販売会社(卸商社、代理店販社)政策とマトリックス営業戦略③

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前回、前々回と「販売会社の役割とその活用」方法について解説してきました。そこで今回は、そのテーマに関連する資料類をご紹介したいと思います。これまでの話とダブっている部分のあることはご容赦下さい。皆さんのご参考になれば幸いです。

 

【代理店、販売店政策のキーワード】

【メーカーとして販売店(商社)を活用する作戦の考え方(従来分野で・・)】

        (某メーカー社長・営業部長様向けレポートの一部修正内容)

1:高いシェア―を持っている強い販売店と組む場合

   2:シェアの低い販売店と組む場合

    <結論として>

【参考(10):代理店政策の本質

―テコの原理―

―これからの代理店・販売店の進むべき道とは―



【代理店、販売店政策のキーワード】

  ①イニシアチブ

・メーカーと販売店のいずれがイニシアチブを持っているかで、その収益性は大きく左右される。イニシアチブを持っている側により大きな収益をもたらすことは間違いないだろう。(メーカーとしては、営業戦略も活動も販売店任せにしない。こちらが、販売店をリードして動かす。代理店販売店としては逆に、自社がメーカーに対してイニシアチブを握れるようにしていく。)

 

  ②エンドユーザー発想

・何よりエンドユーザーを押さえることが営業的にも開発アイディアの収集という点でも、何より大事になっている。(メーカーにとって代理店販売店を中心に考えるのではなく、エンドユーザーとの親密な直接関係づくりを第一の優先にする。同様に代理店販売店としては、メーカーとの関係を優先するのではなく、エンドユーザーとの結びつきを最優先に考える。そのためのメーカー政策である。)

 

  ③鮮明なコンセプト(殺し文句)づくり

              (エンドユーザー、代理店販売店向け)

   ・エンドユーザーに対して、どんな素晴らしい満足を提供したいのか、というメーカーと代理店販売店に共通の理念を鮮明な『コンセプト』として表現する。そのコンセプトを基に、今度はメーカーと代理店販売店が一緒にどのような事業活動を実現していくのか、というビジョンや基本方針を明確にする。(こうした理念の共有が、メーカーと代理店販売店の強いパートナーシップ関係を実現することにつながるだろう。)

 

  ④エリア毎の代理店・販売店戦略の設計

               (地域毎、ユーザー・流通の勢力マップ作り)

   ・カテゴリーや地域によってさまざまなエンドユーザーが想定されるし、様々な販売会社が存在する。どこと組んでどのユーザーを攻めるのか。戦国時代の合掌連衡策と同様、その提携戦略の優劣が問われている。(メーカーとしては代理店販売店のポジション・特性・能力・姿勢の違いを見極め、戦略を組みたてる。代理店販売店としては、競合販売会社との差別化と競争優位策としてメーカー政策を考える。)

 

  ⑤自社、販売店の役割分担の明確化

   ・どんな提携の仕方をするのかも重要である。メーカーと代理店販売店がどんな役割分担でどんな動き方をするのか。独自な連携プレーを設計したい。(マトリックス営業戦略、4つの領域毎の役割を今一度整理して、作戦プロセスに沿ったメーカー、販売店の役割分担とチームプレーのやり方を明確にする。) 

 

  ⑥販売契約、販売目標の共有と追い込み。  

・販売目標も相手任せでは、うまくいかない。社内以上に販売目標の共有化とその実現に向けての追い込みは重要である。(期初、毎月・・販売店の計画に当社商品販売活動を組み込む。そして都度その進捗を確認し、達成へ向けてのアクションを仕掛ける。そうした販売目標達成へ向けたマネジメントの仕組みをつくる。)

 

  ⑦作戦のしかけしくみづくり

(エンドユーザーと代理店あるいはメーカーを動かすための・・・)

   ・販売店での展示会、勉強会

    (販売勉強会、技術、引き合い対応業務勉強会)の実施

   ・ユーザー向け展示会(大・中・小)、勉強会。

                     ユーザー集客イベント展示会等の実施

   ・ユーザー配布用一枚パンフ・提案書、等営業ツールの提供

   ・キャンペーン(ユーザー、販売店、販売店営業マン向け)。プレゼント等

   ・累積マージン体系(販売促進、優先的扱いの推進)・・・・等

 

  ⑧満足実例、成功事例の横展開

・個々の営業活動の成果を組織的に広げていくことは、一営業部隊内でも重要だが、メーカーと代理店販売店の連係プレーでは、特に大事になる。そのためにはできるだけオープンに情報共有されるとともに成功事例の詳細情報がすぐ全体の組織に伝わって横展開が促進される運営が重要だ。(お客様の満足実例の活用と、販売店・営業拠点・営業マンの成功事例の拡大横展開)

