販売会社(卸商社、代理店販社)政策とマトリックス営業戦略①

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 経営環境が激変する中、メーカーとユーザーのはざまにある販売会社の役割が大きく揺らいでいるよう思います。ところが、販売会社のあり方について、きちんと解説した書籍や文章はほとんど見当たらないのではないでしょうか。

そこで今回は、これからの販売会社(卸商社、代理店販社)の役割について私なりに考えていることを紹介したいと思います。まずは「マトリックス営業戦略、4つの領域」のモデルを使った解説からはじめたいと思います。販売会社の皆さんはもとより、メーカー企業様の販売会社の活用にも参考になれればと思っています。

小生の以前の著書の文章から見ていきましょう。

 ※以前の小生ブログ

「マトリックス営業戦略の詳細解説:セグメンテーション④(販売商社の考え方等)」

でも、今後の販売商社のあり方について簡単に述べております、一部重なった部分もありますがご容赦下さい。

 

―『4つの領域』で販売会社の役割を明確にする―

<「コストダウン対応」領域での販売会社の生き残り策>

<「ハイスピード対応」領域での販売会社の営業方法>

<販売会社の営業力を発揮する「パートナーシップ対応」領域>

<「エンジニア対応」領域でのメーカー機能の取り込み>


『絶対に勝つマトリックス営業』202ページより~

         ※は、2013年4月現在のコメント

 

お客様(ユーザー)と商品(メーカー)の間がどんどん短くなり、直接的に結びついていく中で、その間に立つ卸問屋や販売会社の存在意義が根本から問われています。単にお客様と商品の間を介在して、商品をスムーズに流すだけではその役割はどんどん縮小していくことは間違いありません。過去を断ち切り、これからの時代へ向けた新な役割をはっきり作り上げていかなければ明日はないのです。販売会社とメーカーも、これまでのなあなあな人間関係重視の共同体社会の関係から、お互いの強さを活かしてより高い価値を創造していく"事業の輪"の関係に変化しているのです。

 

―『4つの領域』で販売会社の役割を明確にする―

『4つの領域』は営業の4つの役割としてとらえられることは、以前説明しましたが、販売会社もこの『4つの領域』のどこで自分たちは活動するのかをはっきり決めることで、その求められる役割が明らかになるはずです。このことは、販売会社と取引するメーカーにとっても同様です。メーカーとして自社はどの領域で活動し、その商談の流れの中でどこまでを自社が行い、どこまでを販売会社に期待するのかを商品ジャンルごとに、販売会社ごとにはっきりさせていくことが必要になっています。


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<「コストダウン対応」領域での販売会社の生き残り策>

 販売会社の役割をコストダウン対応領域だけに限定するなら、販売会社の営業マンを徹底して削減し、対象とするエリアおいて他社に勝てるだけの効率的、かつ道理的な物流情報体制づくりに徹するべきでしょう。取引メーカーから見ても、その販売会社のデリバリーや与信体制には魅力を感じますし、またそれを期待するはずです。但し、ここでは自分たちのエリアと分野でダントツ、一番でなければ生き残っていけないことを覚悟しなければなりません。

 

 ※最近は、BtoBでの取引でもインターネット通販が普及してきており、コストダウン対応領域での戦いがし烈を極めています。その場合一社での全国的な寡占化が進む一方で、地域密着的に活動している販売会社の多くは苦戦を強いられることになるでしょう。そこで勝ち残っていくには、自身でもネットの利便性を出来るだけ活用するとともに地域密着によるきめ細かなサービスを実現することが何より重要です。但し、そこでもコストや効率を優先することが第一となりますので、ここで述べているように地域でダントツナンバーワンのポジションを確立しなければなりません。

そうなって初めて『きめ細やかなサービス』と『効率性』が両立できることになりますし、シェア一番であることによる地域でのロイヤルティや情報収集力の強みも発揮できるはずです。例えばヤマトの宅急便では、地域単位での拠点数がダントツ一番であり、各現場での地域密着のきめ細かい対応力と情報力が大きな差別的な魅力となって着実な収益構造を作り上げているのは間違いないでしょう。

 

<「ハイスピード対応」領域での販売会社の営業方法>

 それがハイスピード対応領域で活動するとなったら、メーカーとのタイアップによって新製品の効率的な営業活動を推進し、既存市場でのシェア確保と新製品浸透の役割を確実に果たしていくべきでしょう。難しい商品知識の習得や時間のかかる新規顧客開拓での商品説明はメーカー営業に任せ、既存口座を保有する強みを徹底して活かしてメーカー新製品を市場に浸透させていくわけです。

メーカーとしては、彼らに「パートナーシップ対応」や「エンジニア対応」を期待しても難しいと認識しており、自分たちの力で新規開拓と技術対応の活動を推進していかなければならないと思うべきでしょう。販売会社に過剰な期待をしてもうまくいきません。

 

※実際、私のお手伝いした某メーカーの場合、新製品発売に合わせてわかりやすく新製品の魅力を訴える一枚提案書を作成し、販売店営業マンに「ひと声キャンペーン」で、短期間のうちに既存客のお客様へのアプローチを一気に実現させた例があります。

 

※但し、そうした工夫にも限界があることはしっかり自覚しておかなければなりません。ネットでの通信販売方式での取引が広がっていることが、ここでも大きな脅威になるでしょう。この文章を書いている当時と比べて、単なる新製品の紹介という役割だけでは、メーカーにとって販売会社を経由して売っていく価値が無いとさえ言える状態になってきています。なぜなら、大口販売なら直接大手小売店や直接大手ユーザーと交渉すればいいし、数の多い大量の個人や既存の中小ユーザーを対象とするなら、今ではネットでの一斉告知やキャンペーンを通した販売のほうが何よりスピーディだし効率的だからです。

