社長が経営コンサルタントを使う際の注意点③「外部の異物として活用する」

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以前「社長が経営コンサルタントを使うメリットとは」を解説しました。その際、挙げたメリットは次の通りです。

 

  1.部下とは違う、社長のサポート役や『影武者』として活用できる。

   ⇒・社長に代わって、部下達に社長の考え(思いと真意)を浸透させる

     ことができる。

   ⇒・社長に代わって現場まで入り、社員では不足している専門ノウハウを持ったサポートができる。

   ⇒社長の『影武者』になれる。

   ⇒社長の相談役になれる。

  2.外部の専門的なノウハウを即効的に活用できる。

3.外部の異物を入れることで、刺激を与えて波風を立て、

  社内を活性化できる。

4.社員の主体性を高め、社員の育成を促進できる。

5.会社の総合的な組織パワーを高めるとともに、その運営を仕組化できる。

 

そこで前回に引き続き、今回も上記メリットをより効果的に引き出すために社長がやるべきことや注意すべきポイントについて、述べたいと思います。

 今回は、「外部の異物として活用すること」についてです。私のコンサルタントとしてのこだわりが強く、少々しつこくなったかもしれませんが、ご参考になれば幸いです。

 

<社長がコンサルタントを使うメリット>

3.外部の異物を入れることで、刺激を与えて波風を立て、社内を活性化できる。

 

<注意点:3>

  ・異物として社内の反発が強すぎてはいけないが、同質化しすぎてもいけない。活用には、それなりのノウハウがいる。また異物として活用するのは、あくまでも社長みずからである。部下任せではいけない。

 

―「異質」として活用されるための、コンサルタントの心がけ―

前提:異質の役割をしっかり自覚しているコンサルタントを見極める

①社長が社員に向けて、経営コンサルタントへの熱い信認を示すこと

②社長は、コンサルタントに厳しい指摘をお願いする。

(一方で良い点も言ってもらえるようにする。)

③組織の縦と横に経営コンサルタントを入れ、部門間や階層間にあって、

これまで手のついていない重要な問題の解決を図る。

④社内の中核であるリーダーたちにも、

"異質なコンサルタント"を活用するスキルを身に着けてもらうようにする。

 

番外事例:

<冗談か本気か、夢で恨みを晴らすK部長>

<ある実力派T課長の反発・・

           『あんたには、そんな言い方をしてほしくない!』>

<「経営コンサルタントって、『先生』なんだよ!?」>


経営コンサルタントを社内に刺激を与える存在として活用すべきことは、以前の私

のブログ「経営コンサルタントはノルウェーのナマズ」でも述べましたが、その活

用にはそれなりの工夫が必要です。はじめに、コンサルタントの立場で私が思うと

ころの「異質な存在として活用されるコンサルタントの心がけ」から解説したいと

思います。

 

―「異質」として活用されるための、コンサルタントの心がけ―

 そもそも会社(組織)は同質化しやすい体質を持っている。だからその中に異質な者が

入ることで刺激が与えられ、強い緊張感をもたらす意味は大きい。しかし単に異質であればいいかと言えば、そうではない。異質が同質化に対して真摯に向かっていくからこそ、そこに止揚(質的なレベルアップ)が起こり新たな次元の世界が起こってくる。

コンサルタントの役割から言うなら次のようになる。コンサルタントは外部専門家であるだけに、その異質な強みをいかんなく発揮しなければ価値はない。しかし一方的な押し付けばかりでは、社内のメンバーははじめのうちはなるほどと聞いていても、そのうち自分たちに関係ないものとして無視するか排斥するようになるのは必定だ。それでは、何の効果もなくなってしまうだろう。異質な考え方やノウハウを、自分達を変えていくものとして受け止めてもらい、自らの変革のつなげてもらってこそ、大きな成果に結びつく。そうなるためには、コンサルタントは外部でいながら、いや外部であるからこそ、しがらみなくケレンミを持たずに『その会社のために!そしてその会社の皆さんのために!』という姿勢をどこまでも貫くことが大事になる。提供する専門ノウハウも、それができてこその価値と言えるだろう。

無責任なコンサルタントが言うことを社内メンバーの人たちが聞いて、何かに気づき、自分たちのこととして新たな実行をはじめてくれることになるには、その思いや姿勢にほんの少しの疑念も穢れもないことが必要だ。少なくとも私は、そういう気持ちでやってきた。

