営業の目標管理と業績評価を解説する④『評価制度を成功させる9つのポイント3』

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前回前々回と、営業の成果主義の評価制度に関して、評価制度改革を成功させるポイントの9つのうち①②③、④⑤⑥の3つの項目について解説しました。今回は残りのポイント⑦⑧⑨の3つについて解説しましょう。

 

 <営業の評価制度改革を成功させる9つのポイント>

トップ(社長)自ら評価制度改革の目的を全社員に明確に示す

「実力」「成果」をはっきり区分けしたシンプルな評価制度を導入する

「マトリックス営業戦略、4つの領域」をコンピテンシー(成果の出る仕事の やり方)にあてはめて、自社の営業活動にあった実力、成果の制度をつくる

④役割階層については、その役割の違いにあわせて大きくシンプルに区分し、そ れぞれに求められる役割と成果を明確にする。さらに階層ごとに、「見習い」「合格」「模範」の区分をし、昇格・降格が柔軟にできるようにする

⑤成果のうち業績成果は、「運」「環境」「自力獲得」の区分けをはっきりさせ、評価のウェイトでは「自力獲得」を重視する

⑥数値以外の成果の評価として、能力の向上チームプレーへの貢献度を入れ、デジタルな尺度を決める

事前のシミュレーションを重視し、イレギュラーケースごとの評価の方針と基準となるルールを明確にする

臨機応変な報奨制度を導入し、営業改革のきっかけとする

(一般社員以上に)幹部・上位者に役割と成果を厳しく問う制度とする

 

⑦事前のシミュレーションを重視し、イレギュラーケースごとの評価の方針と基準となるルールを明確にする

⑧臨機応変に『報奨制度』を導入し営業改革のきっかけとする

<報奨制度導入の進め方>

⑨幹部・上位者に役割と成果を厳しく問う制度とする

※参考:

 <業績評価シミュレーションで考慮したい『イレギュラー事項』への対応案>

 

「社長!儲かる営業に変えましょう。 

第4章:評価制度を改革して会社を『儲ける体質』に変える」より一部追加、修正

 

 

 

⑦事前のシミュレーションを重視し、イレギュラーケースごとの評価の方針と基準となるルールを明確にする

 営業の評価で一番頭を悩ませるのは、いくらルールをつくっても、それがあてはまらないイレギュラーな状況が頻繁に起こってくることである(具体例は図表28参照)。

 

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たとえば人事異動がある。期の途中でチーム間での異動があった場合、どう取り扱うか。また、1年も経たないうちに状況が変化し、営業領域が変わってしまうこともある。

そうなれば営業方針や戦略作戦の中身も大きく変えなければならない。そうした臨機応変な対応に合わせて、評価制度も対応していくことが求められている。

 営業の評価制度は、「制度はシンプルでわかりやすく、運営は柔軟に」である。

 このため、制度の運営にあたって、次の3点を心がける必要がある。


(1)評価項目やそのウェイトづけは固定せず、営業状況にあわせていく

  ※その年の経営方針や戦略作戦計画に基づいて、毎年評価項目やそのウェイト付   けは変えていくべきだろう。例えば昨年までは新規開拓の件数を重視していた   が、今年は大口客の新規開拓を重視するとなれば、これまでの新規開拓件数よ   りもそうした大口客開拓実績の評価ウェイトを上げる、といったことである。

 

(2)評価制度を実際の営業メンバーにあてはめたら、どのような評価結果と待遇になるのかを事前にシミュレーションし、実態にあわせて調整しておく。

※新たな評価制度が出来たところで、その制度に合わせて昨年の実績を基に、各人の評価をシミュレーションしてみる。そこで何か問題はないかを確認する。実際の昨年の評価と今回の制度でシミュレーションした仮の評価結果とどこがどう違ってくるのか、果たしてそれでいいのか。評価の下がる者に対して、納得のいく説明が出来るのか。またそれ以外にもっと違う面で評価してあげることはないか、あるいは考慮しなければならないことはないか。評価する側の立場ではなく評価される側の立場に立って、じっくり細心の注意を払って検討するのである。

この最後のつめが甘いために、実際に新しい評価制度を導入してから、待遇の変更に不満が噴出するといった場合も多いので、気を付けたい。

 

