社長が経営コンサルタントを使う際の注意点②「専門ノウハウの活用」

| コメント(0) | トラックバック(0)

前々回、「社長が経営コンサルタントを使うメリットとは」を解説しました。その際、挙げたメリットは次の通りです。

 

  1.部下とは違う、社長のサポート役や『影武者』として活用できる。

   ⇒・社長に代わって、部下達に社長の考え(思いと真意)を浸透させるこ     とができる。

   ⇒・社長に代わって現場まで入り、社員では不足している専門ノウハウを持ったサポートができる。

   ⇒社長の『影武者』になれる。

   ⇒社長の相談役になれる。

  2.外部の専門的なノウハウを即効的に活用できる。

3.外部の異物を入れることで、刺激を与えて波風を立て社内を活性化できる。

4.社員の主体性を高め、社員の育成を促進できる。

5.会社の総合的な組織パワーを高めるとともに、その運営を仕組化できる。

 

 そこで前回に引き続き、今回も上記メリットをより効果的に引き出すために社長がやるべきことや注意すべきポイントについて、述べたいと思います。

 今回は、『コンサルタントの専門ノウハウの活用」についてです。私のコンサルタントとしてのこだわりが強く、少々しつこくなったかもしれませんが、ご参考になれば幸いです。

 

<社長がコンサルタントを使うメリット>

 2.外部の専門的なノウハウを即効的に活用できる。

 

<注意点:2>

  ・外部専門ノウハウは、あくまで道具であり、自社に合わせて活用できるかどうかが大事である。期待しすぎず、どれだけ自社のために真剣になってくれ、実情をとらえて柔軟かつ率直に取り組んでもらえるかどうかを見極めること。

 


―会社の実情に合ったコンサルティングができるかどうかを判断する―

経営コンサルタントには、総合型と専門型があって、それぞれの役割が違うことは、以前のブログ「経営コンサルタントはノルウェーのナマズ」で説明した。と言っても最近は(総合型と言いながら)専門ノウハウを磨いて、それを売りにしているコンサルティング会社やコンサルタントが過半を占めるようになっている。コンサルタント業界も成熟し、おおざっぱなノウハウをPRするだけではお客様はもはや関心を持ってくれず、より具体的なノウハウの提供を期待されるようになっているという事情も大きいだろう。 

しかし、それだけに気になる点がある。それは専門ノウハウをレディメードな商品のごとくに思い、単にマニュアルに従って提供すればいいといった姿勢がどこかに見えることだ。お客様にもそうした提供の仕方を望んでいるよう見える場合が多いのも確かである。

確かに、それなら提供するものがはっきりするし、約束通りにそれが実行できたかどうか、お互いチェックしやすいだろう。提供するコンサルタントとしても、ワンパターンのやり方で済むから助かる。しかしそれで大きな成果が上がるだろうか。実はお客様企業に出来る社員が多くいて自分たちで積極的にそのノウハウを活用できる場合、それでもうまくいくことはある。しかしそれは稀なケース。大半は、ノウハウを提供されだけで成果には結びつかず自己満足で終わってしまうことも多いだろう。


経営コンサルタントという名称は広く普及しているが、明確な定義はなく誰でも自

由に使うことができる。但しその専門ノウハウは、机上のことではない。お客様の

現場で発揮してこそ、である。本当に高いノウハウを保有して実際に成果を上げて

いる経営コンサルタントは意外と少ないと思うべきだ。

外部向けの説明や説得がうまいことと実際に経営コンサルティングに入っての中身は決して比例しない。実際には専門ノウハウの高いと思われるコンサルタントよりも、実直でお客様企業の実情に沿って生真面目に取り組み、確実に社員が新たな行動をとらざるおれない状態にまき込むことができているコンサルタントのほうが、成果が上がる場合が多いのだ。

 

経営コンサルタントとは、単なる専門ノウハウを提供する者ではなく、相手の

経営状況をしっかりとらえて分析し(診断)、その事情にあったより高い成果を

上げる支援の出来る者のことを言う。実際、中小企業診断士というコンサルタン

トの国家資格の名称を見ても、『診断』という言葉を使っている。それは、総合型

だろうと専門ノウハウ提供型だろうと変わるものではない。

 だからコンサルティングに入る前には、しっかり会社の実情を確認してもらえるかどうか、またその理解がしっかりなされているかどうか。この点の確認が大事になる。

 