・営業マンの成功事例→営業拠点勉強会と拠点の成功事例づくり

                         →全販売店への横展開

 

  ⑨『34層営業体制』

         (トップ、拠点リーダー、優秀営業マン...バックアップ部隊)

   ・相手が企業の場合が大半であり、それも数多く見込み企業へのアプローチを組織的に効率的に進められなければならない。それも大企業相手となればなおさらである。相手企業には担当窓口だけでなく専門部署の責任者やトップ、あるいは現場のキーマンがいる。そうした立場の違うキーマンに対してのチーム連携が重要になるだろう。

   ・一方、メーカーが代理店販売店を動かす場合、組織全体を動かすことが大事になる。トップだけでなく、営業部長所長といった現場リーダー、営業担当者、バックアップ部隊のメンバーといった様々な階層や立場の人達を巻き込んで、自社と一緒になって動いてもらえるようにする。そのためには、当社側でも営業担当者だけでなく、営業リーダー・トップ、あるいは現場のサポート部隊が共通の目的と作戦を共有して動かなければならない。その体制を『3層4層営業体制』という。同様のことは、代理店販売店の対メーカー活動にも言えるはずである。

その他メーカーの代理店販売店政策として・・

   ⑩チーム営業と情報共有化(個人営業ではなく、全社全営業が会社対会社の関係を強化)

  ⑪代理店フォロー活動の効率効果の追及

               (一回一回の訪問目的。雑用フォローの排除・・)

  ⑫期間サイクルでの代理店活動目標、計画づくり

                             (目標達成へのきめ細かい促し、フォロー)

   ・年、3か月目標設定、一か月単位での進捗確認と月次内活動計画化、

                              週単位の動き・・

  ⑬インターネット活用

        (ユーザー会員制度、代理店販売店向けサイトの構築と情報提供)

 

  

【メーカーとして販売店(商社)を活用する作戦の考え方(従来分野で・・)】

        (某メーカー社長・営業部長様向けレポートの一部修正内容)

 

1:高いシェア―を持っている強い販売店と組む場合

  →従来商品に切り替えて当社商品を扱ってもらうことになるが、あえて新しい商   品を扱うだけの販売店にとってのプラスのメリットが必要。

   当社商品が従来取扱商品とバッティングする場合、それを切り替えるのは販売店にとってもリスクがあるので、よほどメリットが大きいか、ユーザーからの強い要望が無ければ、切り替えてもらうことは難しい。

(特に販売店のトップ以上に、現場営業の抵抗が大きい。安定シェア―にあぐらをかいて積極性の欠いている販売店や営業マンも多い。)

  →口座は取れても、競合他社メーカーの当て馬にされるだけになる可能性は大   きい。

  →一方従来商品とバッティングしない周辺商品や補完商品で、普段の営業活動の   延長で販売できるような商品なら、売っていってもらえる可能性はある。

但し、その場合でも、販売店の営業活動計画にタイムリーに組み込んでもらい、こちらから販売活動を強く促していく努力と工夫は必要。

   (年間販売スケジュールに組み込み、キャンペーンを仕掛ける・・・など)

  →その場合、提案や製品説明は、まずメーカーとして見本を示してそのやり方を   見せるが、その後は販売店が自分たちである程度やってもらえる形に持っていく。

 

 2:シェアの低い販売店と組む場合

  →シェアが低いだけに、新しいユーザー開拓や新規提案活動を一緒に進めてもら

   える可能性はある。但し、シェアが低いことから、営業力も弱く、開拓能力や

   提案能力のほとんど無い販売店も多い。販売店の見極めは大事。

   新規開拓や新規提案の出来る販売店と組むこと。

  →その場合でも、トップ、中間の営業リーダー、出来る積極的な営業マンの3層に

   対しての重層的な営業フォローをして、全社的に動いてもらえる体制を作るこ   とがポイントになる。一対一の関係では、大きな動きにはならない。

  →一方で、エンドユーザーに対して従来品と比較した明確なメリットを一目では   っきり訴えられるような商品とツール、仕掛けをつくり、販売店の活動を強力にバックアップ出来るようにする。

(当社のほうで、エンドユーザーへの新規開拓や新規提案の方法を整理し、販売店にそのやり方を教え、その上でエンドユーザーにこちらから直接アプローチしたりキャンペーンを組むなど、新規開拓せざるおれない仕掛けをつくる。)

 