それでも異質でありながら相手のためにというのは、言うはたやすいが実際にはなかなか難しい。やはり社長の協力?があわせて必要ということになるだろう。

 

そこで次には社長が考慮すべきことや、やるべきことを述べたい。

 

前提:異質の役割をしっかり自覚しているコンサルタントを見極める

 

大前提はコンサルタントの見極めであり、異質の役割をしっかり理解して、その異質にあった言動をとってくれるコンサルタントかどうかである。言うほどそれは簡単ではない。個性や専門ノウハウの高さは必要でも、社長に直言する一方で社内メンバーにもはっきりストレートに問題や課題を指摘して、いやいやながらでも新たな行動に導いていけるだけの、それだけの肝の据わった覚悟を持っているかどうかが、より大事になる。

但し先生顔で一方的に言い募る権威主義のコンサルタントとは違うので、そこは注意したい。やはり求められるのは『お客様企業のため、あんたのため』を貫ける胆力と言っていいだろう。

 

①社長が社員に向けて、経営コンサルタントへの熱い信認を示すこと

他人からの反発を避けたいのは人の常でありコンサルタントも一緒である。特に幹部メンバーからの反発はコンサルティングが続かない大きな理由の一つだ。

社員は社長の顔を見て行動している。だから社長がそのコンサルタントを信任していることを示すことが大事だ。

 

「私は山川コンサルタントを私の分身と思うくらい信じている。だから山川コンサルタントの言うことを、私が言っていると思って聞いてほしい。・・・」

 

こう言っていただくと、恐縮するが本当に助かる。実際そう言った言い方をしていただいた社長さんも何人もいた。その結果なのか社員一人一人が真剣に私の言うことを受け止めてくれ、行動が変わって、はっきり成果に結びついたと思える場合が大半である。

もちろんこう言ったからといって、コンサルタントが社長と同一の立場ではないことは明らかで、だからこそ社長とは違って社員に厳しい問題意識を植え付けることができるのである。

 

②社長は、コンサルタントに厳しい指摘をお願いする。

            (一方で良い点も言ってもらえるようにする。)

 人を動かす極意として、その人の「良い点」を指摘してあげた上で、「気になる点」を指摘し、もっとよくなってほしいという気持ちを表しながら改善方法を提案する。そして勇気づけ新たな行動を促す、というやり方がある。会社も同様のやり方を当てはめることができる。

 社長がはっきり「先生には、厳しいことを指摘していただくためにわが社に来てもらっている。先生!遠慮せずに、どんどんうちの問題点や改善点を言って下さい!」とみんなの前で言っていただくと、コンサルタントとしてとてもやりやすい。そこまで言っていただくと、聞いた側が少々不愉快になっても厳しい言い方が許されるだろう。

 この場合特に指摘するのは、外部の優秀企業や同年代の優秀ビジネスマンと比べた時の違い、世間とのズレだ。いかに自分たちが井の中の蛙になってしまっているか、を自覚させ危機感を持たせるのである。

但し、そうは言っても人は感情で動くもの。なにより誇りを奮い立たせることが大事になる。他方で社長はコンサルタントから外部から見た自社の強みや良さ、さらに社員個人の「良い点」もあわせて指摘してもらうようにすべきだろう。そのことであらためて社員一人ひとりに自社と自分への『自信と信念』を呼び起こしてもらうことができるし、会社としても『自社の強みこだわり』を鮮明にした戦略の組み立てにつなげることができるはずである。

 

③組織の縦と横に経営コンサルタントを入れ、部門間や階層間にあって、これまで手のついていない重要な問題の解決を図る。

 組織は同質化しやすいと言ったが、組織が大きくなり安定化すればするほどセクショナリズムが横行しやすいし、階層間での溝も大きくなる。外部のしがらみのないコンサルタントをそうした組織間にある問題の解決に活用するのも有効な手段の一つだろう。例えば営業部門の支援であっても、開発部門や資材・物流・業務部門にもコンサルタントを関係させ、会社全体としてトータルな視点でどこに問題があるのかをつかんでもらうのである。

 とかく自部門は一生懸命やっているが、他部門が出来ていないためにうまくいかないと思っている者は多い。それも表立って言うと波風が立つので言うのを我慢しているといったケースは、本当に多いようだ。実は部門と部門の連携プレーなど「間」に落ちている問題こそ、その解決が図られるなら大きな成果に結びつくことが多いのだ。

(※日産のカルロスゴーン社長の『クロスファンクショナルチーム』による組織間をまたいだ大改革は有名だが、中堅中小企業で同じことを社内メンバーだけでやるのは難しい。外部コンサルタントを活用することをお勧めしたい。)

