シャープとパナソニックの新社長は、真の不振原因をとらえているか。

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201243日付け日経新聞の「経営の視点:電機再編に挑む新社長たち」の記事で、パナソニックとシャープの新社長の話が出ていました。ちょっと気になる発言なので、コメントしてみたいと思います。

 

―記事による新社長の発言内容とは―     

―苦境の真の原因は、創造性の低下ではなく、

市場の変化多様化を見誤ったこと!―

―製品だけの戦いでは、コストダウン対応領域に行き着く!―

―戦いの発想を変るべし・・

変化多様化を前提とした新しい戦略を組み立てる―

―記事による新社長の発言内容とは―     

記事によると「主力のテレビ事業の大赤字は、垂直統合モデルに原因があるといわれる。研究開発から液晶パネルなどの部材まで一貫して自前でやるのは、円高や重い法人税などの条件下にある国内では無理というわけである。」但し、「失敗の真の原因は、・・・不利な経営環境に足をすくわれたからではない。消費者が歓迎する商品を出せなくなって、負けたのである。・・競争激化に安売りで対処したのは、自滅への道だった。」とのことです。

そしてシャープの奥田社長は「『堺工場を建設した時、用途開発で市場を創る気概が足りなかった。驚きと感動を与える商品をワイワイ開発する風土を醸成しなければならない』と考える」。

一方パナソニックの次期社長の津賀専務は「『商品開発で冒険をする意気込みが希薄』とみて、『他者に先駆けてゲテモノを作れ』と発破をかけてきた。」と言っているそうです。

 

―苦境の真の原因は、創造性の低下ではなく、

市場の変化多様化を見誤ったこと!―

確かに私も、最近の日本企業が内向きで新たに事にチャレンジする気概が足りないよう思え、そのことによる創造性の低下が最近の日本企業の不振の原因の一つになっているとは感じていました。ですから、新社長になり、シャープやパナソニックでそうしたチャレンジが促されるようになるならば、それは期待出来ることとは思います。

しかしその一方で、ことはそう簡単な事なのかという思いも、抜け難くあります。

私には、日本の家電メーカーを中心とした製造業の苦境の真の原因は、創造性の低下以上に、メインとしていた製品市場がこれまでのように製品単体の魅力で売れる領域(ハイスピード対応領域)から、コストによって購入を決めるウェートの高い領域(コストダウン対応領域)へ移行してしまったことにあるよう思えるのです。言い換えれば、市場の変化多様化を見誤ったことが一番の原因ではないかということです。コスト競争の方が優先するとするなら、トップがいくら創造性を唱えても、現場では創造性を発揮出来るわけがない。オペレーションではなく、ポジションとポジションの変更に対する戦略対応の問題です。

このことの反省がないなら、新社長もこれまでと同様の誤りを冒す可能性があるのではないかと思います。

 

―製品だけの戦いでは、コストダウン対応領域に行き着く!―

繰り返しますが、もはや多くの製品分野で成熟化が進んでおり、製品の開発中心の発想では、一時新製品の魅力で売れることがあっても、いずれ新興企業等が猛烈なスピードで追いかけてきて、すぐ追い抜かれてしまうことは十分考えられるでしょう。結局多くの製品分野が、製品だけの戦いではコストダウン対応領域へ移行することを前提に戦略を組み立てなければならなくなっている、ということです。ところが、そうしたコストダウン対応領域での戦いに、日本企業が強いかと言えば、決して強くはない。(注:日本が裕福な国になってしまったこと。それからトップリーダーシップが弱いことが主な原因でしょう。

 前々回のブログを参照下さい:「【職人技】のすりあわせ」と 【一般大衆向け】が日本企業の強み」)

 

―戦いの発想を変るべし・・

変化多様化を前提とした新しい戦略を組み立てる―

ではどう考えるべきなのか。

市場の変化多様化を前提とした戦略が必要です。

一つは、どこで戦うのか、その選択する分野をしっかり見直し、自社の戦略的なポジションをはっきりさせること。いずれコストダウン対応領域に移行するにしても、自社が確実に勝ち残れる戦略が組める分野に特化すべきでしょう。

自社の強みである創造性をどれだけ発揮出来て、事業としての差別的なポジションを確保できる分野かどうか。(『独自領域創造戦略』)あるいはコストダウン対応領域に移行するとしても、それまでに自社が圧倒的なシェアーを握って勝ち残ることができる分野かどうかです。(『先手必勝戦略」)

液晶テレビは、もはやそう言う分野ではなくなってしまったのかもしれません。

 

今一つは、製品開発生産中心の発想を抜本的に見直すこと。この事の方が本質的な対策の様に思います。

戦略で言えば、『領域複合化、包括化戦略』です。

前回、前々回の私のブログで述べたことを確認しましょう。

 

<前回ブログ:「海外展開に求められる日本企業のあり方とは」より>

③提供する商品サービスについて、単品志向からトータル志向に変える必要がある。そのための体制作りまで考える。

「目的とするお客様満足の実現のために、ターゲットとするお客様層を明確にして、部品、設備、消耗品、導入アドバイスやサービス、アフターフォローまで含めた、トータルな品揃えを提供できる体制作りをしっかり進めていきたい。」

④外部企業連携や販売・アフターフォロ―の場面でも『領域複合化戦略』、すなわち日本的な強みである「『職人技のすり合わせ』ノウハウの磨きあげ」と「ハイスピード対応体制づくり」を目指すこと。

前々回のブログでも次のように述べています。

「・・・日本の企業は海外企業に勝ち抜いていくために、「お客様の現場」である販売とアフターフォロ―の場面での、日本的な【すり合わせ】によるお客様満足の創造を実現するようなビジネスモデルを目指してほしいと思います。そしてそのノウハウをマニュアルとして標準化するだけでなく、持続的に磨いていく『仕組み』をつくる。それこそ、まさに日本の強みを永続的に発揮できるモデルではないでしょうか。 」

日本企業はアップルに決して製品開発力で負けたわけではないでしょう。I-Pod等、徹底的に顧客を中心にしたトータル志向の新しいコンセプトに負けたのです。

 

どうも日本の製造メーカーは、海外新興国によるコストダウン領域での戦いとアップル等の高度な先端企業とのコンセプト競争という、2つの全く異質な戦いに挟まれて、戦略の組み立てに右往左往しているよう思えてなりません。杞憂で無ければいいのですが・・。

 

今こそ求められているのは、

 ・市場はますます変化多様化しており、その変化の先を予測して自社のポジションを戦略的に組み立てること。

 ・製品開発・生産中心の発想を脱皮し、お客様中心のお客様現場までおりたトータル志向のビジネスモデルを作ること

ではないでしょうか。


 CBC総研のホームページ


  

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このページは、CBC総研が2012年4月 4日 22:28に書いたブログ記事です。

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