社長が経営コンサルタントを使う際の注意点①「影武者になるために」

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前回、「社長が経営コンサルタントを使うメリットとは」を解説しました。その際、挙げたメリットは次の通りです。

 

  1.部下とは違う、社長のサポート役や『影武者』として活用できる。

   ⇒・社長に代わって、部下達に社長の考え(思いと真意)を浸透させることが

     できる。

   ⇒・社長に代わって現場まで入り、社員では不足している専門ノウハウを持ったサポートができる。

   ⇒社長の『影武者』になれる。

   ⇒社長の相談役になれる。

  2.外部の専門的なノウハウを即効的に活用できる。

3.外部の異物を入れることで、刺激を与えて波風を立て、

                        社内を活性化できる。

4.社員の主体性を高め、社員の育成を促進できる。

5.会社の総合的な組織パワーを高めるとともに、その運営を仕組化できる。

 

そこで今回は、上記メリットをより効果的に引き出すために社長がやるべきことや注意すべきポイントについて、述べたいと思います。

 

―ウマのあう経営コンサルタントを雇うべし―

―社長は本気で"世のため人のため"を思うべし―

―"世のため人のため"だからこそ、直言できる!―

番外編:失敗事例「危機感を共有できなかったQ社長との食い違い」

 

<社長がコンサルタントを使うメリット>

   1.部下とは違う、社長のサポート役や『影武者』として活用できる。

<注意点:1>

 ①社長の考え方や価値観と近い、ウマがあう経営コンサルタントを選ぶこと。

 一方で、社長の個人的な欲求を、より大きな"世のため人のため"の野心に高めておくこと。

 

―ウマのあう経営コンサルタントを雇うべし―

 経営コンサルタントが社長のサポート役や「影武者」になると言っても、誰もがなれるわけでもないし、なろうとさえ思っていない経営コンサルタントも少なからずいる。

 そもそも社長業を深く理解した上で、その素晴らしさと辛さに共感できなければ、サポート役や影武者をうまくできないはずだ。だからそうした心情や実力を持った経営コンサルタントかどうか、社長としてはしっかり見極めることが必要になる。

 但し、そうは言っても他人が社長に100%感情移入でき、社長業を社長以上に理解できるわけがないから、そこは感覚的な判断でもかまわない。

 より大事なのは、社長と相性がよく、ウマがあうかどうかだ。経営は合理的な面も重要だが、最後は人と人である。どうも相性が良くない、しっくりこない、という場合には、その経営コンサルタントが社長の意を社員に伝えるなんてことは不可能だし、それ以上に社長の気持ちとは合わない考え方が伝わってしまうことさえありえる。そうなったら、経営コンサルタントを雇うことは、プラスよりむしろマイナスが大きくなってしまうだろう。

だから雇うことを決める前に、出来れば社長と経営コンサルタントが腹を割って話し合える場をどこかで儲けるべきだ。そこで何より大事になるのは、「自分はどんな会社を目指しているのか」であり、その上で「何のために経営コンサルタントを雇うのか」ということを明確に共有することだ。また、社員に対する考え方を共有することも重要だろう。

一方で会社の現状と課題については、事前では社長の考え方をきちんとコンサルタントへ伝えるべきだが、その後実際にコンサルティング支援に入った後で、改めてお互いの考えを都度すり合わせていくことが大事になる。

こうした社長と経営コンサルタントの考え方や価値観の摺合せがいかに重要かということを、社長はくれぐれも忘れないでほしい。

 

実際、私はコンサルティングをしていて、幹部社員とか一般社員の区別なく、多くの社員のみなさんから「なぜ、こんなことをするのか(社長はどう考えているのか)」「社長からこう言われたけれど、・・(どう考えて、どう行動すればいいか)」といった疑問や質問を受けることが意外に多いのである。その時「社長は、○○と言っていたよ」「社長はきっと、○○と思って○○と言っているんだよ!」と言った言い方になる。