 また経営コンサルタントは組織階層や権限とは別の立場なので、どんな階層の人達ともフラットな関係にある。社長ともフラット、新入社員ともフラット。そこで階層間に横た

わるコミュニケーションや連係プレー、あるいは風土上の課題の改革に活用するといったことも十分あり得るだろう。

 たとえば私の営業支援の場合、出来るだけ上司部下が一緒に参加してのプロジェクトを作り、作戦計画の立案から実行方法の検討さらに作戦実行までをより濃密なチームプレーで進められるようにしている。そうすることで、より大きな作戦成果が期待できるだけでなく、スローガンだけでない組織の一体感が醸成されるのである。

また時には、全社全階層に対して組織風土診断のアンケートや社内レビューを実施して、それぞれの部署階層に横たわる組織的問題を洗い出し、その組織的な解決策を提示して、実際の対策の支援を行っている。

こうしたコンサルティングは組織に大きな波風を立てるために、社内メンバーだけでなく外部コンサルタントを活用することが有効である場合が多いのだ。

 

④社内の中核であるリーダーたちにも、"異質なコンサルタント"を活用するスキルを身に着けてもらうようにする。

 多くの場合、外部コンサルタントを導入することにははじめ現場リーダーの多くは反発する。自分たちの事情を知らない無責任な外部コンサルタントに振り回されたくないし、下手をすると自分たちのやっていることのマズイことばかりを社長に報告されてしまうかもしれないという危惧もあるかもしれない。

しかし少し時間がたってくると、外部コンサルタントを使うことのメリットがわかってくる現場リーダーも少しずつ表れてくるものだ。

そのメリットとは次のようなものだろう。

 

 1)外部コンサルタントを使って(自分ではできなかった)新しい部下への教育指導を行うことができる。また自分のリーダーシップを側面支援してもらうことができる。

 2)外部コンサルタントから、今まで自分では気づかなかった大事な指摘を受けたり、専門ノウハウを実践を通して教えてもらえ、自分のあらたな成長に役立てることができる。

 3)外部コンサルタントから、上司や社長に(自分では言いにくい)自分の言いたいことや現場の実情を伝えてもらうことができる。

 

こうした他にはないメリットを感じて積極的に経営コンサルタントを活用しようと現場リーダーにも思ってもらえてこそ、実際のコンサルティングはうまくいくし成果にも結び付く。また経営コンサルタントを活用することを覚えた現場リーダーは、社内外の人達を活用することがよりうまくなり、さらに成長していけることになる。そうした人材の上昇サイクルのまわることが大事で、会社としてより大きな成果に結びつくことだろう。

他方でいつまでたっても外部コンサルタントに疑心暗鬼な者がいる場合もある。そうなるとマイナスも大きい。そうした者がいることは自体、組織や個人が保守的で内向き志向に陥っていることの証だ。

だからこそ社長からは、

「経営コンサルタントを活用するのは君たちリーダーだ。君たちこそ経営コンサルタントを活用するスキルを身に着けて、君たち自身の能力やパワーを何倍にも高め、発揮してほしい」と言ってほしいと思うのだ。

 

 

番外事例:

コンサルタントが異質な波風を立てるというテーマでは、私にはいろいろな思いのこもったシーンが思い浮かびます。そこでいくつかの事例をここで紹介しましょう。

 

<冗談か本気か、夢で恨みを晴らすK部長>

「いやあ、人形の先生にくぎ打ちつけている夢を見ましたよ!」と笑いながら冗談っぽく部長のKさんから言われたことがある。そのKさんはしゃれや冗談が大好きだが根はまじめで一生懸命。そのため、業績低迷に対してどうしても現状延長の発想しかできなくなり、私がそれをしょっちゅう指摘していたからだろう。

「○○を今以上に一生懸命頑張って、○○という業績をめざします。」

「う~ん、それじゃあ難しいと思うよ。もっと○○といったことも考えないと・・」

「ええ、そうなんですけど・・」

「具体的に、一緒に考えようよ・・」

「いや、待ってください。自分で考えたいと思いますので・・」

「そう、じゃあいつまでに?」「いや、その・・・あはは・・」

等といったやり取りがあって、彼にプレッシャーを与えていたのだろうか。

そんなK部長も、自分から新しいことをやり始めて少しずつ成果が現れ出すと、

れまでとは一転して明るくなり、私にもうれしそうにその成果をどんどん報告す

るように変わったことは、よく覚えている。

 

