営業情報システムの活用とマトリックス営業戦略③パートナーシップ対応と商談プロセス

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営業情報化をマトリックス営業戦略『4つの領域』で解説したブログの第3回目です。今回は、お客様を大きく巻き込み大型商談をものにする「パートナーシップ対応」領域での情報システムの使い方と、商談プロセスに沿って考える営業情報化システム活用について解説しましょう。以前私が執筆した『絶対に勝つマトリックス営業』『こんな営業は今すぐやめろ!』(プレジデント社刊)の文章を基に補足文章を入れたいと思います。

 

◎パートナーシップ対応領域での情報システム

※補足9:

―営業情報化の今後の方向―

※補足10:

・情報システムのモバイル(携帯)化と素人対応化⇒

 ・クラウドの活用⇒

 ・感覚的映像的なアナログ的用途のシステム活用⇒

営業情報化の今後の方向と「4つの領域」

―本当に営業マンはいらないのか―

―レディメード対応は情報化がどんどん進んでいく―

―営業マンは「パートナーシップ対応」領域で、勝ち残れ!―

※補足11:


◎パートナーシップ対応領域での情報システム

 ※「パートナーシップ対応」領域(大型企画提案作戦)とは:

 ・素人のお客様にお客様の事情に合わせながら、いままでにない大きな夢を持った提案を行うことでお客様を巻き込み、大きなビジョン実現へ向けた決断を促す領域。新市場開拓や新規開拓、あるいは革新的な新製品を発売し、これから市場を創造していくといった場合にあてはまる。新規事業をスタートさせた段階の市場の立ち上げ期では、この領域が中心となるだろう。また法人営業におけるトップ商談は多くの場合この領域である。『一緒にやっていきましょう』がキーワードだ。

 

(『絶対に勝つマトリックス営業』P.135~)

 では、最後にパートナーシップ対応領域ではどうなるでしょうか。実はこの領域では、営業情報システムはあまり役に立ちません。なぜならここでは営業マンという「人」が、お客様という「人」を動かすことが一番大事になるわけで、情報システムはそのあくまで補助的な道具にしかすぎないからです。

 といっても、全く必要ないわけではありません。このパートナーシップ対応領域では補助的手段といいながら、これまで述べてきた3つの領域のシステムすべてを活用することができるのです。なぜなら、この領域は他の役割の人たちとの緻密な連携プレーによってゴール(成約―継続化)をものにする活動だからです。チームプレーという点ではコミュニケーションやスケジュールの共有化も大事になるでしょう。

 できれば社内ネットワークを組み、システムや情報の共有化も図っていくべきでしょう。

 

このように情報システムの活用方法は四つの領域で重点を変えていくべきですし、それでこそ営業情報システムを活用する成果も期待できると思います。

 

※補足9:

 上記文章では社内ネットワークという言い方になっていましたが、現在では社外のお客様とのネットワークについても、情報機器の高度化でその交流の質が飛躍的に高まっており、従来とは違った大きな意味を持ってきています。

例えば最近のテレビ番組での話ですが、寝たきり老人のところへタブレット端末を持った営業担当者が訪問し、テレビ会議システムのように現在のお店から店員がお店の商品をお見せし丁寧に説明することで、お客様からご注文をいただくやり方で売り上げを伸ばしている例が紹介されていました。同じ番組では東京の吉祥寺の街頭で、タブレット端末によって三陸の魚市場を紹介して、その場で多くのお客様から新鮮な魚の注文をもらうといった例もありました。どちらも基本とする領域は単品販売の「ハイスピード対応」領域に入るとは思いますが、新たな人と人との交流が前提としてあることから「パートナーシップ対応」領域にも入る、と考えるのも出来ると思います。またそうでなければ、タブレット端末で商品を紹介しただけでは、売り上げには結びつけられないでしょう。タブレット端末を通した店員とお客様とのリアルな"心のこもる"やり取りがやはり大事になっていると思います。

この例は、タブレット端末の活用例としてはまだまだ初歩的な段階であり、今後はもっと「パートナーシップ対応」を意識した活用方法も出てくるだろうという予感がします。

 

―営業情報化の今後の方向―

 今後情報システムはさらに進歩していき、現在の私たちが考えられないほどのことが可能になっていくことでしょう。

「四つの領域」に合わせて考えるなら、横軸のレディメードな対応においては、営業情報化の波はとどまることを知らず、営業マンの活動する範囲はどんどん狭まっていくものと思います。インターネット通販は今後、「コストダウン対応」より、ターゲットと切り口を鮮明にした「ハイスピード対応」領域での活用が主流になってくるものと思います。

