営業情報化をマトリックス営業戦略『4つの領域』で解説したブログです。今回は、技術営業が主体となる「エンジニア対応」領域と「コストダウン対応」領域での情報システムの使い方について解説しましょう。以前私が執筆した『絶対に勝つマトリックス営業』(プレジデント社刊)の文章を基に補足文章を入れたいと思います。
◎「エンジニア対応領域」での情報システム
※「エンジニア対応」領域(問題解決型顧客深耕作戦)とは:
補足5:補足6:
◎コストダウン対応領域の情報システム
※「コストダウン対応」領域(営業マンカット、徹底合理化作戦)とは:
補足7:補足8:
◎「エンジニア対応領域」での情報システム
※「エンジニア対応」領域(問題解決型顧客深耕作戦)とは:
・比較的玄人のお客様に対して、専門的な技術技能ノウハウを持って問題解決を図りながら顧客との信頼関係を深め深耕していく領域。専門分野の法人営業に多いケースである。市場の発展段階としては、新規市場の立ち上げ後の比較的まだ市場が限られたクローズドな状態にある、市場浸透期にあたる場合が多いだろう。
では、エンジニア対応領域での情報システムはどうあるべきでしょうか。ここでは商談プロセスの進捗度管理や件数管理は必要であっても、ハイスピード対応領域ほど重要ではありません。
システムを活用して、どれだけエンジニアリング提案力や対応力を高められるかが重要になってきます。そのための一つの方法としては、エンジニアデータベースの蓄積・共有化を図ることが挙げられるでしょう。たとえば顧客へ向けた最新のエンジニアリング情報を情報システムを使って全営業マンにタイムリーに提供させるとか、過去の導入実績、経験の資料(顧客の詳細情報、問題点と解決のポイント、提案内容、プロジェクトの導入手順、スケジュール、対策事項、会議録、完成図などなど)のデータベース化です。
エンジニアリング能力とは顧客の満足を向上させる能力であり、そのためには契約後の導入、活用経験が最も重要なノウハウとなります。このノウハウをデータベースとして共有化することによって、導入経験に裏打ちされたより説得力のある提案を実現させるとともに、まだ駆け出しのエンジニアの教育・育成のツールとしたり、対応レベルの標準化を図ることができるのです。
ある都市開発設計企業ではこのエンジニアデータベースのうち、テーマごとに年間最優秀賞を設定して表彰することによって、その事例をモデルノウハウとして登録するとともに、インセンティブ制度としてその活用を図っています。
また営業マンと社内エンジニア、例えば企画・生産・施工・試作部隊との迅速・緻密な連携プレーの道具として情報システムを活用することも考えられるでしょう。
ある食品機械設備メーカーのS社では、ベテラン営業マンに毎日、日報に重要商談の課題と試作依頼を記入させ、それを情報システムに登録させました。そして経営トップがその日報内容を翌日中にチェック・判断して、その場で試作部門に優先順位をつけた的確な対応を指示することにしたのです。その結果、試作部門の動きがよくなるとともに、営業マンのやる気ががぜん高まったこともあり、数か月後には過去最高業績を記録しました。
入力には最新のOCR(文字認識装置)と画像登録装置を使い、営業マンのコンピューター入力の負担を全くなくしたことも、導入をスムーズに成功に導いた要因になっています。
まさに営業マンと社内エンジニアとの連係プレーを強化させるために、情報システムを活用した好例と言えるでしょう。経営トップが毎日情報をチェックし、指示を出せる体制を作れたことが迅速な対応を可能とし、他社との差別化につながったことは間違いないでしょう。
※補足5:
「エンジニア対応」領域では、専門的なエンジニア対応ノウハウの蓄積とその活用、伝達コミュニケーション、教育といったテーマでの情報システムの活用が考えられるものと思います。その活用のレベルが飛躍的に高度化し広がっているといっていいでしょう。
・クラウド化⇒高度で複雑なエンジニアデータベースを大量に、かつ瞬時に柔軟に活用することが出来る。
・SNS化⇒玄人のお客様との、高度な情報交換が容易になっている。映像、統計資料、図面、その他SNSを使った簡易診断とその結果の伝達等・・・
・情報機器の高度化⇒専門技能を映像を使ってわかりやすくノウハウ化したり、高度なシミュレーションや診断の道具として活用できるようになっている。教育研修等での活用等もどんどん進化している。
こうした高度な情報ツールを縦横に活用するには、最新の成功事例を反映した技術教育が大事になるでしょう。今後は、そうした営業担当者向けの「最新の技術情報提供」「最新テーマの成功事例情報の収集と共有」「最新の高度な技術教育の徹底」といったことのできる体制作りも大事になるものと思います。
※補足6:
不動産、証券といった専門情報をもって多くの商品サービスを取り寄せ分析したうえで購入を決断する場面では、これまで専門の営業担当者や専門家が立ち会い、お客様をサポートすることが当然なこととなっていました。しかしネット販売が広がるにつれ、多くの商品情報をネットで一覧したうえ専門的な知識や資料も同時に検索できるようになってきているため、お客様からするなら営業のサポートを受けるよりも、むしろネットを活用してお客様自身が一人で選択したほうがより的確な判断ができ、効率的で納得性の高い購入が出来る場合が多いよう思います。
これまで専門家としてふるまうことで付加価値をとっていた営業活動の多くが、今後成り立ちにくくなる状況がより広がっていくよう思います。
最近の薬を巡るネット販売の法的な議論も、結局実態としての対面販売の価値が問われていると言っていいでしょう。顧客の立場に立つならば、十分な専門情報(薬の成分だけでなく、具体的な症例や使い方、注意点、リスクの詳細情報)を提供してくれるならば、薬局で調剤師のアドバイスを受けなくとも、十分自分で薬の選択が出来る場合が大半ではないかと思います。
と言ってすべてがネット販売で済むというわけではないでしょう。こうした時代だからこそ、お客様の事情に深く入り込んでお客様がまだ気づいていない本質的な問題を見つけ出しその解決を図ることでより高い成果を提供する、そのことが大事なことは間違いありません。
情報システムの高度化をもって、「ハイスピード対応」領域での活用、つまり素人の営業担当者を即戦力で技術営業に対応できるようにするのは大事とは思いますが、やはりこの人を介した「エンジニア対応」領域での専門ノウハウの活用を進めることが営業活動の差別化につながり、より付加価値を生み出せるものと思います。(高度な技術「付加価値営業」の実現)
◎コストダウン対応領域の情報システム
※「コストダウン対応」領域(営業マンカット、徹底合理化作戦)とは:
・玄人のお客様に対して、従来の製品サービスをレディメードなやり方で提供する場合であり、コストや納期、品質といったデジタルなコストパフォーマンスの差によって製品価値を判断されてしまう領域。成熟衰退化している市場にあてはまるが、現在多くの製品サービスの分野が規格化コモディティ化され、このコストダウン対応領域が拡大している。
一方、コストダウン対応領域なら、どんな情報システムが必要となるでしょうか。この領域はあくまで業務処理が活動の中心となりますから、定型的な業務処理システムが中心です。情報システムの活用を徹底して図るべき領域であり、効率化や合理化による著しい効果が最も期待できるはずです。
受注―納期―在庫照会―回収管理システムといった基幹業務システムとして体系化されたものと、顧客対応・商品問い合わせや見積もり対応の為のデータベースの加工・検索といったコンピューターを簡単な道具として活用するシステムが考えられるでしょう。
※補足7:
情報機器の携帯化によって、データの発生段階から情報処理することで、データの効率
的な一貫した処理が可能となってきています。具体的には顧客現場での発注やデータ修正
などにより、社内業務の大幅な削減や効率化が実現しています。既存ユーザーとのやり取
りであれば、人の介在を廃してネットを介した合理的効率的な取引や簡易な問い合わせ対
応が可能となっています。
※補足8:
また問い合わせセンター等の別部隊による営業フォロー体制が整備され、アウトソーシ
ングも発達してきているため、別部隊でのフォローでも従来では考えられないくらいより
緻密な対応が可能となってきています。そのことで既存客の既存取引に関しては、営業担
当者を経由せずに、安心して任せられる体制が進んでいます。フォローに関してはむしろ
営業担当者以上の対応が可能となっていると言ってもいいでしょう。
(例えば生産財の大手インターネット通販企業では、問い合わせセンターにベテラン技術
者を配置するとともに、対象となる機器や部品を置いて実際に目で見て手で触りながらネ
ット越しにきめ細かい専門アドバイスやサポートが出来るようにしています。)
一方価格競争の商談については、消費者向け販売に限らず、法人相手でもネット情報か
ら合理的に選択されて発注先が決まるような例(ネット通販等)も出てきており、ますます営
業担当者を無くした取引形態が進んでいくと思っていいでしょう。
その場合、コスト競争ばかりではなく、ネットの操作性や情報の網羅性、あるいは問い
合わせ等のサービス対応力なども大きな差となってくるものと思います。法人相手のネット販売では、某社システムの操作性(特に検索と専門情報照会、注文方法の容易性)が他社よりはっきり良かったことから、後発ながら一気にシェアー№ワンになったという例があります。
今後御用聞き的な営業スタイルは、価格志向のつよい合理的な取引を求める分野におい
ては、ほとんどなくなっていくものと思います。
続きは次のブログで・・
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