<ある実力派T課長の反発・・

           『あんたには、そんな言い方をしてほしくない!』>

 次にコンサルタントの役割をあらためて考えるきっかけになった、某社実力派のT課長とのやり取りについても、お話ししよう。

彼からは次のようなショッキングな言い方をされたのだ。

 「山川さん。あんたの言うことはカチンとくることもあるけど、我々の気づかないことを指摘してくれるし勉強になることも多いことは確かだ。でもあんたはよく『自分は外部の人間で、責任を持てないんだ』という言い方をするけど、そんな言い方は絶対言ってほしくないんだよ。その言葉一つで、なあ~んだ、という気持ちになってしまうんだ!」

 私は、そういう捉え方をしていたのかとびっくりした。彼はちょっと子供っぽくやんちゃな面が強いものの社内いちばんの実力派課長であり、将来の幹部候補生である。そんな彼から私の言い方に強い拒絶感を示されたのである。

そこで私は、こんな言い方をした。

「何言っているの。その通りのことを言っただけだよ。同じ仲間として一緒にやっていきたいと思っていることは確かだ。だから責任も一緒に持っていたいと言葉で安易に言うのは簡単だけれど、残念ながらそれができない立場だ。むしろそんな無責任な立場だからこそ、外部コンサルタントの価値があると思っている。

 そもそも僕が言いたいことは、君ら社員自らが頑張ってこそ会社はよくなるし、君らの為にもなるということだ。主役はTさん。あんたらなんだよ。コンサルタントは主役じゃあない、あくまで脇役なんだ。」

実を言えば、私は彼からは彼一流の言い方で『仲間になってほしい』と言われたように思えて、半分うれしかったのである。でも、そうした気持ちを押し殺しながら、なんとも複雑な思いで答えたことを今でも鮮明に覚えている。

その後は、Tさんは相変わらず私には辛辣な言い方を繰り返していたし、私もそれまでと同様に、外部だからこそできる新しい企画提案型営業スタイルの導入などを進める一方で社員の皆さんには遠慮なく厳しい指摘やアドバイスをおこなったが、二人にはいつもどこかに共感めいたものがあったと思えるのである。

 

<「経営コンサルタントって、『先生』なんだよ!?」>

 最後に私のアシスタント時代の話をしよう。私が経営コンサルタントになりたての頃は、自分が『先生』と呼ばれることが嫌だった。だからはじめはお客様企業の社長さんはじめ社員の皆さんにも「先生なんて呼ばないでいいです。山川で結構です。」とさえ言っていた。実際コンサルタントを始めた33歳頃は、相手する人たちはほとんど自分よりかなり年上であり、ビジネスマンとしての経験が豊富で人格的にも上ではないかと思えることも多かったのである。

 ところがある企業でかなり深く入って本格的に自分がメインとなってお手伝いを始めた時に、私より12歳上のその企業のY常務さんから次のように言われたのである。

「山川先生。なんであなたは『先生』と呼ばれるのを嫌がるの?」

「ええ、私は先生なんて偉そうな立場でやりたいとは思っていないからです。皆さんと一緒にやりたいと思っているんです。・・」

「ふう~ん、そう。でもあんた、なんか勘違いしていないか。コンサルタントって、先生なんだよ。そうじゃあなきゃあ困るし、それができないコンサルタントなら頼む必要もない。我々はあんたを先生だと思うから言うことを聞くんで、そうじゃあなきゃ聞くわけがないだろう。そう思わないか!」

普段は大変温厚で、部下からは慕われていたY常務さんからの強烈な一発であった。私はその一言で、今までの自分の甘さを痛感した。

「ありがとうごいざいます。わかりました。今からあらためて『先生』になります。」

そう私は宣言し、それから以降「先生」という立場を貫いていくことになったのである。

実際Y常務は私の提案の多くを率直に受け止め、部下のメンバーにもそうした指示を出していただいたために、本当にコンサルティングが順調に進んで、私のアシスタントコンサルタント時代最大の成果をその企業で上げることができた。振り返ってみて、そのおかげで苦しかったアシスタントコンサル時代を乗り越えて、次のステージに成長できたよう思える。Y常務は私にとって恩師にもあたる人だと、この事例を書いていてあらためて思えるのだ。

                                   以上

続きは、次のブログで・・


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このページは、CBC総研が2013年2月 4日 13:35に書いたブログ記事です。

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