"変化をとらえる"①マトリックス営業戦略の詳細解説

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"変化"は世の常ですが、その変化はますます加速し、変化から起こっている"多様化"もますます拡大しています。その"変化多様化"が進む世界を主体的に受けとめ、そこに自らの力で生きるチャンスを見出すこと。それが今、人も企業も成功するための絶対条件ではないかと思います。

 

今回は「マトリックス営業戦略」の重要なコンセプトである、"変化"について、変化と何か、また変化をどうすれば捉えられるかをあらためて考えたいと思います。

そこで小生が以前書いた「絶対に勝つマトリックス営業』の文章を載せます。過去の文章ですが、内容は市場の変化とその変化の捉え方のわかりやすい解説からはじまっています。「4つの領域」が生まれる原点の考え方とも言えるでしょう。そこで語られている経営環境は現在でもそのまま当てはまるものと思いますので、ご参考になれば幸いです。

 

 

―"領域"という考え―

 ―『成熟化情報化』が市場の変化多様化を促す―

―「デジタルとアナログの相互運動」が創造を生み出す―

―コンピューターソフトはどんどん多様化し変化する―

最近の補足:

 


 

「絶対に勝つマトリックス営業」より(P.50~)

 第二章:「4つの領域」から新しい営業が見える

     ―市場の変化にあわせて、営業のギアチェンジを!

―"領域"という考え―

通常、事業活動や営業活動において、"領域"を考える場合、顧客と商品の軸は重要です。どんな顧客(層)に、どんな商品(群)を提供しようとしているのかで、営業のやり方は大きく変わることでしょう。縦軸に、考えられる顧客や業種業態を書き出し、一方横軸には扱っている商品やサービスを書き出して、『現在当社は、主にどんな顧客にどんな商品を提供しているのか』をマトリックスから洗い出したり、今後の市場を想定して『今後、当社はどんな顧客に、どんな商品を提供していくべきか』を整理して明らかにしていくわけです。

従来、このような顧客商品マトリックスが、事業営業領域設定に当たって最も重要でした。

しかし現在の問題は、このようにただ顧客・商品を並べただけでは、市場の変化・多様化をとらえることは難しいということです。

なぜ市場が多様化し、変化するのかという要因を考えなければなりません。 

その要因を、私は「成熟化と情報化」としてとらえたいのです。

このため縦軸には、顧客の経験度を尺度に、私たちが提供する商品・サービスについてよく知って詳しい『玄人』を対象にするのか、あまり詳しくない『素人』を対象にするのかで区分けしました。成熟化時代は、はじめ素人であった人がどんどん玄人化していきます。情報化は、その流れを促進させていると考えられるでしょう。

横軸には、お客様の事情に合わせてより高い価値を提供する総合的な『オーダーメード対応』なのか、あくまで商品自体の持っている価値を提供するレディメード対応』なのかで区分けしました。提供した結果、お客様の側で生まれる価値を重視するのか、提供する価値そのものを重視するのかの違いです。その縦軸と横軸で区分けされた、4つのマトリックスの象限が「営業の4つの領域」であり、そこに新しい事業営業のあり方が見えてくるのです。

図:「マトリックス営業戦略、4つの領域」

 image4matorikusu4zu.gif

ハイスピード対応領域(右下象限):

 ・他社に先駆け先手必勝で市場を押さえる、ハイスピード型横展開営業を行う領域

パートナーシップ対応領域(左下象限):

 ・お客様を説得し巻き込んで、新しいお客様満足実現に向けて一緒に手を組むパートナーシップ型企画提案営業を行う領域

エンジニア対応領域(左上象限):

 ・より専門的な技能や体制を持ってお客様の問題解決を図り、実際の顧客満足成果を実現していくエンジニア型問題解決営業を行う領域。

コストダウン対応領域(右上象限):

 ・価格・納期・サービスといったお客様が営業マンの手を借りずにはっきりその価値を判断できるものについて、コストパフォーマンスを高めて提供していく領域であり、営業マンをカットし徹底的に合理化すべき領域

 

