リーダーの『新規開拓』⑨二章3「市場の選別とターゲット見込み客の洗い出し」

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第2章:新規開拓はこうやってスタートさせる

 

3:市場の選別と見込み客の洗い出し・リストアップ方法

 

三段論法ストーリーで相手のお客様の事情がより鮮明になったところで、次には対象となる市場を特定してターゲットとなる見込み客を洗い出し、優先順位をつけてリストアップする段階に入ります。

新規開拓において市場の選別と見込み客のリストアップは、大事なステップです。リストアップを通して、あらためてターゲットとする見込み客への攻略方法を深く検討することが可能となるでしょう。

 

いくら素晴らしい提案をもって新規開拓をするにしても、ターゲットとする市場やお客様を見誤るなら、うまくいかず徒労感ばかりが募ることになってしまいます。こんな事例がありました。

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<ある会社での新規開拓研修での事例>

IT系企業であるT社の新規開拓研修でのことです。

参加者の皆さんに「新規開拓を進めるのに、一番気になっているのは何か」と尋ねたところ、『ターゲット客の洗い出し』とのことでした。提案テーマを決めて、とりあえず何件かリストアップしたお客様に訪問するのですが、多くの場合アポイントや初回訪問だけで終わってしまい、新規開拓のとっかかりさえつくれないことが多いのだそうです。

そこで、リストアップ方法を尋ねたところ、業種別一覧表といった外部資料のリストが会社で用意してあって、そこから地域等に合わせてとりあえず洗い出している、とのことでした。一覧表があるので助かりますが、このままではターゲットとする見込み客のリストアップが思いつきになっているため、アプローチをかけてもうまくいかない可能性が高いのもうなずけます。実際、ロールプレイングで商談トークを確認したところ、商品の説明ばかりに終始して、お客様の事情にあった説得力あるトークはほとんど見られませんでしたし、それだけにどこか自信もなく相手の顔を伺うような言い方になっている営業担当者もいたのです。

そこで皆さんにはターゲットとする見込み客の洗い出しが新規開拓には実はとても重要なことをお話したうえで、じっくり時間をかけてあらためてリストアップの見直しをしてもらうことにしました。

その際一覧表から一件毎事前に内容を再精査して、その特性から区分けするとともに、リストアップされた見込み客について優先順位をつけ、それぞれ主力となる見込み客にあわせて新規開拓のやり方を、作戦としてシミュレーションしてもらうようにしたのです。同時に提案トークも、あらためて見込み客の「お客様の事情」によりウェートを置いたストーリーとして作り直してもらいました。そしてそのトークストーリーを基にロールプレイングでの訓練まで行いました。

するとはじめて皆さんはお客様にアプローチする段階からはっきり手ごたえを感じることが出来るようになり、ようやく新規開拓活動に熱が入ることになったのです。

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T社のように見込み客の洗い出しが思いつきになっていることで、新規開拓がうまくいっていない会社も多いのです。

ここではその市場の選別と見込み客のリストアップ方法について解説しましょう。

 

<ブログ目次>

Ⅰ.市場の選別と見込み客洗い出しのための、3つの要件と手順

Ⅱ.見込み客リストアップの手順

第一ステップ:新規開拓の対象とする顧客要件の整理

第二ステップ:その要件にあった市場の選定と見込み客リスト(一次)の収集

第三ステップ:一次情報の整理

第四ステップ:営業方法や作戦の違いによる見込み客の区分け

第五ステップ:ポテンシャル(期待成果の可能性)のランク付け

第六ステップ:アプローチの優先順位付とスケジュールに合わせたリスト化

事例:M社の新規開拓の見直し

 

 

 

Ⅰ.市場の選別と見込み客洗い出しのための、3つの要件と手順

市場を選別し見込み客を洗い出すためには、次の3つの要件を満たすことが必要です。

 

a)顧客要件(ニーズや作戦が適応する顧客の条件)

・新規開拓の提案テーマにぴったり当てはまり強い関心を持ってもらえるお客様や、作戦が当てはまりやすいお客様の要件を洗い出す。そこからターゲットとなる可能性のある市場を洗い出し、あわせて想定される見込み客をリストアップしてみる。

(顧客事情の要件:対象となるお客様の事情やニーズから想定されるお客様   の要件)

           ↓

b)ポテンシャル要件(想定される市場規模、販売規模の可能性)

・新規開拓をして、大きな成果を期待できる市場を選別し、ターゲットとする見込み客も重点化する。

    (ポテンシャル:今後の期待できる取引内容・金額の大きさ)

             ↓

c)活動容易性と成功可能性要件

       (新規開拓への取り組みやすさ、うまくいく可能性の高さ)

・さらに新規開拓を進めやすい見込み客や成功する可能性のある見込み客を

 優先する。

(活動容易性:当社との関係や特定の競合他社の有無、所在エリアの近さな     どの要件)

 

 

Ⅱ.見込み客リストアップの手順

上記の要件と手順を踏まえて、具体的なリストアップの手順は次のようなステップになります。

 