 一方オーダーメードな対応の場合には、たとえ情報機器がどれほど高度化しようとも、その範囲は限られ、あくまで補助的な手段にとどまるのではないでしょうか。なぜなら、オーダーメードに人を動かし顧客満足を実現するというヒューマンで創造的な活動は、究極のところ人だけに限られた能力だからです。

 他方、ネットワーク手段としての情報機器の重要性は、ますます高まっていくはずです。それは様々な人や企業が集まる"事業の輪"により現実的な強固な"場"を提供し、"輪"を広め深めていくと同時に"輪"の主体が企業からお客様(消費者)にとってかわられる時代を到来させるものと思います。

 世界中のソフトウェアー開発者が参加する「LINUX(リナックス)」というインターネット上の無料OSの広がりなどを見るなら、私にはその予感は実感と確信になりつつあります。その話は、今後また別の機会に譲ることにしましょう。

 

※補足10:

 私は以前から情報システムの高度化は、効率化という面よりネットワーク化、それもデジタルな情報機器同士のネットワーク化以上に人と人とを結びつけるネットワーク化の可能性に大きな意味があるよう感じていました。その思いが最近より確信に近くなっています。

デジタルな道具としての進歩だけでは、人間社会に貢献する範囲は限られますが、人と人との関係を劇的に変えていくことに貢献するなら、その効果は飛躍的なものとなるでしょう。営業活動が人と人との関係から生まれる役割であることを考えるならば、なおさらそうした人と人の関係を変える情報システムの進化は、営業活動にも大きな影響を及ぼすことは当然です。

この文章のはじめ(このテーマのブログの第一回目)に「最近の情報システムの革新」として4つの項目を挙げましたが、人と人とのネットワーク化という視点でその成果を見ていくなら、情報システムと人間社会の関係に、これまでとは違う大きな質的な転換が起こっているよう感じます。

 

・情報システムのモバイル(携帯)化と素人対応化⇒

人と人との関係に情報システムの介在することが当たり前となってきており、その新しい結びつきのあり方には、新たなビジネスチャンスが生まれてきています。ただしその結びつくあり方によって人間社会をより豊かにする可能性がありますが、一方で歪め疲弊させる可能性もあるでしょう。その情報システムを通した人と人との結びつきの在り方が問われていると言っていいでしょう。社会性が大きいだけに、社会性とビジネス性を合わせた新たな結びつきを開発することがキーとなるよう思います。

 ・クラウドの活用⇒

  大量情報やソフトの自由自在な活用は、人の世界との結びつきを無限大に広げることになります。その広がりをどう活用するのか、それがむしろ大きな課題になってくるでしょう。言い換えれば、これまでの人達が作り上げてきた知恵や経験を情報化によってさらに新しい次元でどう活用するのか、ということでしょう。

 ・感覚的映像的なアナログ的用途のシステム活用⇒

  システムを使って人と人とのつながりが、時間的空間的な制約を飛び越えて、よりリアリティのある形で実現出来ることになっていくでしょう。感覚的映像的なアナログ的用途の活用にはこれからも様々な場面で試行錯誤を続けていくことになるでしょうが、これからが本番と思います。アナログをデジタル化し、デジタルをアナログ化することの進化がどんどん進んでいくわけで、いずれの企業でもその活用に新しい差別化の可能性があり、ビジネスチャンスがあるよう思います。

 

図表:(『絶対に勝つマトリックス営業』136ページ)

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それでは、次に営業マンが活動する現場での情報システム活用の考え方について見ていきましょう。そこで以前の私の著書「こんな営業は、今すぐやめろ!」119ページ~を掲載したいと思います。

 

 

営業情報化の今後の方向と「4つの領域」

(「こんな営業は、今すぐやめろ!」119ページ~)

 

―本当に営業マンはいらないのか―

 インターネットの爆発的な普及に伴い、営業部門の情報化もどんどん進んでいます。

 一部には『営業マンはもういらない』などという過激な意見も出ています。

 確かに、従来の営業のやり方をゼロから見直すには、情報化はいい機会だと思います。私の考える営業の理想像から想定すると、今後営業マンの数は従来の三分の一程度で済むと思っています。但しゼロにはなりません。ゼロどころか、これからの営業マンの従来の営業マンより、はるかに広範囲で、より高い価値を創造していくことになるはずです。平成十二年三月の日経新聞にはこんな記事が載っていました。

