"変化"は世の常ですが、その変化はますます加速し、変化から起こっている"多様化"もますます拡大しています。その"変化多様化"が進む世界を主体的に受けとめ、そこに自らの力で生きるチャンスを見出すこと。それが今、人も企業も成功するための絶対条件ではないかと思います。
今回は"変化"をとらえる考え方について、「普通の人型リーダーが最強の組織を作る」の中の文章を載せましょう。この文章も少々古いですが、考え方の原理原則は変わることはないとあらためて感じました。「弁証法」のロジックに少々こだわって表現も堅い感じで解説していますが、ご参考になれば幸いです。
「普通の人型リーダーが最強の組織をつくる」より(P.197~)
リーダーは"変化"に即応して、チャンスをつかめ
◆変化は大局と細部からとらえる
◆"変化"の動きを理論化せよ(正・反・合の運動法則)
◆変化のシナリオを読む
最近の補足:「変わらないこと」に、「変わること」の源がある
リーダーは"変化"に即応して、チャンスをつかめ
これからのリーダーにとって非常に重要なテーマは"変化"である。
リーダーを取り巻く世界がこれまでのように安定した確固とした世界であったなら、リーダーの下す決断も、一定の方程式に沿って導かれる一つの正解を示すことで済んだことだろう。
ところが現在、取り巻く環境はどんどん変化し、今日確固たる正解と思ったことさえ、明日には大きな誤りとなってしまう可能性もある。今の時代、誰も永遠に続く正解などもちあわせていない。
だからこそ、リーダーは常に変化を読んで、どういう手を打つべきか対策を考えなければならなくなった。
ビジョンと方針をよりどころに、メリハリをつけて変化に適応しなければならない。
但し、変化こそ過去を守る者にとってはリスクではあるものの、未来を見据える者にとってはチャンスである。
そこで、ここではリーダーが"変化"をどうとらえ、どう対処すべきかを、①市場の変化、②日々の変化、③組織の発展、という3つの視点から説明したい。
少々論理的、システム的になるが、変化に即応するためにそうした能力をリーダーは身につけてほしい。
◆変化は大局と細部からとらえる
"変化"とは何か。こんなベーシックな問いかけからはじめるのは、変化とは一部分の話ではなく、全体の話だからだ。
日々変わっていく現象のただ目先を追っていくだけでは、あまりに激しく変化し多様化し、かつ情報のあふれるこの社会のなかで、自分を見失い変化に振り回されるだけだろう。
変化をとらえるためには、まず全体がどうなっているかと、物事を大局的にとらえる姿勢が大事だ。
たとえば、あなたが毎日毎日コンビニエンスストアに並ぶ新製品をチェックしたとしよう。
それは、市場の趣向の変化をとらえる一つの方法かもしれない。実際やろうと思えば、日々の商品毎のPOSデータは存在する。しかし一品一品の動きにとらわれすぎたら、膨大なデータの前に何も見えなくなってしまう。そこにコンビニエンスストア全体の品揃えをしっかり頭にたたき込んで、その枠組みを前提に、セグメントをもう一度細分化して何がどう変わっていっているかをつかんだなら、枠組み毎での変化は容易につかめるだろうし、何より全体の枠組み自体の変化が見えてくるはずだ。
逆説的だが、枠組み自体が変化多様化する時代だからこそ、全体的な見方、枠組みが必要なのだ。そうした全体的な捉え方が出来ないなら、膨大な情報は役に立たないばかりか、むしろ人々に判断停止を促す有害なものでしかない。
一方、変化をとらえるためには、細部にもこだわらなければならない。なぜなら、変化の始まりは、常に細部からおこるからである。今までと全く違うことがたった一つのささいな事柄で起こったとしても、それは大きな変化の予兆であるかもしれない。それは決して統計的な量的な変化によっては、とらえられないものである。
例えば、コンビニエンスストアで通常一週間に数個しか売れていないある商品が、急に三日続けて売れたとしたら、そこに間違いなく何らかの原因がある。その原因から、変化を起こしている要素を見つけることが、これから起こる大きな変化を予測することにつながるはずである。
◆"変化"の動きを理論化せよ(正・反・合の運動法則)
変化とは、様々な要素が勝手に動いている中で、予定調和的な安定していた状態になっていたものが、何らかの影響によって、新たな方向が生まれ、これまでの安定的な状態が崩れて、今までと異なる状態へ動いていくことを言う。
その動きは、これまでの状態<正>に対して、反対の動き<反>が生まれて対立し、対立した状態が、最後にその<正>と<反>を融合<統合>した新しい状態<合>が誕生する動きと言い換えることも出来る。
その変化をつかまえるためには、変化を引き起こしている相反する二つの要素をはっきりとらえ、その二つの要素の動きから、変化のストーリーを読むことだ。「正・反・合」の運動法則である。
ここで「二つの相反する要素」という点に注目してほしい。
「夢と危機感」「チャンスとリスク」「長期ビジョンと一瞬一瞬のパワー」「理想と現実」「大局と細部」「自由と管理統制」「創造と破壊」「トップ戦略と現場活動」「ネットワーク社会とピラミッド社会」「内部と外部」「自己と他者」など。こうした相反する要素には、かならず「正・反・合」の運動法則が当てはまる。