第一ステップ:新規開拓の対象とする顧客要件の整理

はじめにa)の要件の検討です。まず提案の『三段論法ストーリー』を作成し、その『お客様の事情』のトークから考えられる、新規開拓の対象となるお客様の要件を整理します。

具体的には、例えば業種・業態・業容・事業内容・企業規模・業績、保有設備・装置・部品、扱い商品、事業計画の中身、特定の業務内容、想定する特定のお困りごとや求めることの有無、等の要件が考えられるでしょう。

実際の商談場面を想定しながらお客様をイメージすることが大事です。出来れば、この段階でも営業担当者全員でワイワイガヤガヤと意見を出し合い、考えられる要件を洗い出したいと思います。そのことで、全員で見込み客に対する共通認識を共有できるでしょう。

 

第二ステップ:その要件にあった市場の選定と見込み客リスト(一次)の収集

その要件に該当する市場を選別し特定します。その上でその市場に該当する見込み客リスト(一次)を収集するのです。各種業界団体資料や該当するテーマの広告媒体での出店企業の一覧や公開展示会の出展リスト、電話帳、上場企業であれば会社四季報等が一般的に考えられるでしょう。最近はインターネットでの企業検索でリストを作成する場合も増えています。インターネットで同業他社の取引先企業一覧を参考にリストアップした例もあります。

この段階では、全員で手分けして集めることになりますが、会社全体で情報収集するというスタンスが大事でしょう。有料の資料もあり、予算化も必要になりますし、様々な資料を集めると重複している場合が多く、それを一か所に集めて再整理する必要があるからです。

また開発や購買部門が持っている資料等でも見込み客を洗い出すことができる場合があります。

 ※ローラーの飛び込み訪問の場合、あらかじめ見込み客リストは作成しないでしょう。そこで飛び込み訪問を行った後に、この見込み客リストを作成するのです。ローラーの飛び込み訪問の一番目の目的は見込み客リストを作るためであり、まさにテストマーケティングであると思ってください。(一番目の目的をクリアーして初めて、商談に入れるでしょう。)

 

第三ステップ:一次情報の整理

  そして集められた見込み客の一次情報を整理します。この場合収集方法によって、得られる一次情報は異なりますが、必要と思える情報はできるだけフォーマット化して蓄積できるようにしましょう。企業を対象とするなら、見込み客リスト(一次)に基づいて、インターネットで個々の企業情報をあらためて確認し収集することは必要です。

  フォーマットとしては、例えば見込み客台帳一覧表という形式が考えられるでしょう。 (※この内容は、今後のブログで説明する予定です。)

リスト化の段階で欠けている情報があっても、その後に実際にアプローチしていく中で情報を追加していくようにするのです。

 

第四ステップ:営業方法や作戦の違いによる見込み客の区分け

一方集められた見込み客リストを採用する作戦や営業方法の違いで区分けします。

例えば同じ業種の見込み客といっても、大企業と中堅・中小企業では、お客様の求めることも違いますし、社内体制も大きく異なり、購買手順やキーマンの構成も大きく違う場合が多いのです。考えられる競合他社や販売会社も異なる場合が多いでしょう。

そうなると新規開拓のやり方もそれに合わせて変えなければなりませんし、作戦も大きく変えなければならない場合が出てきます。その作戦の違いによって、あらかじめ見込み客を区分けしておくのです。作戦については、顧客を作戦の違いで区分けしたうえで議論し、実際の進捗管理も作戦の区分けにあわせておこなうことを忘れないでください。違う作戦を同じリストで管理するのは混乱のもとになるでしょう。

(※この作戦内容と区分けの方法については、第三章で解説します。)

 

第五ステップ:ポテンシャル(期待成果の可能性)のランク付け

次にb)の要件を考慮して、その洗い出された見込み客に対して、今後どんな成果が期待できるのか。取引の拡大可能性を探りランク付けを行います。

【ポテンシャルのランク付け・・SABC】

当面の販売見込み額だけでなく将来の新しい取引可能性や当社にとってのビジネス拡大への貢献度なども重要でしょう。その見込み客と取引できることで、他の優良見込み客が開拓しやすくなるといった場合もあると思います。

もちろんよりポテンシャルのより高い見込み客に注力して新規開拓活動を進めるためであり、提案内容やスケジュールの組み方にも影響するでしょう。例えば事前の調査方法自体も、S客A客については事前に実際の顧客が販売している商品を購入して分解調査までする、といったことも考えられます。

 

第六ステップ:アプローチの優先順位付とスケジュールに合わせたリスト化

最後にc)から、実際に活動計画を策定するにあたってアプローチの順番を考え、順番に沿ってリストを再整理します。エリア単位で活動する場合が多いので、一日で回れるスケジュールを想定して、見込み客をブロック化して整理することが考えられます。その際「当社営業所あるいは当社大口既存取引先と近い(見込み客)」といった要件は重要ですし、「当社と以前取引していた」とか「人脈があり紹介を通してアプローチできる」「既存の取引先と関係があり、見込み客の事情を把握しやすい」などの条件も考えられるならば、再度見込み客リストの優先順位の見直しも必要でしょう。

