マトリックス営業戦略、4つの基本作戦の"落とし穴"③

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これまで小生のブログにて「マトリックス営業戦略」について解説してきましたが、今回は、基本となる「4つの領域」での基本戦略にまつわる"落とし穴"について解説したいと思います。

実際の企業戦略を拝見すると、その成功ポイントだけでなく、そこでの落とし穴をしっかり気をつけ失敗しないための対策を組むことが、事業の成長発展を実現するうえでとても大事なことがわかります。むしろ戦略がはまって事業が順風満帆に思える時ほど、落とし穴にはまりやすいと思った方がいいでしょう。ですので、戦略的に事業を進められている企業の皆さんにこそ、このブログは読んでいただきたいと思っています。

今回は、「エンジニア対応」問題解決型顧客深耕作戦の"落とし穴"について、解説しましょう。

 

 ※「マトリックス営業戦略」の詳細内容については、私の他のブログを参照下さい。今回の文章だけでも、十分理解していただけるようにはしたつもりです。

 

 

 ※(1)『ハイスピード対応』戦略的単品販売作戦、(2)『パートナーシップ対応』大型企画提案作戦の"落とし穴"については、前回、前々回のブログを参照下さい。

 

(3)エンジニア対応領域:問題解決型顧客深耕作戦の"落とし穴"

◎エンジニア対応領域:問題解決型顧客深耕作戦とは:

◎対象業種、場面:

<"落とし穴"として>

1)視野狭窄、市場限定の"落とし穴"

2)技術・技能の標準化の"落とし穴" 

3)営業が、受け身体質に陥る"落とし穴"

【対策として】

①独自技術のブラックボックス化と標準ユニット化。

②製品だけに限らないサービスまで含めた専門ノウハウの蓄積・向上のしくみづくり

③領域の移行をいち早く察知して、先手で抜本的な作戦転換が出来る体制づくり

④営業担当者に対する専門技能ノウハウの習得と事前情報収集・先行提案の徹底

⑤営業担当者に複合的な営業ノウハウの習得の徹底



(3)エンジニア対応領域:問題解決型顧客深耕作戦の"落とし穴"

 

◎エンジニア対応領域:問題解決型顧客深耕作戦とは:

 ・独自の専門ノウハウをもってお客様の問題解決を進め、より信頼関係を高めると同時に深く太く継続する取引関係を築いていく作戦

◎対象業種、場面:

・技術商談、ソリューション営業、・生産財営業、法人専門分野向け営業

・大企業システム提案、【実務専門責任者商談】

 

<"落とし穴"として>

1)視野狭窄、市場限定の"落とし穴"

 技術的な面では、代表的な"落とし穴"は2つある。ひとつはあまりにも自社の固有技術・技能にこだわることで、視野狭窄に陥り、効率性や採算性が低下しやすい一方で、市場も限られビジネスが広がらないという"落とし穴"である。

 ベンチャー企業でも、経営者が専門職人の場合、プライドから生まれる自己満足がビジネスを発展させるための障害になっている場合が多いだろう。あまりに特殊技術のために、その発展の限界が生まれてしまうことも、同様の"落とし穴"と言える。(例えば、古くは日本の戦闘機のゼロ戦等は、典型的な例だ。)

 

2)技術・技能の標準化の"落とし穴" 

 今一つは固有技術技能も、時間の経過と共に標準化されてコモディティ化されてくるということだ。その結果、自分達としては高い専門性を保有しているつもりでも、実際には後発参入した他社の方がこだわりないだけに、むしろ標準化された技術をより効率よくうまく活用することに長けている場合が多い。そのため自社がこれまで通りに個別対応でコストも納期もかかっているうちに、競合他社から成長する市場を一気に押さえられてしまうという"落とし穴"である。エンジニア対応からハイスピード対応、あるいはコストダウン対応への移行によるリスクと言っていい。最近のパソコンやテレビなどのコモディティ化、『モジュラー化』による日本の家電業界の不振はその典型的な事例だろう。

