リーダーの『新規開拓』⑧-5番外編:失敗成功事例「作戦を立てずに勝てるか!」

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 ここまで提案トークの作成について、こまごましたところまで解説してきました。「神は細部に宿り給う」という言い方もあるように、物事を成すためには細部にまで魂を込めることが大事でしょう。但し、枝葉の話に入り込みすぎて、大目的を見失わないように気をつけたいと思います。

 

ここでは、番外編として『作戦力』に関する新規開拓の失敗事例と成功事例を挙げます。思いつきではなく、作戦をストーリーとして描き、実践にまで落とし込んでいる営業拠点が新規開拓を成功させていることが、お分かりになると思います。提案トークも、「新規開拓作戦」の最も重要な柱とも言うべき部分と思って、まさに魂を込めて練り上げていきましょう。


<ブログ目次>

★作戦不足の失敗事例【新規開拓件数は達成したけれど・・】

―新規開拓の失敗事例:

開拓件数に固執して、業績ダウンに陥ったM社の失敗―

―新規開拓を進めても、業績アップにつながらず!―

―新規開拓の進め方の誤りとは―

―新規開拓のやり方を全面的に見直す―

 

★成功する営業拠点の違いとは【何はともあれ、作戦力を磨け!】

―新規開拓の成功事例:最優秀営業拠点、J所長の作戦力―

―営業拠点Sの活力ある組織風土と各人の動き―

J所長の作戦力の素晴らしさ!―

―うまくいっていない営業拠点の場合―


作戦不足の失敗事例【新規開拓件数は達成したけれど・・】

―新規開拓の失敗事例:

開拓件数に固執して、業績ダウンに陥ったM社の失敗―

 

―新規開拓を進めても、業績アップにつながらず!―

大都市圏を中心に活動する某消費財有力卸問屋のM社は、約10年前から年間シーズンの閑散期にあわせて3か月集中して新規開拓のキャンペーンを行うことにし、新規口座開拓一件について10万円のインセンティブを出していました。その結果、毎年コンスタントに5~8件程度の新規開拓に成功し、過去10年間に開拓した新規顧客の口座数が50件を超えるまでになっていました。そこでは新規開拓のやり方もある程度パターン化していたようです。

ところがM社の業績推移をみるなら、新規開拓を始めた数年間は前年比で業績を伸ばしていたものの、その後はむしろ業績の下降傾向が続いており、特にここ数年は著しい低迷状態に陥っていたのです。業績内容を分析すると、多くの既存客の業績が低迷する中、何件かの既存客の落ち込みが大きくなる一方で、新規で獲得した顧客についても少額取引ばかりで実質は赤字取引であり、業績アップにはほとんど貢献していません。それどころかむしろ足を引っ張っていることは明らかでした。

その点を営業統括部長のSさんに伺うと、ちょっとむっとしたうえ、次のような答えが返ってきたのです。

「確かに最近の新規開拓では、直接の業績アップにはあまり結びついていないかも知れませんが、これまで毎年キャンペーンで営業マンのやる気を引き出させてきたんです。普段はルーティンの活動ばかりになっているのが、新規になるとインセンティブが大きいから営業マンの顔色が違います。今でも営業のやる気を引き出す大きな効果があるんですよ。(ですから、これからも、このまま続けていくつもりです。)」

確かに新規開拓を会社全体でキャンペーンとして推進することは、私も賛成です。営業マンのやる気を引き出したいSさんの気持ちもわかります。しかし「やる気」が出ても業績アップにつながらないなら、やはりおかしいでしょう。

 

―新規開拓の進め方の誤りとは―

誤っているのは、「新規開拓」の件数だけを目標にしていることと、個人対象のインセンティブにしていたこと。つまり個人営業の件数重視の新規開拓になっていたことです。それでも当初はそれまで手つかずの優良見込み客の開拓を進めることが出来ました。その後実態としては営業マンは自分一人で簡単に開拓できる小型客先ばかりを狙い、それも安易な取引条件を提示して開拓実績を狙うようになっていたのです。

