マトリックス営業戦略、4つの基本作戦の"落とし穴"①

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これまで小生のブログにて「マトリックス営業戦略」について解説してきましたが、今回は、基本となる「4つの領域」での基本戦略にまつわる"落とし穴"について解説したいと思います。

実際の企業戦略を拝見すると、その成功ポイントだけでなく、そこでの落とし穴をしっかり気をつけ失敗しないための対策を組むことが、事業の成長発展を実現するうえでとても大事なことがわかります。むしろ戦略がはまって事業が順風満帆に思える時ほど、落とし穴にはまりやすいと思った方がいいでしょう。ですので、戦略的に事業を進められている企業の皆さんにこそ、このブログは読んでいただきたいと思っています。

今回は、「ハイスピード対応」戦略単品販売作戦の"落とし穴"について、解説しましょう。

 

 ※「マトリックス営業戦略」の詳細内容については、私の他のブログを参照下さい。今回の文章だけでも、十分理解していただけるようにはしたつもりです。

 

―はじめに―

(1)「ハイスピード対応」戦略的単品販売作戦の"落とし穴"

 ◎「ハイスピード対応」戦略的単品販売作戦とは:

◎対象業種、場面:

<"落とし穴"として>

 1)急成長の落とし穴

2)堅実企業の落とし穴

  3)営業能力の弱体化の落とし穴

【対策として】



―はじめに―

マトリックス営業戦略「4つの領域」の市場特性にあった戦略や作戦パターンを組むことが出来るなら、変化多様化する市場を味方につけて、迷うことなく戦うことが可能となるでしょう。

しかしそこに"落とし穴"があることも忘れてはなりません。

その"落とし穴"は、大きく2つに区分けできます。

一つは、それぞれの領域に固有に考えれられる"落とし穴"です。成功ポイントに固執するために、気が付かぬうちに誤ってしまう"落とし穴"と言っていいでしょう。

今一つは、たとえ領域にあわせた戦略パターンを組もうとも、領域自体が変化することで、そのパターンが合わなくなるばかりか、そのパターンを取ること自体が大きなリスクになってしまう"落とし穴"です。「成功体験の逆襲」と言ってもいいでしょう。

それぞれの「領域」毎に、その"落とし穴"について説明していきたいと思います。

 

(1)「ハイスピード対応」戦略的単品販売作戦の"落とし穴"

 

 ◎「ハイスピード対応」戦略的単品販売作戦とは:

   ・「新しい切り口」の商品サービスを戦略的に位置づけ、出来るだけ一回毎の商談を簡潔に効率化させ、商品が魅力あるうちに、スピーディに一気に市場に浸透させていく作戦。市場の急成長期に当てはまる作戦だ。

◎対象業種、場面:

・訪問販売業、新商品発売、単品単発スポット受注等一回で決まる営業スタイル、

・建売住宅販売、マンション販売、・単品事務機器販売業、等・・

新規開拓のスタート時、【担当者商談】

 

<"落とし穴"として>

 1)急成長の落とし穴

  「新しい切り口」をもって市場に参入するなら、その「新しい切り口」の魅力をもって一時的には高成長を実現することは可能である。ところがそこでその高成長がさらに続くと思って、他社を引き離すための積極的な投資を続けるものの、その後市場の成熟化が進み、市場は一気に収縮して「コストダウン対応」領域に移行してしまう、といったことがよくある。

そうなると、それまでの積極的な投資(例えば営業人員の増員、新規設備投資等)があだとなって、コスト負担が過大になり、一気に赤字転落。さらには資金繰りに窮して倒産の危機さえ生じる可能性も考えられるだろう。新興の急成長しているベンチャー企業に良く見受けられる"落とし穴"だ。

 

2)堅実企業の落とし穴

  一方、そうした投資を控えて、営業担当者一人当たりの粗利益率にこだわって人員を絞り込み、事業の高収益性にこだわるような堅実企業もある。しかし、それはそれでリスクが大きい。その後その商品サービス分野がコストダウン対応領域に移った時に、これまでの高粗利率を前提とした高コスト体質から脱皮できず、全くついていけなくなってしまう可能性が考えられるからだ。

コストダウン対応領域になってしまうと、市場でのシェアーの高い企業の方がコスト競争に有利になるが、堅実企業は限定的な市場での高収益が見込める商品サービスの販売に固執していて、シェアーも高くない場合も多いため、コストダウンの競争力にはそもそも対応しにくいものだ。

