マトリックス営業戦略の詳細解説:セグメンテーション③(進め方の例)

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前回、前々回と、4つの領域に合わせた実際に考えられる顧客商品のセグメンテーションについて解説してきました。そこで、今回は『土俵の見直し方』すなわち事業セグメンテーションの進め方について解説したいと思います。

そこで小生著書『こんな営業は、今すぐやめろ』(プレジデント社刊)「4.戦う土俵を見直して、抜本改革に踏み込め!(P.273~)」の文章を一部修正して、載せたいと思います。

ベーシックな内容ですので是非ご参考になればと思います。

 

<戦う土俵を見直して、抜本改革に踏み込め!>

 

―戦う土俵を見直す手順―

第一ステップ:現在、自社がどの領域で戦っているのかをはっきりさせる。

自社が大型消費財規格問屋の場合の例

★自社がソフトウェアハウスの場合の例

 

―セグメントの細分類で、営業の再編成を行う―

第二ステップ:現在の領域にどのような課題があるか。また市場の変化を予測して、今後も魅力ある領域であるかどうかを検討する。

★消費財企画問屋にあてはめた場合の課題整理の例

≪零細小売店向け営業活動<ハイスピード対応領域>≫

≪地元有力店向け営業活動(パートナーシップ対応領域)

≪全国大型チェーン店向け営業活動(エンジニア対応)≫

 

 


<戦う土俵を見直して、抜本改革に踏み込め!>


 ・・・「顧客・商品・お客様満足」という三段論法ストーリーで事業コンセプトを鮮明にしたセールストークをつくること自体が、市場のどこで戦うかを大枠で決めることになります。そこで戦う土俵が鮮明になるなら、求められる戦い方が大きく変わることは、「マトリックス営業、4つの領域」で述べました。

 ここで強調したいことは、土俵(領域)を決める、特に従来の自社の土俵と違った土俵で戦うということは、全く新しい自己変革につながるということ、また、競合他社と違った土俵で戦うことは、根本的な差別化につながるということです。

 土俵の見直しは、まさにそのまま営業の抜本改革につながるのです。

 たとえば、文具・事務機器メーカーのプラスの子会社であるアスクルは、文具や事務用品の企業向け通信販売を始めましたが、単に自社製品にこだわらず、コーヒー豆や事務消耗品などにまで取扱品を広げていき、現在では、インターネットでの包括的なお客様との関係づくりを目指しています。コクヨという巨大競合企業との対抗で始めた新規事業が、戦う土俵をはっきり変えることで、他社を圧倒する強みを構築している好例でしょう。

 一見「コストダウン対応」領域の戦いに見えますが、実はお客様企業一社一社にトータルな満足を提供することで、より深い継続的な関係づくりをめざすという点では、「パートナーシップ対応」の領域での戦いととらえてもいいでしょう。

 自分達が現在どの土俵(領域)で戦っており、今後どの土俵(領域)で戦うかを決めることは極めて戦略的に重要なのです。

 

―戦う土俵を見直す手順―

そこで、ここでは戦う土俵を見直す手順を説明しましょう。そのステップは次の通りです。

 

第一ステップ:現在、自社がどの領域で戦っているのかをはっきりさせる。

             ↓

第二ステップ:現在の領域でどんな課題があるか。また市場の変化を予測し、今後も魅力ある領域であるかどうかを検討する。

             ↓

第三ステップ:今後の目指すべき領域をどこにするか。その方針(優先順位)をはっきりさせる。

 

 

第一ステップ:現在、自社がどの領域で戦っているのかをはっきりさせる。

 

領域は得意先・商品・活動内容という3つの見方で区分け(セグメンテーション)

たいと思います。そこではじめに、それぞれの種類での実際に取引している得意先

名・商品名・活動内容を列挙します。次にそれが"4つの領域"のどのポジションに

あるのか、あてはめます。

(具体的には、得意先名、商品はマトリックスで列挙し、その区分けされた個々の象限毎に、どんな活動内容が考えられるか。そこからどの領域の活動と考えられるか、というステップで整理していくことになるでしょう。)

ここでは、消費財問屋(例えば食品問屋、雑貨問屋等・・)とソフトウェアハウスの例をあげてみました。

 

