はじめに:
ここ最近の安倍ノミクスによる急激な円安株高傾向には、驚くばかりです。
その現象を自分なりに理解しなければ、今後の日本の社会経済をより確かに予測できるわけがないですし、経営コンサルタントとして適格なアドバイスができるわけもないと思えます。そこで浅学ではあるものの、最近の金融状況(経済状況)について私なりの考えを日記的にでもその都度整理してみようと思いました。このブログでは、その最近の文章を載せたいと思います。少しでも皆さんの最近の経済状況の理解にお役に立てれば幸いです。
<現在の日本の金融市場の変化をどうとらえるか・・> 2013.4.9
―変化をとらえるためには―
―最近までの円高局面での要因を分析する―
―速度と加速度、現在地点の関係から、為替のメカニズムを考える―
―現状と今後の考察―
<現在の日本の金融市場の変化をどうとらえるか・・> 2013.4.9
―変化をとらえるためには―
変化をとらえるためには、現在の状況に至っている経緯から影響を及ぼしている要素を捉えて、その強さを分析する。その上で今後その要素がどう変わっていくのか、また新たな要素が加わるとしたら、どんな要素であり、どれだけの影響力を及ぼしていくことになるかの今後の仮説を立てる。さらにその仮説が成り立つような現象が起こってきたなら、それが実際の現実に影響を及ぼし、現実を変えていくのか、注意深く見つめることだ。そうすることで、変化の様がよりリアルなものとして見えてくるだろう。
出来ることなら、その変化の動きを予測し、変化を促すような動きを先回りして行うことで、変化を起こすイニシアティブを握って有利なポジションを得ることを目指したい。
この変化をとらえて動くためのやり方は、普遍的なものであり、(私の「マトリックス営業戦略」もそうした変化を捉える考え方から生まれた理論モデルだが、)経済の変化を捉える場合でも、上記のようなやり方が有効だろう。
そこで今回の日本の急激な円高から円安への金融市場の変化も同様のやり方をあてはめて考察してみたい。
―最近までの円高局面での要因を分析する―
まずこれまでの円高局面を引き起こしていた要因を分析することから始めたい。私の分析は次のとおりである。
本来、日本の低金利状況(A)と、将来への成長期待の低さと財政不安(B)を考えるならば、円安傾向になると考えるのが自然だろう。ところが海外金融不安に対する日本の金融への信頼(X)と日本の金融緩和政策の相対的な弱さ(Y)とデフレ経済状況(Z)、さらには経常収支の黒字と国債価格の安定(S)が日本の金融への信頼(X)にプラスに働くことで、円高傾向に動くエネルギーが強かったと考えられる。
[最近までの円高局面の要因分析]
円安要因・・・◎日本の低金利状況(A)
◎将来への成長期待の低さと財政不安(B)
円高要因・・・◎海外金融不安に対する日本の金融への信頼(X)
(海外でお金を運用するのは、リスクが大きいので、
金利は低いが、とりあえず日本円で持っておくという傾向。)
◎日本の金融緩和政策の相対的な弱さ(Y)
◎デフレ経済状況(Z)
(「購買力平価」にあらわれる貨幣価値の上昇と、
実質金利の上昇)
◎経常収支の黒字と国債価格の安定(S)
による(X)へのプラス要因の影響
それも購買力平価(M)を超えた円高水準にまでなっていたと考えられるわけだから、円高バイアスがそこにかかっていたと思っていい。但しこうしたバイアスがかかっている時は、そのバイアスが行き過ぎると、それを矯正するような逆の傾向のエネルギーがかかり始めて、一方的な傾向が続かなくなってくるものだ。その時はむしろ逆のバイアスが掛かってくると考えたほうがよい。
―速度と加速度、現在地点の関係から、為替のメカニズムを考える―
この点は、速度と加速度それに現在地点の関係でとらえるとわかりやすい。速度は現実に見えるスピードであり、為替の動きそのものととらえてもいい。その速度にどのような加速度がついているのかを捉えることで、次の段階での方向と速度を計算できる。加速度の計算には今後へ向けた期待値と現時点での水準から来るバイアスの修正圧力が考えられるだろう。