(3)あわせて、発生可能性のあるイレギュラー事項をすべて洗い出し、その際の評価の方針と基準となるルールを明確にしておく

  ※そうしたシミュレーションをすると、突発的な外部環境の変化や社内の担当替え等、ほぼ間違いなくイレギュラーな事項が出てきて、それをどう考えればいいか悩むことだろう。営業の現場では、そうしたイレギュラー事項があふれているものだ。

イレギュラー事項が発生したときこそ、会社のポリシーが問われることになる。たとえば会社の命令により、他の営業担当者のクレーム対応を支援し、それに時間をとられたことによって本人の業績が低迷したとしたら、それをどう評価するのか、などである。その場の思いつきで評価が変われば、会社や上司への信頼がゆらいでしまうことになる。

あらかじめそうしたイレギュラー事項を予測して、明確な評価方針(考え方)と基準となるルール(評価方法のガイドライン)をつくっておきたい。もちろんイレギュラー事項であるだけに、実際に発生した場合の適応方法はケースバイケースで柔軟に考えなければならない。だからこそ事前の方針と基準となるルールが大事になる。

 

※参考:

<業績評価シミュレーションで考慮したい『イレギュラー事項』への対応案>

  

⑧臨機応変に『報奨制度』を導入し営業改革のきっかけとする

 人事評価制度を抜本的に見直すのは大変な労力と時間が必要になるが、テーマや期間を限っての報奨制度であれば、比較的簡単に導入できる。主にハイスピード対応領域の活動ならば、対象期間が短いため、導入しやすいだろう。短期間で新しい行動をうながして成果を実現させる。そのことを営業改革のきっかけとしたい。

 ただし「うちの営業担当者はやる気に乏しいから、ニンジンを目の前にぶらさげて尻をたたきたい」といった「アメとムチ」の発想に基づく導入は避けたい。そうした発想で実施すると、たいていの場合失敗するだろう。

 結果として、ほんの一部の営業担当者が報奨を一人占めした場合、他の者はねたみややっかみが先に立ち、なおさらやる気をなくしてしまう。すると、できる営業担当者も周囲の目を気にして、がんばって成果を上げることを遠慮するようになる。こうなると、報奨制度が逆効果になり、組織全体がギクシャクしたものになってしまうのだ。

 多くの営業担当者の業績低迷は、やる気のなさが原因ではない。一番の原因は、従来の営業のやり方から脱皮できずいつまでも成果の上がらないやり方を続けているからである。古参の営業担当者ほど開拓的な営業手法に自信がなく、自分がどんな行動をとればよいかわからないでいる。それでいて自分の業績低迷の原因を、環境と会社や商品のせいにしているため、いつまでたっても行動が変わらないのである。

 やる気がないから成果が上がらないのではなく、成果が上がらないからやる気が出ず、それがさらに成果を落とす原因になっているということだ。

だから報奨制度を成功させるには、まず業績が低迷している営業担当者たちに成功する営業のやり方を教えた上で、プラス発想を前面に出して強制的にでもそれを実行させていくことが必要である。加えて、上司や仲間からの指導・アドバイスを受けられる場をつくってやる。具体的には、次のような進め方をするとよい。


<報奨制度導入の進め方>

(1)目的と考え方の共有化

 ・事前に、現在の市場では開拓活動が業績アップのための絶対条件であること  を繰り返し説明し、納得させておく。

(2)事前のツール・マニュアルの準備、及び実践訓練の徹底

 ・できるだけ誰でも使えるような提案トークやツール(提案書・資料等)を整  理する。できれば簡単な営業マニュアルも作成する。その上でロールプレイ  ングを含む実践的な教育訓練を行ない、自信を持たせるようにする。成功イ  メージを与えて、やる気を喚起する。

(3)行動計画の作成と日々でのリーダーの働きかけ

 ・行動計画を月・週単位のスケジュールに落とし込み、確実に実行させる。実 行日の前日夜か当日朝、直前ミーティングで士気を上げる。また当日は帰社 後、実行結果の報告を受け、ねぎらいの言葉をかけるとともに、次の対策を アドバイスし、実行の継続をうながす(これらは「ハイスピード対応領域」 の通常の営業指導のやり方だが、既存客中心の営業活動の中で新規開拓活動 をうながす場合、営業リーダーの部下への働きかけを毎日でも行なう必要が ある)