いかがでしょうか。この『4つの領域』から見える事業営業の世界は、全く異なったものに感じられるはずです。そしてこの「4つの領域」は、現実の世界では一つのところにとどまらず、ぐるぐる渦を巻いて動いているのです。そこで「4つの領域」の内容を説明する前に、まず変化多様化をもたらしている「成熟化」と「情報化」の意味を見ていきたいと思います。

 

 ―『成熟化情報化』が市場の変化多様化を促す―

 現代が成熟化情報化の時代であることは、誰も疑うことのないことと思います。そしてビジネスの現場で起こっている市場の変化多様化の大きな潮流は、実を言えばこの成熟化情報化が進んでいくことで引き起こされているのです。

 成熟化が進むということは、何もしなければどんな鋭い切り口の新製品もどんどん陳腐化していくということです。顧客もはじめは物珍しいと話を聞いてくれますし、商品をほしいと思ってくれるでしょう。しかし時間の経過とともに、その商品について経験を通して詳しくなっていきますし、競合が増えていくことでその商品自体の必要性は減り、その魅力は減っていきます。顧客も素人から玄人に変わっていくことになります。こうした変化は、いつの時代でもありました。しかし情報化が進む中で、市場がオープンになるとともにそのスピードがますます上がっているわけです。商品のライフサイクルが短くなると同時に、お客様の素人から玄人への移行もどんどん早くなっているのです。

 実際、私がお手伝いしているある精密機器の会社での新規開拓においては、新製品の発売サイクルは約二年に一度になっているのですが、お客様に「新製品が出ました」と言って魅力を感じてもらい購入してもらえるのは、新製品発売後たった三か月のみと言われています。ですから、その三か月だけはそれに集中して販売することが必要となりますが、その三か月を過ぎたならもはやそうした売り方では売れなくなり、違う売り方を考えなければならなくなくなっています。三か月を過ぎて商品だけを売ろうとするなら、どうしても価格競争は避けられません。

 一方商品面についてもどんどん変化しています。それは単に陳腐化するというだけではありません。次々に新製品を出しても商品自体がどうしても従来の切り口になってしまい、差別化しにくくなっているのです。そこで商品自体の魅力よりも、個々のお客様に個別対応することで、新しい価値や魅力をつけるようになっていきます。まさにオーダーメードな対応ということになりますが、実際商品開発においては「お客様側の事情から発想する」ことで、新しい切り口が生まれるケースがふえているのです。

 同様に営業活動の場面でも、差別化しにくい時代だからこそ、お客様の側から発想することで差別化が図れることになっています。

 たとえば、商品提案の場面を思い浮かべてみましょう。そもそも製品のスペックの違いを話しても、それは違いであって、差別化にはつながらない場合が多いのです。すべてのスペックが他社をうわまわっていれば、きっとその商品は他社の商品より価格が高いはずです。

「おたくの商品は、この部分は確かに勝っているけれど、この部分は他社品より劣っているよ。どっちがいいか、一概に言えないね」まさにとそのとおりです。

 スペックの違いで、自社品の優位性を訴える営業マンは、結局気がつかない内に自分で売れない原因を作っているわけです。

 そうではなく、その違いが相手のお客様の事情から、いかにこれまでにないお客様満足を提供できるかを話せばよいのです。

 「製品特徴としては、大した違いがあるようには見えないかも知れません。しかしこのちょっとした違いが、お客様の満足に大きな違いになるのです。実際、○○という事情のお客様には、これまで○○に困っておられたのですが、この当社商品を使っていただくことで、○○が出来るようになり、なんと○○と喜んでいただいております・・。」

 またそうなれば実際に提供する価値は一つの商品だけではなく、お客様の事情から考えた総合的に満足を実現するものとなるでしょう。自社商品だけでなく他社品を扱ったり、メンテナンス・保守サービス等も含まれるでしょうし、営業マンの対応も提供する価値の大事な一部としてみなされることでしょう。

 但し、こうしたオーダーメードな対応というのは意図した対応であり、手間暇かかり時間もコストもかかりますし、その提供する価値がその都度、ばらつくことも考えられます。そこで、そうしたオーダーメード対応も自然な流れでは知らぬ間に時間の経過とともにパッケージ化、レディメード化されていきます。情報化が進むことによって、社会的にもデジタル化・標準化をどんどん進める要因ともなっているわけです。

