マトリックス営業戦略、4つの基本作戦の"落とし穴"②

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これまで小生のブログにて「マトリックス営業戦略」について解説してきましたが、今回は、基本となる「4つの領域」での基本戦略にまつわる"落とし穴"について解説したいと思います。

実際の企業戦略を拝見すると、その成功ポイントだけでなく、そこでの落とし穴をしっかり気をつけ失敗しないための対策を組むことが、事業の成長発展を実現するうえでとても大事なことがわかります。むしろ戦略がはまって事業が順風満帆に思える時ほど、落とし穴にはまりやすいと思った方がいいでしょう。ですので、戦略的に事業を進められている企業の皆さんにこそ、このブログは読んでいただきたいと思っています。

今回は、「パートナーシップ対応」大型企画提案作戦の"落とし穴"について、解説しましょう。

 

 ※「マトリックス営業戦略」の詳細内容については、私の他のブログを参照下さい。今回の文章だけでも、十分理解していただけるようにはしたつもりです。

 

―はじめに―

(2)「パートナーシップ対応」大型企画提案作戦の"落とし穴"

◎「パートナーシップ対応」大型企画提案作戦とは:

◎対象業種、場面:

<"落とし穴"として>

1)「大型商談」であるが故の落とし穴

2)大型商談を個人任せや"ちまちま"とはじめてしまう"落とし穴"

3)出来る営業担当者が限られる"落とし穴"

4)大型商談ばかり狙って、堅実な案件を落としやすい"落とし穴"

【対策として】

   しっかり考慮して、作戦テーマとターゲットを選定する。

   経営トップ、営業トップが総責任者になり、腹を据えたプロジェクトとして作戦を推進する。

   大型見込み客とのプロセスを踏んだ関係を構築する。

「領域複合化(包括化)戦略」

   営業担当者は複合的な営業スタイルを身に着ける一方、チームプレーでの推進をはかる。

 


―はじめに―

マトリックス営業戦略「4つの領域」の市場特性にあった戦略や作戦パターンを組むことが出来るなら、変化多様化する市場を味方につけて、迷うことなく戦うことが可能となるでしょう。

しかしそこに"落とし穴"があることも忘れてはなりません。

その"落とし穴"には、大きく2つに区分けできます。

一つは、それぞれの領域に固有に考えられる"落とし穴"です。成功ポイントに固執するために、気が付かぬうちに誤ってしまう"落とし穴"と言っていいでしょう。

今一つは、たとえ領域にあわせた戦略パターンを組もうとも、領域自体が変化することで、そのパターンが合わなくなるばかりか、そのパターンを取ること自体が大きなリスクになってしまう"落とし穴"です。「成功体験の逆襲」と言ってもいいでしょう。

それぞれの「領域」毎に、その"落とし穴"について説明していきたいと思います。

 

 ※(1)「『ハイスピード対応』戦略的単品販売作戦の"落とし穴"」については、前回のブログを参照下さい。

 

(2)「パートナーシップ対応」大型企画提案作戦の"落とし穴"

 

◎「パートナーシップ対応」大型企画提案作戦とは:

・お客様の事情にあわせた大きなビジョンをもった事業や大型企画の提案を行って、お客様を巻き込み、大きな取引関係を実現する作戦。「一緒にやっていきましょう」という姿勢が重要になるので「パートナーシップ対応」領域という名称がついている。

 

◎対象業種、場面:

・大型設備企画営業、トータルシステム提案、事業企画提案(FC加盟、土地開発・・)、

生命保険(総合型)、自由設計住宅販売、【上位者トップ商談】

 

<"落とし穴"として>

1)「大型商談」であるが故の落とし穴

 ここでの作戦の一番の課題は、提案によって今までにない大きな決断をお客様に促さなければならないため、成果を上げるまでのハードルが高いことである。作戦期間の長いことが想定されるし、事業として大きな先行投資が発生する場合も多い。

また全社的にチームワークを組んで動かなければならない場合が多い事から、金銭面以外のプロジェクトの負荷も大きくなる。このため万一商談に失敗するとその損失は多大なものとなるし、成功しても得られた成果が小さいと、手間やコスト倒れとなってしまう可能性も高いだろう。

提案テーマやターゲットの選定、さらに商談プロセスと実行方法の練り上げは、極めて重要ということになる。ターゲットや提案テーマを見誤ったため受注はしたがトータルでのメリット成果が割に合わないという"落とし穴"には、くれぐれも気をつけたい。

 

2)大型商談を個人任せや"ちまちま"とはじめてしまう"落とし穴"

 今一つの落とし穴は、パートナーシップ対応の大型商談を仕掛ける作戦でありながら、それだけの先行投資や会社としての負担を避けて、ちまちましたやり方でスタートしてしまうことだ。たとえば、大型企画提案を営業部隊の目標として掲げたものの、営業担当者個人のノルマにしたために、営業担当者個人に任せきりになってしまうといったことである。

それではこの「パートナーシップ対応」の作戦はまずうまくいかないだろう。お客様から見たら、たった一人の営業担当者しか対応してくれないならば、会社としての対応とは見做すことはできず安心できないからだ。また、ここでは大手競合先との総力戦が想定されるが、一人営業では戦いに勝てる可能性は少ないだろう。

その結果作戦はうまくいかないまま、営業部隊として「結局大型商談は無理だ」というあきらめが生まれて日常的な活動に戻ってしまい、さらに営業活動が沈滞化してしまうと言う反動さえ時におこってしまっている。

 

3)出来る営業担当者が限られる"落とし穴"

 一方営業活動としては、「人を大きく動かす」このパートナーシップ対応が出来る営業担当者はどうしても限られる という人材面の"落とし穴"があげられるだろう。それが事業の成果を上げる限界になってしまうケースはよく見受けられる。

