リーダーの『新規開拓』⑯二章6-2「新規開拓営業のキーマン対策と人脈づくり」

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営業活動においては、キーマンを押さえ、信頼関係を築くことはとても重要です。特に法人営業の場合、お客様は組織です。そこには様々な関係者がおりキーマンがいると思ったほうがいいでしょう。それぞれのキーマンの承認を得なければうまくいかないケースも多いはずです。

出来る営業マンは様々なキーマン情報をしっかり収集しながら味方をつくり、他社に先駆けて重要情報を頂いたり、いざという時に強力な後押しや支援を頂いて、有利に商談を進められるようにしています。だから高い業績を上げられるのです。

新規開拓の場合、これまでの信頼関係が無いだけに、意図したキーマン情報の収集を早急に行い、ポイントをついた対応で、人間関係を早期に構築することが重要です。

ここではそのキーマン対策(特に情報収集)と人脈づくりのやり方について説明しましょう。

 

―キーマンについての情報収集―

<キーマン情報収集のポイント>

―キーマン情報項目―

【キーマン情報項目の例】   

―キーマンの種類と特徴―

―キーマンの立場と「マズロー欲求5段階説」―

―キーマンとの人間関係作りのやり方としてー

<キーマンとの人間関係作り>

―キーマン人脈づくりのステップ―

参考事例:

【キーマン情報と今後の対応方法】

<キーマン情報の(生々しい)例>

―キーマンについての情報収集―

キーマン情報の収集にあたっては、次のことがポイントになるでしょう。

 

<キーマン情報収集のポイント>

①情報収集や人間関係作りという目的を明確に意識して行動する

   より的確な情報収集をするには、キーマン情報に限らず、その目的を明確に持つことが大事です。特にキーマン情報の場合、商談に直接関係しない部分も多いだけに、意図して収集しないと難しいと思って下さい。キーマン情報の重要さをしっかり意識して行動しましょう。

会社から言われたから仕方なくといった気持では、表面的な情報を確認することはできても、本当に大事な情報は取れませんし、その情報を有効に活用することはできないでしょう。具体的にどんなキーマン情報を集めればいいかをはっきりさせることが、始まりです。

(収集すべき一般的なキーマン情報は次の項で説明しましょう。)

 

②全体の組織構成と配置をとらえてから、個別キーマン情報の収集に入る。

まずは相手先企業の組織全体を見渡し、どんなポジションにどんな人がいるのかを把握しましょう。できれば「組織図」(個人営業なら、「家族及び関係者の構成図」)をつくり、それぞれに当てはまるキーマンの名前を書きだし、アプローチの仕方を検討するのです。

はじめに会った窓口キーマンとともに対象となる部署の上位管理者から現場の下位のキーマンがまず考えられるでしょう。「縦のキーマン」です。他方で関係する他部署の関係者キーマンが考えられます。「横のキーマン」です。さらには、稟議などを承認するトップ及びトップに近い幹部メンバーが考えられるでしょう。「上位キーマン」「トップキーマン」です。

それぞれのキーマンの立場や権限、あるいは価値観・性格によって、実際の提案の仕方や対応方法は異なります。そうした違いをしっかりとらえて情報収集することが大事です。

(それぞれのキーマンの説明と対応方法についても、後で説明します。)

 

③それぞれのキーマンの権限内容をおさえる。決定権を持ったキーマンを見誤らない。

  キーマンと思える人達を洗い出したら、実際に各キーマンがどんな権限を持っているのか、あらためて判断します。どんな購買プロセスを踏んで、どんな関係者がからんでどんな影響を与え、最終的には誰が決定権限を持っているのか。組織のあり方や個人の立場、人間関係も大いに影響することでしょう。

特に窓口キーマンの権限や影響力の内容をよく見極めること。よくある失敗は、決定権があると思えた窓口キーマンが、実際にはほとんど権限がなく、トップかよりトップに近い上位者の鶴の一声で決まると言うケースです。窓口キーマンは、自分に決定権があるかのようにふるまうことで営業マンとの購買交渉を有利に進めようとする場合が多いと思ったほうがいいでしょう。但し、営業マンにとって窓口キーマンは各関係キーマンや上位キーマンとの関係を作ってもらう紹介者ですから、仲良くなって信頼関係を作っていくことが大事なことは、くれぐれも忘れないでください