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自社が大型消費財規格問屋の場合の例

 ◎得意先による区分けとしては

  ・零細小売業者 →ハイスピード対応及びコストダウン対応領域中心が望ましい

          ※商談やサポートを標準化して、出来るだけスピーディに手間をかけない対応を心掛けるが、お客様にとっては十分メリットあるようにする。

  ・地元有力店 →パートナーシップ対応中心にエンジニア対応領域まで

  ・大型チェーン店 →エンジニア対応からコストダウン対応まで

 ◎商品別としては、

  ・日常的な消耗品や単品リピート受注 →コストダウン対応領域

  ・新製品発売、企画キャンペーン等の単発提案 →ハイスピード対応領域

  ・大型システム提案、年間包括商談 →大型店向けエンジニア対応領域、

地元有力店向けは、パートナーシップ対応領域中心

 

★自社がソフトウェアハウスの場合の例

  ・パッケージ型価格訴求品 →コストダウン対応

【圧倒的価格差別化によるディファクト化】

但し提携する販売店への包括契約推進は、

パートナーシップ対応領域

  ・パッケージ新規商品(カスタマイズは極力避ける場合)

               →ハイスピード対応領域(販売活動として)

但し提携する販売店への包括契約推進は、

パートナーシップ対応領域

              販売店への営業サポートエンジニア対応領域

   ・中小企業向け、パッケージ型トータル提案商材

                               (多くのカスタマイズを前提の場合)

                      →パートナーシップ対応領域

   ・大企業向け受託開発提案       →エンジニア対応領域

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

―セグメントの細分類で、営業の再編成を行う―

 セグメントをより細かくすることが、営業戦略の見直しにつながる場合もよくあります。市場の多様化が進んでいるため、より細分化された枠組みの組み直しが多くの分野でおこっているのです。顧客商品をセグメントした上で、さらにそのセグメントごとに"4つの領域"のどこに位置付けられているのかを、あてはめていきます。たとえば、ある大手パッケージソフト会社の営業戦略に当たっては、大企業向け、中型・中小企業向け、個人向け3つの得意先区分ごとに、そこぞれの"4つの領域"に細分化してあてはめたところ、より具体的な戦略の見直しが可能となりました。

 また、ある印刷会社の例ですが、社内で営業実践研修を各セクションの全員を集めてスタートさせました。はじめの1,2回は一般的な営業の考え方の勉強であったのでよかったのですが、途中からは部門ごとの個別営業活動の見直しにはいり、どうやったら業績アップを実現出来るかを、実際に検討する段階に入ったところ、あまりにテーマがいろいろありすぎて議論が錯綜し、うまく研修が進まなくなってしまったのです。そこで、官公庁向け、企業向け、流通企業販売媒体向けと、業界と規模で区分けして別々のグループにし、営業のやり方をはっきり区分けした形で行ったところ、うまくいったということがありました。

 ※業界や業態特性と規模での区分けが、法人営業の場合一般的であり、適応性が高いでしょう。

  その場合、それぞれセグメントされた顧客層毎にどんな提案が考えられるかを想定した上で、今一度セグメントを見直すといったことも考えられるでしょう。  

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第二ステップ:現在の領域にどのような課題があるか。また市場の変化を予測して、今後も魅力ある領域であるかどうかを検討する。

 

 セグメンテーションした分野毎に現状と領域から見た課題を整理します。その上

で、その分野が市場として今後どう変化して行くのかを予測し、どんな対策が必要か

までを洗い出します。

 ここでの課題とは、次のような内容です。

 ・市場状況として、過去から現在そして将来へ向けてどうなっていくと予測す

  るのか。

 ・その中で当社はどんな位置付けになっており、一方当社の現在の状況や対応

  方法はどうなっているのか。

 ・そこにどんな問題点があるのか(対応方法自体の問題、その他結果の問題)

 ・そこで今後、当社はどんなことが求められてくると思うか。その可能性や重

  要性は・・。

 

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★消費財企画問屋にあてはめた場合の課題整理の例

 