 ※ここまで書いてきて、『経営コンサルタント』と専門分野を持って業務代行する『アウトソーシング業』『専門的な技術やノウハウの提供業』あるいは『教育研修業』との違いをはっきりさせておいたほうがいいようだ。

『アウトソーシング業』はある特定の業務を請負い、契約上定められた所定の結果を上げることまで責任を負う場合が多いだろう。コンサルタントは、実際に業務の提供をするというより、顧客企業が自分たちで行う業務が成果を上げるように支援するのが役割であり、コンサルタント自身が業務を提供するのは、あくまで補助的なことである。コンサルタントは主体者にはなりえず、主体者はあくまでも顧客企業のみなさんである。故にコンサルタントは顧客企業の成果を目指して行動するものの、(原則として)成果に直接責任を負うことはできないことになる。

一方『専門的な技術やノウハウの提供業』の場合、あくまで技術ノウハウの提供までが役割であり、その活用方法のサポートやアドバイスは附帯サービスにすぎない。その場合、顧客企業はその提供される技術ノウハウの中身で価値を図ることになる。コンサルタントの場合は、技術ノウハウの提供はするものの、あくまでお客様がそれを活用して成果を上げるための支援を行うことに、その役割がある。だからこそ、技術サービスの高さ以上に、実際に実行する顧客企業の皆さんをどれだけやる気にさせて本気にさせられるかとか、実行のための体制づくりや運営方法といった、顧客企業の実情に合った具体的な支援内容が大事になるのである。

最後に『教育研修業』との違いであるが、教育研修はあくまで個人の能力アップを図ることが目的であり、一方コンサルティングは顧客企業の業績につながる何らかの成果を上げることに目的がある。その中には社員の皆さんの能力アップも含まれ、教育研修ノウハウも求められる。但しその場合、あくまで顧客企業の実情を踏まえて個人の能力アップが業績成果に結びつくことを意図して行うことになる。教育研修という名称を使っても、あくまでもコンサルティングの一環という位置づけだ。

私の場合も、顧客企業様の社員を対象とした教育研修はよく行っているが、その場合必ず相手企業の事情と経営課題をできるだけとらえた上、その企業にとっての研修の位置づけと求める成果をはっきりさせて、その目的に沿って研修を行うようにしている。それがコンサルタントの行う教育研修と一般の教育研修会社が行う研修との違いだろう。

 

―3つのステップで求められる能力とは―

コンサルティングには、専門ノウハウの提供と言っても『診断』『専門ノウハウを使った対策の組み立て』、『導入実行支援』の3つのステップを踏む。このステップは一回で終わりではなくコンサルティングを通してぐるぐる回すことになるが、それぞれのステップの場面によって求められる能力はかなり異なる。

 そのうち診断が専門ノウハウとして最も高度な能力が求められる。御社の全体を捉える一方で、外部環境や同業他社、仕入れ先の動向、特にお客様をしっかりとらえた上、これからの事業の在り方を仮説として想定したうえで、現在だけでなく今後へ向けた課題と具体的な対策を提案する。それは総合コンサルティングでなくとも必要だ。自分たちの提供する部分がいかに全体に関わっているか、それがわかっていないと診断はできないだろう。

 次には専門ノウハウを使った対策の組み立てということになるが、ここでも自社の実情をしっかり把握できているのなら、その対策内容やスケジュールは大きく異なってくることも十分ありえる。実際に自社で実行するとなれば、さまざまな課題や障害が発生する可能性がある。それを事前に想定して、その障害対策までシミュレーションする、といったことができなければならない。ワンパターンでは済まない。当初の計画通りスムーズにいかない可能性があるからこそ、専門コンサルタントが必要なのだ。

そして実際の実行ステップに入ったら、コンサルタントの立場は微妙になる。なぜなら自分が主体者ではないからだ。スケジュールに沿ってプロジェクトがしっかり進んでいるか、対策の実行内容に問題はないか。事前にノウハウを持ったやり方まで指導していたとしても、あくまでも実行するのは、当事者の会社の皆さんだ。うまくいかないことが多いのが普通である。その時、専門コンサルタントとしてどこまで自分がやればいいのか、やってはいけないか、悩むことも多い。じっとこらえながら、メンバーの皆さんのやる気を促しサポートしながら、成果の出る実行方法を手ほどきで教えて行動を促していく。ほめたり叱ったりだが、最近は『ほめる、勇気づける』ことが多い。この点は上司の場合と一緒である。但し上司と違うのは、強制する権限は持っていないという点である。だからあくまで、皆さんの自主的な行動を促すという立場だ。

