マトリックス営業戦略と「4つの営業組織」後編「サッカー型・野球型・工場型」組織

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前回、「ハイスピード対応領域:横一線「軍隊型」組織」について解説しました。今回は、残りの「サッカー型」「野球型」「工場型」の3つの組織形態について解説しましょう。

◎パートナーシップ対応領域:柔軟な「サッカー型」チーム組織

―パートナーシップ対応のできる、

優秀な営業責任者を中心に柔軟に動くチーム組織―

◎エンジニア対応領域:マトリックスの「野球型」チーム組織

 ―玄人のお客様に対して、専門的な対応をもって

お客様の問題解決を図るため、役割分担を明確にしたチーム組織―

◎コストダウン対応領域:統制的な「工場型」組織

 ―定型業務を効率的かつ効果的に運営し

営業活動を後方支援する統制的な組織―


◎パートナーシップ対応領域:柔軟な「サッカー型」チーム組織

―パートナーシップ対応のできる、

優秀な営業責任者を中心に柔軟に動くチーム組織―

 ・大型企画提案活動がメインとなるこの領域での組織的な戦いとしては、いかに優秀な営業担当(責任者、営業トップ、リーダー)を核にしたチームプレーによって、お客様(特にトップキーマン)に対して効果的な「パートナーシップ対応」が出来るかどうかが決め手になります。

・『パートナーシップ対応』が出来る優秀な営業担当者は限られており、そうした者ばかりを集めたり、育てるというのは現実的にはなかなか難しいでしょう。もし育てられてもそうした営業担当者が、簡単な『ハイスピード対応』の営業活動や営業業務的な雑務に追われるとしたらもったいないことです。ですからこの領域の営業組織としては、「パートナーシップ対応」の営業担当者(責任者)を核にして動く柔軟なチーム編成が理想になります。

・このチームには一般営業マンは数多くいりません。「パートナーシップ対応」の営業担当者一人に対して二三人で十分でしょう。その一般営業マンをアシスタントとして使いながら、チームリーダーとなる『パートナーシップ対応』の営業担当(責任者)が、商談の流れの中で商談の山場となる場面において、お客様のトップキーマンを巻き込み説得し、大きな決断を迫るわけです。

・一件毎の商談が大きいだけに、一つの案件ごとにプロジェクトチームを組むつもりでいいでしょう。一つの案件にチームリーダ―がおり、そのチームリーダーが商談全体のマネジメントを行うのです。チームリーダーとして彼は大きな権限を持っており、社内の技術開発・生産セクションや営業業務セクションに対しても、お客様の窓口になって商談のスタートからゴールまでの流れの全体にわたってコーディネートすることになります。ですからお客様もそのパートナシップの営業担当(責任者)に大きな案件を安心して任せてくれることになるわけです。

・トップキーマンをターゲットにして、『パートナーシップ対応』が出来るトップ営業中心に、柔軟に状況変化に対応して動くチームプレーであり、『サッカー型』チーム組織と言っていいよう思います。


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―アシスタント営業マンの力量で成果は大きく変わる―

 この組織がうまくいくかどうかは、もちろんチームリーダーである『パートナーシップ対応』の営業担当者の力量によるところが大きいのですが、それとともに一般営業マンのアシスタント営業担当の動き方や力量にも大きく左右されるでしょう。

ここでのアシスタント営業担当は、必ずしも『ハイスピード対応』場面の営業を担当するだけとは限りません。むしろアシスタント営業担当が一人のお客様に対して商談のスタートからゴールまでをフォローする場合が多いのです。

商談のスタートでは確かにハイスピード型で動きますが、商談の山場では彼も『パートナーシップ対応』の一員として働きます。但しその場合、まだ力量がないだけに、上司であるチームリーダーの力を借りることになります。本来、アシスタント営業担当としては、出来るだけ上司の力を借りずに、一人でトータルに「パートナーシップ対応」までの営業対応が出来るように自分の能力アップを図らなければなりません。そのためまずは一緒に商談の山場に立ちあい、一期一会の場面での上司の説得の仕方を学んでいくのです。

上司はこの商談の山場ではじめは自分が主役としてお客様を説得し、部下にそのやり方を実践で教えるわけですが、「次はお前が一人でやるんだぞ!」と覚悟を部下に持たせ、すぐに自分に代わって部下に、この『パートナーシップ対応』の商談をやらせてみる事が必要でしょう。

