マトリックス営業戦略と「マトリックス営業組織」②顧客スケジュールにあわせたメリハリある対応

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~顧客の開発スケジュール(方針・計画・実行段階)にあわせた、

               営業対応方法とチームプレーの違い~

―「4つの領域」における新製品提案活動の区分け

(方針・計画・実行段階別アプローチ)―

●(お客様の)方針段階 ●計画(前)段階 ●計画(後)段階

●実行段階

―トップリーダーシップの重要性―

―M社の失敗例―

―緻密な見込み商談案件の積み上げと

スケジュールにあわせた提案計画の重要性―

前回P社の事例をもとに、横プロジェクトと営業拠点等の縦ライン組織との連携プレイについて説明しました。

今回は新製品分野の事業展開のステージの違い(位置する領域の違い)によって異なる、顧客アプローチのタイミングと営業方法の違いについて解説しましょう。横プロジェクトの製品別の対応方法の違いにおおいに関係しますので、大事な考え方と思います。ここでもP社の事例から説明しましょう。


―「4つの領域」における新製品提案活動の区分け

(方針・計画・実行段階別アプローチ)―

P社では新製品の営業活動に対して、「4つの領域」の位置づけをもとに、独自のガイドラインを作っています。それは、それぞれの新製品の提案活動を、お客様の開発ステージ(工程スケジュール)のどの段階からスタートさせ、どこに重点を置くべきかを明らかにしたものです。

 

参考図:

 

 顧客の開発スケジュール(工程)例     対象者

  方針段階   ・・コンセプト設計段階 ⇒ トップ・上位者

   ↓         (概念設計)

  計画(前)段階・・技術(詳細)設計段階⇒ 実務責任者   

   ↓

  計画(後)段階・・量産設計段階    ⇒ 実務担当者

↓                      現場責任者

  実行段階 ・・量産化・実施(直前)段階⇒ 購買担当者

          (施工実施、製造、段階)    発注担当者

 

 (※ここでは、「計画(後)段階」を量産設計、「実行段階」を実施段階としました。ケースによって、その位置づけは多少変わるものと思われます。臨機応変に判断しましょう。)


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●(お客様の)方針段階

 全くの新製品の新規提案や、新しいニーズに対する新提案の場合には、トップ向けの将来展望をもった大きな提案が前提となりますので、一番大事なのが『パートナーシップ対応』領域の商談場面と考えられます。その場合ユーザーの開発ステージとしては方針設定段階、つまりコンセプト設計の検討段階か、それ以前の潜在ニーズ発生段階ということなるでしょう。

トップや開発統括責任者に対して、より高い次元でのこれからの開発テ―マを投げかけます。ですから自社の将来展望まで考えてもらうような、日常的な商談場面から離れた、特別な場面の設定も時には必要になるでしょう。   

新テーマに対する当社の強みこだわりをわかってもらう革新技術講演会、次の技術を見越したコンセプト展示会、テーマ別勉強会、さらには先端企業視察会と言った仕掛けも有効でしょう。ちなみにP社の場合、大型商談の50%近くは、そうした大型企画の仕掛けからの引き合いでした。

この場合、縦ラインの営業拠点で企画することは難しく、横プロジェクトが中心になって、全社的な仕掛けづくりをしていくことが必要です。

 

●計画(前)段階

 それが具体的な案件がもう発生しており、その問題解決を図るための提案となれば、『エンジニア対応』の商談場面が中心となりますので、開発ステージとしては計画段階、すなわち技術設計段階が中心となります。但し、他社に先駆けた提案がとても大事ですので、計画段階のスケジュールをあらかじめ確認しておき、お客様が計画段階の検討にはいる直前の絶妙なタイミングがベストでしょう。そのタイミングをとらえるためには、縦ラインの営業担当者が、日頃から先手先手の提案で、出来るだけ詳細なお客様事情の先行情報を得ておくことが大事になります。

ここでの本格的な商談相手は、トップリーダーというより、実務的な開発責任者・リーダ―という場合が多いでしょう。ですから、縦ラインの営業拠点担当と専門部隊である横プロジェクトメンバーとの連携が特に重要になるケースが多いのです。

 

●計画(後)段階

 さらに計画(前)段階の提案活動から実際にユーザー現場での成功事例が生まれたなら、次のステージではP社としては、その成功事例を成功ユーザーと同様のニーズをもった他社ユーザーへ一気に横展開したいところです。  

そこでは『ハイスピード対応』領域となりますので、ターゲットユーザーを具体的にリストアップし、企画提案活動のスケジュールを組んで、横プロジェクトメンバーが縦ラインの営業部隊をリードして、その実行を進めていくわけです。

その場合ユーザーからすると開発ステージの計画(後)段階に来ている可能性が高いことになります。開発の計画内容はある程度決まったものの、それを効果的に実現出来る最新の部品部材を探している段階と言えるでしょう。 

技術設計から一部量産設計に入る段階です。

そうであれば、P社としても『ハイスピード』対応領域として、そのままスピーディな提案活動を実現することができるでしょう。ですから個別商談においては、ここでは先ほど述べた通り横プロジェクト主体の連携と言うより、縦ラインの営業部隊がなによりスピーディーにその新製品の市場浸透を図っていくことが大事でしょう。

