社長が経営コンサルタントを使う際の注意点⑤「組織パワーを発揮する体制づくり」

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以前「社長が経営コンサルタントを使うメリットとは」を解説しました。

そこで前回に引き続き、今回も上記メリットをより効果的に引き出すために社長がやるべきことや注意すべきポイントについて、述べたいと思います。

 今回は最終回となりますが、「会社の組織的パワーを発揮する運営の仕組みづくり」についてです。ご参考になれば幸いです。

 

<社長がコンサルタントを使うメリット>

5.会社の総合的な組織パワーを高めるとともに、その運営を仕組化できる。

<注意点:5>

  ・コンサルタントを使うならば、その力を一部に限定せず会社全体の組織パワーを高められるように活用したい。そのためには社内の運営体制も合わせて見直すべきだろう。

  言い換えれば、社内全体の組織運営を見直す絶好のチャンスともいえる。


―外部ブレーンを活用するために、組織的な課題を解決する―

―プロジェクトにかかわる人材配置と体制づくり―

 <経営コンサルタントを活用する体制として>

―他部門連係として―

―現場(実行)部隊での推進として―

―オープンな組織運営を実現し、成功事例を横展開させる―

<物流センター改革の横展開>

<営業改革での成功事例の共有・横展開>

最後に:

 


―外部ブレーンを活用するために、組織的な課題を解決する―

 コンサルタントを使うということは、外部ブレーンの力を発揮させる仕組みが必要にな

るということだ。それも一部ではなく組織全体に及ぶ仕組みであれば、より成果は大きく

なるだろう。実際コンサルタントが入ることで、社内の内向きの風土が改善されてオープ

ンな情報交流が活発になり、縦横に柔軟に連携する組織づくりが進んだという例は多い。

その多くの場合、社長がそうした全社的な組織改善をはっきり意図しており、問題を感

じたならば、トップの決断でそのための組織改善の対策をすぐに打っているものだ。だからコンサルティングのプロジェクトが進むにつれて、組織も大きく変わっていくという感覚である。そんな流れができてくると、コンサルタントにとって意図した以上の成果に結びつく。しかしそれはコンサルタントの手柄ではなく、社長の強力なリーダーシップのおかげであることは間違いない。

 

―プロジェクトにかかわる人材配置と体制づくり―

 通常経営コンサルタントが入る場合、組織の規模やプロジェクトのテーマによって異な

るものの、次のような体制がモデルとして考えられるだろう。

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 はじめに社長の片腕及び影武者としての立場である経営コンサルタントが、社長の参謀役として会社を診断して対策案を打ち出し、プロジェクトのあり方まで提案するのがスタートだ。その後社長とコンサルタントとの「ウマのあった」連係プレーが大事になる。

 一方次に組織全体を動かすためのプロジェクト体制づくりが大事になり、特にプロジェクトリーダーを誰にするかで、プロジェクトの80%が決まると思ってよい。何よりリーダーが主体性を発揮してプロジェクトメンバーを動かすのは当然だが、それだけでなく社内の関連他部門や現場の実行部隊への働きかけとか調整が大事になる。またコンサルタント以外の外部ブレーンを活用することも求められるだろう。プロジェクトリーダーには実力と実行力を併せ持つ若手の幹部社員か幹部候補者が適任だ。

経営コンサルタントとしては、このプロジェクトリーダーのサポートが支援全体の50%以上を占めることになるだろう。プロジェクトリーダーとコンサルタントとのお互いを認め合う信頼関係はとても大事になる。対外的にはリーダーが実務的に前面に出てプロジェクトを引っ張る主体者になり、コンサルタントは嫌われ役としての外部専門家という役割を担うのが理想だ。リーダーやプロジェクトメンバーに対しては、ここでも知恵を出す参謀役になることが望ましい。

但しコンサルタントには参謀役だけでなく、社長の命を受けて影武者としてプロジェクトを導くという役割があることは間違いなく、プロジェクトリーダーとコンサルタントの間には、信頼関係とともにお互いの主体性を賭けての何とも言えぬ緊張感が漂うこともしばしば発生することだろう。

またプロジェクトとは別に組織的な調整を図る役として、総務部長や経営管理部長がサポート役として入ることが多い。プロジェクト当事者ではないものの、社長に代わって組織全体の動きを日々把握して、調整をコーディネートするのである。プロジェクトリーダーは実務責任者であり有能なプレーヤーである場合が多いため、得てして周囲のセクションとの調整がおろそかになるケースも時に見受けられる。そうした組織的な動きをフォローする役割だ。