一方、誰が最終決定権を持っているのかをしっかり押さえることも重要です。その最終決定者に会って直接説得したいですし、それが難しいとなれば、その最終決定者に強い影響を与えるキーマンを味方につけなければなりません。実際関係するキーマンを巻き込んで味方になってもらえているかどうかが、商談の成功失敗を分けている場合が多いのです。

 

④キーマンの周囲の人たちを味方につける

また情報収集に当たって、関係キーマンだけでなく周囲の人たちについても心配りを怠らず、誠意を持って対応することで味方になってもらうよう心掛けましょう。周囲の人たちからの情報収集や協力も、新規開拓や新規提案では大きな助けになることが意外に多いものです。

 

⑤相手の人となりに強い関心を持って、感情移入する

キーマン本人から情報収集するには、相手の警戒心を解き交流をはかることが先です。警戒心を解くためには、まず営業の皆さん自身が自分から打ち解けた気持ちになること。その上で相手キーマンの人となりについて、強い関心をもつことです。

特に私的なことを聞く場合、相手への感情移入が求められるでしょう。自分が相手の立場だったら、どう感じるのか、それに対して自分はどう思うのか・・。実感と共感です。相手のキーマンをリスペクト(尊重)する気持ちで聞くと言う姿勢を身につけましょう。

 

―キーマン情報項目―

収集すべきキーマン情報として考えられる項目と内容はおよそ次の通りです。但し、ここに書かれている内容に限らず、皆さんでより突っ込んだ内容を検討してください。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【キーマン情報項目の例】   重要度が高い:◎○

 

◎①肩書、仕事内容と仕事上での立場、権限

  ・仕事の担当範囲、影響度合い        ・権限とその他権限者との関係

 

◎②(仕事上での)個人としての価値観と性格、行動特性

・ビジネスに対する姿勢・考え方、行動特徴・パターン   ・判断基準

・仕事上での強み、こだわり     ・具体的な場面での仕事のやり方   

 ・商談での行動特徴、対応傾向

 

○③(仕事上での)人間関係、

  1)社内の上司との関係、仲間・部下との関係、関連キーマンとの関係

  2)取引先や外部企業、人との関係

    (特に仲の良い取引先、社内メンバー・・。仲の悪いメンバー、部署・・)

 

○④経歴

・生年月日、出身地、出身学校、若い時の思い出や深い経験・・

・自社入社の経緯、これまでの仕事の経歴、成功した仕事、得意な仕事  

  ・最近の仕事上の出来事、イベント(出張等)

 

○⑤個人的事情

・趣味(個人的関心事、スポーツ、レジャー、飲食・・) 

・性格(参考:マズロー5段階説) 

・家族とその事情、住まい・・・   ・最近の個人的事情

 

 ⑥当社との関係

  ・当社とのこれまでの関係       ・当社への評価、感情

 

○⑦日常的な仕事のスケジュール

  ・一日、一週間、月、・・(仕事のテーマ毎の段取り、スケジュールとその際の役割)

  ・今後のスケジュール予定

 

⑧上記情報を考慮した当社営業のやり方(メモ的に)

・キーマンにこれから期待できること、 

・当社営業としてやるべきこと、気をつけること、

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

上記のうち、特に重要と思えるのは、①(肩書、役割、立場、権限、)②(価値観と行動特性)です。「社内での立場、権限はどこまであるのか、他の権限者に対する影響力は?」をベースに、「新しいことに積極的かどうか、価値観として一番重視していることは何か」等を知っていてこそ、キーマンとの関係を上手に築けますし、うまく活用することが出来るでしょう。

また法人企業が相手の場合、組織的関係を築くことが必要ですから、それぞれのキーマンの人的な関係を知っておくことが重要な場合が多いでしょう。

 

以上の情報は周囲の人達から聞き出すこともありますが、直接本人にフランクに聞き出してもいいと思います。「○○さん。○○さんは、今回の商談では、何を一番重視されているのですか。」「社内の他部門のみなさんの意見も大事と思いますが、どこまで配慮すればいいのでしょうか?」「○○さんは、○○にご興味ありませんか。」

