前回、新規開拓における失敗要因や障害要因について、よくある内容と対策を説明しました。
新規開拓は、仮説を立て検証していくトライ&エラーの活動であり、失敗や障害はつきものです。その失敗や障害にめげずに、冷静に振り返り、どうすれば新しいお客様を開拓できるのか、しつこく繰り返し考え抜いて、とりあえず実行してみる。そうした姿勢がなにより大事です。
めげて出来ない理由、売れない理由に陥りやすくなるのは、誰でもあります。ですから、何度も何度も、トライ&エラーを胸に誓うこと。営業リーダーのみなさんは、新たなことにチャレンジする勇気とそうしためげない精神を繰り返し部下のみなさんを巻き込んで進めていただきたいと思います。
今回は、(前回とダブる部分はありますが)あらためて商談プロセスに沿って、よく発生している課題とその対策について解説しましょう。
出来ればみなさんも各課題に対して、どうすればいいか、部下メンバーを巻き込んで一緒にワイワイと議論してみて下さい。ここまで述べてきた内容を振り返れば、その解答を見出すことは難しくないでしょう。
商談プロセス上の重要課題について
<想定される重要課題として>
1.お客様案件情報の収集漏れ、入手遅れ
・顧客の案件情報やニーズ情報の把握が十分出来ていなかったため、気付いた時にはタイミングを逸している。あるいは競合他社に先行されて商談が後手に回り、手遅れになっている。
⇒漏れの無いお客様案件情報の早期入手
(タイミングよく、突っ込んで聞き込む)
2.お客様担当者、関係者との人間関係が表面的で希薄
・顧客との関係が商談の打ち合わせだけになっており、人間関係が希薄なため、相手先の状況変化や本音の要望がつかめず、商談をうまく進められない。障害が発生しても、的確な対策が打てず、失注する。
⇒顧客内の強力な味方(協力者)づくり
3.顧客企業と当社との(会社対会社の)信頼関係が構築できていない
・商談以前に、顧客と自社との信頼関係が出来ていないため、提案内容では優れ ていても、競合他社に負けてしまう。
・担当窓口との打ち合わせに終始して、トップ、上位者との関係が出来ていないため、(トップ、上司者の意向によって)成約まで至らない。(商談が進まなくなる。失注する。)
⇒顧客企業との信頼関係を高めた太いパイプ作り
4.提案内容が十分魅力あるものとして、お客様に受け取ってもらえていない。 (関心が弱い)
・提案を行い、相手に聞いてもらえたものの、強い関心までは持ってもらえず、それ以上商談を進めることが出来ない状態になっている。
⇒相手のニーズ・事情に的確に対応し、強い関心を引くことのできる提案内容・方法の練磨
5.お客様の真の要望・条件を見誤る
・表面的な顧客の言われる要望や条件はクリア―しているものの、決定的な何かが不足していて顧客の熱意が不足しており、商談が進んでいかない。(顧客の要望や条件をクリア―しているので安心していたら、知らぬ間に競合他社に違う提案内容と条件で成約されてしまった。)
⇒顧客を動かす真のニーズや要因をとらえた上での、的確な営業活動の実現
6.最終の価格条件等の購買条件に適応できないため、失注する。
・商談を進めて、最終段階での品質、価格、納品条件等があわず、失注する
⇒品質価格納期といった条件をシビアーに想定した対応の、あらかじめの準備。
7.競合他社に負けて、失注する
・強い競合が存在し、こちらで商談を先行していても、あとからその商談を持っていかれて、失注する(場合が多い。)
⇒強い競合に勝てる商談の工夫
8.大きな商談、儲ける商談のチャンスを逸する。
・本来大きな商談にあるはずのものが、単品の小型商談で終わってしまっている。(もっと大きく取引を拡大したり儲けられるチャンスを逸している)
⇒常に大型商談、儲ける商談を目指した作戦と営業方法の工夫
9.社内連係プレーのまずさで、信頼を落とす
・社内関連部門間でのコミュニケーション不足や連携調整不足で、ミスやピントはずれ等お客様への対応がちぐはぐになり、お客様から不信感を持たれて、失注する。
⇒お客様への対応がスムーズに出来る社内連係プレーのしくみと運営方法の整備。関係者が全
