マトリックス営業戦略の詳細解説:セグメンテーション②(事例紹介)

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はじめに

前回、マトリックス営業戦略4つの領域のセグメンテーションについて、顧客軸と商品軸にわけて、考えられる要素を解説しました。今回はさらにいくつかの業種に実際にあてはめて見ていきたいと思います。

 

(以下の文章は、小生の「絶対に勝つ、マトリックス営業」〈プレジデント社刊〉の一部を修正したものです。文章は少々古いですが、考え方は現在と変わらないと思いますので、皆様のご参考になれば、幸いです。)

 

◎「4つの領域」と市場のセグメンテーション(P.121~)

―キャノンの複写機事業の整理に応用された事例―

―情報システム関連商品、サービス分野でのセグメンテーション―

―流通分野のセグメンテーション―

―売り方の違いによるセグメンテーション―

-宝飾店でのユーザー、商品セグメンテーション―

―シルバーマーケットのセグメンテーションの応用―

追伸:「産業の発展過程」と、

マトリックス営業戦略バリエーション「事業展開戦略」の関係

 

◎「4つの領域」と市場のセグメンテーション(P.121~)

 (「絶対に勝つマトリックス営業」の文章一部修正より)

 

次に「4つの領域」の考え方を、様々な市場のセグメンテーションに応用した事例を見ていきたいと思います。

 

―キャノンの複写機事業の整理に応用された事例―

「私はまずキャノンの事業機戦略を立てることにした。それまで事務機全体の事業戦略がなかったため・・・(中略)

 X軸に単体型からネットワーク型という方向を取り、Y軸にオフィス型からパーソナル型への方向を取り、この二つの軸を交差させて、それぞれの製品がどの位置にあってどちらに進むのか、(その図から)一目でわかるようにした。・・(その結果、昭和)54年、完全な卓上型で画像性と高速性がともに優れた複写機・・が完成し・・」(日本経済新聞:平成9321日付け「私の履歴書」山地敬三氏元キャノン社長)

 正直いって私はこの記事には驚きました。私がこの「4つの領域」の考え方に行き着く何十年も前に、ほぼ同様の考えをしていた人(会社)があったのです。単体型をレディメード、ネットワーク型をオーダーメード。オフィス型を経験度の高い玄人相手、パーソナル型を経験度の低い素人相手(必ずしもそうは言えませんが、機能の複雑性を要求されず、経験の要らない簡単な操作性が重視されると言う点では近いものがあります)と読み替えればいいのです。非常にすっきりしたわかりやすいセグメンテーションと思いますが、それが出来たことによりその後のキャノンの発展につながった、と述べられていました。さすがの一言です。

 

 ―情報システム関連商品、サービス分野でのセグメンテーション―

 この分野ではハード・ソフト・サービスと商品の形態がわかれ、ソフトも先ほど見てきたようにオーダー対応型とパッケージ型になり、その上でハード・ソフトともダウンサウジングがどんどん進んでいきながら、他方統合型パッケージが隆盛になるなど、多様化、変化の激しい分野です。

 それだけに、この4つの領域の考えを応用するなら、比較的整理しやすいのではないでしょうか。例えば縦軸をシステム先進ユーザー後進ユーザーにわけます。横軸はそうした顧客に、カスタマイズを前提として統合型パッケージやネットワーク商品といった、かなりオーダーメードな対応を前提とするものを提供するのか、パッケージ商品やハード商品、あるいは標準サービス等といった一律対応で済むものを提供するのかにわけるのです。また後者の一律対応で済む物を提供する場合、それが新規発売や自社独自で差別性がある場合には、相手が玄人素人に関係なく「ハイスピード対応」の領域、そうでない場合には相手によって異なるものの相手が素人から玄人になればなるほど、「コストダウン対応」の領域に入ると考えればよいと思います。

 

 ―流通分野のセグメンテーション―

一般小売店から、大型チェーン店まで様々な業態を対象とする流通業の場合、比較的そのルートにあわせた営業体制を取っていることと思いますが、ルートを「4つの領域」の違いとしてとらえるなら、中小小売店ルートが「ハイスピード対応」領域、地元有力店が「パートナーシップ対応」領域、大型チェーン店がやはり専門家相手となって「エンジニア対応」領域となるでしょう。「コストダウン対応」は本当に超零細な小売店向けで、あちらから来ていただく現金問屋方式とか、自社での通販での直接販売等があたるでしょう。

 