そもそもさまざまな特徴(強み)をもったメンバーをまとめ上げるリーダーの役割とは、その相反する要素を両立させ、その融合(統合)をはかって、新たな次元の世界を生み出すことにある。異質な要素があるからこそ、変化が生まれ、変化があるからこそ、創造が生まれる。
"変化"とは、正と反という異質な特性(強み)の交わりによって、今までなかったような独創的な物や世界を作り上げていく創造的な活動の動き、ととらえることができよう。
この変化をとらえる「正・反・合」の運動法則は、ビジネス世界の変化だけに当てはまるものではなく、広く変化と発展と創造に関する様々な世界に当てはまる普遍的な考え方である。この「正・反・合」の運動法則を、哲学用語では「弁証法」と呼ぶ。
これからのリーダーは、平均や中間から発想するのではなく、相反する極端な状況や要素を設定することで、新しい発想を生みだす力を身につけなければならない。
◆変化のシナリオを読む
変化を運動法則としてとらえるなら、変化のシナリオを読むための、より具体的な方法論も見えてくる。それは次のような方法である。
(1)まず変化をとらえるための世界を明確に分野として区切る。(枠組みを整理し、変化している分野に注目する)。
(2)その区切られた特定の分野において、その世界を構成し大きな影響を及ぼしている、全く性質の異なる二つの要素を取り出す。
(3)そして二つの要素から縦軸と横軸に区分けした「マトリックス図」をつくる。
(4)さらにそれぞれの要素の<正>と<反>の状態を想定する。するとマトリックスの中に、縦軸、横軸の<正>と<反>で区切られた4つの領域が生まれる。
(5)その4つの領域の動きから、「正・反・合」の変化のシナリオを読む。
変化が読めるのは、二つの要素の<正>と<反>の対立こそ、変化を生む要因だからだ。領域の動きとは、縦軸も横軸も<正><正>の状態から、<正><反>→<反><正>→<反><反>という展開になり、<反><反>の状態が、最後に融合されて新たな<正><正>の状態になる、一連のステップだ。
この領域の動きは、さまざまな分野にあてはめることが出来る。例えば、自分と相手との合意形成のステップも、相反する要素が融合して新たな状態が生まれる変化のステップとしてとらえるなら、そのステップは簡単に整理できるだろう。(図表
すなわち「現状確認」<正><正>→「相手の太刀な、意見のヒヤリング」<正><反>→「自分の立場、意見の表明」<反><正>→「自分と相手の意見のすりあわせ」<反><反>→「合意形成」<正><正>というステップである。
以上変化とその動きをとらえる「正・反・合」の運動法則と方法論について簡単に述べた。こうした方法論は、そのまま「市場の変化」と「組織の変化」をとらえる具体的なやり方にあてはまることになる。
{その考えを戦略モデルにしたのが「マトリックス営業戦略、4つの領域」である。}
最近の補足:「変わらないこと」に、「変わること」の源がある
私は「マトリックス営業戦略」のモデルの解説で、はじめに『変わらないこと、変わること』の考え方を示し「変わることをとらえるためには、まず変わらないことをとらえなければならない。そうでなければ、変化に振り回されて自らを見失うだけになる・・」と言っています。そして、『変わらないこと』として「山川式三段論法ストーリー」のモデルを提示しているわけです。
その「山川式三段論法ストーリー」とは「自分=商品と、相手=お客様、が深く交流することによって、新しい価値創造=お客様満足、が生まれる」というストーリーですが、実はそれは正・反・合の弁証法の論理ストーリーにも合致しており、"変化"の源をそこに見出すことが出来ます。つまり『変わらないこと』のストーリー自体に、『変わること』の源があったということになります。
そう考えるならば、そもそも人間及び人間社会の本質は『変わること』としてある、と考えられるでしょう。弁証法の世界がそれを表しているように・・。いやその前に「般若心境」の『色即是空・空即是色』という言葉に表れているように・・です。
あらためて『マトリックス営業戦略』モデルとは・・・
<変わらないこと>
本質・・⇒『山川式三段論法ストーリー
(自分・相手・目的:創造)(商品・顧客・満足)』
→変化を起こす(正・反・合の)原理が、本質そのものにあらわれている。
<変わること>
現象・・⇒『三段論法ストーリー』を現実の場面
(市場、事業場面、営業場面)位置付けることで見えてくる世界
⇒空間への展開:『4つの領域』
→顧客と商品の変化する様を4つの場面に区分けし、その状況の違いに合わせた対応方法をモデル化することで、変化多様化する状況に合わせた的確な対応が可能となる。
⇒時間への展開:『4つの領域』の
商談プロセス、事業展開プロセスへの展開
→但し4つの場面は常に変化し動いている。その動きを「4つの領域」の場面展開としてとらえ、変化と変化の先を予測することで、変化をチャンスとして変化を我がものとした対応が出来る。
以上
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