その結果、口座は増えたものの取引条件の悪化と取引規模の小型化が進むことになっていました。また口座件数ばかり増えたことで、そのフォローから営業活動がますます受け身の業務処理に追われてしまうことになりました。肝心の既存の優良顧客への地道な活動がないがしろになってしまったのです。これでは業績低迷に陥っても、むしろ当然のことでしょう。実は、こうした問題を指摘する声は、若手の営業担当者やリーダーからも挙がっていたのです。

 

―新規開拓のやり方を全面的に見直す―

 そこでM社ではM社長と若手営業リーダーを中心にして(私もコンサルティングではいり)、新規開拓のやり方を抜本的に見直すことにしました。新規開拓を個人の件数重視ではなく、あらかじめ優良ランクB以上の見込み客を選別し、アプローチの優先順位も付けて、プロジェクトとして作戦を組み、チームで開拓していくように大きく変えることにしたのです。そしてインセンティブもチームを対象に、その開拓できた顧客ランクや取引内容に合わせて設定することにしました。

一方で、既存客に対しても新規提案活動を進めることにし、そこでもチーム単位での作戦を組むことにしました。実際優良な新規顧客を開拓するためには営業担当者一人では難しく、チームで動くことが求められていたのです。

前回までと違って、作戦をしっかり組むこととチームで動くこと。このことを意識して徹底してもらうことにしました。そこでチームミーティングを出来るだけ毎日行い、各人の活動をチームで共有化するようにもしました。

 その結果、期間中に2件の優良見込み客が開拓できたことと、既存客の業績落ち込みに歯止めをかけることができたことで、業績回復に成功することができました。

安易な新規開拓活動を推進することは、一時的に成功したように見えても、結果としてむしろ業績悪化を引き起こす原因になること。新規開拓は何よりプロジェクトとして、チームで作戦を組んで進めていくべきことを肝に銘じたいと思います。

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★成功する営業拠点の違いとは【何はともあれ、作戦力を磨け!】

 

―新規開拓の成功事例:最優秀営業拠点、J所長の作戦力―

 

―営業拠点Sの活力ある組織風土と各人の動き―

特定分野の設備機器部品メーカー兼商社のM社をお手伝いした時の話です。

 M社には、10ヶ所の営業拠点がありましたが、拠点毎での業績格差が大きく、特に新規開拓の成果で大きな差が出ていました。

そこで特に業績の良い営業拠点と悪い拠点を訪問して、その違いをはっきりさせて、その後の全社的な業績不振拠点の抜本的な対策のヒントをつかむことにしたのです。

最優秀拠点であるS拠点に訪問すると、まず拠点営業所の雰囲気がなにより明るいのが印象的でした。営業事務の女性が「山川先生ですね。お待ちしておりました。」と私の名前を言って明るく対応してくれましたし、帰社してくる営業マンはいずれもはつらつとして帰社の挨拶をして、すぐ私にも明るく挨拶してくれるのです。

また帰社した営業マンはすぐに拠点長のJさんにその日の営業報告をすることになっているようで、オープンにみんなに聞こえるよう二人でやり取りをしていました。それから自分の席に返ると他の営業マンとも、お互い今日の営業活動についての感想や意見を言い合って雑談していたのです。夕方には部屋中ワイワイガヤガヤと少しうるさいくらいでした。

一方壁際には目標進捗数値を表す表と、新規開拓と新規提案の具体的な案件の商談状況や今後のスケジュール予定が一覧で見れる表が並んで黒板に張り付けてありました。

業績の良い営業拠点はこうした明るい環境づくりときちっとした規律が一緒に実現していると、あらためて感じたことを覚えています。

 

J所長の作戦力の素晴らしさ!―

その上J拠点長にヒヤリングをすると、それだけでなくJ拠点長の新規開拓の作戦力が素晴らしいことが分かったのです。次のような会話からです。

Jさん、好調な業績だね。特に新規開拓で素晴らしい成果が上がっているようだけど・・」「ええ、この拠点はこの地域では他社と比べて後発ですから、新規開拓を確実に進めていかないと業績を上げることは難しいんですよ!」

「なるほど、それで新規開拓のやり方を聞きたいのだけれど、まず新規開拓するにあたって、どんな提案を打ち出しているの?それとその前提になる他社と比べた当社の強みって、なにかな?」