 それは大手某マンションメーカーの新築販売物件の約10%が、インターネット経由という内容です。私は、「え、もうそこまでいっているのか」と驚き、その記事を注意深く読みました。するとこういうことです。

 その大手マンションメーカーでは、ホームページで自社の販売中の新築マンションを紹介しており、そこでは外観・間取り・内装はもちろんのこと、窓から見える景色や周辺の環境までも詳しく情報を提供し、ホームページの担当者がお客様の質問に答えてくれて、現地では現場営業担当者と一緒に対応してくれるのだそうです。

 すると、通常の現場見学会(内覧会)等と比べてはるかに成約率が高くなり、効率的な営業が進められるとのことでした。それでも、さすがにインターネット経由だけで購入するお客様はいないそうです。

 営業のスタートは、インターネット等の情報システムを介した対応がお互い効率的ですが、最終的な商談のつめは、やはり人と人が対面し、きちんとした説明を通して、信頼と納得を勝ち得なければうまくいかないということです。

 

 ―レディメード対応は情報化がどんどん進んでいく―

 この実例は、これからの営業情報化の方向をはっきり示しているのではないでしょうか。

 抽象的なレベルで営業情報化を進めてもうまくいきません。自分たちの営業活動のどの部分をどのように情報システムを活用するのか、はっきりさせるべきです。

 "四つの領域"にあてはめてみるなら、横軸の右側のレディメード対応の部分が、どんどん営業マンから情報化にとってかわられていく部分と思います。

 それを商談プロセスにあてはめるならば、はじめと終わりの商談場面、すなわち商談のスタート段階である「ハイスピード対応」の場面と、最後の営業業務処理対応を行う「コストダウン対応」の場面になります。

 つまり先の大手マンションメーカーにあてはめるならば、商談のスタート段階がどんどん情報化が進んでいるということでしょう。もともと、マンション販売という営業の位置する領域は、マンションがたとえ高額であってもレディメード商品であるという点から見れば、「ハイスピード対応領域」が中心であり、一部「パートナーシップ対応領域」も含むことになるため、なおさらピッタリ当てはまったものと思います。

 私は、インターネットという広範囲で効率的な双方向のコミュニケーション手段の発達によって、最も営業活動が影響を受けるのは「ハイスピード対応領域」であり、そこでは今後、営業マンの役割はどんどん減っていくことになるよう思います。テレホンマーケティングのように顧客データベースと商品データベース、さらには購買実績分析を使いこなして、きめ細かくお客様に対応するサービスと、ひと声お客様に商品提案する簡易型営業サポートを主とする業務が主流となるのではないでしょうか。そうした(従来型)営業マンをなくした実例が続々とあらわれています。

 

―営業マンは「パートナーシップ対応」領域で、勝ち残れ!―

 確かに営業戦略としては、どこの領域で戦うかは自由であり、どちらにしても"四つの領域"の場面がある限り、他社に先駆けて情報化を進めていかなければなりません。

 では営業マンはどこで活躍するのか。

 オーダーメード対応であるパートナーシップ対応を中心に、エンジニア対応にかかる領域でしょう。そこではいくらコンピューターが発達しようが、結局は最後に人と人との信頼関係や創造が価値を生む世界だからです。

 あなたが営業マンなら、情報機器を使いこなすことは必要ですが、それはあくまで情報の共有化と効率を高める手段であり、あなたの活動する中心領域は「パートナーシップ対応領域」以外ありません。

 そこで人が人を動かし、新たなものを創造する素晴らしい経験をいかに積んで、その知恵をつけ、実力を高めていけるか。そこにあなたのこれからの存在意義がかかっています。コンピューターでは、人を動かすことはできないのです。

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※補足11:

繰り返しになりますが、商談のスタート場面である「ハイスピード対応」場面と最後の「コストダウン対応」場面では徹底的に情報化を進める。一方で商談の山場に当たる「パートナーシップ対応」場面とお客様の事情に合わせてきめ細やかに専門対応する問題解決の「エンジニア対応」場面では、情報機器をあくまで補助手段として活用し、メインには人の持つ、思い共感や問題解決能力をフル活用するように持っていく。こうしたメリハリが大事と思います。「マトリックス営業戦略」の『4つの領域』のモデルを理解していただけるならば、こうしたメリハリある対応をスムーズに進められることでしょう。

 

                                      以上


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このページは、CBC総研が2013年4月19日 12:34に書いたブログ記事です。

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