リーダーの『新規開拓』24二章7-4「『聞く営業』『4つの質問法』実例解説」

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―"聞く営業"の進め方―

~「山川式、4つの質問法」の補足説明~

 

前回、『山川式、4つの質問法』について解説し、基本的な商談の流れに沿った質問トー

クについて紹介しました。今回はその『4つの質問法』についての補足説明をしましょう。

はじめに私がコンサルティングしている最近の事例からご紹介します。(秘密事項契約もあるため、詳細内容は一部修正していますが、大筋は実際にあった話です。)

 

【営業事例:出来る成果を上げる営業と、成果の上がらない営業の違い】

-売れない営業担当者の特徴とは―

―売れている彼女の営業のやり方の違いとは―

  ―絶妙な『突っ込み質問』と『気づかせ質問』の使い方―

―二つの『気づかせ』・・本質的な問題とその対策の必要性、

発生するリスクの重大性―

4つの質問法』の解説

    『呼び水質問』

    『投げかけ質問』

    『突っ込み質問』

    『気づかせ・憧れ質問』

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【営業事例:

出来る成果を上げる営業と、成果の上がらない営業の違い】

 

現在、某社で安全安心に関わる革新的な新商品の拡販を促進するためのコンサル

ティングを行っています。従来商品の商談とは違うために、多くの営業担当者が

その販売に苦労しているのですが、その中で飛びぬけて業績の良いベテラン営業

担当者(女性・・村田さん{仮称})がいます。

 先日ロールプレイングで私がお客様役になって、なかなか成果が上がっていない営 業担当者連中と村田さんに、普段している商談方法を実際にやってもらいました。 何が違うのか。はっきり違いがわかりました。

 

-売れない営業担当者の特徴とは―

 成果の上がらない売れない営業担当者は製品説明が中心になっており、その後すぐ価格の提案に入っています。一方的な話し方になっているのです。

彼らにその理由を聞くと「新製品だけに、お客様はあまり知らない。だから製品の

説明に、力を入れて話す流れに自然になっている。そして製品の話をすると、その

後すぐ、お客様から『商品のことはわかった。じゃあ、価格はいくら?』と聞かれ

てしまう。仕方がないので、価格を示すと、ほとんどのお客様から『高すぎる!』

と言われて、断られてしまう。そこで『これからは、こういった商品が必要になり

ますから、今から導入しましょう』といくら言っても、聞いてくれない・・んで

す。」とのこと。

よくあるパターンです。そこで私が「ちょっとしゃべりすぎになっていない?あな

たは話すのと聞くのと、どのくらいの割合になっていますか?」とある営業マンに

聞くと、「7割以上は、自分が喋っていますね。通常の商品の商談では、もう少し

お客様の商品の使い方などを聞くのですが、それが出来ないので・・」とのこと。

私は「それだけで、商談が失敗する可能性が高いと言えるよね!」と言いました。

 

―売れている彼女の営業のやり方の違いとは―

 一方、成果を上げている村田さんは、価格提示は一番最後に持ってきており、はじ

めに提案商品に関する『世の中の流れ』から始め、お客様との交流を大事にしていま

す。

「初めにお客様と出来るだけ世間話でもいいからして,和んだところで『ところで、お客

様、最近○○といった話をよく聞きますけど、お客様のところではどうです

か?』と聞くんです。」とのこと。まさに、私の4つの質問法』『呼び水質

問』から『投げかけ質問』の流れとぴったりです。

「すると、お客様も『気にはなっているけど、まだ○○していない』と言った言い方をするから、『じゃあ心配ですね』と言って、一緒に心配するんです。これが大事なんですね。たぶん他の営業は、すぐ売りたいから、お客様のことを考えていないですぐ商品提案に入ってしまっているんですよ!(だから売れないんです)」

かなり辛辣な言い方ですが、ピッタリです。彼女の言っていることは「お客様への深い理解と共感」が大事ということでしょう。『同意、共感』を示すことがとても重要ということです。

