マトリックス営業の『顧客層別戦略』解説④:B~D客(小型取引客先)作戦

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 前回のA客(「既存成熟親派取引客先」)向けの戦略作戦に続き、今回はB~D客(「小型取引客先」)の戦略作戦について解説したいと思います。

文章は、小生著書「社長、儲ける営業に変えましょう!」をベースに一部修正追加しました。みなさんの顧客層別戦略の立案と実行にお役に立てていただければ幸いです。

 

 

B~D客(小型取引客先)の現状分析と作戦内容

      

(1)現状分析

(2)作戦内容

   【B~D客(小型取引客先)の作戦ステップとして】

 

※B~D客とは

  当社との取引関係は特に親密とは言えず、今後の取引拡大可能性は不明、あるい

  はあまり期待できないであろうお客様。

件数は多いが、その中でもランクとしてのバラつきはあるだろう。


B~D客(小型取引客先)の現状分析と作戦内容


(1)現状分析

 大型取引先だけでなく、小型取引先を数多く持つことによって業績を確保していくというやり方も、当然ありえる。ただし、その場合でも、件数さえ多ければ業績が伸びると思うのは大きな間違いだ。

BD客とは言いながら、件数が多いため顧客を区分けしているわけではなく、営業担当者としては一律に引き合いが来た案件に受け身に対応している場合が大半ではないか。

ターゲットの条件を明確にしないまま、新規開拓を件数目標だけで進めると、営業担当者はアプローチしやすい顧客ばかりを、思いつきで開拓することになりやすい。

新規開拓の場合、どんな小さな案件であっても営業工数はそれなりにかかり、目に見えないコストも発生する。ところが、小口取引客先であるだけに一回の取引量は小さく、それでいて処理に手間がかかりフォローに追われやすくなる。顧客の件数が増えれば増えるほど、そのフォローのための負担が大きくなって、自分で自分の首を絞める結果となる。

一件一件の粗利益率は比較的高い場合も多いだろうが、絶対額が小さいため、業務負担や営業担当者の雑務負担で、採算性の悪い場合が多い。今後の取引拡大余地が小さい顧客であるケースも多いだけに、口座数は増えたとしても、むしろ雑務に追われて、トータルの業績は落ちていくことになりやすい。

さらに一番の問題は、営業担当者の仕事が受身の業務処理中心になってしまうことだ。日々の雑務に追われて、自らアグレッシブに業績アップを実現する姿勢と行動を失い、作業者になっていくことが最も危険である。

また、その新規開拓活動も、上司に報告するための、数合わせのものとなっている場合も多く、なおさら悪循環に陥ることになる。


(2)作戦内容

①"選択と集中"で、B~D客をすべて見直し、営業担当者一人当りの顧客数を2分の1から3分の1程度に絞り込む

 まず、件数を集めれば業績が伸びるという発想から抜け出すことである。どんな条件の顧客とどんな取引関係を結べば業績がアップして儲かるのかを明確にし、はっきりと会社の方針として打ち出したい。

 このとき、顧客との「情」を考慮する必要はないだろう。儲からない顧客と儲からない取引をしても意味がない。自社にとって都合のよい条件の顧客層を選定し、自社が儲かる最低限の取引条件をはっきり提示することだ。もちろん対象になった顧客にはそれでも十分メリットがあることが前提だ。

 たとえば、営業拠点から半径500メートル以内の顧客を開拓することにしたケースでは、顧客には拠点の窓口まで足を運んで購入してもらうようにする。そうすれば営業担当者は日々の対応をしないで済むので、新規開拓と大型新商品発売時等にだけ営業活動すればよいことになる。顧客には来店購入の割引特典やその他のサービスをつければよい。

 同様に半径2キロ以内は、たとえば年間取引高500万円以上が見込めるB客のみを開拓する。それ以遠は、S客の近辺地域にあって、ついでの訪問や納品が可能なB客を対象とするといった条件も考えられよう。

 顧客からの受注や問い合せも、すべてFAXかネット注文にする。デリバリーも曜日を限定するなど、自社の条件を明確にする。その条件下で、自社も顧客もメリットがある取引に限定するわけだ。

 そもそも、採算のあわない取引や、営業でありながら受身の業務処理が仕事の中心になっていることは、絶対になくしていかなければならない。社長や営業トップ、リーダーは、この顧客層との取引については、思い切った決断をして整理していくべきだろう。

客観的に見て儲からない顧客と取引する必要はない。そこがボランティアとは違うところだ。すっぱっと見切る。すると営業としては、残された顧客で今までの分を取り返さなければならなくなる。だから急にアグレッシブな営業に変身することもしばしば見受ける。そこまで追い込むのである。また顧客側でも、当社に見切られたくないため、積極的に当社に協力する姿勢が生まれることもあるだろう。

