営業情報システムの活用とマトリックス営業戦略①「ハイスピード対応」

| コメント(0) | トラックバック(0)

はじめに:

「マトリックス営業戦略」は、市場特性の違いとその変化に合わせて、戦略から戦術、先頭に至るトータルな事業活動を進めるための戦略モデルです。

そこで今回は、最近の営業情報化について、その活用方法を「マトリックス営業戦略」モデルを前提に解説したいと思います。

 

―劇的な進化が進む情報システム―

 情報システムという手段の進化は、ここにきて大きな飛躍の段階に来ているよう思います。それはパソコンという、机に 置いて多少とも専門的な技能を習得しなければ使いこなすことができなかった手段から、スマホやタブレット端末という身近にあっていつでも携帯でき、だれでも使いこなせる手段が主流になって普及してきていることが、何より大きいでしょう。その結果、手段としての汎用性が次元の違うものとなって広がっていますし、SNSというWebサイトによる人と人のネットワークも同様に次元の違う広がり方をしています。

一方クラウドを使った外部からの多種多様な情報やソフトの活用が自由自在にできるようになったことも今後より大きな意味合いが出てくるよう思います。さらにはデータ処理やソフトの圧倒的な進歩によりリアルな感覚的映像的な情報まで自由自在に使えるようになっていること、すなわちより現実に近いアナログ的な用途の活用の可能性が急激に広がっていることも、次の大きな飛躍につながることと思います。

 

<最近の情報システムの革新として>

 ①スマホやタブレット端末という身近にあっていつでも携帯でき、だれでも使いこなせる手段の普及

 ②Webサイトによる人と人のネットワークの広がり

 ③クラウドを使った外部からの多種多様なデータやソフトの自由自在な活用の実現

 ④感覚的映像的な、より現実に近いアナログ的な用途の活用可能性の拡大

 

 手段の進化のほうが先に進んでいて、その活用方法がこれから試され開発されてくる段階であり、そこに大いなるビジネスチャンスがあることは間違いないでしょう。

そこで、ここではそうした情報化の手段をどう 活かしていくべきか、手段の活用の考え方について、今一度基本的な考え方に戻って考えてみたいと思います。営業情報化については、以前よりいくつかの私の著書において解説してきました。その内容をベースに考えたいと思います。『絶対に勝つマトリックス営業』(プレジデント社刊)の文章から見ていきましょう。

 

―システムはあくまで道具、目的を忘れるな!―

―営業情報化がなぜ、失敗するのか―

―システム以前に営業活動の見直しを―

◎「ハイスピード対応領域」の情報システム

※補足1:

※補足2:

※補足3:

※補足4:



「絶対に勝つマトリックス営業」 

       (128ページより。※補足は2013年3月現在のコメントです。)

 

『戦略』をテーマに・・・、営業情報システムを「四つの領域」の違いでどのように活用していくべきかについて説明したいと思います。

 

―システムはあくまで道具、目的を忘れるな!―

 従来、情報システムは営業部門において販売管理などに活用されていたものの、営業活動自体にはほとんど活用されていませんでした。それが最近になって営業情報システムとして活用され、すごい成果を上げている例が出てきています。

 システム導入後、過去最高益を出した会社もありますし、六か月未満で1.3倍の売り上げを記録した会社もあります。

 今後、営業活動にも、どんどん情報化の波は押し寄せてくることでしょう。

 私は今後、営業部門での情報システムの活用は必須条件となってくるものと確信しています。しかし一方で、掛け声は大きくとも、ほとんど効果を上げずに闇の中に葬られた失敗例も数多く存在しているのも現実です。

 営業情報システムを導入しさえすればうまくいくと勘違いしてはなりません。営業情報システムはいわゆる道具です。道具であるからこそ、その目的に合った活用の仕方が重要になるのです。

 

―営業情報化がなぜ、失敗するのか―

 なぜ、これまで情報システムが営業部門でなかなか活用されなかったのか。あるいは失敗が多かったのか。 

 提携パターンの業務処理を主な対象とした汎用型システムの考えを、変化対応の人と人が交流する営業活動の分野にそのまま当てはめようとしていることが、一番の大きな問題ではないでしょうか。

 営業はお客様という『人を動かす』のが仕事です。そして『人を動かす』のは、結局人です。

 ところがお客様を動かすのを、あたかも情報システムが代わってやってくれるかのように錯覚してしまっている。パソコンを使って(※今ならおタブレット端末やスマホを使って)、素晴らしいカラー画面のプレゼンテーションをしたからといって、受注確率が上がるとは限りません。「紙」の企画書であっても、それほど変わらないはずです。パソコンはプレゼンテーション手段の一つでしかないのです。あくまで人を説得するのは人であり、その本質に目を向けて営業という仕事の改善をはかる事が大事なのです。