 こうして見ていくと、成熟化・情報化の時代は顧客という面から見るなら、素人から玄人に移行していくのが自然であり、提供する価値・商品という面からはオーダーメード対応から、レディメード対応に移行していくと言えるでしょう。そしてその行き着く先は、コストダウン対応ということになるわけです。営業の4つの領域で言えば、縦軸では下から上に移行し、横軸では左から右に移行するということです。 

 しかし、それはあくまで時代の自然な流れということです。一方、コストダウンという価格・納期といったものだけでは、深い本当の満足が得られるわけではありませんし、ダイナミックな事業活動も生まれてはこないでしょう。現実の場では時代の自然な流れとともに、それに対して再びオリジナリティのあるものを創造して市場を提供していくという、人や企業の意図した逆の動きが考えられるわけです。それが市場の複雑な動きを生み出すことになっていくわけです。

 

―「デジタルとアナログの相互運動」が創造を生み出す―

 ここで、横軸のオーダーメードとレディメードの区分けについて、もう少し違った角度から見てみましょう。それは、オーダーメードをアナログ、レディメードをデジタルと読み替えるのです。情報機器が進化する現在、「デジタル化」のインパクトが大きいわけですが、私はデジタルとアナログの相互運動があって初めて、新たな創造が生まれると思っています。

 世界の始まりは、混とんとしたアナログの状態です。それが徐々に混沌からはっきりした要素に分解されていき、部分部分ではまとまりが生まれてきます。そして、そのまとまりが純化されデジタル化されるなかで、その機能がどんどん高度に進化し発揮されるようになっていきます。それはあたかも生命の誕生に近いイメージですが、一方でお客様事情から新製品(道具)が作られた後、急速にその商品が普及するとともに、その機能・品質・コストが高まっていくことにも例えることが出来るでしょう。

 しかし、こうしてデジタル化され高度化したモノも、その単体の機能ではその限界が起こってきます。そこで、異質な単体同士での衝突やつながりが起こってきます。はじめは組み合わせといったレベルですが、異質であるだけに反発や拒絶反応も頻繁に起こるはずです。しかし、それぞれのモノがお互いに働きかけあう中で、ある一線を越えた時突然つながりの全体に異変が起こりそれぞれが融合されて、今までと全く異なったアナログな全体世界が生まれてくるのです。デジタルは「一+一=二」の世界ですが、アナログは「一+一=三、四、五・・十」があり得る世界であり、新しい創造が生まれる世界なのです。生物も"オス""メス"の差異が生まれ、その融合としての世代交代によって進化が実現すると考えられるでしょう。

 このデジタルとアナログの相互運動による創造・進化が、ビジネスの世界でも起こっているのではないでしょうか。お客様事情(オーダーメード)から商品(レディメード)が生まれ、高度化するとともにそれぞれの商品が組み合わされる中で、改めてお客様事情にもどることによって、 全く新しい概念の商品が創造されてくるという創造・進化です。

 ですから、この「四つの領域」の横軸のオーダーメード・レディメードの区分けは、新しい価値の創造・進化のプロセスをとらえるための区分けと見ることも出来るのです。(但し、そこプロセスについても、一つのパターンに固定するのではなく様々なパターンがあるよう思います。この創造・進化のプロセスについては、・・・「事業展開プロセス」や「(新規開拓)商談の流れ」にも表れています。)

 

図(『絶対に勝つマトリックス営業』、P.60)

 image32,henkauzumakusijyouzu.gif

 

―コンピューターソフトはどんどん多様化し変化する―

 このようなデジタル化とアナログの運動を通した創造過程の動きは、商品としてコンピューターソフトのパッケージ化とネットワーク化の変遷を考えてみればわかりやすいでしょう。

 過去、コンピューターが企業に導入されはじめた頃には、そのほとんどのプログラムは、ユーザーに合わせたオーダーメードなものでした。しかし時の経過とともに、そうした全くオーダーメードなソフトウェアからどんどんパッケージされたもの、たとえば販売管理ソフト、会計処理ソフトなどといったものが生まれてきました。部分的な標準化が始まったわけです。すると、その標準化された商品同士の競争が起こります。そして、やがてそれは技術の進歩と普及によって価格競争に入っていくことになります。