 はじめのうちは上手くいかない場合も多いでしょうから一緒に立ち合い、もし商談の状況であぶないと感じたら、その場の判断で自分が部下に代わって前面に立たなければなりません。何回も部下を商談の山場に立ち合わせ経験させることで、このレベルの商談なら任せても大丈夫だという見極めを行って、徐々にアシスタント営業担当の部下に任せていくのです。商談の成功体験を一歩一歩積ませることで、部下を一人前の『パートナーシップ対応』が出来る営業担当として育てていくことが大事なのです。

一方アシスタント営業担当としては、はじめはチームリーダーの力を借りなければなりませんから、自分の進めている商談状況については、的確にチームリーダーに伝えておかなければなりません。いくら優秀なチームリーダーであっても、お客様の事情や状況をきちんと押さえられていないまま突然商談の山場に向かい合っても、上手く商談を進めることは難しいでしょう。

チームリーダーの力を十分に発揮できるようにお膳立てし、的確な情報を伝えておくのもアシスタント営業担当の役割です。そしてその役割を十分に果たすことが、自分自身が『パートナーシップ対応』のできる営業担当になっていくための準備となるのです。

 

 

 

◎エンジニア対応領域:マトリックスの「野球型」チーム組織

 ―玄人のお客様に対して、専門的な対応をもって

お客様の問題解決を図るため、役割分担を明確にしたチーム組織―

 

 この領域では、玄人のお客様に個別対応しながら、実際の顧客満足という成果を提供しなければなりません。ですから、専門技能を持った技術者やそれの準ずる者のサポートが必要になります。営業担当としては、そうした社内外の専門技術者と連携し、他方でお客様の事情や要望をその都度確認しながら、商談(と導入)を進めていくことになります。

組織的にはエンジニア対応の営業担当と専門技術者のチーム制と言うことになるでしょう。比較的役割分担ははっきり区分けすることが出来ます。ですから『野球型』と言っていいよう思います。

 営業活動としては、アプローチと事前情報収集(ハイスピード対応)→今後の方針・方向・計画予定の確認とそれを踏まえた新しい企画提案(パートナーシップ対応)→具体的な案件に対する問題解決の個別提案と専門対応(エンジニア対応)といった商談のステップを踏んでいくことになります。

 

お客様は玄人ですから、技術的な面でのより確実性のある実証的な提案でなければ、説得させられませんし、実際に成果も上がりにくいはずです。そのため、商談の様々な場面で専門的なエンジニア対応が求められます。たとえば方針段階のパートナーシップ対応の場面でも、時にはエンジニア対応の技術者や営業担当が前面に出る機会も多いことと思います。

 

―顧客のレベルや関係するメンバーの力量によって、役割分担は柔軟に変更する―

・実際、テーマやお客様のレベルによって、その求められる技術・技能は異なりますし、チームメンバーの力量によっても、誰がどの役割まで引き受けるかは変わります。

例えば、技術のよくわかる営業マンなら、自分だけでもエンジニア対応の詳細部分まで踏み込んで引き受けるでしょうし、それが難しい技術に疎い営業マンが担当する商談ならば、技術者の方がエンジニア対応の営業の一部まで引き受けざるおれないでしょう。

ですから、この領域では、商談に加わるメンバーの技術レベルやお客様の専門レベル等を鑑みて、事前にハイスピード対応、パートナーシップ対応、エンジニア対応の役割を誰がどこまで引き受けるかを明確にしておくべきということになります。さらに商談展開の流れに基づいてはっきり情報交換と連携プレイ―のやり方をスケジュールも含めて、各論で詰めておきたいと思います。

営業担当と社内での技術部隊とのコミュニケーション不足のために、お客様がその気になって商談が具体的な話に煮詰まった段階で、チームとしてきちんとお客様の事情をおさえた的確な技術対応が出来ないことから失注してしまう、などと言うこともよく起こっています。

・一方技術に明るいベテラン窓口担当者を営業拠点に設置することで、拠点営業と本部技術部隊とのコミュニケーションと連携プレーをスムーズにコーディネートできるようになり、格段に業績を上げた事例もあります。

また本部技術セクションと拠点現場技術担当の役割分担と連携プレーも大事になるでしょう。

 

―横プロジェクトと縦ラインが連携するマトリックス組織―

・他方、会社の営業組織全体と言う点では、ある程度の規模になったら商品分野や事業分野を中心とした横プロジェクトと、エリアを中心とした営業拠点ラインの縦チームのマトリックス組織が考えられます。