フランクな人間関係を作り、はっきり収集すべき項目を意図して聞いていくのです。情報収集にはそうした計画性も求められるでしょう。

そして、そのキーマンに対して今後どのような対応をしていくべきか、キーマン情報を収集した際に、同時に自分なりの考えも一緒にメモしましょう。

  例)

 ・立場権限や性格的な要素を考慮した対応方法の注意

・趣味や嗜好を考慮した、今後の良好な関係作りのための対策

・スケジュールや価値観にあわせた今後の営業活動や提案活動のヒント 等

 

―キーマンの種類と特徴―

キーマンと言っても、その種類はいろいろです。その種類毎立場が異なり、求めていることも変わります。特に新規開拓では組織的な対応が求められますので、複数の異なる立場のキーマンを想定して情報収集し、そのキーマンの違いにあわせた対応策を考えましょう。

 

◎窓口キーマン:

・我々営業の窓口であり、こちらの要望や提案内容をはじめに受け止め、継続的に社内の窓口になって頂く方です。外部取引等の対外的な窓口が役割ですから、一通りの対応はしていただけますが、それ以上の関係を築くことが重要でしょう。商談が進んで社内状況に対する重要情報を教えてもらったり、いざという時に味方になってもらえるようにしておきたいと思います。そのことで商談の成否や進み方も大きく違うでしょう。

出来るだけコミュニケーションを継続的に取るようにして相手に配慮しながら、頼りにしていることを伝えます。日頃お世話になっているという気持ちを表す、問題にならない程度のちょっとしたお土産等も用意してもいいかもしれません。

 

◎実務担当者・責任者(上位)キーマン:【縦のキーマン】

 ・具体的な提案内容を実務的に検討していただき評価していただく担当者や上位者です。このキーマンが、実質的な購入の判断を下すことになる場合が多いので、第一義的なキーマンととらえていいでしょう。相手の考えていることの要求と問題点を的確にとらえて、スピーディに対応できるかどうかが何より大事になるでしょう。

ただし、一方で会社や提案テーマによって購入権限の範囲が異なりますので、購入手順とそこに関与する部署や人達の権限を見極めておくことも、極めて重要です。

購買に至るには、提案内容について『受付』したうえ、『検討』、『評価』し、総合的に『判断』して、『最終決断』するという手順になりますが、その手順ごとにキーマンが変わることもあり得ます。担当キーマンの評価で決まるのか、上位キーマンの判断が重要なのか、あるいは関係する部署や現場の意見判断が重要なのか。さらにはトップキーマンの決断が決め手になるのか。それぞれの違いで最重要キーマンは異なるでしょう。

 

◎関連部署キーマン(開発キーマン、現場キーマン、関連諸部署キーマン、):【横のキーマン】

 ・個別商談の窓口だけでなく、そのテーマに関係し、意見や評価が商談に大きく影響する部署のキーマンです。一つの提案テーマがその企業のどういった部署の誰に関係するのか。事前にその関係する部署でのキーマンを確認し、確実に根回しを進めておくことが重要です。具体的には開発・設計、施工、運用現場、物流、会計、情報システム部門などが考えられるでしょう。

  ある一つの部署のある一人のキーマンが強硬に反対したために、当社製品の導入が見送られてしまったとか競合他社に決まってしまったといったケースはよくあることです。

 

◎最高意思決定キーマン:【トップキーマン】

 ・その会社や事業部の最高責任者です。個々の商談の承認だけでなく、大きなこれからの方針やビジョンに関する意思決定をするキーマンです。このため会社対会社の関係作りの際のキーマンとなり、新規取引口座の開設の場合や大型商談さらには今後の共同事業などの提案の場合には、最も重要なキーマンということになるでしょう。

当社としても、相対して商談するのはトップ営業責任者ということになり、将来ビジョンの共有によるトップ人脈づくりが重要となります。一般営業担当者やリーダークラスの営業責任者も日ごろの活動の中で、トップキーマンとの人脈を構築しておくなら、個別商談も比較的スムーズに進めやすくなることでしょう。