 過去、電卓という素晴らしい道具が発明されました。そして大変便利になりました。それで何が変わったのでしょうか。金利計算など複雑な計算が必要とされる場合ならともかく、私たちの生活を大きく変えることはありませんでした。それは生活自体の改善を目的とした道具ではなかったからです。日常の煩わしい計算を簡単にしただけです。(もちろん、それだけで大変大きな価値がありますが・・)そして、多くの場合、計算する頭脳を退化させることになったわけです。

 

―システム以前に営業活動の見直しを―

 営業情報化に関しても、『人を動かす』のは人しかいないという本質を忘れたら、電卓と同じように、営業マンの退化を促すことになることをくれぐれも忘れないでください。

 営業情報化の成功事例の多くは、成功要因がシステムにあるわけではなく、システム導入が一つの契機となって営業のやり方が見直されています。見直しのため、あるいは新しい営業活動を支援する手段として、有効に働いたのです。営業のやり方をそのままにシステムを導入しても、業務システムでない限りその効果は薄いでしょう。むしろ営業マンがパソコンおたくになって逆効果ということさえありえます。業績向上という成果を上げるためには、お客様を動かすための営業マンの「行動を変える」という視点がどうしても必要なのです。

 それから今一つ、営業情報化にあたって大事なことは、これまで見てきたように、営業状況は日々刻々と変化しており、その変化を前提に変化を取り入れた柔軟なシステムを構築するということです。

 いくら素晴らしいシステムであっても、それが変化を前提としないものであるなら、すぐ活用できなくなってしまうことでしょう。

 ですから、これまで述べてきた営業の「四つの領域」によって、その営業情報システムの活用の仕方を変えなければならないのです。

そこでここでは、まず「四つの領域」に合わせた営業情報システムの活用方法について解説したいと思います。

 ※マトリックス営業戦略『4つの領域』図


 image4matorikusu4zu.gif

 

◎「ハイスピード対応領域」の情報システム

 ※ 「ハイスピード対応」領域(戦略的単品販売作戦)とは:

  ・比較的素人のお客様を対象に、「新しい切り口」のレディメードな商品サービスを提供する場合の領域。

このため商品サービスの魅了があるうちに他社に先駆け、出来るだけスピーディに一気に市場に浸透させていく作戦をとるべき領域である。多くの場合市場の急成長期に当てはまる。

 

ハイスピード対応領域では、標準化された商談プロセスを簡単なステップとして整理したうえ、商談の進行度や商談を通して得た情報をその都度日報などに記入し、それをコンピューターに登録させていくシステムが考えられます。そのことによって商談物件ごとの状況や進行度を管理でき、より精度の高い販売予測を立てたり、営業マンの行動量や課題をつかんだりできるようになります。最も大きな効果は、システム導入によって自社の理想的な商談ストーリーを短期間にきっちり営業マンに身に着けさせることと、その行動を定着させ行動量アップを図ることができることにあります。

 実際、ある化粧品訪問会社では情報システムの導入に当たり、もう一度自分たちの商談方法を見直しました。特に顧客ケース毎の反論対応のセールストークを作り直し、研修を行う一方でキャンペーンを組んで、訪問レディごとの訪問件数、試用件数を競わせたのです。そのことによって、情報システム導入三か月後には、前年比30%アップの業績が実現しました。それまでは顧客からの反論にタジタジになっていた訪問レディたちが、どう対応すべきかを習得し自信を持つことによって、商談件数を飛躍的にアップさせたことが成功要因になっています。提案のための「新しい切り口・コンセプト」を見直し、行動量を増やしハイスピード化させたことと言い換えてもいいでしょう。

 

※補足1:

最近は、タブレット端末やスマホが普及し、営業担当者も外出先から手軽に営業情報や受注情報を入力しやすくなっています。これまでの帰社後にパソコンの前に座って、あらためて日報入力するという手間がなくなり、急速にこうした活用方法が普及しています。 

また提案の際にも、タブレット端末を使えば大量の資料類を制約なく持参でき、さらには動画などのビジュアルな情報も活用出来るようになってきています。 このため業界によってはタブレット端末が営業担当者の必須ツールとなりつつあるようです。

提案ストーリーに沿ってデータをあらかじめそろえて置き、その画面展開に沿って営業マンが商談を進めていくといったことが可能です。紙との違いで言えば、多様な資料を商談状況に応じて活用できること、またビジュアル情報やシミュレーション計算などをその場で活用できることが挙げられます。ハイレベルな活動を標準化できるということです。 