それが、商談がお客様から見た場合まだ新しいニーズに対する提案と言う位置付けであるなら、こちらも『パートナーシップ』対応領域の商談、すなわちより上位者を対象とした商談としてのウェートをあげるべきということになります。但し、もはや他社で成功事例が生まれて製品の標準化は進んでいるのですから、やはり基本的には「ハイスピード対応」領域での戦いを主戦場と位置付け、そうした商談でも『パートナーシップ対応』から一気に『エンジニア対応』領域までもっていくことが、成功の大事なポイントになるでしょう。

 

●実行段階

 さらに新製品がユーザー側に受け入れられ、個々の注文が流れてくるようになれば、ユーザーの開発ステージとしては、実行段階に入り、量産設計段階から実際の製造(施工)段階と言えるでしょう。ここではもう技術的な対応と言うより、信頼性を前提として最終的なユーザーニーズにあうかあわないか、価格や納期、供給体制がユーザー側の要望に適応しているか、競合他社と比べてのメリットがはっきりされているかどうか、が商談の決め手になります。商談の相手も購買担当者か日常発注者がメインとなってきます。

ですから『コストダウン対応』領域の対応として、縦ラインの営業活動をバックアップする営業業務体制や全社的な生産・アフターサービス体制が重要になってくるわけです。

一方、価格の決定にはすこぶる高度な経営判断を求められることがありますから、その場合は経営トップか営業トップが判断することになるでしょう。一般的には、トップが横プロジェクト部隊と相談して一定のガイドラインを設定し、ある程度は縦ラインの拠点リーダーの判断に任せることになるものと思います。

 

4つの開発ステージにあわせたトータルな品揃えをめざす―

 P社としては、実はこのユーザーの方針・計画・実行という開発ステージの各段階にあわせた、製品のトータルな品揃えを目指しています。「4つの領域」の製品がすべて揃うことによって、ユーザーの製品分野毎の開発方針から量産化に至る全行程について、漏れのない営業活動が可能となるからです。  

一方営業活動としては、それだけ個別製品分野毎のユーザーの開発ステージにあわせたメリハリのある動きが徹底して求められるわけであり、それを可能にする横プロジェクト部隊の役割は、今後さらに高まっていくことになるでしょう。

 

 

追伸:

―トップリーダーシップの重要性―

 こうやって振り返ってみますと、P社の横プロジェクトが成功した重要な要因として、P社のK社長自らが統括リーダーとして指揮したことがあげられるよう思います。K社長は横プロジェクトの活きのいいリーダーやメンバーから直接報告を受けることで、市場の変化多様化をいち早く察知し、スピーディな新たな意思決定につなげていました。今何に集中すべきなのか、また見切るべき商品は何か。どんなお客様にどのタイミングで何を提案することが、新しい市場創造につながるのか。それを常に意識しており、一方で自ら意思決定したことについては、即全社全部門全拠点に徹底させていたのです。そうした臨機応変のトップの意思決定が、横プロジェクトを成功させるための重要ポイントになっていたよう思います。

 

―M社の失敗例―

他方で、横プロジェクトが失敗した企業の事例もあげたいと思います。

M社は公開企業で営業マンが50名前後の組織であり、やはり縦ラインの組織だけでは、スピーディな市場開拓や顧客要望に答えられないと考えて、横プロジェクトを編成しました。動きの良い技術もわかる営業担当者を5名程度任命し、個人の裁量で自由に動けるようにしたそうです。

はじめのうちは、その横プロジェクトのメンバーが拠点エリアの担当制にこだわらず、大手企業相手に大型商談を仕掛け、特注を獲得するような成果も挙げました。しかし数年後には、組織的な行きずまりから、あえなく解散になってしまったのです。その要因は、横プロジェクトのメンバーが一人営業で勝手に動くために、縦ラインの営業組織との連携がうまく取れないという事態になってしまったからでした。

こうした失敗例はよく見受けるのですが、結局営業活動全体をとらえて、縦と横の組織の連携を図りながら、それぞれの役割と動き方を臨機応変に変えていくだけのトータルな指揮体制になっているかどうか。それが横プロジェクトが成功するかどうかの大きな分かれ目になっているよう思います。

もちろんそこには上に立つリーダーの資質や立場も大きいとは思います。横プロジェクトには、縦ラインの拠点長と同等以上の大きな権限を与えることが、やはり必要であり、そう考えるなら横プロジェクトの統括リーダーには経営トップか営業トップリーダ―がふさわしいと言えるでしょう。

 

―緻密な見込み商談案件の積み上げと

スケジュールにあわせた提案計画の重要性―

今一つ補足したいこと。それは、この顧客の開発工程のスケジュール(のタイミングの違い)から営業領域の違いを意識して、メリハリよく営業対応方法を切り替える考え方は、横プロジェクトや製品品揃え計画だけでなく、日頃の営業担当者の活動においてなにより重要だということです。  

さらには年度単位での営業計画、特に見込み商談案件毎の積み上げと提案活動のスケジュール作成にも当てはまり、顧客企業一社毎に業績を確実に上げていくための重要な考え方と思います。

実際、こうした「既存顧客の主な開発案件テーマ毎の、方針・計画・実行段階のタイムスケジュール」を前提に、今一度考えられる商談案件をすべてリストアップして緻密な行動計画を立てたY社の営業部隊の場合、先手を打った的確な対応が一件一件漏れなく出来たおかげで、シェアーナンバーワンでこれ以上の売り上げアップが難しいと思われていた既存大口客の業績を、一年でさらに前年比25%アップさせることができたのです。

その実例については、いずれあらためてご紹介しましょう。

                                    以上

 CBC総研のホームページ          










 

 

 

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このページは、CBC総研が2012年6月20日 11:41に書いたブログ記事です。

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