例えば、ある営業部隊では対象とするユーザー業界のうち中堅オーナー企業に絞って新規開拓をめざしたものの、オーナーを説得できるだけのパートナーシップ対応の出来る営業担当者が1~2名しかいなかった。このため、多くの商談が担当者相手で停滞したままなかなか進んでいかないことになり、結局成約に至らない案件ばかりになって作戦に失敗してしまったのである。そうしたケースはよく見受けられる。

 

4)大型商談ばかり狙って、堅実な案件を落としやすい"落とし穴"

またパートナーシップ対応の場合どうしてもトップ向けの大きな話が多く、"夢と危機感"を煽るような大げさな説得方法が営業スタイルとして身についてしまいやすい。このため、営業担当者は日常的な小額物件の対応が疎かになりやすいし、実務的な対応を求める担当窓口からは嫌われてしまう傾向も強いことは、気をつけなければならない。

トップに対する営業と担当者向け営業では、そのスタイルは大きく異なるが、その切り分けがうまくいかないと、相手窓口担当者や実務責任者の立場と食い違い、馬があわないとも思われ、商談が失敗する確率が高まってしまうだろう。

 

では対策として、どのようなことが考えられるか。

 

【対策として】

   しっかり考慮して、作戦テーマとターゲットを選定する。

作戦テーマとターゲットを選定するに当たり、それぞれの案件でのこれからの期待成果を測定した上、将来へ向けて何より大きな成果が上がる見込みの案件に絞り込んで、作戦を進める。

 繰り返しになるが、大型商談とは言いながら扱い商材の単価が低い場合やターゲット顧客規模が小さい場合には、大きな成果が期待できないだろう。例えば、一案件で売上100万粗利30%としても、それ以上の売り上げが期待出来ないとしたら、パートナーシップ型の大型商談としてチームプレーを組んで成約出来たとしても採算にはまったく乗らないだろう。

だからそうした案件は、むしろ「ハイスピード対応」としての作戦を取らなければならない。一案件で、年間300万から500万以上の粗利益が見込めるかどうかが目安ではないか。もちろん1回の商談で大きな利益が言えられなくとも、その後に大きな取引関係が構築できて大きな利益が期待できるとなったら、それはむしろ大型商談として作戦化すべきということになる。

 

※多くの方から見たら、何か当たり前のことを言っているように思われるかもしれないが、営業工数ばかりかかって採算に合わない新規開拓や新規提案をしている例は、本当に多いのである。大型企画提案活動であるだけに、なおさらその業績目標と採算性にはこだわりたい。

 

   経営トップ、営業トップが総責任者になり、腹を据えたプロジェクトとして作戦を推進する。

一般営業担当者や現場営業リーダーが実際の営業活動を進めるものの、その作戦全体は経営トップか営業トップが統括する。また個々の商談でも顧客のトップキーマンと商談する山場では、必ず当社もトップが前面に出て、トップ同士の人脈をつくるようにする。

同時に、総責任者として見込み顧客と商談案件すべての中身をしっかり掌握して、今後の進め方を的確に指揮できるようにする。大型企画提案活動であるだけに、トップの意気込みが大事だし、その役割も大きいのである。

 

   大型見込み客とのプロセスを踏んだ関係を構築する。

作戦によっては、すぐ成果が上がることを前提にせず、まずしっかりプロセスを踏んで大型優良見込み客との関係をステップアップしていくことを目標に置く。

また大型商談だけでなく、他の領域の比較的小口案件の商談も同時並行で進めることだ。大きな商談だけではそれがうまくいかなかった場合、すべてがゼロとなってしまうリスクが大きいだろう。着実に成果が上がるような進め方がもう一方で必要ということである。

新規開拓の商談プロセスを分解して、ハイスピード対応の単品商談からスタートするとか、技術商談を先行して進め、その後にパートナーシップの大型企画提案を仕掛けるといったことである。

(それは、戦略バリエーションの「領域複合化(包括化)戦略」の一部といっていいかもしれない。)

私のお手伝いした某食品関連物流商社O社の場合である。

飲食チェーンに対するトータルな物流業務の受託受注を目指したものの、そのような大型商談はなかなか仕掛けることが難しい。お客様の飲食チェーンとしては、これまで信頼関係がない物流商社から提案を受けても、社運を賭けた体制変更となるために、おいそれとは決断できないのである。

そこでO社の戦略として、新規顧客に対しては自社の強みである生鮮食品の単品取り扱いを武器に取引を開始し、その上で自社の物流センター見学をテコにトップ商談を仕掛ける作戦を組むことにした。相手先の物流責任者や経営トップを招いて、そこでトップ同士での面談を組み込み、将来展望を持った物流体制の提案を仕掛けるのである。

こうした二段階の作戦を組むことで、これまではごく一部の営業担当者しか出来ていなかった物流業務の受託受注の営業活動を営業メンバー全員ができるようになり、全社的な戦略作戦として強力に推進出来るようになったのである。その結果、物流業務の受託受注の件数も大きく伸ばせることになった。

 

   営業担当者は複合的な営業スタイルを身に着ける一方、チームプレーでの推進をはかる。

営業活動としても、トップ向け商談を最重点化するものの、それ以外の担当窓口や関係者との関係づくりも重視して、そのための(パートナーシップ対応とは異なる)複合的な営業スタイルもあわせて営業担当者が身につけていけるようにする。

また、パートナーシップ対応以外の営業の役割を担うメンバーとのチームプレー体制をつくり、相手や状況によって臨機応変に主役の役割分担を切り替えられるようにする。

 

                                    以上



  CBC総研のホームページ 

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このページは、CBC総研が2012年11月 2日 12:52に書いたブログ記事です。

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