 

◎承認キーマン:【上位キーマン】

 ・会社の稟議などで、承認をする立場の人たちです。役員以上ということが多いでしょう。この場合気を付けなければならないのは、「マイナスキーマン」です。何かを上伸する権限は持たないものの、反対する権限は持っているキーマンです。反対することに自分の存在意義を感じている場合も多く、放っておくなら新規提案に対して問題点を列挙し反対に回る可能性が高いと思ったほうがいいでしょう。ですので、必ず提案の最終判断に入る前に個別対応で賛成していただけるように働きかけておくことが大事と思ってください。

 

―キーマンの立場と「マズロー欲求5段階説」―

 

 キーマンの種類を見ていきますと、その組織的な立場によって欲求内容が異なる場合が多いよう思います。その欲求内容の違いをわかりやすく整理するため、ここでは心理学の理論『マズローの欲求5段階説』を当てはめてみましょう。

『マズローの欲求5段階説』とは、人間の欲求を5つのレベルに分けて、下層の基本的な欲求である『生存の欲求』及び『安全の欲求』からはじまり、『親和の欲求』『自我の欲求』と段階を踏んで欲求内容のレベルが高まっていき、最終的には『自己実現の欲求』レベルに至るという理論です。

その構造を三角形の図に表しているのですが、そのピラミッド構造はそのまま組織の立場を表す構造にも当てはまるよう思います。つまり、組織の立場によって、その立場の人たちが持つ欲求内容にはっきり違いが出るということです。

最下層の一般社員(使用者)の場合は、『生存の欲求(出来るだけ楽に仕事をしたい。苦しいことや面倒なことはしたくない。)』や『安全の欲求(今の仕事を守りたい)』が高いものの、中間の窓口担当者となると『親和の欲求(周囲の人たちと仲良くやっていきたい。うまく波風を立てずに進めたい。)』となってきます。それが関係役員などの承認者となれば、『自我の欲求(自分の立場、存在意義を高めたい。)』といったことになるでしょう。それが会社のすべてに責任を負っているトップ経営者や事業統括責任者となれば、『自己実現の欲求(何より素晴らしい成果を上げたい。)』ということになるということです。すべてのケースに当てはまるわけではありませんが、キーマンの欲求内容を区分けして、対応策を検討するのに役立つわかりやすい理論と思います。

参考資料:

 

―キーマンとの人間関係作りのやり方としてー

 

キーマン情報を収集したら、その情報を営業活動に反映させなければ意味がありません。ではキーマンと親密になり味方になってもらうための人間関係作りには、どんな対策が考えられるのか。主な対策を挙げてみました。

 

<キーマンとの人間関係作り>

 

1.基本的な心構えを徹底する。

  1)キーマンへの興味を持ち、共感を持つ。できれば好きになるところを見つけキーマンに感情移入する。

    (自分とよく似ているところ。まったく違うところ。変わったところやこだわっているところへの共感や興味。)

  2)逃げずに、こちらから積極的に挨拶等コミュニケーションをとって、親近感を高める。

  3)本人だけでなく、周囲の人とも親密になり、キーマンの情報を得るとともに、こちらのキーマンへの思いも間接的に伝わるようにする。

 

2.ささいな(?)個人的な情報から、きめ細やかな対応を心がける。

 ・仕事上での以外にキーマン個人の事情にかかわった関係を作れると、一気にその親密度を高めることができます。普段ビジネスライクな関係であればあるほど、そうした個人的な関係作りが、キーマン対策として大事になります。

但し、個人的な事情にかかわるため、節度を持ったきめ細かい心配りが必要で

す。雑な気配りの欠けた対応では、逆効果になってしまうでしょう。特別な気配りが苦手な人は、なにより基本的なキーマン対応を徹底することが大事と思ってください。

 

 1)ふとした話題の中で、こちらから相手の個人的な事情に関心があることを示したり、質問を投げかけ、個人的な交流を心掛ける。

  「確か、○○さんのお子様は今度、小学生になられるんですね。とっても、かわいいでしょうね。」「○○さん、確か○○とお聞きしましたが、○○なんですか?」

 

