日経ビジネス記事コメント①「利益より売り上げ」について

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はじめに

 

日経ビジネス 2012123日号

     特集「利益より売り上げ」について

 

―「住み分け理論」が成り立たない。世界的なオープンな市場へ―

―これからは「ナンバーワン」一社しか生き残れない。

だからこそ「オンリーワン」戦略を取るべし―

―オンリーワン戦略で、高シェア―、高収益を目指す―

<シェア―トップ企業のメリット>


はじめに

 

日経ビジネスは一般人向けの最もポピュラーな経済雑誌であり、多くのビジネスに関わる人達に大きな影響を与えているものと思います。私にとっても、経営コンサルタントになる以前から継続的に読んでいる唯一の雑誌であり、ビジネス上の新しい潮流をとらえるための良質な情報源の一つです。

そこで今回、日経ビシネスの記事をネタに、経営コンサルタントしての私なりの考えをブログで語っていこうと思いました。

実証的というより、これからの時代を踏まえた新しいビジネスモデルや生き方を模索したいと思っています。

定期的ではなく、思い付いて書かさせていただきますので、文章の拙さと共に、ご容赦願います。

 

日経ビジネス 2012123日号

     特集「利益より売り上げ」について

 

はじめの特集記事です。従来優良企業になるためには「売り上げより利益」と言われてきたが、最近のいくつかの著名な企業を分析していくと、むしろ「利益より売り上げ」を伸ばしてきた企業の方が時価総額も大きくなっているし、営業利益の伸びも大きい。市場の株価評価では、短期的な利益志向が強いために、経営も利益重視になりがちだが、利益重視だと、縮小スパイラルに陥りやすくなってしまうのではないか。海外市場に打って出てでも、売り上げを上げて言ってこそ、企業として勝ち残れるし利益も取れるだろうという主旨でした。

 

 さすがにジャ―ナリスティックでわかりやすいし、現在のビジネスの盲点をうまく突いているよう感じます。但し、少し気になることもありますし、私なりに補足したいこともあるのです。

 

―「住み分け理論」が成り立たない。世界的なオープンな市場へ―

「利益より売り上げ」というタイトルですが、それでは利益は犠牲にしてでも、売り上げを上げろ!と言っているように一見思えてしまいます。記事をきちんと読むならそうではないことがわかるのですが、勘違いする人もいることでしょう。

私は、常々「利益重視」と言っています。特に営業現場では、安易な値引きをやめさせ、より付加価値が取れる営業になるよう強調しています。

 

私ならタイトルは「利益重視」は変わらないけれど、「利益重視」の意味が変わってきた。それと利益だけでなく同時に「売り上げ」も追ってマーケットシェア―も高めていくことが何より大事になっている、と言う内容に変えたいと思います。

 

 利益重視で言うなら、過去の利益重視は、売上高を追って同一業界での他社との競争でいたずらに値引き合戦になるのは避けて、お互い企業同士の縄張りを尊重して、しっかり利益を分け合いましょうという主旨であったでしょう。私はそれを経営の「住み分け理論」と呼びたいと思います。まさに日本的な思考です。

(※この「住み分け理論」は生物学のダーウィンの「適者生存」説に対して日本の今西錦司先生が唱えた理論の名称です。日本の風土や文化から発想した理論だけに、日本的な経営観にぴったり当てはまるよう思います。)

 

実際多くの日本の優良中小企業の多くでは、大手企業の入り込まない目立たない地味なニッチ市場で高収益を上げているか、大手下請けや取引販売店なら、製品分野毎エリア毎に区分けして、お互いの領域を侵さないことで比較的安定した収益を上げられる構造を築いていたのではないでしょうか。以前は、なにより業界団体や協力会などの活動が盛んでした。

大手企業にしても、建設業界の談合は典型的ですが、家電業界でも国内はガラパゴス化の中で、競争を回避して自社独自のポジションを確保するのが比較的容易だったと言えるでしょう。

しかし現在では、そうした「住み分け理論」が成り立たなくなっているのです。生物の世界でも日本国内に外来種の生物が到来して住み分けが崩壊し、従来の無競争化で生き残っていた在来種の生物が駆逐されてしまうように、ビジネス世界でもますますオープンな競争社会となって、競争が激化しています。もはや住み分けによる「高収益」経営は成り立たないと、はっきり思った方がいいでしょう。

 

―これからは「ナンバーワン」一社しか生き残れない。

だからこそ「オンリーワン」戦略を取るべし―

 

何が変わってきているかと言えば、日本のマーケットが過去の島国的閉鎖世界からオープンに解放されてしまい、全世界エリアの一部に組み込まれてしまったということです。日本国内のあらゆる分野にどんどん海外企業が入り込んできています。一方日本の企業もたとえ中小企業であっても海外展開まで射程に入れた活動をせざるおれなくなっています。

実際、私のお手伝いしている優良中堅企業のトップのみなさんとお話ししていて、ほとんどの場合に

「何が一番怖いかって、もう国内企業ではなく、海外企業です。だから私たちも海外に出て勝ち残るしかないんです。縮こまっているわけにいかないんです。」と言うことになっています。

そして「住み分け」が成り立たないということは、すなわち生き残れるのは一社のみということです。それが日本国内だけの話ではなく、全世界的に一社と言うことなのです。その覚悟を持ってビジネスをしていかなければならなくなっている。ナンバーワンしか生き残れない。すなわちオンリーワンです。弱者、強者と言う区分けがありましたが、強者しか生き残れない。弱者戦略と言う発想には、ニッチな市場でという発想がありますが、市場がオープン化した現在、それではもはや限界があるということです。オンリーワンで、全世界を鳥瞰しながら市場での自社のポジションを徹底していくという戦略でしょう。