・個々のお客様の商談展開に関しては、あくまで継続的にお客様との取引関係を拡大していく役割を担った縦の拠点ラインが中心になるでしょう。しかしそうなると、個々の商品のライフサイクルや事業が位置する「4つの領域」の市場変化がつかまえにくく、メリハリある営業を取りにくくなってしまうという難点が出てきます。

またひとつの事業や一つの商材だけを扱っているならまだしも、多くの商材を扱っていると、拠点ラインでその商材が「4つの領域」のどこに位置付けられているかを想定して、自律的に変化対応して動くには限界が出てきます。

・そのため、商品や事業の市場での位置付けを常に把握し、その時点での領域にあったメリハリある営業戦略、営業対応を支援出来る部隊(セクション)を作るのです。それを横プロジェクトと位置付けます。ですからこの横プロジェクトの役割は、市場の変化と共に変わり、臨機応変な動き方が求められるのです。

・従来の商品、顧客別のマトリックス組織との違いは、この横プロジェクトはあくまでも営業と連携する支援部隊であり、直接的な業績向上と言うよりも、「4つの領域」のメリハリある対応を組織的に進めるのが本来の役割だということです。営業業績や活動としても、縦横の二重評価のもとで動くことが多いでしょう。

 

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このようなマトリックス組織は多くの企業で採用されているわけではありませんが、今後こうした考えのもとに、市場の変化多様化に即応できるメリハリある組織編成と運営が広がっていくことと思います。

(このマトリックス組織の活動方法については、今後あらためて説明しましょう。)

 

◎コストダウン対応領域:統制的な「工場型」組織

 ―定型業務を効率的かつ効果的に運営し

営業活動を後方支援する統制的な組織―

 

―営業マンを無くす組織の工夫―

・この領域では、営業マンは入りません。むしろ営業マンをいかに無くした体制を作っていくかが大事なのです。実際、多くの企業の営業マンの活動時間を図ってみると、この「コストダウン対応」領域での活動と思われる部分が非常に多く、全体時間の6~7割以上占めていました。これではいくら本来の営業活動に力を入れろと言っても、難しいことでしょう。

・ある会社の営業マンは一カ月のうち外に出てユーザーを訪問するのがせいぜい2~3回であり、大半は電話やネットでのやりとりで終わっていました。そんな状態では『営業マン』とはいえず、正確には『営業業務マン』です。こうした事実をはっきり認識して、当社にとっての本来的な営業活動の領域と「コストダウン対応領域」を明確に区別し、後者においては営業活動としてではなく、業務対応やサービス対応が仕事の本質であることを確認すべきでしょう。そして徹底的に合理化効率化と、お客様へのサービス向上体制作りを進めていくのです。

・具体的には受発注業務センター、お客様サービスセンター(問い合わせ)、営業サポート業務部隊の区分けをはっきりさせて、営業マンの活動から切り離す一方で、お互いにスムーズなコミュニケーションをとっていける体制作りを目指すべきでしょう。

 

―今後営業サポート組織の役割は、ますます高まる―

・特に、今後ネット等のますますの発展によって、アクティブにお客様サービスを提供していく体制や、場面によっては簡易な『ハイスピード対応』の営業活動まで行える体制作りはますます重要になってくるものと思います。

大手量販チェーンや多数の小売店を対象とした消費財メーカーの場合、店頭情報収集や店頭業務支援のためのフィールドサポート部員や店頭販促部隊を作るといったことも行われています。

・但し、こうした体制は常時作っておかなくてもいいでしょう。例えば新製品発売には、営業業務やお客様サービスセンターの人達も、見込み客に対してワンポイント提案活動を一緒に行い、確度の高い見込み客のお洗い出しまで行い、その後営業担当に引き継ぐといった方法も十分考えられるはずです。

こうしたサービス体制によって、商品だけでない他社との違いをはっきり打ち出すことができ、単品商品の厳しいい価格競争にも勝ち残っていけることになるでしょう。

・この組織は、業務や活動内容が定型化されているため、いわば「工場型」組織がふさわしいものと思います。管理監督者が上にいて、その下に業務を実行するメンバーが数名から十数名程度配置される組織が一般的でしょう。

そして日常の業務状況がスムーズに進んでいることが確認でき、その質と量をしっかり管理出来ることが必須ですし、他方で日頃からの品質改善・向上活動を推進するしくみや、万一のイレギュラー事項への緊急対応が出来る体制づくりも重要になってきます。


                                   以上


 CBC総研のホームページ


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このページは、CBC総研が2012年5月30日 11:24に書いたブログ記事です。

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