 2)個人的に喜んでもらえる、ちょっとしたことを心掛ける。

  ・個人的で一件些細なことであり期待していないほど、お役に立てた時にはお客様の感動が大きくなる。

  「確か、○○さんは○○がお好き(で○○をされる)とお聞きしてましたので、たいしたものではないんですけど、たまたま私が○○で○○しましたので、こんなものをお持ちしました。お役に立てれば嬉しいんですが、よろしかったら・・」

 

例:個人旅行で(お客様がお好きな)地酒などを購入して、お土産にする。

野球等の趣味のスポーツ観戦チケットを配る。(なかなか手に入らない貴重なもの)

 

3.キーマンが把握していないだろう競合情報、お客様情報、さらには社内情報をタイミングよく提供する。

  ・キーマンの気づいていない情報を提供することは大事ですが、一般的な外部情報であれば、むしろキーマンのほうがよく知っているといった場合もあるでしょう。そこで、そう言った一般的な外部情報ではなく、実際に当社や自分がかかわっている競合企業やお客様の個別情報を提供することも大事になります。但し、安易に情報を提供するなら、逆に情報が漏れると思われることがありますので、その取扱いには注意しなければなりません。

・一方、実はキーマン企業の他部門や下位メンバーの活動状況や現場情報がより大事になる場合が多いのです。上位キーマンであればあるほど、他部門との関係が大事になりますし、部下たちをうまくリードしていくことが大事になります。ところが他部門のことはなかなかわかりにくいですし、上位になればなるほど自部門の現場や下位の人たちの情報に疎くなりやすいものです。キーマンであるリーダー意識の高い人たちに限って、そういった社内情報にとても飢えていると思ったほうがいいでしょう。そうしたキーマンの立場になって社内情報を収集し提供するのです。

但しこの場合も、かなりナイーブな部分も出てくる可能性がありますので、出来るだけ事実に基づく情報提供を心掛けるべきでしょう。誰かがこう言っている、といったネガティブで感情的な情報は避けてください。現場とキーマンの両者にとって、メリットのある情報伝達係という立場です。

・そういう情報伝達係という立場を超えて、社内調整役となっている営業マンもいます。

 (上下階層や他部門との調整役)

 

4.自分の専門的な強みを発揮して、他の者には出来ない(ちょっとした)お役立ちをする。

  ・「こいつはほかの者とは、ちょっと違うな。出来るな!」と思ってもらえてこそ、ビジネスでの人脈を作ることが出来ます。相手のお客様が出来ないことであれば、それはちょっとしたことでもいいでしょう。偉そうではなく、お客様にお役に立つという視点で、自分の持っている専門的な強みを発揮するのです。

  ・工場を対象とした生産財営業で、設備修理だけでなく大工修理技術を習得して訪問先の部屋の修理を請け負い、普段の商談を超えた人間関係を構築している方がいます。

 

5.キーマンに先生になってもらって、教えを乞う。そのことに本心で尊敬と感謝の気持ちを示す。

  ・自分の専門的な強みを発揮してと言っても、なかなかそうした強みが見当たらない人もいるでしょう。そうした場合、自分が知らないことを言い訳にして、逆にお客様から教えを乞うといいでしょう。人は自分の得意なことを教えることは嬉しいものであり、相手に対しても生徒に対するような情を感じるものです。その先生と生徒と言う立場を作ることによって、より親密な人間関係を築くのです。比較的若い人や素人の中堅営業マンが、より上位のお客様との関係を構築する際に大変有効なやり方でしょう。

 

6.当社や自分への協力をお願いして、率直に感謝の気持ちを示す。

  ・また営業が逆にお客様に協力をお願いできれば、人間関係が一段階深まります。

例えば、窓口キーマンに展示会などの集客と開催に当たってのご挨拶をお願いするとか、相手企業のトップキーマンに当社セミナーでのユーザー事例のモデルになってもらう、といったことも考えられるでしょう。そうしたきっかけで当社の味方になっていただき、その後の商談がよりスムーズに進むことになった、といったことはよくあることでしょう。

 