そしてそれで結果が出たなら、それはメンバー皆さんの努力の賜物であり、決してコンサルタントの成果ではない。あくまでコンサルタントは黒子役である。それに徹しているコンサルタントのほうが、自分が前面に出てしまいがちな目立ちたがり屋のコンサルタントより、よほど成果を上げることができる。実際のコンサルティングは、地味な仕事が大半だ。

専門分野に特化したコンサルタントは、例えば専門ノウハウをもった頑固なベテラン職人が、そのノウハウをまだ素人の部下たちに教えて、自分の代わりになってもらえるようにする、といった感じでもある。但し忘れてならないのは、職人にとって対象とする素材が大事なように、われわれ経営コンサルタントとっては、なにより「お客様の事情」が大事であり、そこに感情移入できてこそ初めて成果が生まれるということだ。ノウハウを生む源泉もそこにある。

 

―誰が実際にどんなコンサルティングしてくれるのか?―

 意外に見過ごされるのは、実際にコンサルティングをするメンバーの人選だ。

コンサルティングの提案には、これまでのコンサルティングの「成功事例」が紹介されるだろう。確かにそれはコンサルタント会社の活動内容や力量を図る一つの資料とはなるが、必ずしもそれだけで提供してくれる専門ノウハウの質を測れるかと言えば、そうではない。成果を左右するのはコンサルタント会社の保有する専門ノウハウ以上に、実際に携わるコンサルタント個人の力量であり、実際に誰がどれだけやってくれるのか、が大事なのだ。

例えば、「フランチャイズビジネスの立ち上げで、○○の成果があります。」と言って、著名なチェーンの成果実績とともに、その時のツール類や詳細な支援プロセスを見せられたとしても、それで大丈夫ということはない。ツールやプロセスなら、実を言えばある程度は時間をかければ誰でも集められる。むしろ大事なのは、自社の事業特性や状況に合わせてどんなやり方をしていくことが必要なのか。その成功失敗ポイントをしっかりおさえながら、社内外のチームワークをスムーズに進めていけること。それは外部支援を行うコンサルタントの力量次第。だから誰が支援してくれるのかが、より大事になってくるのである。

 

―アシスタントコンサルタントを使いこなす―

大手のコンサルタント会社の場合、契約まではチーフコンサルタントが前面に出て商談していたものの、実際のコンサルティング支援になったら、アシスタントコンサルタントがメインになる場合も多い。その場合アシスタントコンサルタントの潜在能力や姿勢・思いが成果に大きく左右する。アシスタントコンサルタントは未熟なため、コンサルティング会社にある専門ノウハウのツール類やプロセス管理の手法を、そのまま提供するだけに汲々としてしまうケースも時に見受けられる。今は以前と違って、ツール類やマニュアル類がどこのコンサルティング会社もそろっているので、そうした安易なやり方に陥りやすいのだ。

私はアシスタントコンサルタントがメイン担当でもいいと思うが、お客様からすると、その担当者をどう使いこなすかだろう。アシスタントコンサルタントの側では、経験が未熟なだけに常にハラハラドキドキで、極度の緊張の中で支援することになる。一生懸命勉強はするものの、全く追いついていないことがわかっており、自分の現在のレベルと期待されているレベルとの大きなギャップを感じてしまうものだ。そこで逃げて「ごまかし」に陥るか、とことん真正面からぶつかっていくか。使う側からすると、真正面からぶつかっていかせるようにさせるのが、うまいコンサルタントの使い方と言える。

そのためには、単なる標準パターンのツールやマニュアル、スケジュールの提供に満足することなく、常に「何を目的に、どんな成果を求めているのか」「その成果をあげるための自社の課題をどうとらえるか」「その課題に沿って、どんなツール、マニュアル、スケジュールが有効なのか」「そこで考えられる障害事項や成功するポイントはなんなのか」