プラスの加速度がついているなら、さらに速度が上がっていく。つまり為替にたとえればさらに上昇するということになる。ところが速度はプラスでも加速度がマイナスになっているなら、速度は徐々に低下していくことだろう。徐々に為替の上昇は抑えられ最高点で止まることになる。そこは決して均衡点ではなく、為替の最高点であるから、実はその時点ではマイナスの加速度が大きく働いているのである。そこで次には反転して逆方向へ動いていくことになる。為替では下降に入るということだ。この逆転した状態というのは、マイナスの大きな加速度のエネルギーが掛かっており、いったん最高点で止まってから動き出したら、ゆっくりした変化というより、急激な変化になると考えたほうがいい。そのため加速度がマイナス、すなわち逆方向にかかった状態のまま中間点(均衡点)では速度は止まるどころか、最も速いスピードで逆方向へ進んでいくことになる。為替で言うなら、一気に均衡点と思われる水準を超えて為替はさらに下降するということだ。
実際、為替が均衡点で止まると考えるのは非現実的で、むしろ速度は均衡点を過ぎる当りが、一番動きが増していると思ったほうがよい。慣性の法則のように、そこでは期待値からのバイアスがまだ大きくかかっているということだ。
―現状と今後の考察―
今回の場合、海外金融不安が徐々に解消(X´)されつつある一方で、日本の経常収支が赤字に陥り(S´)、日本の金融への不安が生まれてきたといったバックボーンの変化が為替を動かす大きな前提要因になっている。もはや円高から円安に転換する臨界点が来ていたと言っていい。為替のグラフを見ても、富士山の頂上近くに来ていたことがわかるだろう。急激な上昇を経て、円高は一進一退状況となり、最高峰に再度上昇することなく、その下の近辺で小刻みな変動を繰り返していた、と言える。こうした言い方は、確かにあとからの解釈で言えることという人もいるだろうが、XからX´、SからS´の転換は、円高要因を矯正する大きな状況変化ととらえることは可能だろう。
そこに持ってきて、政権交代による安倍ノミクスの登場によって、(Y)(Z)の大きな修正がはっきりされることは、ほぼ間違いない状況となったわけで、これで円高をもたらしていた4つの要因すべてに対して逆のエネルギーが生じたことになる。
そこで急激な円高矯正が起こったわけだが、それは第一幕で終わるわけではなく、今後第二幕、三幕とつづいていくことになるだろう。第一幕は、当面の円高矯正で、『購買力平価』までは、一気に円高が強制される段階だ。それが2012年11月から3月までの段階であり、一ドル90~95円の水準である。それが黒田日銀総裁の超金融緩和政策の発表とともに、今度は急激な円安へとバイアスがかかっているのが、今日4月9日の段階と言えるだろう。
たぶん100円クラスでの攻防となると思われるが、海外金融不安が解消に向かい安定度を増すようになるなら、その後今年度中に105円から最大で110円クラスにもなるかもしれない。ここまでが第二幕。次には第三幕に入る。
大きな節目となるのは、一二年後のアメリカの金利引き上げだ。それにより、110円から115円、さらには日本の金融緩和によっても経済が回復せず、国債への信頼が揺らぐようなことが起こるならピークで120円以上クラスまで行く可能性もあるだろう。
他方で、日本経済が回復してインフレが起こり始めたとしても、日本の金利上昇は財政負担を考えるなら、政策金利としては低金利政策をとらざるをえず、国債価格の安定と低金利の維持が保たれるはずである。追加緩和政策も十分考えられる。そう考えるならば、円安傾向が今後はより定常化していくものと思われ、その場合の為替水準は、100~110円前後になるのではないかと、私は今の段階では見ている。
以上
今後をご期待ください・・・
(4月10日の記事も続けて掲載します。)
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