(4)成功事例を通した新たな成功パターンの浸透とその横展開

 ・うまく成功事例が出たなら、それを全員の前にオープンにして共有化させ  る。また成功事例をきちんと分析することで、従来とは違う新しい営業のや り方がいかに大事かをメンバー全員に理解させていく。そして、その成功事 例と同じやり方を他の営業マンにも試させる

(5)報償、表彰制度の工夫

 ・また報奨制度以外でも、プラス発想の活動を定着させていくために、様々な 表彰制度を設けるのも効果的だ。表彰は「お金」ではなく、名誉や励ましが 目的だから表彰金は数千円でもよい。

  たとえば毎月ベスト販売賞、チャレンジ賞、3~6か月単位の商品開発 貢献賞、ベストチーム賞、お客様評価ナンバーワン賞、ベスト能力アッ プ賞等々、考えればいろいろあるはずである。

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⑨幹部・上位者に役割と成果を厳しく問う制度とする

  最後に制度そのものでなく、幹部についてふれたい。

 誰を幹部に選び、何を期待するのか、そしてどう評価するのかは、組織にとって重

 要な問題だ。評価ばかりか、戦略や作戦の遂行に影響を及ぼすし、なにより社員の

 マインドや組織風土に大きな影響を及ぼすことになる。

 それでいて、幹部人事が社長の個人的な感情や社内事情によって決められたり、そ

 の評価もすこぶる甘い場合が多い。そんな幹部人事を続けながら、評価制度をいじ

 ってもうまくいくわけがない。幹部であるからこそ、その姿勢を含めた実力と成果

 は厳しく問いたい。それは、強い期待のあらわれでもある。

 最近は経営者の世代交代にともなって、先代の幹部をどのように処遇していくかと

 いうことも、問題になっているように思う。 

  この幹部人事については、次項(「幹部人事で社長が犯す4つの大罪」)で詳しく

  説明する。


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※参考:

<業績評価シミュレーションで考慮したい『イレギュラー事項』への対応案>

①外部環境の予測できない事態発生による、業績の大変動の考慮

   例:輸出入品の為替変動、取引先の突発的な事故、天災など

  ⇒・為替変動など、あらかじめ万一あり得ると考えられる突発事態については、評価以前に事前にそのような事態が発生した際の対応方法をマニュアル化しておくべきだろう。

   ・イレギュラー事態が発生するなら、間違いなく営業担当者は臨機応変な対応が求められるし、過大な負荷がかかることは間違いない。まずはイレギュラー事態への対応を優先し、終わった後にその対応をねぎらうという姿勢が、評価以前に何より大事だ。その上での評価と言うことになる。 

・突発事態への対応がなにより重要で、それが評価の対象になる。もちろん業績評価の仕方もレギュラーな状況とは大きく異なって当然だ。

 

   ・ある食品輸入商社であった話である。

為替が急激に円高に移行する中、自社の購買部門が先手を打って大量に安い商品を海外から買い付けてくれたおかげで、某担当者の業績は当初目標より20%程度アップという実績を上げることが出来た。

そこで実績数値をそのまま業績連動で営業担当者の賞与に反映させるべきかどうか、人事部長は悩み、私に相談にきた。当初決めていたルールに基づいた評価の待遇計算では、あまりに大きな賞与を払うことになるからだ。

「本人の努力も認めるが、やはり運による部分が大きい。だからそのままの業績数値で評価するのではなく、アバウトでもいいから本人部分の努力以外の運の要素を割り引いて評価することでいいのではないか。と言っても運を味方にするのも営業の仕事だから、業績アップ分のある程度は本人努力として評価の対象としてあげるべきだ。

ともかく本人やまわりの者たちの納得とモチベーションアップが前提だ。そのためにもみんなの前で、本人に対してチャンスをしっかりものにした努力を大いに褒めてあげることがなにより大事だろう。」と私はアドバイスした。

 