 しかしそれでは事業としての利益はとれず、商品として行き詰まりがくるでしょう。そこで企業としては新たな顧客満足を創造すべく、新技術の導入とともにユーザー側の事情にもどってソフトウェアという商品のくくり直しをすることになります。はじめは異なるパッケージ商品のつなぎ合わせであったものが、多くの場合には今までの標準品のくくりを一回り大きくした新しい概念のソフトパッケージとして広がっていったように思います。(表計算ソフト→販売管理ソフト→業務統合型ソフト→ネットワーク型<内部→外部>ソフト・・・)

 しかしそうして広がった概念のソフトウェアは、はじめはカスタマイズを中心としたオーダーメードな面が大きかったものが、やはり標準化のレベルがどんどん上がってきます。そこで、さらに大きな概念が新たに生まれてくることになる。ネットワークも単に従来のモノのつながりではなく、ネットワークそのものの新しい概念の世界が生まれてこなければ、本当の意味のネットワークとは言えないでしょう。

 

 ・完全受託開発 ⇒部分的な業務パッケージの開発(ハイスピード) 

  (パートナーシップ)        ⇒単品的なパッケージ販売(価格競争)

              ↓                   ↓

            部分的なカスタマイズ化(エンジニア対応  

                             ↓   

                             ↓   

                                  より大きなくくりのパッケージ化へ

 

 他方、お客様もはじめは素人であったものが玄人になってきます。しかし、全く新しいくくりや概念のソフトウェア(商品)が出てきたときには、素人に戻ることでしょう。但しその素人も、時の経過に合わせて玄人化していくことは目に見えた自然の流れです。

 このように「オーダーメード→レディメード」「素人→玄人」という自然な流れが生まれ、他方でその流れと逆の新たな顧客満足を創造する意図した流れが交わることによって、市場に多様化と変化の大きな渦を巻き起こしていると見ることが出来るでしょう。

 このような動きは決してソフトウェアの分野だけでなく、成熟化と情報化の進む時代には、すべての分野でダイナミックに起こっているのです。ですから、市場はどんどん動くとともに営業の場面も、この『4つの領域』の中を一か所にとどまることなく、どんどん動いていくことになるわけです。

 

最近の補足:

 振り返ると、我ながらずいぶん"変化"についての思い入れの強い文章になっているよう感じます。『世界は・・人生は・・混沌であり変化だ!』というのがそもそも私の基本スタンスですが、固定的なわかりやすい正解を安易に求める最近の風潮に、私なりの強い"違和感"があったことは間違いないでしょう。しかし言っていることは現代のビジネス環境そのものであり、ますますその変化多様化は進んでいるのは間違いないと今も思います。

アナログ的な生物進化(変化多様化)のスピードが、デジタル化によって累積的に加速しているかのようにも感じられ、社会としてその制御が追いついていないのが、この情報化した資本主義社会の現状ではないか。だからこそ、変化多様化するこの世界をどうやったら捉えられるか、さらに真剣に考え抜くことが求められていると思いますし、その変化多様化する世界を論理的にモデル化することで、人間としての主体性を取り戻すことの重要性をあらためて感じる次第です。

ますますマトリックス営業戦略モデルの意義価値を感じています。

 

 (ところで最近の日本の状況は、内向きに委縮したまま、ますますワンパターンの迎合傾向が強くなっているよう感じます。アベノミクス最近の一方的な過熱ぶりにも、むしろこれからの日本経済の急速な転落の予兆を感じてしまうほうが強いというのが、私の正直な気持ちです。但しこれほどの急激なインパクトが起こってこそ、はじめて日本の新たな未来が見えてくるとも言えるでしょう。激動は必然であると受け止め、世間に迎合せずに気を引き締めてあらためて『己の主体性』をしっかり磨き、新しい時代を築く一員として頑張りたいと思います。)

                                  以上

続きは次のブログで・・


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このページは、CBC総研が2013年5月23日 13:55に書いたブログ記事です。

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