉えるなら、「マトリックス営業戦略、4つの領域」

では「エンジニア対応領域」と言うことになります。

 第三ステージは異業種の最強企業と一体となった強固な関係を築いて参入障壁を作る、と

ありましたが、「マトリックス営業戦略、4つの領域」では、まさに「パートナーシップ対

応領域」に当たります。

「マトリックス営業戦略、4つの領域」では、それぞれの領域において置かれている市場状

況と共にお客様の求める価値内容が異なるために、求められる戦略も大きく異なります。東レの『勝利の方程式』の3つのステージ毎に戦略がはっきり異なることと同様です。


参考図:


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―「東レ、勝利の方程式」は『領域複合化戦略』―

 このように一つの事業でも単一の戦略を通すのではなく、ステージの違いを前提に複合的な戦略作戦を組み合わせて戦うことによって、競合他社に圧倒的な強みを発揮して勝つことが出来ます。マトリックス営業戦略では、この戦略を『領域複合化戦略』と名付けました。

 変化多様化する市場がますます進展する中、企業同士の競争はますます熾烈を極めています。

もはや同じような戦略を競っていても勝てる保証はないでしょう。同質化競争で疲弊してしまうリスクが大きいのです。『領域複合化戦略』は企業の独自戦略として、今後ますます重要な戦略方式となってくるよう思います。

 東レの「勝利の方程式」は、長期的なビジョンと展望を持った『事業展開戦略』の一種ではあるものの、そのライフステージの違いを鮮明に意識して、メリハリをつけた異なる戦略展開を意図して進めているところから、『領域複合化戦略』とも言えるものと思いました。

 今後皆さんの会社も、独自な『領域複合化戦略』を組みたてて事業展開を進め、圧倒的な事業ポジションの実現をめざしてほしいと思います。

 

 

参考:

『事業展開戦略』

・変化する市場にあわせて事業展開をメリハリよくスムーズに変えていく戦略。

特に新規事業の展開にあたっては、生成発展の時間の経過にともなって変わる市場や事業ポジションの特性に合わせて、自社事業の領域を設定し直し、メリハリよく事業営業体制や活動スタイルを変えていくことが求められる。

その事業展開の基本モデルは、『パートナーシップ対応領域』(事業の生成期)→『エンジニア対応領域』(事業の浸透期)→『ハイスピード対応領域』(急成長期)→『コストダウン領域』(停滞から衰退期)→次の新たな展開へ・・である。それぞれの領域の違いをしっかり意識して、メリハリよく事業のあり方自体を構築し直さなければ、事業の長期的な発展は実現しないだろう。

 

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『領域複合化(包括化)戦略』

・市場の成熟化がどんどん進んでいる現在、一つの領域にフィットした戦略だけでは、他社との差別化を図るのは難しい。領域にあわせた戦いをしっかり整えるのはもちろんのこと、メイン領域を一つに限定せず、複数の領域をつなぎ合わせた複合的な戦略を組み立てることで、自社独自のビジネスモデルを構築することが可能となる。特に、アナログとデジタルの相反する特性を持った事業を融合させた新しいビジネスモデルが、これから求められていると思われる。

日本の文化特性からは、とくに『エンジニア対応領域』から『ハイスピード対応領域』を融合した事業モデルが比較的考えやすいだろう。

(「職人」的な技術技能を活かした、魅力ある「大衆向け」商品サービスづくり例:浮世絵版画)

またお客様との関係ステップをとらえて、そのスタートからゴールまでの総合的な品揃えをおこない、お客様との包括的かつ継続的な関係づくりを目指す戦略も考えられる。

例えば、一人のお客様に対して、単品的な戦略商品提案から始まり、大型総合提案、技術サポートメンテナンス、消耗品の包括契約といった流れを作ったビジネスモデルである。

 例:楽天、キーエンス、トータル提案営業、(料金フリ―ビジネス)


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                                                        以上

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このページは、CBC総研が2014年11月 2日 11:35に書いたブログ記事です。

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