7.キーマンと共通の体験ができる(体験を共有化できる)場をつくる

  ・ベーシックな対策としては、キーマンとの共通体験できる場を作るといったことが考えられます。例えば、相手先キーマンが参加する勉強会・セミナー等に一緒に参加する等といったことです。こちらからキーマンをそうした外部の勉強会等にお誘いして、一緒に参加するといったことも考えられるでしょう。

(例えば共通の趣味があるなら、一緒にスポーツ観戦をする、といったことも考えられるでしょう。また最近私が訪問した高層オフィスビルには、屋上に足湯があって、誰でも利用できるようになっていました。そうした足湯に、キーマンのお客様をお連れして、一緒になごみながら世間話をする、といったことも考えられると思います。)

 

8.クレームなどのピンチの時やお客様が大変ないざという時に、逃げない。逆にチャンスをとらえて積極的に行動して腹を割った話を行い、関係を深める。

  ・クレームとか何か問題が生じた時ほど、普段の関係を超えたお客様との関係を深めるチャンスです。何しろ逃げずに誠意をもって、お客様のためにできる限りの最大限の努力をする、と言う姿勢が大事です。その気持ちがお客様に伝わり、今までにない深い関係が生まれることになります。

  ・新規開拓においては、そうした場面は少ないと思いますが、例えば提案している内容で、マイナス要件がある場合や対応にミスが発生した場合に、そのことを真正面から受けとめ、率直に誤り、その対策としての努力を精一杯行うことを示す、といったことが大事になります。。そうした誠実な精いっぱいの努力はお客様にかならず伝わり、目には見えないものの信頼関係の構築に大きく貢献することになります。

 

―キーマン人脈づくりのステップ―

さて最後には、人脈づくりのステップについて解説しましょう。一つの商談を成功させるために特定の人と仲良くなる、といったことでなく、今後末永い信頼関係を持った人脈の財産を構築する、と言う気持ちで、継続的に活動していくのです。

営業リーダーとしては、そうしたキーマン人脈づくりの組織的な仕組みを作っていきたいと思います。相手先の人脈マップを作ったうえで、現状の人脈となっているそれぞれのキーマンとの関係度合いを棚卸します。その現状を踏まえて、今後どんなキーマンに対して、どこまでの関係を築いていけばいいか、課題を整理したうえ、その課題から個々のキーマンに対する具体的な対策を計画する、と言うステップになるでしょう。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

キーマン人脈作りのステップ

ステップ1:人脈マップ作り

  ・顧客企業の組織図、人的配置(構成)図づくり ⇒想定される部署、役職、権限

 

ステップ2:現状の人脈の棚卸

  ◎企業・部署・役職・名前(年齢)・権限内容、

              人間関係度合い(内容コメント)、関係内容

 

 ★部署:主管部署と関連部署、 ライン現場部署と管理部署、 現場拠点と本社本部

 

 ★役職: 一般社員、主任・係長、課長、部長、総括責任者(幹部)、

      トップ(社長、経営者)

 

 ★関係度合い:

  1レベル:挨拶や名刺交換はしている。

(一応知ってもらってはいる関係である)

  2レベル:声をかければ、話をしてもらえる関係である。

       (会ってはくれるが、どこまで聞いてくれるかは、不明である。)

  3レベル:日常的な関係は築いていて、話の中で、

                     重要な情報を確認出来る関係である。

       (話は聞いてくれ、聞けばある程度のことは教えてくれる関係。但し、相手から積極的に教えてはもらうまではいっていない関係である。競合参入情報等・・)

  4レベル:比較的良好な人間関係を築いており、少し詳しい立ち入った情報を聞き出したり、お願いを依頼出来る関係である。また何かあれば、一応教えてくれる関係である。

       (例えば、競合が参入してきたら一応教えてくれ、一部内容まで話してくれる関係)

  5レベル:深い信頼関係を築いており、いざという時にいろいろ味方になってくれたり、重要情報を優先して教えてくれる関係である。

(競合が参入してきたら、いち早く詳しく教えてくれ、その対策までアドバイスしてもらえる関係)

 

ステップ3:人脈構築の課題と目標設定

 例)