 

3)営業が、受け身体質に陥る"落とし穴"

 営業方法としても、典型的な"落とし穴"がある。それは、相手にイニシアチブを握られ、受け身体質に染まってしまう"落とし穴"である。

 専門的なテーマが多いだけに、ニーズの発生は大半がお客様側にあるし、相手のお客様の方が問題やテーマについて詳しい場合の方が多いだろう。それで相手にイニシアチブを握られたまま、いいなりになって知らぬ間に受け身対応が身についてしまったり、雑務係にはまってしまうことはよくあることだ。しかしそうなったら、営業の存在価値は低いために利益は上がらないし、お客様からも満足してもらえないだろう。値引きが多く薄利の商談しか出来ない営業担当者や残業ばかりして生産性の低い営業担当者は、そうした受け身営業体質に染まってしまっている場合が大半だ。

 技術営業であるために、基本的には慎重な姿勢が求められるが、それが行き過ぎてしまうと、むしろ大きなマイナスになってしまうということだ。

 

では対策として、どのようなことが考えられるか。

 

【対策として】

①独自技術のブラックボックス化と標準ユニット化。

 エンジニア対応のコアノウハウをブラックボックス化して、外部に流失しないようにする一方で、できるだけ標準ユニット化して、「ハイスピード対応」領域の商品サービスとして広く市場に普及出来るようにする。

 (職人技をデジタルな形で分析して、その最高のノウハウを外部からは見えないように閉じ込めたユニットにして、モジュラー化する。)

 

②製品だけに限らないサービスまで含めた専門ノウハウの蓄積・向上のしくみづくり

 エンジニア対応も、単に製品開発や生産の場面だけでなく、「お客様が(購入して使用し)満足を得る場面」すなわち「お客様の現場のすり合わせ」場面にまで広げていく。そこで独自なマニュアルの整備と教育訓練が出来るようにすることで、その専門ノウハウの標準化と質的向上が図れるようにする。またそのバージョンアップも常に進むような仕掛けをつくる。

 製品開発だけでない、導入・運用サービス・メンテナンス・フォロー・コンサルティングまで含めたトータルなエンジニアリングノウハウの構築である。

 

③領域の移行をいち早く察知して、先手で抜本的な作戦転換が出来る体制づくり

自社の保有するエンジニアノウハウの差別的な強みを「お客様満足」の価値尺として、常に評価、検証出来る体制を作り、商品ライフサイクルとしてハイスピード対応からコストダウン対応に領域が移行しはじめたら、すぐに新たな事業の戦略作戦がメリハリよく取れるように予め組み立てておく。

(新たな技術付与での再強化、見切り、他分野への技術展開・・。あるいはハイスピード対応やコストダウン対応への移行にあわせた戦略転換)

 

④営業担当者に対する専門技能ノウハウの習得と事前情報収集・先行提案の徹底

 お客様が持っていない問題解決ノウハウや専門技能を身につけさせて、専門家としての優位な立場でお客様に対応でき、商談をすすめられるようにする。またエンジニア対応だからこそ、事前情報収集によって日頃から、引き合い対応が来る前に先行提案、先端情報提供の出来るようにする。

 

⑤営業担当者に複合的な営業ノウハウの習得の徹底

 エンジニア対応の営業だからと言って、専門営業スタイルだけでなく、ハイスピード対応の提案営業やお客様を大きく説得するパートナーシップ対応の営業スタイルも合わせて身に着けてもらうようにする。

 ハイスピード対応の提案営業では、提案件数と受注件数、パートナーシップ対応の営業では、大型商談案件の仕掛け件数やトップ人脈の実績などを評価の対象にして、積極的にそうした営業スタイルを実践させるようにしたい。


                                    以上



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このページは、CBC総研が2012年11月 9日 11:36に書いたブログ記事です。

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