実際ある条件以下のお客様すべてに対して、営業担当者が訪問するのではなく、来店していただくことを促して、営業担当者が行かなくとも購入してくれる取引関係を作った営業拠点がある。そのことで営業担当者の時間を浮かし、その分で新規開拓を進めることができた。

また、かつて私がお手伝いした会社で、1000件の口座を約3分の1に絞り込んだところ、1年で業績が大幅に伸びたケースがある。顧客を絞り込んだり非効率な取引をやめることで営業活動を伸ばせる分野やテーマに集中化でき、むしろ業績はアップする場合が多いと思ってほしい。


②営業マンとは別の合理的かつ効率的な販売体制をつくり、そこで一括対応する

 他の顧客層でも述べたように、営業マンでなければできない業務以外は、できるだけ別動部隊で処理していくべきだ。その考え方を発展させて、合理的かつ効率的な販売体制がとれるようになれば、「選択と集中」を行なっても、従来どおり幅広い顧客との関係づくりが可能になる。

 たとえば、既存客を対象としたウェブネットワークの会員システムが考えられる。新商品や企画のPR等であれば、ターゲットとなる条件の会員のみをリストアップして、メールや電話を使って新商品の紹介を行なえばよい。会員システムをとれば、顧客の規模や業種さらにはこれまでの取引履歴など、豊富な会員情報が蓄積されているわけだから、本当にその提案に強い関心を持ってもらえるような顧客のみを精度高く抽出することもできるはずだ。

 新規開拓の第1ステップであるハイスピード対応の場面と一緒であり、ターゲットを的確に絞り込むことができれば、営業担当者でなくとも十分訴求力のある提案ができる。そこで実際に関心を持ってくれ、具体的な引き合いにまで発展した顧客だけを、営業マンが訪問して、より突っ込んだ説得等の営業活動を行なえばよい。もちろん、単発的な商談なら、ウェブ上でのやりとりだけでも可能だろう。メールやメルマガだけのPRでは難しくとも、該当するお客様の事情条件を絞り込んで、直接電話などでお客様の事情にあったPRが出来るなら、可能性は格段に高まるはずである。その場合スプリクト(PRや質問のトークストーリー)を練り上げることは必要でも、営業マンではなく、アウトバウンドのオペレーターで十分やれるはずである。

 今後、インターネットを使った、こうした合理的かつ効率的な会員システムが進んでいくものと思われる。実際にそうした事例が、今どんどん出てきているところだ。そうなれば、今後営業マンの仕事は、単発商談のハイスピード対応の場面はどんどん縮小され、パートナーシップ対応やエンジニア対応の場面に限られてくることになるだろう。それは営業マンの仕事が、より大きな価値を実現する活動に集中できるようになることを意味している。

 私は、インターネットに関しては不特定多数を相手にしたオープンなネットショップ以上に、登録された特定会員向けの、双方向性の会員システムの発展に大きな期待をかけている。システムを通した企業と顧客、営業と顧客との取引構造だけでなく、その関係自体が、はるかに密度の濃いものとして激的に変わるからである。


【B~D客(小型取引客先)の作戦ステップとして】

 ①全取引先口座毎の最終損益を算出し、赤字取引口座、休眠口座を洗い出す。

  ・月間での取引回数と営業工数から、およその営業経費、物流経費等も算出

(例:営業担当者一回訪問一時間当たり、2万円~5万円)

 ②伸ばせる顧客とそのための対策を立て、営業担当者の訪問先を集中化

(3分の2をカット)

  ・全取引先のポテンシャル(取引拡大可能性金額)の把握と、新規提案内容の整理

  ・全口座の3分の1で、全体の業績確保とアップを目指す目標設定

 ③営業担当者に頼らない、新しい取引形態の開発

   例:・お客様の来店購入の促進

     ・ネット問合せ・注文、FAX注文の促進(電話注文、訪問注文の削減)

     ・ネット会員制度の拡大

     ・以上を実現出来る営業情報化やバックアップ体制づくり

 ④営業担当者訪問要因の抜本改善対策

   例:・返品修理品等の回収業務の合理化

          (お客様自身で返品手配していただくシステムづくり)

     ・事前の計画段階での訪問先の選別化

     ・営業担当者に対するお客様問合せ・呼び出し・お届けの要因分析と改善対策

(本部でのきめ細かな対応体制づくり)

 ⑤上記③④のための営業サービス体制の整備

   (本部、及び拠点、業務担当者と営業担当の役割分担と連携プレーの組み立て)

 

 

                                   以上


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このページは、CBC総研が2012年10月 4日 11:27に書いたブログ記事です。

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