 

―オンリーワン戦略で、高シェア―、高収益を目指す―

もちろん、オンリーワンになるためには、独自な強みを磨かなければなりません。その独自な強みによって、まずは「高利益率」な商売を成り立たせる。

商品の粗利益率と言うのは、お客様からみた魅力のバロメーターですから、

高利益率の商品サービスを創造し、そこで高収益をあげることがスタートで

す。差別性の無い魅力の薄い商品サービスで、売り上げを上げるなんてあり

えません。ここを間違えないでください。

 

そこで狭い分野でも一番を取る。しかしそこで安心してはいけない。儲かる

商売となれば、すぐにより大きな強い競合他社が参入して真似してくること

は必至。それも今までの国内での限られた競合他社ではありません。

異業種や海外も含めた、様々な強力な競合企業が考えられるのです。

 

(※地域密着のサービス業のような業界は、これまで外部からの参入が少なかったよう思います。しかし、そうした地域密着の業界であっても、サービスの標準化や情報化によって、新規参入が進んでいるのです。むしろそうした新規参入の遅れた分野ほど、今後競争が激化していく可能性は高いでしょう。

 ※生物学的に言うなら、これまで森の中で木の実を取って暮らしていたのが、オープンな草原に降りて獲物を取ることになった、ということでしょうか。)

 

そうした強い競合他社を蹴落として勝ち抜いていかなければなりません。

守りに入って、内向きに「高収益」を保とうとするなら、じり貧から消滅ま

での時間は短い。守るためには、攻めなければならないのです。

そうなれば必然的にその強みを広げていかざるおれなくなります。その時点

で事業活動の範囲は広がっていることでしょう。技術的な要素、商品品揃え、

お客様の満足範囲、サービスの種類と質の充実、お客様の種類の幅などなど・・。

ここで初めて「売り上げアップ」と言う戦略方針が必要になる。やみくもな

売り上げアップではない。事業のあり方自体を革新させるのです。その新し

い事業の姿から来る強みこそが、オンリーワンの強みです。その強みを発揮

する結果、ある限定市場から周辺市場へ、そして日本全国へ、さらには海外

市場へとその活動は広がっていくことになるのです。

 

国内のどこかで勝てる強みがあるということは、海外のどこかでも勝てる強

みがあるということ。逆に国内で勝てないなら、海外で勝てる訳がない。

国内で勝てる強みを磨きあげ、その強みを持って海外展開をはかるというこ

とでしょう。もちろん海外市場にあわせた戦略が必要になるし、あらためて

の工夫も必要でしょう。でもそれがより強みを強化することにつながるので

す。海外で強みが発揮出来たら、今度は国内にその強みをフィードバックし

て新たに展開することも可能です。

そうやって強みに磨きをかけていく。

それが「利益より売り上げ」が大事という意味ではないかと思います。

 

まさに、新しいビジネスのあり方が求められているということです。

 

※追伸:

シェアートップとそれ以外でどれだけ違うかと言うと、場合によるとは思

いますが、収益率で倍以上の差が出るのではないかと思います。

以前私がお手伝いしていた一部上場企業のメーカーの販売拠点の収益率を

比較したところ、同じ商品同じサービスを扱っているにもかかわらず、多

くの販売拠点では貢献利益が5%もいかず、マイナスになっているところ

もあったのに、ある地方拠点では20%を超えていました。そこで調べたと

ころ、その拠点の地域でのシェアーがなんと40%を超えていたのです。

どうもその高シェアーが高収益性の一番の要因になっていたようです。

ちなみに他の拠点でのシェアーは10%から25%どまりであり、シェア

―率にあわせて、それぞれの拠点の収益性がおよそ決まっているような数

値になっていました。

 

そこで改めて、シェアートップ企業(拠点)のメリットを挙げてみましょ

う。

 

<シェア―トップ企業のメリット>

 ①高いブランド力を作ることができる。

   ・一番と二番では大違い。印象もインパクトも、100とゼロの違いくらいあるでしょう。

   ・そのブランド力で、同一商品でも他社より高付加価値の販売が

出来る。(より高く売ることが出来る。)

    ・知名度とブランド力があるため、同一エリアの元で、多角的な商売がしやすい。(新しい高付加価値の商材を展開しやすい。)

  ②その分野の技術や商品でディファクトスタンダード(標準)が取れる。

   トップ企業して、自社が優位な立場でこれからの市場をリードしやすくなる

  ③情報力で優位に立てる。

    ・一番に情報が集まる。最先端情報や重要な辺境情報も他社よりいち早く入手しやすくなる。その結果、いち早く魅力のある市場を押さえたり、新たな商品開発や改良を他社に先駆けて行うことが出来る。なにより競争上優位に立つことが可能である。(情報をうまく活用するかどうかは別であるが・・)

  ④他社との提携も有利に進められる。

  ⑤優秀な人材を集めることが出来る。

  ⑥量的効果で購買交渉力が上がるし、生産効率、販売効率が高まる。

   その結果、利益率も格段に高まる。

   (例えば、販売に関して言えば、地域シェア―が高ければ移動時間等

の活動効率が良くなるし、取引企業でのインストアシェアーが高け

れば販売単価が高くなるし、包括契約などの効率的な取引関係も可

能となる。

営業の生産性を高めるには、地域シェアーを上げることと、一社当

たりの販売金額を上げることがとても大事なポイントになる。)

 

 こうやってメリットを上げていくと、やはりシェアーは大事ですね。

 

                                 以上


CBC総研のホームページ



 

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このページは、CBC総研が2012年1月28日 12:50に書いたブログ記事です。

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