彼女のパーソナリティでもあるのですが、ほんの数分のうちに彼女のペースにはまってしまいます。「ロープレだから、こんなにしゃべっていますけど、いつもはそうじゃあないですよ。お客様に喋らせるようにしています。だって、お客様はしゃべるのが好きだし、喋ると機嫌がよくなるでしょう。私は、うんうんと聞いているんですよ!」ほんとかなあとも思いますが、確かにしゃべるのもうまいが、聞いて頷いて、そのアクションがはっきりしていて、お客様の私は確かに気持ちいい・・と思いました。

 

 ―絶妙な『突っ込み質問』と『気づかせ質問』の使い方―

「その『心配ですね・・』から、『じゃあ、お客様は、どんなところが心配に

なりますか。』と聞きます。たぶんあまり普段考えていないから、大した答えが

返ってこないことも多いけど、それでいいんですよ。聞くことで、より心配が現実

的になるでしょう。」

ここで、『突っ込み質問』です。確かに今回の提案は今まで使ったことのない革新的な商品なので、お客様の事情であるどんな使い方をしているかを詳しく聞くというより、お客様の関心事に迫り、突っ込んで考えさせるということが大事と思います。村田さんの持つ、こうした感覚の鋭さはさすがと思います。

 

「そうしたお話しをしたら、ようやく次のステップに入るの。お客様の顔を見なが

ら、次にこんな質問をするんですよ。

『・・・なるほど。ところで、○○さん、なんでその○○といった問題が、

最近頻繁に起こっているかご存知ですか?』すると、大半のお客様は、よく御

存じない。だから私のほうでその原因をちょっと専門的な言い方で『○○という

ことが原因なんです。だから従来のやり方を超えた新しい方式の対策が必要

になっているんですね・・そういう時代になったんです。』と説明してあげる

と、『なるほど!』といっていただけるんです。」

ここで、『気づかせ質問』からようやく問題の核心を説明する段階に入っています。

それも専門的な言い方を取ることで、お客様は素人、営業のこちらは玄人ということになり、商談をリードできる立場になれるのです。

説明の仕方も、本当にわかりやすく素人の私でもすぐ納得できました。

(説明の具体的なトークは省略します。最後に「そういう時代になったんです!」という決めセリフが印象に残りました。)

ここで商談の雰囲気が大きく変わるのを実感します。

 

―二つの『気づかせ』・・本質的な問題とその対策の必要性、

                        発生するリスクの重大性―

ここから商品提案に入るとのことですが、そこで村田さんは、今一つの質問をし

たのです。

「ところで、○○さん。○○の安全が損なわれて、何が一番困ると思います

か?」

また『突っ込み質問』です。

「う~ん。それは、・・・○○とか、○○じゃないかな。」

私はよく出てきそうな答えを言ったのですが、彼女は即座にそれをはっきりと否定

する質問を投げかけたのです。

「確かに、○○ということもあります・・。でも万一お客様で○○が起こった

ならば、○○のほうが、御社にとって、もっと大きな問題ではないですか?」

「え?・・・確かに」私は一瞬、頭で殴られるような感覚を持ちました。確かに・

・です。今までどこかでは思っていたけれど、真剣には考えていなかったリスクを

ストレートに言っていただいたという感じです。最高の『気づかせ質問』です。

「実際、あるお客様で○○でしたけれど、○○が○○して、○○という大変な

問題になったんですよ。・・・これ実際にあった話ですよ。」

その上、実例での念押し。何か私の質問法を知っているかのような流れです。

実例を言うことで、さらに説得力が増して、お客様が彼女の世界に入り込んでし

まうことがよくわかります。

 ここを乗り越えれば、後は村田さんの独壇場です。

私の驚きの顔を見て、村田さんは畳みかけるように迫ってきました。

そのリスクを解決するための対策が、今回のご提案なんですよ!