員実行できるための訓練とコミュニケーション強化
10.想定外のキーマン、関係者から反対されて、失注する。
・商談の中で実際関わった担当やキーマンへの提案と根回しは行っていたものの、お会いしていない想定外の関係者の反対にあって、商談が進まなくなる。(ペンディング、失注)
⇒万一反対者となり得る想定外のキーマン、関係者を漏れなく巻き込み、根回ししていける営業方法の工夫
<上記重要課題に対する対策として・・具体策の検討>
1.お客様案件情報の収集漏れ、入手遅れ
⇒漏れの無いお客様案件情報の早期入手
※新規開拓の場合は、特に事前と初回から初期訪問時の情報収集が大事になる場合が多い。何を聞けばいいか、その項目をフォーマット化して、はっきり聞き出す癖をつける。その情報を持って、あらためて対象見込み客への商談作戦を組み立て直す。
万一、あわない見込み客なら、出来るだけ早期に見極めて、見切ることが新規開拓を(作戦として)成功させるポイントだ。
また、キーマンの見間違えも、新規開拓の失敗要因としてよくある。出来るだけ、キーマン情報は早期に収集したいものである。
2.お客様担当者、関係者との人間関係が表面的で希薄
⇒顧客企業内の強力な味方(協力者)づくり。
※営業本人は、気が付いていないことが多く、何よりそれが問題の場合が多い ようである。
例えば競合他社の動きが気になって、そのことばかりお客様に聞くとか、競合他社が動いてから、その様子を見て動こう、等と考えているうちに、お客様からは信頼が失墜してしまっていることがある。
競合他社のこととか、価格のことは後にして、まずは初期段階でお客様に尽くす姿勢を徹底して、信頼を得ることが何より大事だろう。そうした動きを事前に設計することも新規開拓では大事になる。
3.顧客企業と当社との(会社対会社の)信頼関係が構築できていない
⇒顧客企業との信頼関係を高めた太いパイプ作り
※何より、新規開拓は会社対会社の関係作り、という意識を全営業マンに徹底 させること。
そのため会社の紹介を誇り持ってさせるとともに、出来れば早い段階で、お客様のトップキーマン(社長等)と自社のトップ営業との面談の機会をつくる、あるいはそれと同時に自社に来社していただき、自社の姿勢を理解してもらえる機会を作る、等の仕掛けを作ることが大事だろう。
4.提案内容が十分魅力あるものとして、お客様に受け取ってもらえていない。 (関心が弱い)
⇒相手のニーズ・事情に的確に対応し、強い関心を引くことのできる提案内容・方法の練磨
※新規開拓や新規提案では、提案内容をいかに魅力あるように説明できるかどうか、がなにより一番の条件になる。そのため、初回商談での提案トークと商談ストーリーは非常に大事になる。
まずは提案トークとお客様とのやり取りのスクリプトを作成すべきだろう。そのうえで、営業マン全員の、ロールプレイング訓練が何より重要になってくる。リーダーのみなさんには、お客様の立場になって、部下の営業トークや進め方で、果たして強い関心を持ってもらえるのかどうか、確認してほしい。そして少しでも説得力ある話し方や進め方をアドバイスし、改善を図るのである。
(先日も、ある企業様の新規開拓支援で、若い営業マンK君にロールプレイングをしてもらいました。そこで、話し方として『お客様の話すスピードにあわせたゆっくりした話し方をすること』ことをはじめに指摘し、何度かやり直ししてもらいました。
その上で『話の進め方を、はっきり見直してほしい。呼び水、投げかけ、突っ込みの順で進めて、気づかせ、までをお客様の交流を第一にして進める。商品提案を急がない、その後にする。ゆっくりお客様の話を聞くことを心掛けて、その上での提案というステップだよ!』とアドバイスをしました。
すると翌週、K君がこれまで全くうまくいっていなかった新規開拓が初めて成功しました、とリーダーから報告を受けました。)
5.お客様の真の要望・条件を見誤る
⇒顧客を動かす真のニーズや要因をとらえた上での、的確な営業活動の実現