そのうえで最後に新規開拓の重要度(あるいは優先度)でランク付けをするのです。 【重要度(優先度)のランク付け・・SABC】

 

以上『見込み客リストアップ』の方法について説明してきました。実際のリストアップ方法は、営業方法や状況によって異なる部分も出てくるでしょう。実際の活動を想定して、より活動を効果的に進められるようにリストを作成するのが大事、ということがお分かりになっていただけたと思います。

 

次に、私がお手伝いしたコンサルティング事例を紹介しましょう。

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事例:M社の新規開拓の見直し

小売店向け店舗運営システムをあらたに開発し、その新システムの販売のために新規開拓を進めようとしていたM社を支援した時の話です。開発を自ら主導したM社長は新システムの"Z"に相当な自信があり、すぐにでも新規開拓が成功して導入できる顧客が増えていくものと思っていたようです。

 ところが実際には、スタート直後に数社には導入されたものの、その後なかなか新規開拓はうまく進んでいかず、こう着状態におちいってしまったのです。

ターゲットとなる見込み客としては、様々な業種のチェーン店が数多くリストアップされていましたが、上から順番にアプローチを始めてみると、どうもしっくりいかないのです。初回面談まではどうにかいっても、M社長が期待していたほど相手のお客様に興味を持ってもらえないことがわかりました。

そんな折、弊社のことを管理統括部長が知り、新規開拓活動の抜本的なてこ入れに入ることになったのです。そこでコンサルティング支援のスタート段階から『三段論法ストーリー』をあらためて作成してもらうことにしました。

まずシステム"Z"の特徴を今一度洗い出すことから始めました。すると次のことがはっきりしたのです。

 

<システム"Z"の特徴と導入メリットに関する分析>

①これまでの小売チェーンのPOSシステムと比べると、店舗での顧客情報管理とサービス対応の活用に優れている部分が多い。その割に簡易システムなので、コストは比較的かからず、操作も容易になっている。この点の評価が高い。

 

②また、一つの店舗で3~5台の端末を同時に運用すると、作業オペレーションがより効率化され、人員削減のコストダウンに貢献する。

 

②他方、本部システムとの連携という点では、他社システムとの差別性や優位性は特に見当たらない。店舗が大きくなって本部管理のウェートが高くなると、本部システムの見直し部分が大きくなり、それが障害になる場合がある。あくまでの店舗現場でのメリットが大きいようだ。

 

以上の分析を進めることで、具体的にどのような企業(店舗チェーン)がターゲットになるのか、その条件をより鮮明にすることができたのです。

 

次のような結論になりました。

 1)超大手店舗チェーンや一店舗での活用では、他社と比較した差別性を発揮する場面は少ないため、新規導入までのメリットを感じてもらうことは難しい。

 2)対象とするチェーンとしては、これまで雑貨・衣料品チェーンなどの評判がいい。(単価はそれほど高くはないが、来店頻度がある程度あり、レジ回数も多い。そのためこれまであまりやれていなかった顧客管理をきめ細かくやりたい業態が最も適している。)

 3)店舗数5店~30店舗以内。

   一店舗のレジ数は出来れば3台から10台以内。(一台でも可。但し本部システムの一部手直しが必要。)

   個店での接客を重視し、個店現場での顧客管理やサービスの向上を目指している店舗チェーンがターゲット。

 4)以上から、システム導入のコストを下げるなら中堅中小の居酒屋などの飲食チェーン店も今後ターゲットになるのではないか。

 

こうした判断は、これまでなんとなくされてはいたものの、明確にしたことはあり

ませんでした。M社長の独断が強かったため、あまりターゲット客を絞ることをせ

ず、売れるところにはどこへでも売っていくという姿勢だったのです。

まったくの新製品で、どこに売れるかわからないという段階なら、そうした売り方も一概に否定できないでしょう。しかしシステム"Z"の場合、既存システム販売を前提にして開発されたものであり、早急な普及を目指していたのです。そうなると、より的確なターゲット見込み客のリストアップと迅速なアプローチが重要になってきます。

これまでは代理店からの紹介と業態別の小売チェーン店を地域別に並べたリストだ

けで新規開拓進めていましたが、以上の分析を基にあらためて上記の条件にある小

売チェーン店を洗い出し、ランク分けして整理し直すことで、まず提案内容がより

訴求力を持ったものとなり、洗練されることになりました。また説得力あるセール

ストークが作られるとともに、提案書もターゲット別に作り直されて説得力が増す

ことになりました。さらにはターゲットなるチェーン店の特性に合わせてアプロー

チの仕方からチームプレーの仕方まで見直すことになりました。

これらのことから新規開拓活動をよりスムーズに進めていくことができるようにな

ったのです。

 

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                                      以上


参考ブログ:

・「『実践:新規開拓を絶対成功させる』営業研修プログラムのお勧め」

     http://cbc-souken.co.jp/cbc/2012/03/post-17.html


 追伸:

新規開拓のやり方や困っていることへの質問をお待ちしています。

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このブログ記事について

このページは、CBC総研が2013年11月26日 11:06に書いたブログ記事です。

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