<課題の整理>

  ・○○部門のキーマンには、まだ対面も出来ていないのが気になる。

  ・関係があるキーマンの役職が殆んど課長までであり、トップキーマン、及び関連部署の上位キーマンとは、殆んど会えていない。表面的な挨拶で終わっている。

 <目標設定>

  ・現状レベルからの具体的なアップ目標(関係度合いのアップ内容)の設定

   例:○○会社の○○部署で5レベルの人脈を2名構築。

                     (現状2と3レベルで各1名のみ。)

 

ステップ4:目標を実現するための作戦対策の検討(チームでの作戦検討)

   例:・対象キーマン情報のあらためての確認と再収集

                  (家族構成、趣味、仕事の内容、性格・・)

・当社副社長等幹部同行での、トップ商談の実現

              (或いは、会社外での面談機会づくり)

     ・当社ショールームへの案内

     ・特別VP待遇の接待と定期的なお礼、お土産

                     (趣味等の・・私的なお役立ち・・)

              ・当社イベントでのゲストお願い・・  等

 

ステップ5:対策の実行スケジュール化

                                                                         以上

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

参考事例:

【キーマン情報と今後の対応方法】

ここで、新規開拓ではないのですが、定期的なルーティン商談が中心の某ベテラン営業担当者が、自分が捉えた各キーマンの情報と対応方法について、部下に伝えた事例(メモ)を挙げてみましょう。ポイントをしっかりついて、これから商談の進め方を検討するに当たり大いに役立つことが分かるでしょう。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<キーマン情報の(生々しい)例>

  ○○部署、購買○○主任

・人見知りが激しい、正攻法がきかないタイプ。新しいことは他社の実績成果を見て決めることが多い。

仕入先は長い付き合いの○○中心。横からじっくり攻める。

事例を作ってから提案したい。

  ○○本部、企画課○○係長

  ・上司にかわいがられるタイプ。部下には関心が薄い。自己中心的だが、仕事本   位。革新的なので、成功した時のメリットの大きさを提案する。

   おだてれば新しいことを勧めやすい。

  ○○店、○○主任

  ・当社を評価してくれている。今回、○○で昇格。やる気が出ているので、今が当社に全面的に切りかえるチャンス。

  本社開発課、○○課長

  ・若きリーダーで会社の星。決断が早い。社長とつながっており権限もある。若いだけに自分の考えを前面に出す。商談は遠慮せず本音でぶつかり、一回で決めるつもりでいく。準備も大事。

  ○○部署、購買○○係長

  ・今回マネージャーとなり、厳しさ修行中。おとなしい性格でまだ迷いがある。関連部門の○○氏とは性格があわない。当面は同情で相談に乗りながら、ちょっとした提案から始める。

  仕入部○○筆頭課長

  ・筆頭リーダーで、棚割権限を持っている。仕入先に厳しく要求するが、それだけの見返りも考えてくれるタイプ。条件を出して駆け引きをすることが大事。厳しく約束を守ること。

  総務部○○さん

  ・きれい好きで美術(絵画)が好き。当社のお土産の○○を喜んでもらえた。情報通で、上位キーマンのこともよく知っている。これまで当社の味方になってくれている。

  ○○店、○○マネージャー

  ・商売上手で、情報通。いろいろな最新情報を一番もらえる人。当面は聞くことに徹する。但し、時にマネージャーの知らない情報も届けることを忘れない。

  本部購買部○○課長

  ・社内、得意先に人望あり。誠意を見せ正攻法でじっくり攻める。決断は早くはないが、しっかり聞いてくれるので、手を抜かないこと。

  企画部○○課長補佐

  ・理論的で新しいことは好きだが、実行力が不足。社内での評価は微妙。上司では○○部長はOK。○○部長とはそりが合わない。理論的でかつ実証的な提案が大事。     

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

                                                                          以上


 次回に続く・・。

  

参考ブログ:

・「『実践:新規開拓を絶対成功させる』営業研修プログラムのお勧め」

     http://cbc-souken.co.jp/cbc/2012/03/post-17.html


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このブログ記事について

このページは、CBC総研が2014年3月15日 21:44に書いたブログ記事です。

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