多くの場合、大企業からの圧倒的な物量による価格競争か、零細企業からの泥臭い骨身を削ったダンピング競争のいずれか、あるいはいずれもから、攻めたてられることになるが、打ち勝っていくのは至難であろう。

中堅中小の堅実な優良企業に時々見受けられる"落とし穴"である。私のお手伝いしたいくつかの会社様でも、何度か見受けられた"落とし穴"である。そうした場合、大半はその分野を見きって、違う分野でのチャンスを見出すことになっていた。

 

 3)営業能力の弱体化の落とし穴

また、この領域での営業方法での"落とし穴"としては、商品の魅力で売っているため、営業方法が標準化簡略化され、営業担当者個人の「人を動かす」力がつきにくいことが挙げられる。高い商品力があればあるほど、営業力が弱くなってしまう傾向があるということだ。

そうしたケースでは、売れている時には問題は表面化しないものの、商品の魅力が落ちて、いざ商品の魅力だけでは売れなくなった時には、その営業力の劣化が顕在化し、一気に売れなくなってしまうこともよく見受けられる。気づいた時には、営業部員のリストラしか残っていなかった、といったつらい事態も考えられるだろう。

 

では対策として、どのようなことが考えられるだろうか。

 

【対策として】

①ハイスピード対応からコストダウン対応領域への移行を必然的な市場の変化としてとらえ、その変化を前提とした対策を予め組んでおく。

すなわちハイスピード対応のうちに、圧倒的なシェアーを握り、ダントツ一番のポジションを確立しておくことである。そのことで他社に圧倒するコスト競争力もあわせて確立する。ハイスピード対応とコストダウン対応は、同じく「レディメード対応」の領域に属するため、どちらもデジタル、効率性といったキーワードが当てはまり、その両立は比較的やりやすいことだろう。例えば、「新しい切り口」の商品サービスを提供するにしても、ITを最大限活用するとか、集客の方法も、出来るだけ効率化して行うことで顧客開拓コストの増大を抑える。またフォローやメンテナンスも新規売上に依存する部分は、出来るだけ変動費化した体制を取ると言った対策が考えられるだろう。粗利益率が高いからと言って、コストダウンや効率化の努力を緩めないことだ。

(以前説明した)マトリックス営業戦略のうち、戦略バリエーションの「先手必勝戦略」の一種と考えてもいいだろう。

 

②或いは、ハイスピード対応領域に属する商品サービスのすべてについて、その陳腐化の度合いを常に把握し評価できるようにして、いち早く手を打って、常に鮮度の高い商品サービスを提供できるような体制を作っておく

具体的には、陳腐化の兆候が見えた商品サービスについては、即見切りを行って新たな魅力ある商品サービスのスピーディに投入をしたり、既存商品サービスに追加のテコ入れを行って魅力を再生できるようにするということだ。常に鮮度が勝負のアパレル業界のような戦い方をするのである。

 

③一律的な「ハイスピード対応」領域だけでない、個別対応する領域の作戦もとりいれ、顧客とのより密着した関係をつくることで、すぐに顧客離れがおこったり陳腐化することをふせぐ。

都度提供する商品サービスについては、「ハイスピード対応」の戦略作戦を取るものの、その後のフォローやメンテナンスは出来るだけ「パートナーシップ対応」や「エンジニア対応」領域の作戦を取って顧客を巻き込み、継続的な信頼関係を築いて事業全体の安定を図る。戦略バリエーションの「領域複合化戦略」にあてはまるだろう。

 

④たとえ「ハイスピード対応」の商材が多くとも、そこに「パートナーシップ対応」や「エンジニア対応」の営業力を発揮しなければならない作戦や営業対応方法を組み込む。

例えば、法人営業の場合、単品提案であってもそれをきっかけにトップ商談を仕掛けるとか、営業マンにも技術対応サービスを行わせて、そこから紹介受注を狙うと言った作戦である。新規開拓や提案の商談プロセスに対策としてはっきり組み込むことが重要だ。

そのことで、営業担当者に「ハイスピード対応」だけの営業スタイルでは限界があり、営業個人としての専門ノウハウを身に付け、お客様からの熱い信頼を得られるようにする(「エンジニア対応」能力)ことや、大きな仕事を受注できるための大局的で総合的な見方や相手のトップに対して腹を据えて説得できるようにする(「パートナッシップ対応」能力)事をめざしてもらうようにするのである。そうした営業担当者を育成してこそ、上記③の「領域複合化戦略」も成功させることが出来るだろう。

                             

                                     以上



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このページは、CBC総研が2012年10月23日 13:51に書いたブログ記事です。

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