はじめに、新規開拓において最も大事なポイントとなることを聞きました。

「それははっきりしていますよ。当社の強みは△△と言う技術力を持って○○出来ることですね。その強みを買発揮した新商品として最近□□が発売されたんです。それをメインの提案テーマにして開拓を進めています。」

「その提案する商品の強みって何かな?」

「それは、一番にはユーザーが○○をするときに、今までは○○といったことをしなければならなかったために、専門技能を持った者が必要だったし、一人ではなく2名でやらなければならなかったのが、当社の新製品を使えば専門技能がいらないし、一人で作業が出来ることですね。それとメンテナンスもかなり省略できるので、トータルのコストダウンが大きいと言うことです。また品質の信頼性は他社と比べてはっきり高いのですが、それは残念ながら新規開拓ではそれほどインパクトある提案にはならないですね。やっぱりトータルコストの削減が、新規開拓にはわかりやすい訴えになりますね。」

非常に明快な回答が返ってきて、正直私は驚きました。なぜなら本社の営業幹部からは、そんな明快な説明は受けていなかったからです。そこで次のような質問を続けました。

「なるほど、はっきりした提案の武器があるのはいいね。じゃあ実際どんなお客様が対象になって、どんな訴え方になるのかな?」

「うちの拠点の市場は、大雑把にいうと東部と、西部、それに幹線道路で区切られている南部の3つに分かれていると言っていいんですが、特に東部には△△といった特徴の企業が集積していて、その企業群が今はメインターゲットにして動いています。それから西部は・・・。」

この質問にもすらすら立て板に水といった風に答えが出てきました。新規開拓ではターゲットとなる見込み客をハッキリ設定出来ているかどうかで、作戦がどれだけ具体化しているかがわかります。ここまで聞いて、私は拠点での新規開拓の作戦がしっかり練られているだろうことが推察できました。そこでさらに具体的な内容を聞き込むことにしました。

「そうしたお客様は、新規開拓ですぐ会ってくれるものなの?アポイントの取り方とか提案トークは?」

「アポイントはやり方次第と思いますが、当社の□□商品はかなり特徴がはっきりしているので、先方の窓口担当者に会うのはそれほど難しくないですね。アプローチのトークとしては・・『当社は、○○と言う会社であり、△△で□□をやっておりまして、○○と言う実績があります。そこで今回、○○と言う特徴のある新製品を御社のような○○業界の○○といった事情のお客様を中心にご紹介させていただいております。○○といった今までにない大きなメリットがあるお話ですので、ご説明だけでもご担当者の方にさせていただきたく・・』といった言い方ですかね」

まるで私が相手のお客様であるかのように想定して、その場でトークを言ってくれたのです。これでS拠点ではトークまで共有されているだろうことはわかりました。

「ほう、J所長さんはうまい。あなたもアポイントを取るんだ。」

「ええ、はじめは私自身がやってみないと部下のみんなにやれとは言えませんから。でも最近はみんなのほうがアプローチトークはうまくなっていますよ。わたしはもうしばらくやっていませんね(笑い)・・。」

「それはさすがだね。新規開拓のアプローチに慣れてきたと言うことは、新規開拓が軌道に乗ってきたと言うことだよね。」

「まあ、そうですが、まだまだです。」

「うん、それで聞きたいのだけれど、そのアプローチ以降の商談プロセスはどうなっているの。何か仕掛けとか、工夫していることはあるの?」

「その後の商談プロセスについては、まだトライ&エラー段階と思っていますが、徐々に流れが固まってきている段階です。

 具体的には、営業マンの初回訪問でも新商品の機器と部品をもちこんで見本のサンプル出しとデモ提案までして、第二回目にはもう私か主任が同行し具体提案まですることにしています。そこで相手側にもトップキーマンや実務キーマンを呼んでもらい、簡単なデモまでします。できるだけ一気に商談を進めてしまうのがいいようです。

結局私や副所長が相手先の状況をしっかり把握して対応を決めなければなりませんし、先方のトップキーマン等大きな決断を決めてもらえる人達に早い段階で直接お会いして話を進められるようにしておかないと、新規開拓はうまくいかない場合が多いのです。」