またそうでなくとも、私のほうから会社の考え方を社員の皆さんに伝えることは多い。

「当社は、○○という会社を目指していて、現状では○○が大事になっている。だから今回、○○を行って、皆さんには○○を期待している・・」といった言い方である。その時自分にとっては、いかにその会社の社長に感情移入できるかどうかを問われているようなものだ。社長の考えや気持ちとズレた対応では、コンサルティングがうまくいかなくてもおかしくない。だからその時は、本当に社長のつもりになって語ることにしているし、それが経営コンサルタントとしての鍛錬になっているよう思える。

また私のそうした言い方を通して、社員の皆さんに社長の考えと熱き思いを浸透させていくことが、実は会社を改革するためには何より重要だと思えるのである。

 

そう考えるならば、社長と経営コンサルタントのウマが合って、なおかつ随時コミュニケーションをとってお互いの意識や考え方をすり合わせておくことが、何より重要なことがわかるだろう。

 

―社長は本気で"世のため人のため"を思うべし―

 それから大事なことをもう一つ。それは社長の考え方や姿勢を常により高みに持っておくことである。その高みとは"世のため人のため"、すなわちお客様のため、社会のため、そして社員みんなのためを思う、「徳」とでも言っていい心の在り方だ。

(この点は、京セラの稲盛会長が繰り返して言っていることで、「徳」の決して高くない私が偉そうに言えるものではないことは、重々承知の上で言っていると思ってほしい。)

 社長業は他の人と比べてエネルギーがメチャクチャ高くなければやっていけないわけで、個人的な欲求の強い人が多いことはまちがいない。自分の力で金儲けして人生の喜びを得たいと思って社長をやっている人も実際多いだろうし、それでもOKだ。

 但し、「金儲け」イコール自分個人だけの満足の実現では、誰もついてこないし、ビジネスとして成功するわけがない。むしろ、「金儲け」イコール"世のため人のため"にしていくことこそが、ビジネスではないか。いや、もっと言うなら"世の中のお困りごとを解決し、世の中の幸せを増やすこと"ことこそが、ビジネスの存在意義で、そのことが結果として「金儲け」となり、自分もそうだが社員や周りの人たちをより裕福に幸せに出来る、ということだろう。自分が先ではなく"世のため人のため"が先ということだ。

社長が経営コンサルタントを活用しようとするなら、そんな"世のため人のため"という社長の"大欲"をより高め、磨き上げてほしいと思うのだ。そうであってこそはじめて、他人の経営コンサルタントが本気で社長の影武者になれるわけだし、その影武者の言葉で社員の皆さんを覚醒でき勇気づけることができるのだ。

 

「社長は"世のため人のため"、こうありたいと思っているんだよ!

 社長はあなたやみんなのことを思って、こんな期待をしているんだよ!」

 

そうやって社長の"大欲"を代弁するのが、経営コンサルタントの役割ではないか。

 

―"世のため人のため"だからこそ、直言できる!―

一方、経営コンサルタントの社長に対する直言も、そんな"世のため人のため"という思いを共有できてこそ、はじめてできることだ。

 社長という立場は特別である。多くの者はすべての権限を握っている社長が怖い。だから出来るだけ関わろうとしないか、おもねるか。意向に沿わないことや反対意見をするにはよほどの勇気がいる。それが普通で、その結果社長の言うことはすべてイエスになり社長の誤りや勘違いはだれも正してくれないことになっていく。そのことが会社をおかしくしている事例には事欠かない。社長は常に自分が裸の王様になってしまうリスクを感じていなければならない、ということだ。これはけっしてオオバアな話ではない。

 確かに四六時中会社のことばかり考えていて、誰よりも会社のことを思っているのは社長である。自分への自信と信念がなければ、社員を率いていけないだろう。しかしそんな社長と言えども人間であり、間違いや勘違いは十分にあり得る。特に急激に変化多様化する現在の経営環境下、これまでの自分の経験や感覚がズレてしまい、わからなくなってしまうこともあるのが実情ではないか。そんな社長にとって率直な意見や直言ほど貴重なものはないはずだ。

経営コンサルタントだって、社長は怖い。社長の考えと違った提案やアドバイスをしたために、契約が途切れた例も少なからずある。しかしそれでもなお、"世のため人のため"という共通の思いを社長と共有しているならば、心を虚しくして、あえて直言する勇気が持てるというものだ。