≪零細小売店向け営業活動<ハイスピード対応領域>≫

【現状】

 ・年々当社との取引額は減っており、販売効率は低下している。小売店自体の販売

  が減少していることが大きい。

 ・将来、多くのお店は淘汰されていく運命だが、伸びていく店も一部あるだろう。

  また、一律に切り捨てるには、当社での構成比はまだ高い。

【領域から見た課題】

 ・ハイスピード対応からコストダウン対応の領域として、あらためて当社がターゲットとすべき得意先と扱い商品を洗い直し、徹底した効率化を図る。それに合わない取引先は今後見切っていくことを覚悟する。

【今後の領域移行】

 ・今後この領域はコストダウン対応に完全移行することは間違いない。そこで今から、営業マンを使わずに対応出来る体制作りを進める。コストの効率化を行えば、他の領域での戦いも有利に展開出来る。また今後成長を期待出来る一部のお店については、パートナーシップ対応領域のお客様と位置付け、包括的な企画提案でお客様を巻き込む(囲い込む)取引先として、はっきり区分けしていくべきだろう。

 

≪地元有力店向け営業活動(パートナーシップ対応領域)

【現状】

 ・店によっての差は大きい。資産をもっている店は多いがはっきり二極化している。大手量販店との戦いに勝てるところについては、テコ入れをすれば、まだ伸ばせるところも多いのではないか。後継者の有無やお店としての実力の見極めも大事になる。但し有力店だけに、従来取引先との関係が強く、なかなか新規での取引は難しいと考えるべきだろう。

【領域からの課題】

 ・有力店一社毎に経営状況や店頭現場、競合状況を今一度しっかり調査分析し、個々のお店にあわせた狙いのはっきりさせた企画提案を、年間スケジュールの季節シーズンに合わせて、競合他社に先駆けて行えるようにする。

 ・単品提案ではなく、売り場の総合提案であり、営業マンまかせにせず、支店長や本部スタッフが一緒になった全社チーム営業を進める。

【今後の領域移行】

 ・今後有力店が全国チェーンと対抗してそのポジションをしっかり確立していく方向と、競争に負けて低迷し衰退していく方向にはっきり分かれるだろう。前者の場合、地元へのこだわりを強めながら、独自の強みを発揮した動きが考えられる。そこで一店一店の動向を踏まえて、どことどんなパートナーシップを組むのか、戦略化する必要がある。

・また営業対応も企画提案を中心にするものの、コスト競争、新規単品提案、個別店舗支援等のそれぞれの場面に応じた営業対応ノウハウを構築する必要がある。先方の独自な動きをサポートできるこだわりの提案が必要になるだろう。そうでなければ、有力店であればある程、当社が逆に選別されてしまう可能性が高いことになる。

 

≪全国大型チェーン店向け営業活動(エンジニア対応)≫

【現状】

 ・まだ当社の実績は少なく、十分攻め切れていない。しかし一社の取引高は大きく、今後ここを攻めていけなければ、大きな飛躍は望めないだろう。競合も多数参入しており、下手をすると価格競争に巻き込まれる可能性も大きい。

【領域から見た課題】

 ・なにはともあれ、新製品や新しい販促方法等の当社の専門的な強みがはっきり示せる提案が必要になる。それも、モデル店での成功事例をまずつくり、そのノウハウを前面に打ち出した実証的な提案が望ましいだろう。

 ・そのためにも、事前に社内外のメーカーとのタイアップや技術部隊も加わり、ターゲットをはっきりさせた事前調査・分析を行い、競合他社とは、明確に差別化出来る提案の中身を作りあげる。

 ・モデル店での成功事例をすぐに他社にも横展開できるように、全社バックアップ体制もつくっておきたい。

 【今後の領域移行】

 ・次のハ―スピード対応の場面を想定して、いずれにしても、全国大型チェーン店の場合はコストダウン対応が前提となるため、全社的なコストダウン体質を作ること。また、協力メーカーにもそうした指導を進める。さらに提案書フォーマットの標準パターン化トバリエーション化も進めるべきだろう。

 ・一方、パートナーシップ対応としては、大型チェーン店とタイアップした共同開発や、共同販促等の企画が出来る体制づくりを12年で作りあげていきたい。

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以降、次回へ・・。

                                                         以上

 CBC総研のホームページ




 

 

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このページは、CBC総研が2012年12月12日 13:37に書いたブログ記事です。

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