   ・他方、取引先企業の倒産が出た場合の営業担当者の評価も時に問題になりやすい。事前に与信上の問題がはっきりしていたなら担当者にも責任がある。しかし多くの場合は会社としての対応により問題があったと捉えるべきだろう。その場合、ペナルティとしてのマイナス評価は一部あったとしても、業績評価としては倒産した担当企業の業績目標ははっきり外して、それ以外の業績実績やその後の営業担当者の新規獲得のための活動を評価するようにする。    

万一倒産企業を担当していただけでたとえばD評価になるなら、「会社や上司としての責任は無く、すべて営業担当者個人の責任である」と言うことになる。それでは営業担当者連中から見た会社への信頼が揺らぎ、本人だけでなく営業全体の、その後の営業活動に悪い影響が出る可能性もあると思ったほうがよい。ここでも納得性が大事にしたい。

 

②異動時や新任時における業績評価方法(新旧担当の貢献度)の考慮

   ・人事異動や担当替えと言うケースは、多くの営業部隊で必ず発生する。だからそうした場合の評価方法の考え方や基準となるルールも事前にはっきりさせておいたほうがいい。但し一律的にルールを適応させることは無理があるので、ケースバイケースで事前及び事後に本人との話し合いをもって納得づくでの評価をする姿勢が大事だ。

・実際には評価が決まった後で不満が出て、対応が後手に回るといったケースも多いようである。そもそも多くの者は自分に甘い評価をしやすいものだ。それも人事異動や担当替えといった会社の都合で環境が変わった場合、言い訳しやすいだけに会社が思っている以上に本人は自分に甘くなりやすい。だから評価結果に対する不満が出やすいものだ。だからこそ引き継ぎ内容も含め、しっかりした話し合いが必要だ。

   ・その話し合いのポイントは、異動目的の再確認とともに、継続引継ぎ案件の確認だ。現状把握している継続引継ぎ案件をすべて洗い出し、その前後の経過を持って、前任者と後任者の成果を見ることである。

前任者から見るなら、引継ぎ案件が受注できたなら、それは自分がこれまでやってきたから、と思いたいだろうし、後任者からするなら、自分が最後の詰めをしたから受注できたと思いたい。その貢献度の振り分けは難しいので、結局アバウトに決めるしかない。例えば長期商談であれば、31の割合で前任者に多く、短期商談であれば1対2の割合で後任者に多く、といった形である。いずれにしても、評価よりも実際に引き継ぎをスムーズに行って、業績アップにつなげられるようにすることである。

 

③クレーム等発生時の社内事情による営業活動への障害発生の考慮

   ・クレームが出たなら業績アップではなく、何よりクレームをうまく解決することに全力をあげることだ。そのため新規提案や新規開拓が当初見込んでいたより出来ていなかった、と言うことはよくある。その場合評価をどうするかという問題が発生する。何より明確な方針を出すことが一番だろう。

    「クレームを優先する!このため既存の営業活動は新規活動の○○部分はとりあえず停止し、○○だけに切り替える・・」多くの場合、長い時間がかかってクレーム処理をすることはほとんどない。短期集中の徹底した対応が大事になる。そうした方針を明確にだし、クレーム処理が完了したなら、すぐ通常業務に戻れるようにすることだ。但し、3カ月以上かかる対応であるなら、業績目標の見直しも必要になるべきで、そこで評価も変わることだろう。

   ・よくあるのは、クレーム発生→クレーム対応に多くの時間がとられる→クレームからお客様の評判が下がる→ダブルで業績が悪化する→その結果、業績評価が大きく落ち、待遇も落ちる→営業のモチベーションも大きく落ちる・・といったマイナスの連鎖だ。こうしたマイナスの連鎖を食い止めるのは、やはり営業リーダーの役割だろう。

 

④チーム外の協力支援の考慮(貢献度及び協力要請のマイナス考慮)

   ・想定している営業チーム以外の人達からの協力支援についても、はっきりした方針の下、評価について明確な考慮が必要になる。具体的には、そうした協力支援を受けることを促すのか、控えるようにするのか、と言う点である。

協力支援をどんどん受けて、より業績アップを目指すならば、そうした協力支援を要請しやすい体制づくりが大事になるし、評価においても、そうした協力支援を積極的に受けるようにしたかどうかを評価に加えてもいい。