一方経営コンサルタントに対するフォロー役になってもらうこともしばしば発生する。経営コンサルタントは外部の人間のため、社内組織や人事的な課題については十分理解しているわけではない。そのため進め方を誤って微妙で繊細な問題に入り込んでしまい、反発や無視を受けて孤立してしまう、といったことも時に起こることがある。そうした障害にあわないようにしたり、若しそんな障害にぶつかってもうまく回避していけるようなプロジェクトの進め方や根回しの手立てを考えるのも、実は総務部長や経営管理部長の役割である。

 

(私の経験を振り返れば、私{経営コンサルタント}の強力な味方になっていただいた総務部長さんの顔が何人も思い浮かぶ。ここまでしてくれるのか、と思えるほどずいぶん助けられたものであり、今でも感謝の思いが沸き起こる。その方々のおかげでコンサルタントがうまくいったし、継続してお手伝いできた。主体者ではなくあくまでも影武者的な役割であるという共通の立場から、そこにはお互いに何か仕事を超えた同志としての共感があったように思えるのだ。

プロジェクトリーダーとは緊張感を持った信頼関係が大事だが、総務部長とは同志としての共感の関係が生まれるとでも言っていいだろうか。)

 

 社長は以上のような全体の動きを鳥瞰して、うまく人材の配置や運営をコントロールするということになるだろう。特に社内の関連する他部門を動かすにはプロジェクト任せでは難しい。また現場実行部隊にはプロジェクトリーダーをこえる権限のラインリーダーがいる場合が多いので、その実行には社長の強いリーダーシップが必要になる。

 またそれとともにプロジェクトと他部門や現場部門との日頃のコミュニケーションや情報交換が大事になってくる。そのための体制づくりである。

 

―他部門連係として―

 他部門連係では、以前も述べたが、会社の規模が大きくなってくると部門間に横たわって扱いにくい問題こそ、会社の成長発展の障害になっているケースが多い。逆にその解決が図れれば新たなビジネスモデルを創造することになり会社の飛躍につながる場合も多いものだ。だからコンサルタントを活用するのにあわせて、部門間の問題を是非俎上に載せてその解決を図るような仕組みを作ってほしい。

 プロジェクトの進め方としては、他部門連係として次の3つの仕組みを作るべきだろう。

 ①全社幹部会議での推進

・全社各部門の幹部責任者が集まる幹部会議にて、一か月単位で特別にプロジェクトの進捗とともに各関連部門に関するテーマを話し合い、各関連部門での協力事項や改善事項を確認し、その推進を図る。

 ②関連部門現場担当者との連携のためのミーティングの実施

  ・プロジェクトに関する具体的テーマで、関連部門の現場責任者が集まり情報を共有して改善を進めていくためのミーティングを開く。毎週か一週間おき程度の開催が必要だろう。

 ③部門横断のミニプロジェクトの推進

   ・あるいは、共同で進めるべきテーマであれば、関連する部門のメンバーが集まったミニプロジェクトを立ち上げ、その進捗に合わせて都度会合を開き進めていくことが必要になる。そうした部門を横断したミニプロジェクトにより、メンバー同士での部門間での交流が深まり組織の壁が取り払われてオープンな風土がつくられていく場合も多い。

 

 ―現場(実行)部隊での推進として―

 一方、現場(実行)部隊での推進がプロジェクトの本丸であり、その進捗をしっかり進め

るためには、プロジェクト(メンバー)と現場リーダー担当者との役割分担をはっきりさ

せておくことが大事になる。よくあるのは、プロジェクトを立ち上げたために、活動がプ

ロジェクトメンバーだけと勘違いされ、現場とかい離してしまったという場合である。そ

うなっては、はっきり言ってそのプロジェクトは失敗だ。そうならないためにも日頃から

の情報交換とともに、役割分担を明確にして、現場にどのような役割を担ってもらい、ど

んな活動を求めるのかをはっきりさせておくことだ。逆に、何をしてはならないかもはっ

きりさせていくことも重要だろう。

 例えば、営業改革プロジェクトで『新規開拓活動』を推進する場合、プロジェクトメン

バーは、どこまで実際のお客様へのアプローチの支援をするのか、しないのか。また現場

の営業拠点では、どの段階のどこまでを自分たちで行い、どこをプロジェクトメンバーに

サポートしてもらうのか。具体的な作戦のチームプレーの在り方にも関係し、そのことを

はっきりさせることは非常に大事になる。

実際私がお手伝いした例でも、大口顧客の開拓作戦をプロジェクト中心に検討している

最中に、現業部門の営業部長がその情報を聞きつけ、現場メンバー中心に事前準備が整わないまま中途半端に大口顧客アプローチしてしまい、作戦がうまくいかなかったという事例がある。

 