「では当社では、誰と誰がどういう組織体制や運営方法で、どういうやり方をすればいいのか」という問いをコンサルタントに投げかけ、その答えを共有しながら、一緒にチームとして進められるようにしていくことが大事になるだろう。

(私もアシスタントコンサルタントの時代、以上のような問いを常に投げかけられながら、本当にお客様企業の社長さんはじめ皆さんにうまく使ってもらって、成長できたと思える。)

 

 ―コンサルタントを活用する窓口担当者の人選と体制づくり―

 そうなれば、使う側も単に専門ノウハウを提供してもらうと考えるよりも、フルにその力を発揮させるための工夫や体制づくりが、特に大事になる。特に経営コンサルタントをサポートする窓口担当者の人選はキーだ。形だけの窓口で、現業の仕事に忙しくほとんど会社にもいない若手営業リーダーとか、逆に時間はあるものの保守的でコンサルタントに懐疑的な古参幹部などが窓口になった場合、成果を上げることは難しい。

理想を言うなら、統括責任者には社長、実務責任者には現場の優秀なリーダーがこのプロジェクトの専任になり、さらにアシスタントとして一二名の若手担当者といった体制だ。また関係する部署のトップ責任者も、定期的にプロジェクトの進捗を確認し支援協力できるミーティングの場を設けることも必要だろう。

この体制づくりや運営方法については、次回以降に説明しよう。

 

―コンサルタントによって捉える課題の違いに、気を付ける―

最後にコンサルタントによって、捉える御社の課題は大きく違いことを述べたい。

人間は自分の得意分野から世界を捉えがちであり、それはコンサルタントも一緒である。特に専門特化すればするほど、そうした傾向は強くなる。経営コンサルタントを名乗っていながら、実は専門特化型のコンサルタントは多いので、そこは気を付けたい。

例えば営業分野についても、自社の営業の課題は何か、と問うたら、コンサルタントによって回答はかなり違うはずだ。管理が中心のコンサルタントの場合なら日報週報月報等の管理帳票や業績資料をチェックして、その管理方法とか会議の方法、上司の部下の管理指導の問題点を指摘するだろう。ITコンサルタントならば、営業情報システムの最新の活用方法を説いて、現状の情報システムのレベルでの不備や非効率を鮮明に語ってくれるはずだ。また泥臭く営業マンへの士気向上を図るのが得意なコンサルタントであれば、営業マンの士気の低さや営業リーダーのリーダーシップ不足を熱っぽく語り、その改善が急務であることを訴えることだろう。販促中心のコンサルタントであれは、もちろん販促方法の課題である。

それぞれがその通りであり、改善が求められていることに間違いはないかもしれない。しかしそれが御社にとって最も重要な課題であるかどうか、は一概に言えない。むしろそうした問題が発生する本質的な課題があって、そこを改善しない限り大きな成果にはつながらないことも多い。

そもそも企業の最重要な課題とは、その企業のこれから目指すべき姿があって、そこに向かうためにやるべきことの課題であるはずだ。また企業とはさまざまな組織や個人が複合的に交流し有機的に動いていくことでその強みを発揮している総合的な組織だ。だから単独の問題であるように見えても、本質的であればあるほど複合的な課題が絡んでいる場合が大半である。営業部門の課題も、他部門との関係が大事になっている場合が本当に多いものだ。

そう考えるならば、やはりコンサルタントに自社の課題を考えてもらうことはとても大事だが、専門化したコンサルタントであればあるほど、その捉え方には偏りがあることを踏まえた上で受け止め、改めて総合的な対策を考えるべきだろう。

またそう考えるならば、やはり専門特化型コンサルタントだけでなく、本当に意味での総合型のコンサルタントを雇うことをお勧めしたい。

(※この点も「経営コンサルタントはノルウェーのナマズ」に述べたが、大事なことなので、あらためて強調した。)

                                                      以上

続きは、次のブログで・・


CBC総研のホームページ

                                                     







                                        

 

 

 

 

 

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://cbc-souken.co.jp/blog/mt-tb.cgi/68

コメントする

このブログ記事について

このページは、CBC総研が2013年1月24日 12:26に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「社長が経営コンサルタントを使う際の注意点①「影武者になるために」」です。

次のブログ記事は「社長が経営コンサルタントを使う際の注意点③「外部の異物として活用する」」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

ウェブページ

  • image
Powered by Movable Type 4.261