「なるほど、それから?」

「そこで関心を引けたら、次には最近作ったうちの拠点のショールームに呼ぶと言う段取りです。うちのショールームまでトップキーマンを呼べれば、成約率はかなり高くなるでしょう。それは大きな試金石になってますね。」

「そうなると、チームプレーがとても大事になるね。」

「そうなんです。ですから営業担当者には、毎日必ず拠点に帰って一番に、一日の活動結果とこれからの課題を私に報告するようさせているんです。

 出来るだけ間をおかずにその場でアドバイスをしたいですし、私や副所長のスケジュール合わせも大事ですからね。それから訪問先のお客様の細かな事情も、私や副所長がタイムリーに知らなければ作戦が組み立てられないし、うまく対応できないですから・・」

「そうするとJ所長が一件一件の商談案件を日々しっかり把握したうえでみんなに動いてもらっているわけだ。」

「もちろんです。実際私が相手先に訪問することは徐々に減っては来ていますが、私とみんなが一緒になって(新規開拓を)進めているって感じですかね。」

 

いやあ、本当にJ所長の作戦指導力には感心してしまいました。実際現場の作戦とは、こんなものだと、つくづく実感した次第です。

 

 ―うまくいっていない営業拠点の場合―

 このS拠点は新規開拓がうまくいっている場合の話です。他方、新規開拓がうまくいっていない営業拠点の場合、拠点の雰囲気が沈滞しているだけでなく、そこの拠点長の話は、拠点長とは大きく違うことになります。

実際、次のような会話になってしまう場合が多いのです。

「新規開拓についてどう考えているの?」

 ⇒「ええ、やらなきゃあならないとは思っていますが、みんな忙しいので思うように進んでいません。」

「何を武器に、どんな提案をしているの。当社の強みは何?」

 ⇒「武器になるような商品が見当たらなくて・・。当社の強みですか?競合他社が強いので、特にこれといったことは・・。」

  「○○といったことですかね。でも新規開拓ではお客様は、あまりピンと来てないようですね?」

「ターゲットとする顧客は?」

 ⇒「○○業界ですかね。売れるところならどこでもいいと言っています。」

  「特に決めていません。何しろ実行あるのみ。開拓件数を挙げろ、と言っています。」

「アプローチは、提案トークは?」

 ⇒「各人が、それぞれ臨機応変に・・自分の工夫でやっている・・・と思います。

   各人の営業センスに任せています。」

「作戦は?商談プロセスは?」

  ⇒「作戦と言っても、相手のあることですから・・。思い通りにはいきませんよ!」

   「商談プロセスを組んでも、その通り行かないことが多いんです。」

   「一応商談プロセスのステップは報告させています。

中身は?本人が一番わかっているので、考えているでしょう。」

「チームプレーは?」

  ⇒「まず営業担当者が頑張ってくれないと、チームプレーもくそもないですよ」

   「毎日の報告?させるようにはしたいですが、みんな忙しいですし、帰ってくるのが遅いので、どうしてもその日の報告は難しいですね。私も忙しいですし・・。」

   「私も、チームプレーは大事とは思っていますよ。でも営業担当者はそれぞれ別々の担当を持って動いているので、実際にはチームプレーは難しいですよ。」

「スケジュールは?」

  ⇒「まあ部下にしっかり計画を立てて行動しろとは言っていますが、(お客様に振り回されて)後追いで動いている者も多いですね・・。」

 

これではいくら頑張っていると言っても成果が出ることは難しいでしょう。自らダメパ

ターンにはまっていると言っていいかもしれません。あらためて新規開拓における作戦の組み立ての必要性を強調したいと思います。

 

(では具体的にどうたらいいか。

『営業の成果の出る方程式』をあらためて確認しましょう。・・・

  参照:ブログ「リーダーの新規開拓⑦『新規開拓の作戦立案ステップ』」)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今後も、番外編として新規開拓の事例をご紹介していきたいと思います。

                                     以上


参考ブログ:

・「『実践:新規開拓を絶対成功させる』営業研修プログラムのお勧め」

     http://cbc-souken.co.jp/cbc/2012/03/post-17.html


 追伸:

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このブログ記事について

このページは、CBC総研が2013年11月19日 11:53に書いたブログ記事です。

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