―オープンな組織運営を実現し、成功事例を横展開させる―

 またプロジェクトと現場の活動をリンクさせるためには、現場リーダーが部下を指導して一緒に進めていく形をあらためてつくり、その上で現場での活動の進捗状況や成果が確実に捉えられ、プロジェクトの課題もはっきり誰の目にも見えるようにすることが大事だ。  

そうすることでプロジェクトが現場リーダーを通して組織全体のメンバーを動かすことができるし、その情報を全社的に共有化して横展開することができるだろう。ここでのキーワードはオープンである。成功事例情報もオープンにしてすぐ個人から拠点、拠点からプロジェクトへ、さらに全社へと普及して活用できるようにしていくことが大事になる。

 

 成功事例の横展開として、私のお手伝いした次のような事例がある。

 

<物流センター改革の横展開>

 産業機器商社兼メーカーであるE社の物流センター改善では、私のトータルな改革案に基づいて現場メンバーが積極的に改善を進めた結果、6か月で劇的な成功をおさめた。そこでそのやり方については、あらためて私のほうでマニュアルをつくるとともに資料・帳票を整理しシステムの一部手直しをすることで、他に残る2つの物流センターにも応用して全社的な改革を推進できるようにしていった。成功事例があることからその後の2つの物流センターでの改革はよりスムーズに進めることができた。(もちろん一部の手直しや独自な動きを残すこともあったが、基本的には今までのセンター毎にばらばらな運営方法を見直して、全社統一的なセンター運営が図られた。)

その成果はその後の全社トータル物流情報システムの構築につながり、数年間で倍々ゲームでの売上40数億円から200億円を超えるE社の飛躍的な成長の原動力になったのである。ちなみに5倍近くの売り上げ拡大が図られたにもかかわらず、その間E社の物流人員はほとんど増加しなかった。

 

<営業改革での成功事例の共有・横展開>

 私の場合営業改革では、実際に営業のみなさんが提案活動をして成功した事例については、出来るだけ営業研修を通して営業担当者全員にそのノウハウを共有してもらえるようにしている。みんなには成功事例のフォーマットにその内容を記入してもらい、実際のやり方をシートの説明とロールプレイングでビビットに伝えてもらう。営業活動の場合、単なる書面では成功事例のノウハウを伝えることは難しい。実際のお客様の事情とともに、そこでのセールストークのしゃべり方や聞き方、やり取りの仕方をリアリティもって伝えることが大事になる。正解がなくトライアンドエラーが求められている現在の営業マンにとって、成功事例は何より貴重なノウハウであり宝である。

そうした成功事例をビビットに共有化できる場を営業研修だけでなく、日頃から営業部門の現場につくっていくことが重要だろう。それは営業リーダーの役割だが、会社としてそうした指示をはっきり出したり、そのための仕組みをつくることも必要だろう。

精密部品メーカーのKでは、営業マンに自分の成功事例とその資料類を社内のインタラネットに掲載させ、全営業マンが活用できるようにするとともに、一か月単位で各営業拠点のリーダーが営業ミーティングで成功事例を材題にした営業研修するようにした。その上6か月単位で営業マン全員の投票で、最高優秀賞の表彰までするようにしたのである。そのことで、社内約50名の営業マン全員に対して成功事例にチャレンジする意欲を喚起させるとともに、成功事例をよりスムーズに横展開させることができるようになったのである。

 

最後に:

以上、社長が経営コンサルタントを使う時の注意点を述べてきましたが、私なりの経営コンサルタントへの思い入れが強いかなとも思いました。他の経営コンサルタントの方からすると、ちょっと違うかなと思う部分があるかもしれません。

しかしこうして書いていくと、コンサルティングで成果を上げるためには社長やプロジェクトリーダー、そして関係する皆さんとの「腹を割った」連係プレーが何より大事という思いが強くなりました。またそのためにも、『社長への直言』も恐れずしていく勇気も必要とあらためて思った次第です。

日本のビジネス環境が閉塞しているだけに、会社が飛躍していくためには社長は従来の発想を超えた新たなビジョンを掲げ、社員のみんなを勇気づけて未知のやり方に挑戦させていかなければなりません。社長の悩みや迷いに対して、少しでも光を照らし道を示せるような経営コンサルタントが求められているよう思います。今回あらためて、そんな経営コンサルタントを目指して精進していかなければ、と思った次第です。

御社のご発展をご期待し、そのお役に立てる経営コンサルタントになることをここで新ためて宣言したいと思います。

                   ご一読頂き、ありがとうございました。

                                    以上

 CBC総研のホームページ


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このページは、CBC総研が2013年2月24日 13:11に書いたブログ記事です。

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