                ↓

 <結論として>

  ・いずれにしても、成熟市場になればなるほど販売店からはいるのではなく、エ   ンドユーザーから発想することが大事。

      エンドユーザーを押さえたほうが、販売のイニシアチブを握れ、利益も取れる。

  販売店から入ると、販売店にイニシアチブを握られて販売店の都合にふりまわ   され、いいなりになって売れないし、売れても利益の出ない状態になりやすい。

  ・エンドユーザーメリットをハッキリ打ち出し、エンドユーザーの現場から切り   崩して成功事例をつくり、その上で販売店を巻き込んでいく方式が求められている。

  ・販売店も勝ち組、負け組の選別がどんどん進んでいる。勝ち組の販売店と組ま  なければ、流通を活用する意味がない。しかしそうなると、メーカーとしてイニシアチブをどうやって握るのかをしっかり組み立てることが重要になる。

販売店の下請けメーカーになってしまっては、全く儲からないことを肝に銘じる。

 

 

最後に私が最近書いた書籍『一年で拠点業績を劇的に飛躍させる!戦略ミーティング』(仮称)から、代理店政策の解説を載せたいと思います。

 

【参考(10):代理店政策の本質

―テコの原理―

・・・代理店や販売店政策では、やり方次第でテコの原理が働いて、急に業績が上がることもしばしばおこるものだ。(もちろん逆のケースも多い。)

その場合大半は「相手側トップとの腹を割った商談」「トップ、中堅リーダー、現場営業担当の三層営業の徹底」「販売店を動かす仕掛け・仕組みの用意(ツール、キャンペーン、インセンティブ等)」「市場開拓のための魅力ある新しい企画や商材の準備」がポイントとなっている。それをうまく組み合わせて代理店を大きく動かすのだ。

しかしテコの原理が働くだけに、逆に代理店任せで業績が急降下することもよくある。

代理店販売店は売りやすい商品を出来るだけ手間暇かけず売りたいと思っている場合が大半と思った方がいい。それが「売りにくい」商品と思われた途端に、全く売れなくなる。だから市場が急激に縮小している時とか、商品が成熟化し始めた時は、メーカーとして代理店販売店任せでは危険と思うべきだろう。

その時は、あえて従来の取引を抜本的に見直して新たなパートナーシップ関係を迫っていくか、自ら直販していくまでの覚悟を持つべきだ。

メーカーと代理店販売店とは戦いのパートナーだ。だからナアナアな関係を断ち切って緊張感を持った真剣勝負の関係をつくってこそ、大きな価値が生まれるはずである。

(但し成熟した縮小市場の中で、従来型の代理店販売店の多くはその存在価値がどんどん低下しており、販売力もあまり期待できない場合が多いことも事実である。)

 

―これからの代理店・販売店の進むべき道とは―

一方あなたが代理店販売店であったらどう考えるべきか?

もはや仲間社会での既得権をいくら主張しても、それは通用しない。従来の与信機能は重要性が低下しているし、ただの御用聞きでは販売機能を発揮しているとは言い難い。物流配達機能だけならば、物流専門業者やアスクルなどのITと物流体制を整備しているトータルロジスティック企業に負けるのは目に見えている。

あらためて新しい時代に向けた新しい差別化された事業機能を構築し直し、磨きあげなければならない。

 

これからの代理店販売店の役割とはつぎのようなものとなろう。

  1)エンドユーザーへのメーカー機能の代行

(多数のユーザー状況を分析して、ユーザーの求める新たな商品サービスを   企画開発する。) 

  2)エンドユーザーと(複数)メーカーとのコーディネート機能

  3)エンドユーザーへのソリューション機能

                (コンサルティング、アウトソーシング等)

だから少なくとも、メーカーに対してしては「こんな新商品開発改良を要求するから、販売はすべてうちに任せろ!」と言えなければいけない。

また、エンドユーザーに対しては、「お客様の○○のお困り事については、すべて私にお任せ下さい。」と言って、一メーカー製品に限らないトータルな視点をもって、顧客にとって最適な提案とその技術サポートが出来なければならない。お客様満足のプロである。場合によっては、そのテーマのコンサルティングやアウトソーシング業となっていくことも十分あり得る。

言いかえれば、多くのメーカーと多くのユーザーの真ん中に位置するポジションをフル活用して、自社独自の切り口の『トータルなお客様満足』を創造し提供できるネットワーク企業になるということである。そこに大きな希望があると私は信じる。

そうした独自な強みを持った企業なら、メーカーもユーザーも頼りにするから、そのネットワークはますます広がり、その広がりがまた自社の強みを倍増するというサイクルが回っていくことだろう。


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                                                       以上

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このページは、CBC総研が2013年5月15日 13:46に書いたブログ記事です。

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