 メリット:

  1)現場入力の容易さ(受注入力、顧客現場情報、商談情報・・)

  2)提案や説明方法の高度化(提案書、補足資料類の高度化)

  3)問い合わせ検索、技術対応やコンサルテーションの支援 等 

但し、こうした活用は、あくまで「ハイスピード対応」領域に適応するやり方と思ってください。先にも述べたように、携帯端末の活用が容易になればなるほど、営業のデジタル化が加速し、営業担当者は人的な魅力を持って人を動かすという本来の営業の目的を忘れがちになってしまうという危険が大きいのです。

 会社から言われたことをやり、お客様から言われたことを聞いて、そのやった行動や結果と聞いた内容を携帯端末に入力するのが仕事、と思っている営業担当者がこのところ増えているよう思えてなりません。それでは単なる作業者にすぎないことになります。

「情報入力が仕事ではない!お客様を動かし、新しいお客様満足を創造するのが営業の仕事」であることをしつこく営業担当者にわからせ、そのことに集中させていく。それが営業リーダーとしては、なにより大事だと思ってください。

 

※補足2:

インターネットの飛躍的発展からスマホ等の携帯端末の革新及びSNSの普及により、人的なネットワークの広がりが次元の異なる段階に入っています。そこでネットとして自社の会員客として取り込んだ顧客のうち、ターゲットとなる顧客の特性を明確にして適格なアプローチを掛ける販売促進方法が進んでいるよう思います。顧客の購買履歴などから『お客様の事情』を憶測し「お客様の事情」にあった提案を一気に仕掛けるのです。情報システムを使った「ハイスピード対応」領域の範囲がどんどん広がっていると言っていいでしょう。ネットを使って、販売に限定することなく、より的確な見込み客の絞り込みや集客といったことが瞬時に効果的効率的に出来るようになっています。

また顧客だけでなく販売店などの協力企業をネットワークで結び、提案書や資料類の販促資料や販売支援情報、さらには随時最新の成功事例や販売実績をネットを介して末端営業担当者まで一気に情報伝達したり、販売相談窓口を設置してきめ細かい販売サポートを進めることで、双方向のコミュニケーションを実現し販売ネットワークの強化を図っているという例も最近では多く見られるようになっています。

 

※補足3:

一方で情報機器の高度化でエンジニア対応の『ハイスピード対応』化もより可能となっています。特に映像的なアナログデータのデジタル化により、これまで経験豊富な技術者でなければ対応できなかったテーマでも、新しい情報機器を活用することで比較的経験の少ない者でもちょっとした教育さえ受ければ、分析して的確な対策まで出来るようになっているケースが増えています。

例えば化粧品販売において肌の診断と的確な化粧品の選択が簡単な機器で可能となっており、化粧品カウンセラーの強い味方になっています。生命保険でも基本的な情報を入力するだけで、現在加入している保険の課題をビジュアルに表示して、より安価で的確な新たな保険を照会してくれる機器なども出来ています。他の分野でも高度な専門ノウハウを蓄積した情報機器を使うならば、素人の営業マンでも「エンジニア対応」の出来る範囲がどんどん広がっていると言えるでしょう。今後は、営業マンも単に売り込みをするのではなく、そうした自社の専門ノウハウによる診断や分析をもとに、お客様の事情にあったサービスや提案の出来ることが必要になっているものと思います。それが簡易な形で出来る環境が整いつつあるということです。

(その考え方は、次の「エンジニア対応領域」での情報システムで解説しています。)

 

※補足4:

またビックデータの活用ということも「ハイスピード対応」領域の営業活動には、効果

的です。これまでの成功事例や購買していただいているお客様の情報を大量に分析することで、対象とすべき可能性のある見込み客の条件が高度に分析でき、より効果的効率的なアプローチが可能になっていくことと思います。現在では小売り業の店頭客への分析が進んでいるようですが、今後は企業対象の営業活動にもどんどん活用されていくよう思います。

                                    以上

 

 続きは次のブログで・・


 CBC総研のホームページ 

 

 

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://cbc-souken.co.jp/blog/mt-tb.cgi/79

コメントする

このブログ記事について

このページは、CBC総研が2013年3月29日 13:21に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「マトリックス営業戦略による営業組織(拠点)の抜本改革事例紹介②」です。

次のブログ記事は「営業情報システムの活用とマトリックス営業戦略②専門対応とコストダウン対応」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

ウェブページ

  • image
Powered by Movable Type 4.261