    ところが、そうした協力支援を専門部隊が行うと、自社の開発等が遅れてしまいやすいので、出来るだけ控えたいとするなら、営業部隊だけの活動を主体にしなければならない。その場合は、営業部隊だけで成約した成果と協力支援を受けた成果で評価のウェイトを変えることも、時に必要になる。協力支援を受けた成果については、一部マイナスを加えることで評価を下げるということだ。

    ここでは方針と評価を一致させることの重要性を強調したい。

    (但し、こうした評価の考慮をするためには、次の⑤のような自力獲得案件をしっかり一件毎リストアップし、その獲得成果でプラスポイントを計算するような評価制度が前提となる。)

 

⑤自力獲得活動の度合いの考慮

  ・新たに獲得できた商談案件とその成果実績をリストアップし、一件毎どれだけ自力での成果かどうか内容を確認して、評価に影響させるようにする。

    例:・まったくの自力提案による開拓

      ・日常的な営業活動からの引き合い

      ・まったくの棚ぼた、スポット受注

    厳密に考える必要はない。既存客の場合、実際にはお客様からの引き合いがあって初めて案件として成り立ち、成約が可能となる。その場合、以前からあった継続案件なのか、はじめて出てきた案件なのかで自力かどうかを区分けできる。以前からあった継続案件でも、その継続受注を成功させるのが難しい情勢であったなら、そこに本人の自力な動きがあったということだから、自力獲得案件として取り扱う、といったことも柔軟にやればいい。

  ・他方一件自力案件のように見えても、本人の努力ではなく『運』で受注できたような場合は、『棚ぼた』として扱うようにする。

   逆に『運』が悪く、例えば自社のクレーム発生によって失注するといった場合は、

   マイナスの考慮も時に必要になるだろう。

・繰り返すが、目的は営業担当者に自力獲得を目的とした主体的な活動をできるだけ促すことにある。だから厳密なルールではなく、『考え方』を徹底するということが大事だ。

 

⑥一昨年からの伸び(過去の貢献度の今季への反映)の考慮

  ・高度成長時代には、目端の利く営業担当者は今期の業績が目標を上回ると予想されると、意図して受注を遅らせて次期の業績に回すようなやり方をしたことも多かったようである。

しかし現在のように市場の変化が激しい時代にはチャンスがある時には一気に目いっぱいの受注を目指して業績アップを実現させなければならない。そうなると市場動向によって業績の変動は大きくなりやすい。そこで営業担当者からするなら、今季で業績をすべて上げても、その評価を次の期にも考慮してもらえるような工夫が大事になる。例えば目標を超えてあげた業績アップ部分は、次期の業績実績に一部上乗せして評価する、などといったことである。

 

⑦市場状況から見た難易度(あるいはシェアー推移)の考慮

 ・多くの場合、業績目標に対する実績数値の比率が業績評価の尺度になっている場合が多い。但し目標は期初の段階での会社からの期待数値であるため、その後の市場状況とは食い違うことも出てくるだろう。そこで、期末での評価の際、市場状況から見た業績達成の難易度を見るということも考えられる。また、はじめの目標設定段階でも、そのチャレンジ度を難易度として評価のウェイトづけに加味するといったことも考えられるだろう。

 ・難易度と言うのは感覚的な部分が大きいので、出来るだけ客観的にとらえるために市場シェアーのアップ度を評価に加えるというやり方もある。いずれも対象とする市場状況で業績を上げる難易度は変わってくることを考慮して、その要素を何らかの形で評価に加えるということだ。

 

⑧目標外の活動結果による貢献度の考慮

  ・期初に設定した目標だけで評価すると、そこからこぼれ落ちてしまう社員の貢献があるだろう。

   例:・友人などの紹介による優秀人材採用への貢献(優秀人材の退職)

     ・社会貢献活動や人助け等による企業PR効果

     ・目標外の新商材の開発育成

     ・新商品開発改良アイディアの提供

 

そうした内容は、期初には設定できないが、ある時にたまたまそうしたチャンスに恵まれてやれたという場合が多いのではないか。そうしたラッキーな貢献も、是非評価に加えたい。そうした柔軟な評価制度が社員たちに自由なアイディアや実行を促してくれるだろう。

