日経ビジネス 2012年1月23日号
特集「危機が絆の強さを問い直す」の
「年齢構成が将来の働きがいに影響」(P.59)
についてのコメント
(リクルートワークス研究所大久保幸夫さんより)
―過去の「ピラミッド型」から「逆ピラミッド型」へ、
市場も組織も大転換―
―ビジョン方向を示して、トライアンドエラー―
―今、逆ピラミッド型社会(組織)の活性化のあり方が求められている―
―追伸:今後の経済学のあり方について
はじめに
リクルートワークス研究所の大久保幸夫さんによれば、・・働きがいのある会社の年齢分布図は「ピラミッド型」か「釣り鐘型」に大きく二分され、「ピラミッド型」は成長企業に典型で、組織に活力もある。一方30代、40代が組織のボリュームゾーンを担う「釣り鐘型」は、長い年月をかけて構築した制度やルールが定着していて、安定した組織運営が出来る、とのことです。また、それぞれの組織のその後の姿から想定される課題と対策も説明されています。
組織の年齢構成の違いに着目して、組織活性化のあり方の違いを説明しているのがめずらしく、慧眼と思います。組織の年齢構成の違いで、その企業の風土や価値観が異なることは容易に考えられることでしょう。人口縮小社会に入って、企業組織の年齢構成はとても重要な視点になってきていると思います。
ただ私には年齢構成以上に、日本が大縮小社会に入っていること自体が企業にとっても個人にとっても、より大きな課題ではないかと思えるのです。
―過去の「ピラミッド型」から「逆ピラミッド型」へ、市場も組織も大転換―
実は私もここ5~6年の公開セミナーでは、はじめの導入部分で日本の人口構成の大変化からビジネスのあり方が大きく変わらざるえないことを繰り返し述べて来ました。
それは次のような内容です。
「過去の高度成長の時代の人口構成は、【ピラミッド型】で、多くの会社の人員構成も上層部が少なく下位層が厚いピラミッド型になっていた。それが人口構成が【ひし形】から急激な人口縮小による【逆ピラミッド型】に変わりつつある。
【ピラミッド型】の時代には、図形からいっても末広がりで、市場も組織も年々成長していくのが当然だったから、その成長に乗っていけいけどんどん目先追っかけでやっていけた。
社内も毎年新人が入ってきて部下が増え、それにつれ社員の役職も上がっていくのが自然だった。
ところが【逆ピラミッド型】になったら、全く逆でどんどん人口が減って市場は縮小していく。部下も入ってこないから役職も上がらない。会社の業績も放っておけば落ちていくのが当たり前。だからと言って目先追っかけだけでは、矢印は下を向いているのだから市場の縮小に抗えず、業績縮小に拍車をかけることになってしまうだろう。さらに委縮して現状維持なんて考えたら、それは自滅を意味することになる。
―ビジョン方向を示して、トライアンドエラー―
ではどうすべきか。縮小時代だからこそ、なにより希望を持つことが大事。将来へ向けた鮮明な『ビジョン方向』を示すこと。そしてそのビジョン方向へ向けて、正解のない中『トライアンドエラー』しながら、新たな市場を創造していく。それ以外に道は無い。
このことは抽象的な精神論ではなく、実践論だ!
実際今業績の良い企業や営業は、そうしたビジョン方向をお客様に示して、明るく元気にお客様を勇気づけ巻き込み、新たな挑戦を促している。だから新規開拓や新規提案も成功することが出来る。
縮小時代だからこそ、今すぐの正解や目先のメリット以上に、将来へのビジョンが求められていると思ってほしい!」
―今、逆ピラミッド型社会(組織)の活性化のあり方が求められている―
そう、問題は日本の人口構成が逆ピラミッド型になって急激に人口も市場も縮小していることです。人口縮小はビジネスの大きな脅威ですが、それ以上に日本社会全体の危機であり脅威と言えるでしょう。その結果、すべての会社のビジネスのあり方に、大きな曲がり角が来ています。
多くの企業の年齢構成も【逆ピラミッド型】になっているのが現実です。このままでは、会社組織が縮小していき、会社自体が衰退から消滅の運命にあることは間違いありません。
一部の超優良企業の【ピラミッド型】や【釣り鐘型】組織の活性化策について以上に、多くの日本企業が直面している逆ピラミッド型の組織が、縮小社会のもと、どのようにしたらこれから活性化し発展していけるのか。
そのことのほうが、より重要な課題ではないでしょうか。
それは、いち会社だけではなく、日本社会全体の重要で緊急な課題と言っていいでしょう。
今後私としても、縮小社会の活性化策について、あらためて真剣に考えていきたいと思います。
追伸:今後の経済学のあり方について
急激な縮小社会が進む中、組織と同時に社会経済のあり方があらためて問われているよう思います。そこで最近経済学について興味が湧いてきて・・
・リーマンショック以降のここ数年、経済学についての解説書や評論の本をあらためて十数冊ほど読んでみました。
(お手軽な新書版中心で、まだまだよく理解できていませんが・・)
すると当然ですが、マルクスやケインズ等ほとんどのこれまでの経済理論が、成長経済が前提で成り立っている理論のように感じた次第です。
ところが成熟した資本主義社会では、日本だけでなく多くの国で、人口縮小に陥っています。一方インドやブラジルなどの新興国では、これから人口が急激に増えていくのはまちがいありません。
経済学もこれからは「成長経済社会」「縮小市場社会」が混合した世界を前提にして、両者の社会をはっきり区分けし、それぞれの社会にあった経済理論を作る一方、その混在化した全体世界を包含する総合的な経済理論が必要になっているのではないでしょうか。
資本主義が導入された段階では、社会の生活水準が高まることで人口は急激に増大していくが、成熟するにつれて人口縮小傾向がより著しくなっていく。それは資本主義という社会システムの原理からくる必然でないか。
(※経営学で言うライフサイクル曲線の考え方が当てはまるでしょう。)
そう考えるならば、経済学も時間の経過と共に変化多様化しさらに混在化複合化する世界を対象としなければならない。
また成熟した資本主義社会の人口縮小化傾向に対して、抜本的な対策を(経済学としても)考えなければならない。
私にはそう思えます。
実は、そうした変化多様化した世界をとらえる理論としては、私の「マトリックス営業戦略」の理論も入ると思っています。但し、これまではその理論の対象を事業や営業活動においていましたので、あくまで泥臭い実践モデルになっており、経済学とは全く違うジャンルに入っていました。
今後機会があれば、「マトリックス営業戦略」の理論を現在の経済にあてはめてみた考え方を、ブログを通して整理してみたいと思っています。
また、現状の経済学については、色々気になることがあり、そのことについてもあわせて検討できたらと思っています。
と言うことで、もし興味のある方は、「マトリックス営業戦略」の理論を私のブログやホームページでご覧いただければ幸いです。
(・・なんちゃって、自己PRをご容赦下さい。)
以上
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