 見て下さい。・・・○○が○○で○○。だから、○○・・・。

 ですから、多くの御社と同様ことをされている多くのお客様でも、現在どんどん

導入が進んでいるんです。(御社でも導入されないと、マズイですよ!)」

 ここまで言われると、導入しないわけにはいかないかなという気持ちになってき

ます。

そこでようやく、価格の話になっていくわけです。

商談では、確かにお客様に気づかせることが大事ですが、その場合製品機能の違

いをいくら説明して「気づかせ」ても、お客様を説得することは難しいでしょ

う。そうではなく、得られる『お客様の満足内容』の大きな違いを気づかせる

こと。特に今回のような革新的な新製品の場合、『夢と危機感』を与えることで

す。具体的には『発生するリスクの重大性』をあらためて気づかせる、というこ

とになるでしょう。

(リスクが発生しやすくなっていること以上に、リスクが発生した時の問題が大きくなっていることを気づかせる、ということ。)

このポイントをしっかり村田さんは捉えているので、その後の「価格交渉」を有利に運べるのだと思います。(今後、解説する「マトリックス営業戦略」の「パートナーシップ対応」型営業の典型です。)

 

(価格交渉のしかたについても、村田さんの独自なノウハウがあるのですが、それは、また次の機会にでも紹介しましょう。)

 

このように村田さんも『呼び水→投げかけ→突っ込み→気づかせ』質問という、私の4つの質問法』とほぼ同様なストーリーを持って商談を進められているのがわかりました。

現在私は村田さんの商談ストーリーを参考に、商談マニュアルを作成し、他の営業メンバーの皆さんにもそのノウハウを共有化してもらって、新製品の拡販をどんどん進めてもらえるようにしているところです。

私にとって村田さんは、営業活動に関して何も言わなくとも、つうかあ、でわかる同志であり、実践の先生のように思っています。彼女はどうかわかりませんが・・。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

次に私が以前プレジデント社さんから出版した『トップ営業をめざす商談術』から、4

つの質問法を解説した部分を整理した内容を掲載します。項目的なまとめですので、

若干わかりづらいところもあるかもしれませんが、参考にしてください。

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4つの質問法』の解説

       (小生著書『トップ営業をめざす商談術』より)

1.呼び水質問

 ◎お客様の警戒心を前提に、

          はじめにお客様との交流のきっかけを作る質問

  ⅰ.お客様に関係する世の中の動き

                (業界、同業他社、お客様の動き)、

    大きな話題、問題(大きな意義価値)のある話

  ⅱ.お客様の興味、関心をひく話(ホーヘーと言ってもらえる話)

  ⅲ.お客様の答えやすい話

 を投げかけ、簡単な質問をすることで、初めてのお客様との交流を始める。

 トーク例:「世の中は、・・・となってきて、多くのお客様が・・・

                                   となってきております。

                       【世の中の流れ】

  つい最近の新聞記事でも、・・といったことを聞いておりますが・・

  ・・・御社でも(・・をされておられるものと思いますが、・・

                         その点は・・?)

    ・・・については、どうされていますか?

                  (どう考えておられますか?)」

 

2.投げかけ質問

 ◎お客様の簡単な事情や考えを聞きだし、(警戒心を解いて)

              共感を持った交流につなげていく質問

 ①お客様の事情に共感を示しながら、簡単な質問を投げかけ、

  交流を深めていく。

  ・質問→回答→共感持った受け止め、感想、

→さらに考えの(実例の)投げかけ→回答→追っかけ質問

 ②大きな簡単なテーマ(事実、感想)から話題を投げかけ、大から中、中から小へと、少しずつ各論の核心部分に入っていく。

 トーク例:「世の中は・・⇒当業界は・・⇒御社は・・

          ⇒そのなかで○○テーマについては・・

      ⇒そのテーマの中でも、具体的に・・

      ⇒特に何々の点については・・

      ⇒その点に関して・・の場合には・・・。」

 ③質問内容は、答えやすい具体的な事実からはじめる。

  <質問のステップ>

  これまでの事実感想・感じていること・考え

                           これからやりたいこと、今後の方向


 ④その上で、"仮説"や"事例"を投げかけ、

                  徐々により具体的な内容を聞き出していく。

 トーク例:「先日も、あるお客様から・・(の事情)とお聞きしたのですが、

お客様ではその点はどうなっていますか?

              (どうでしょうか?)」

      「お役に立ちたいので・・、

               もう少しそこのところをお聞きしたいのですが・・」

 

 ⑤お客様のこれまでの経緯や過去の出来事を聞き、

                      その上でこれからのことを聞き出す。

 トーク例:「これまで・・こういったことについては・・、

                     どうされていたんですか?