 

⑨新規事業や新規開拓活動等新規チャレンジ活動で失敗した際の考慮

 ・新規事業や新規開拓を進めなければ、多くの営業部隊の将来展望は難しく、業績がほぼ確実に落ちていくことになるのは、間違いない。と言って、そうした新規事業や新規開拓はすぐには成功しないし、難しいテーマとなればなるほど出来る者は限られてくる。出来る優秀な営業マンにとっては、すぐに業績実績として表れてこないそうした新規事業や新規開拓に従事するなら、評価においてハンディが生じてしまうことになるだろう。

  そのためそうした新規事業や新規開拓を始めておこなう場合は特に、営業の評価制度として考慮すべきことが出てくる。例えば優秀な営業担当者を既存客営業から切り離して新規事業の専従にしたところ、残念ながら今季の成果は全くなかったとか、失敗してえっ対することになった、といったこともあり得るだろう。そうした場合、その営業担当者をどう評価すべきか。

結果が出ていないから、ゼロとかDランク評価となったら、そうした新規事業や新規開拓に着手する者はいなくなってしまうだろう。と言って、成果をあげていないのにSランク評価もどこかおかしい。では、どうするのか。

・はっきり実力と努力や姿勢、及び実績成果を分けて評価するべきだろう。

実力はこれまでの実績から評価し、努力や姿勢は多少評価してもいいだろう。しかし成果実績はあくまで実績数値で評価する。実績が出ていないなら評価しないことだ。但し、そういってもその優秀な営業担当者は不満かもしれない。なぜならそんな新規事業に就かずに、以前の既存客担当のまま活動していればもっと高い成果を上げて、トータルの評価も高かったかもしれないからだ。そこにはどうしても評価に不満が出やすいものである。

そこでよくあるのは実績成果が出ていないのに、評価を上げてしまうことだ。しかしそれは明らかに間違いである。それでは成果評価への信頼性が失墜してしまうだろう。大事になるのは、上司のポリシー持ったその部下への慰めと励ましである。評価では決してない。

 

「きみが優秀だと私は思っているし、今回の評価にきみが不満で悔しい思いを持っているのはわかる。しかし、成果が出ていない限り、成果評価をするわけにはいかない。それがルールだ。

それよりきみにとっては、そんな目先の評価より、今回新規事業の活動に従事したことが大きな経験になって、これからの大きな成長につながっていくことのほうがよほど大事だ。だから今回は評価は低くとも、きみにとって大きな意味があったと思うし、これからきっと大きな成果が生まれるはずだ。僕はそれを期待しているし、そのための支援をしたいと思っている。だから今回の悔しさばねに、さらに頑張ってほしいんだよ!」

 

⑩大型商談等、業績実現に長期間必要とされる場合の、途中期間での考慮

 ・新規事業や新規開拓と同様に、大型商談等の場合はその結果が出るのに時間がかかり一期ですまない場合が多いだろう。その場合の途中経過の時期での評価をどうするか。この質問もよく受ける。

私の基本的な考えは、上記⑨同様で成果が上がっていない場合は成果評価をしないということだ。多くの場合は、実力評価をしっかりしてあげて、一方で業績実績の成果評価は厳しくするということである。

プロセス評価と言うやり方もあるが、例えば手がけている商談のプロセスがかなり進んでいたとしても、最後のところで失注してしまうことも十分あり得る。だから私はプロセス管理は重要でも、商談プロセスの途中経過の進捗度は成果としては評価すべきではないと思っている。やはり営業は結果を上げてナンボ、の世界でなければうまくいかないだろう。

ここでも成果と実力・努力ははっきり区分けし、プロセスについては、進捗度は成果とは別扱いにして、せいぜいそのプロセスを進めるにあたっての実力や努力・姿勢を評価するということだ。

 

※いずれのテーマも当事者にとっては、どう評価されるか曖昧になりやすいだけに、その評価が持つ意味は大きく、細心の注意と配慮が必要になる。

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以上

次回へ続く・・・

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このページは、CBC総研が2013年7月 7日 11:52に書いたブログ記事です。

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