―売り方の違いによるセグメンテーション―

 またこうしたルート別の分け方ではなく、売り方による区分けも可能です。

新製品発売時や全社一斉販売促進等一気に販売攻勢をかける場合は、「ハイスピード対応」領域。新規顧客開拓(特に有力見込み客)を進める場合には、お客様から信頼を勝ち得ながらお客様をまきお込み一緒に手を組んでいくわけですから、「パートナーシップ対応」領域。既存客への深耕として、従来の小売店に新規提案しながら成功事例を作り、その自社の売り場を拡げていくなら、やはり専門的な強みと成果の実績が大事になりますから「エンジニア対応」領域。最後に、日々の雑務対応は「コストダウン対応」領域。

こう区分けすると、スッキリそれぞれの場面での営業活動のポイントも整理できるでしょう。こうした区分けは流通業だけでなく、一般法人営業でも一緒です。「4つの領域」を個人企業(ハイスピード~コストダウン対応)中小企業(パートナーシップ対応)、大企業(エンジニア対応)に区分けする。あるいは新製品発売(ハイスピード対応)、新規開拓(パートナーシップ対応)、開拓深耕(エンジニア対応)、日々業務(コストダウン対応)に区分けすると言ったことになります。

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 -宝飾店でのユーザー、商品セグメンテーション―

 小売店の店舗というのはさまざまな種類、価格帯の商品が並べられ、いろいろなお客様が来店されます。ですからまさに多様な営業場面が展開されるわけですが、それをある基準でセグメンテーション出来れば、お店の運営をそのセグメントにあわせて標準化し、強化していくことが可能となるはずです。

 ここでは宝飾店のセグメンテーションの例を挙げました。縦軸は、ヘビーユーザー(玄人)ライトユーザー(初心者)違いでわけました。横軸は価格帯で高額商品と低価格商品にわけました。「4つの領域」の中の商品名称は、私の思い込みで記入しました。もっとも実際には、商品ごとお客様ごとに変わってくることでしょう。しかしこうした区分けをすることで、どんなお客様のどんなお買いものの場合には、どのような対応をすべきかが整理出来ることと思います。

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―シルバーマーケットのセグメンテーションの応用―

最後に、シルバーマーケットのセグメンテーションについて考えてみましょう。これから高齢化が劇的に進んでいく日本では、シルバーマーケットは今後数少ない有望マーケットとして、多くの業界から注目を浴び、その参入もどんどん広がりつつあります。しかし、そのマーケットのとらえ方については、まだまだ整理がついていない状態ではないでしょうか。多くの切り口が考えられると思われますが、ここでは業界の「4つの領域」の考え方を応用してみましょう。

 縦軸は、顧客軸ですが、元気人を対象とするのか、寝たきり高齢者を対象とするのかでわけました。寝たきり高齢者の場合、実際に購入するのは介護者の場合が多いでしょうし、その場合医師等の専門家の意見に従って決定するかもしれませんので玄人とし、元気人は素人としたのです。

 横軸は高額商品、例えば介護機器やベッド、設備(住宅等まで含む)を扱っていくのか、低価格商品例えば紙おむつ等の日常消耗品、備品とか肌着、食品等を単体として一律的に扱っていくのかでわけました。

 ※専門的な設置や活用のサポートまでするのか、単品的に販売だけで済ませるのか、

の違いでもあります。

 するとそこで分けられた「4つの領域」は、かなり営業のやり方の違うことが分かることと思います。もちろん医療機関を経由するのか、介護ショップ経由か、あるいは直販か、さらには新しい違う販売ルートを作っていくのかといったルート上の問題も、これから広がっていく巨大市場を攻略するためには大きいわけですが、あくまで顧客(ユーザー)と商品という市場自体に目を向けて、どこの市場を狙うのかをはっきりさせることがまず前提となるはずです。

その場合、この「4つの領域」の考え方を応用していただくことで、営業政策の違いを整理出来ることと思います。

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追伸:「産業の発展過程」と、

マトリックス営業戦略バリエーション「事業展開戦略」の関係

 

 2012年11月30日付日経新聞の経済教室に「家電不況の教訓(下)、産業の発展過程重視を」という論文記事が載っていました。「ノーベル経済学賞を受賞したハーバード・サイモン氏が提起した視点に立ち返って考えて」みた内容とのことですが、私にはマトリックス営業戦略の『事業展開戦略』に非常に近い考え方であるよう思いました。そこでその記事の一部紹介と私なりの簡単な解説をしたいと思います。

 

その内容は、次回のCBCブログ「『家電不況の教訓、産業発展過程の重視を』記事について」(経済記事のコメント)をご参照ください。垂直統合型部品供給体制から水平分散的部品供給体制への優位性の転換など、新しい視点を持った記事ですが、そこにマトリックス営業戦略モデルの現在的な意義をあらためて感じた次第です。製品技術のセグメンテーションにも関係しますので、是非ご参考にしていただければ幸いです。

                                     以上


 CBC総研のホームページ

 

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このページは、CBC総研が2012年12月 2日 11:46に書いたブログ記事です。

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