そうなると販売会社の営業としては、新規開拓を進めることがなにより大事となってきます。今でも住宅や保険、あるいはBtoBでの新規開拓には営業マンが大事になりますし、比較的高額の新商品の販売では多くの場合消費財生産財の区別なく営業マンによる説明は欠かせないことでしょう。

但しこの『ハイスピード対応』領域では、手間や時間や専門能力を保有するための教育などは、あまり考えなくともよい領域であり、新規のお客様への人を使った機動的なアプローチに注力し、あとはメーカー営業とのタイアップでいいのではないでしょうか。ファーストアプローチによる有望見込み客の選別までを販社営業担当者が担いその後のきめ細やかな専門対応はメーカー側が受け持つという役割分担が今後も十分考えられるものと思います。

 

<販売会社の営業力を発揮する「パートナーシップ対応」領域>

販売会社がその営業力を発揮して自分たちの存在意義を高めたいと思うならば、「パートナーシップ対応」の領域での活動に重点を置かなければならないと思います。自らの力で新規顧客を開拓し、より深く広い関係を構築していくのです。ユーザーのネットワークとメーカーのネットワークを結ぶコーディネーターの役割であり、両者を巻き込んでいく「パートナーシップ対応」の営業力が求められます。このネットワークが深くまた広くなればなるほど、そのネットワークの価値は累積的に高まることになり、そのコーディネーターとしての存在価値も高まります。この累積的にという意味は、10社なら10社×10社=100の価値ですが、100社なら100社×100社=一万となり、100倍の価値となるということです。今後の販売会社の勝ち残りは、ユーザーとメーカーの両者により深く入り込んで、新たな顧客満足価値の実現をコーディネートする力をどれだけ持てるかどうか。そしてその価値を持って、より広いユーザーとメーカーのネットワークを作り上げることができるかどうかにあると思います。

 

※私は今こそ、この「パートナーシップ対応」領域を主領域にした活動が、販売会社の王道になっているよう思います。エンドユーザーに単品商品サービスを提供するだけでは、もはやネットにはかないませんし、大したお客様満足を提供することもできないでしょう。そうではなく、お客様に今までにない新しい魅力あるお客様満足をしていただくために、ある単品商品だけでなくそれにかかわる環境や設備、装置、備品、導入サポート、サービス、アフターなどトータルにコーディネートして提供するのです。カタログで言うなら、「製品カタログ」ではなく、お客様のやりたいことをトータルにお手伝いする『お客様お役立ち、テーマ別カタログ』が必要ということです。

 

<「エンジニア対応」領域でのメーカー機能の取り込み>

さらに販売会社としてエンジニア対応領域まで自社の活動を広げていくことも考えられます。システムに関連する製品の場合、その販売にあたっては製品単体だけの販売は難しく、システムサポートやメンテナンスが必要になります。そうした技術対応まで販売会社として取り込んでやっていくわけです。ここまで来ると、自社としては「ハイスピード対応」から「パートナーシップ対応」の領域も当然合わせて活動することになり、販売会社といっても、「エンジニア対応」に関わるメーカー機能まで取り込むことになるでしょう。

取引するメーカーとしても、販売活動全般にわたって販売会社に依存することができるため、自社としては新製品開発や製造に全勢力を傾けることができることになります。

 

※販売会社のメーカー機能の取り込みの際に大事なのは、どんなメーカー機能を身に着けるのかという点です。もともとは卸問屋や商社、販売会社が始まりであったのが、メーカー機能をつけて完全にメーカーとしての立場を作っている企業が、日本には数多く見受けられます。その場合、自社製品だけでなく他社品も同様に扱って、より幅広い活動を実現させている場合が多いよう思います。そうした場合製品開発や設計までを自社が行い製造は他社委託するか簡単なモノであれば自社工場を作って自社で製造しているケースもあるでしょう。

一方そこまでは難しいので、検査や導入支援、あるいはアフターフォローなどについての専門技能のノウハウを蓄積して単なる販売会社を超えた専門技術会社となっている場合も見受けます。

どちらがいいかは一概に言えないですが、ここでもエンドユーザーと直接取引して深い関係を構築できる強みを活かし、ユーザー目線での開発や技能向上を目指した活動をすすめるべきと思います。また、その際自社なりの差別性や強みを発揮することを意図して目指すべきでしょう。販売に関する簡単なサポート技術の習得だけでは、他社の販売会社との差別化にはならない場合が多いよう思います。

「パートナーシップ対応」領域での補足説明でも述べましたが、お客様の満足をより高めるための独自な強みをつける、という視点です。

 

このように『4つの領域』を役割としてみることで、販売会社のこれからの事業の在り方も見えてきたわけですが、すべての分野を一つの領域での活動に限定する必要はありません。自社がどの分野で、どの領域を中心に活動するのかという、はっきりした方針を出すことが大事なのです。・・・

 

「マトリックス営業戦略、4つの領域」のモデルから、販売会社の役割と今後目指すべき方向が見えてきたわけですが、実際のオペレーションのあり方について、もう少し説明が必要と思います。

そこで次回は、メーカーにとっての『代理店、販売店政策の考え方』について、以前某メーカー企業様に向けて作成した文章を掲載したいと思います。ご期待ください。

                                    以上

CBC総研のホームページ



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このページは、CBC総研が2013年4月30日 13:48に書いたブログ記事です。

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