そんな共通の思いがもてなければ、経営コンサルタントといえども自己保身に陥り、社長にオベンチャラを言って取り入るお太鼓持ちに堕落してしまうこともありえるし、残念ながらそんな経営コンサルタントも結構多いことは、社長は肝に銘じておくべきだろう。

 

 

番外編:失敗事例「危機感を共有できなかったQ社長との食い違い」

 

ここで私の苦い失敗事例を紹介しましょう。

知人の紹介で人事コンサルティングに入った中堅の老舗優良企業のことです。その創業二代目社長のQさんは最新の経営学にも明るく、初めて私にあった時「当社の社員は、ぬるま湯につかっていて危機感が足りない!ことが一番問題です。」と言っていました。確かに会社はこれまでの安定した事業ポジションに安住し、ここ10年は新しい事業活動がほとんど見られず、めぼしい成果を上げられずに業績が徐々に低迷しつつあったのです。私も事前の社内ヒヤリングを通して、Q社長の言う通り社内メンバーに現状に満足している部分が多く見受けられることは確信しました。そこで対策の仮案を作ったうえで経営幹部が集まった席で、次のように言ったのです。

 

「当社のように安定した優良老舗企業ほど、実はアブナイ!・・ことが多い。環境変化に対応できずに知らぬ間にリスクが増大し、気づいた時には手遅れということだってありうる。会社なんていつつぶれたっておかしくない。つぶれないと思っている企業ほどつぶれる。当社もけっして例外ではない。ここ何年もめぼしい成果が見られないこと、業績が徐々に低下していることに、みなさんはもっと危機感を持つべきだ。これまでの安定志向を払しょくして、是非新しいことにチャレンジしてほしい。」

 私としては、Q社長は当然納得してうなずいてくれると思っていました。ところが、社長の様子を見ると、いつもの温厚な顔が豹変し、いらいらして実に困ったという態度がありありとあらわれていたのです。

まずい、と思った瞬間、Q社長はこう言いました。

「先生、先生もご存じでしょうが、うちは財務がしっかりしているし社員も頑張っているので、すぐに倒産するような会社じゃあありません。優良企業ですよ。そんな社員の不安をあおるような言い方をされては困ります!社員にむやみに新しいことをやられても困るんです。」

「え!?」私は絶句してしまいました。

その時初めて、危機感のない安定志向の体質を作っている一番の原因が、Q社長自身にあることがわかったのです。確かに振り返れば、それまでQ社長とは表面的な打ち合わせはしたものの、腹を割った本音の話をすることはありませんでした。そこで公式な場での社長の言葉を本心から出たものと勘違いしたのです。説得すべきは、むしろQ社長であったというわけです。しかし「覆水盆に返らず」でQ社長との関係を修復することは難しく、会社とのコンサルティング契約はその後間もなく終了することになりました。この結果はとても残念ですが、仕方のないことだったと思います。

(Q社長は私が幹部に向けて言った言葉を社長自身への言葉ととらえて、あたかもご自身が非難されているかのように感じられたのかもしれません。そうならばなおさら、直接Q社長と腹を割ってお話をしたかったと思いますし、それができないままコンサルティングの終了してしまったことが何よりの悔みです。)

 

この事例を振り返って思うのは、社長と経営コンサルタントが共有すべき一番大事なところは、"自社への夢と危機感"ではないかということです。

 

 ・このままではアブナイ!どうにかしなければならない。

 ・この夢に向かって、新しいチャレンジに挑戦したい。

・それをなにがなんでもやっていかなければならない!

そうしなければ生き残れない!

 ・そのためには自社内部の社員だけでは、難しい。

だから外部の経営コンサルタントが自分と同じ気持ちになって、一緒に社員みんなを支援してほしい。(私が社員をリードすることを一緒に支援してほしい。)

 

その社長の気持ちを受けて、経営コンサルティングができる時ほど、大きな成果を期待できるし、実際上がっている、とあらためて思いました。

 

                                    以上

続きは、次のブログで・・。


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このページは、CBC総研が2013年1月10日 11:23に書いたブログ記事です。

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