※よくあるのは、価格重視と言われて、そればかり囚われた商談をしている場合である。実際は、新規開拓では価格訴求では、まず成功しないと思ったほうがいい。だからお客様にそう言われても、そのことに執着せずに、価格以外での要望を聞き出すようにする。
「価格のことは、ご安心ください。当社が一番安いと思っています。それ以上にお役に立てることがあると思っているんです。御社では、○○と言った事はございませんか?・・実は・・」
と言った乗りで、こちらのペースでお客様の事情野心のニーズを聞き出すのである。
6.最終の価格条件等の購買条件に適応できないため、失注する。
⇒品質価格納期といった条件をシビアーに想定した対応の、あらかじめの準備
※価格訴求では、新規開拓は失敗するとは言っても、価格は成約の重要条件であることは、間違いない。予算より一円でも高ければ、失注するだろう。また競合他社より高いならば、その理由と、価格以上の価値やメリットがあることを鮮明に伝えなければならない。その準備が重要になる。成熟化した業種によっては、はじめに価格ありきの場合もあるので、その場合は、事前に想定した要件での価格条件をハッキリさせておくことも必要になる場合がある。
7.競合他社に負けて、失注する
⇒強い競合に勝てる商談の工夫
※はっきり競合他社との違いを意識して、その違いからくるお客様にとってのメリットの違いをストーリー化する。当たり前の準備と思うが、しっかりストーリー化できていないケースが多い。競合他社とぶつかりたくないという意識が、周到な準備を疎外するのではないか。
もし、特定の競合他社と戦っても勝てないと思うなら、はっきりそうした競合他社とぶつかる見込み客、はじめから避けるべきだろう。
8.大きな商談、儲ける商談のチャンスを逸する。
⇒常に大型商談、儲ける商談を目指した作戦と営業方法の工夫
※新規開拓であれば、大きな成果を期待できなければ、コスト倒れになってしまう。だから、何が何でも大型商談や継続商談につなげていくストーリーが大事になる。
提案も、単品提案ではなく会社対会社の関係作りを大前提に、大きなコンセプトを持ったトータル提案から入りたい。またそのためにも、営業担当個人ではなく、会社全体としての作戦を持ってチームで戦うという体制づくりも必要だ。
9.社内連係プレーのまずさで、信頼を落とす
⇒お客様への対応がスムーズに出来る社内連係プレーのしくみと運営方法の整備。関係者が全員実行できるための訓練とコミュニケーション強化。
※チームプレーも、単なるメンバー編成だけでなく、新規開拓の商談プロセスに沿って、その場面毎で、誰と誰がどんな役割を担い、どんな動きをして、連携するのか。事前の連携のための打ち合わせから、商談場面での連携、その後の役割分担と、具体的な活動の流れにあわせて、チームプレーを設計することが大事だ。またケースによって、お客様によっての違いも意識して、メリハリよく切り替えられることも大事になってくる。
10.想定外のキーマン、関係者から反対されて、失注する。
⇒万一反対者となり得る想定外のキーマン、関係者を漏れなく巻き込み、根回ししていける営業方法の工夫
※新規開拓で、ある程度うまくいっているつもりで、最後に断られて失敗する、というケースも意外に多い。その場合、大半は見えない反対者(マイナスキーマン)の存在がある。そうした反対者は、積極的に何かをする権限は無いものの、反対する権限はあり、反対することで、自分の権限を保持できるため、時に新規開拓の大きな障害になる場合がある。気をつけたいポイントだ。
こうしたマイナスキーマンの存在については、出来れば事前に情報を得て、面談する機会を作り、相手の立場プライドを配慮した対応をして、味方につけたい。こうしたマイナスキーマンを味方に付るなら、むしろ商談を推進する大きな力となるだろう。
以上
次回に続く・・・
参考ブログ:
・「『実践:新規開拓を絶対成功させる』営業研修プログラムのお勧め」
http://cbc-souken.co.jp/cbc/2012/03/post-17.html
追伸:
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