       なるほど、よくわかりますよ。

それでは、これから○○のことについては、どうされるつ

もりなんですか。やはり、○○とお考えですか・・・?」


3.突っ込み質問

 ◎お客様が誰にでも答えてくれるような内容ではなく、お客様自身も深く考えていなかったような、より突っ込んだお客様の事情(の核心部分)や本音を聞きだす質問。

 ①聞きたいという気持ちをハッキリ示し、

不明点、疑問点を遠慮せずにキチンと聞く。

 ②相手から事実を聞き出して、全体像をイメージし、一つ一つの細部が見えてくるところまで聞く。

 ③話題を広げるのではなく、深めることを心掛ける。

 ④聞き方は簡潔に、一度に一つずつ聞き、リズムカルに同意を示し、相手の同意を促しながら進める。

 ⑤"投げかけ質問"と同様、実例や仮説を投げかけて聞く。

 トーク例:「○○さん。ここだけの話なんですけど、

あるお客様からこんな話を聞きました。

       ○○さんではそんなことはないと思いますが、

                              その点はどうされていますか?」

    (お客様の言葉)「いやあ、実を言えば

                  うちも・・は、・・なんだよ!」

   ⇒「実は・・(ここだけの話なんだけれど・・)」

                        という話を聞き出すことがポイント

 ⑥場面を変えたり、タイミングを見極めて(新しい情報を)

                          聞き出す。

   例:居酒屋など簡単な接待場面。

           1つの案件が終わった段階での新しい話題の投げかけ・・。

 

 <補足:「確認質問」と「共感質問」>

 ◎お客様との交流を継続し、深めていく質問

 トーク例:「お客様のおっしゃることは、こういうことなんですね?」                           (確認質問)

       「なるほど、よくわかります。それは大変でしょう    

        ね・・?」(共感質問)

                 ↓

       「それでは、・・・については、どうされるつもりなんです        か?」突っ込み質問)

       「それでは、・・・について一番気になることは、

                           何ですか?」

         (一番大事なことは・・、優先順位をつければ・・)


4.憧れ・気づかせ質問

 ◎お客様がこれまで、気づいていなかった本当の問題や、

                       より大事なことに気づいてもらい、

  「こうなれば、素晴らしい(満足が得られる)!」

                       というイメージと憧れを与える質問

 ①『実例3段論法』で、お客様満足の実例から、

                お客様の気づきや憧れを与える。

  トーク例:「実は、あるお客様には、・・されて、○○という素晴らしい満足をしていただいたんですよ!お客様も、そんな満足を望んでいませんか?」

 ②たとえや視点を変えた質問を行う。

  トーク例:「それでしたら、

         たとえば**と考えられたらどうなるでしょうか?」

       「もし、**だったら、お客様ならどうしますか?

                      (どう思いますか?)」

 ③万一の場合を想定した質問を行う。

  トーク例:「もし万一、・・・が起ったらどうなると思いますか?

・・そうなったら、大変ですよね!

            (素晴らしいですよね!)」

 ④最も本質的なこと、大事なことをストレートに質問する。

  トーク例:「それでしたら、

           ・・に本当に大事なことは何だと思いますか?」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ここまで新規開拓における「聞く営業」のやり方について解説してきました。聞くという行為は、営業活動の場面だけでなく、一般生活において重要な作法と思います。それは、何より相手の人を尊重する、という姿勢の表れでしょう。

人は知らぬ間に、自分の都合ばかり考えて、相手の人に接してしまいがちです。余裕がないとなおさらそうなりがちです。今の日本は多くの人が相手のことを思いやる余裕がなくなっているよう思います。そうなればなるほど、ギクシャクした生きづらい世の中になってしまう。

なんて、偉そうなことを言ってしまいました。何より私自身、営業で一方的にしゃべくりして、何度失敗したことか。その都度自己反省しているのですが・・。

あらためて『相手への深い理解と共感』が大事ですよね。そのことを常に意識するなら「聞く」ことも自然に出来るようになるでしょう。営業を通した人生修行ですね。

                                   以上

次回に続く・・・


参考ブログ:

・「『実践:新規開拓を絶対成功させる』営業研修プログラムのお勧め」

     http://cbc-souken.co.jp/cbc/2012/03/post-17.html


 追伸:

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このページは、CBC総研が2014年6月 9日 11:19に書いたブログ記事です。

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