◎変わること:(変化多様化)の説明【空間】
~「マトリックス営業、4つの領域」で
「市場の変化」をつかむ!~
・営業を一つのやり方に固定するな!
・「マトリックス営業、4つの領域」の成功ポイント
・<4つの場面で,営業の戦略・作戦は全く異なる>
1.ハイスピード対応(単品単発営業)・・
2.パートナーシップ対応(大型企画提案営業)
3.エンジニア対応(問題解決型営業)
4.コストダウン対応(徹底合理化)
―営業を一つのやり方に固定するな!―
今、営業に携わる人達を大きく惑わしているのは「市場の変化・多様化」ではないでしょうか。今日、新しい切り口の新製品を出しても、3~6ヶ月で競合商品が出て、どんどん陳腐化してしまいます。それにつれ、お客様もその新商品の知識が高まっていき素人から玄人へと急速に変化していくことでしょう。
一方、商品サービスも単品商材的なものから、サービスを加えたもの、さらには部品備品や、メンテナンスまでトータルに提案する形のものまで、多種多様化しており、それぞれで売っていくやり方は、まったく異なっています。
問題は、そうした変化と多様化のなかで、営業のやり方を一つに固定するのができなくなっていることです。たとえばある場面では「訪問件数が大事」と言いながら、また違った場面では「じっくりソリューション営業をしろ。訪問内容を充実させよ」と言わねばならなくなる。
一人一人の頭で描く営業場面のイメージが違うものだから、営業のやり方を議論しても、なかなかかみ合わないし、部下指導も下手をするとピント外れになりかねない。そんなことがよくおこっています。
「変化(多様化)対応」は単なるスローガンではありません。それが出来なければ、営業の成果を上げる事が出来ないのです。もっと言うなら、現在の多くの事業や営業の失敗は、従来からのワンパターンな発想と活動方法のまま、変化多様化する市場を的確にとらえて臨機応変に対応することが出来なかった事が大きな原因になっているのです。
では市場の変化多様化に対応する事業営業活動を、その中身まで各論できちんと煮詰めていくには、どうしたらいいのか。
まずは具体的な現在の営業場面をはっきり設定し、参加するメンバーの共通の理解を得る。そしてその場面が市場の変化多様化によって、どう変わっていくのかを予測する。その上で、それぞれの場面での成功するやり方をしつこく考え抜き、それをストーリー化するのです。
その事をうまく進めていくのは、もちろん簡単ではありません。そのため変化多様化をとらえた新しい理論とモデルが求められています。
―営業場面の変化を、「マトリックス営業、4つの領域」でつかむー
そこで私が考えたのが、「マトリックス営業、4つの領域」です。
市場の変化多様化の一番の要因は、情報化成熟化の進展にあります。その事によって、お客様は素人から玄人になり、商品サービスは、はじめお客様の事情にあわせたアナログ的なオーダーメードなものから、どんどん規格化されレディメードに標準化されてくることになります。
このことを図としてとらえたい。
そこで縦軸にはお客様が玄人か素人か。横軸にはお客様の事業に合わせたオーダーメード対応か、それとも商品の魅力で一気に売っていくレディメード対応かで分けました。
すると、その図にあらわれる四つの領域から、市場の変化にあわせた営業場面の違いが明確に整理でき、それぞれの場面での営業のやり方の戦略から戦闘まで、一貫した姿が見えてきたのです。
商品に新しい切り口の魅力をつけて、単品的な売り方をするなら(素人―レディメード対応)で「ハイスピード対応領域」(右下図)になります。なぜなら、単品的な商品の魅力はすぐ陳腐化するので、その前にいかにスピーディに市場に展開していくかが問われるからです。また単品商品として一律対応できるのだから、なおスピーディに動くことが可能だし、そのほうが成功する可能性も高いことになるからです。
それが商品が陳腐化してお客様が玄人化したなら、(玄人―レディメード対応)でもはや「コストダウン対応領域」(右上図)となり、そこではお客様は、コスト・品質・納期等の明確に数字であらわせるメリットを一番に求めるでしょう。そうなれば営業マンの活動としては、出来るだけ避けたい領域です。
他方、単品的な商品ではなくオーダーメードな対応となると、そう簡単にスピーディーに動けるわけではありません。特に素人を相手に、新しい切り口をもって提案した場合には、お客様に大きな決断を促して、「一緒にやっていきましょう」と巻きこんでいくまでの関係づくりが必要です。そこでこの領域は(素人―オーダーメード対応)で「パートナーシップ対応領域」(左下図)と呼んでいます。
それがもはや素人でなく玄人相手となったならば、大きな決断を促すとか巻き込むというより、実務的専門的ノウハウをもって問題解決をはかり、実際の成果実績を示さなければならなくなります。そこで玄人相手にオーダーメード対応する場合を「エンジニア対応領域」(左上図)と呼んでいます。
このようにみていくなら、ワンパターンの営業スタイルが通用せず、場合によってはむしろマイナスになってしまうこともありえることは明らかでしょう。市場の変化多様化に合わせてあらわれてくる光景は大きく違います。それぞれの光景において、そこで成功するための営業のやり方や事業の考え方は大きく変わるのです。
<4つの場面で,営業の戦略・作戦は全く異なる>
・ハイスピード対応・・単品単発営業 →一気にアプローチして市場シェアーを高め,開拓を進める。
新製品の新規提案、新規開拓場面等
・パートナーシップ対応・・大型企画提案営業→お客様を巻き込み、大きなトータル
満足の提案を行い、大型商談をもの
にする。
トップ商談,会社対会社の商談場面等
・エンジニア対応・・・問題解決型営業→玄人の顧客相手により実務的専的な問
題解決の提案を行い,成約めざす。そ
して実際の成果を上げて,継続的な
信頼関係を構築していく。
技術商談、ソリューション提案場面等
・コストダウン対応・・価格交渉、日常注文→コストや納入条件で,商談が決まる
営業場面。営業担当者としては、
ここでは戦わず、他の領域で戦う
ようにしていく。
営業マンカット,徹底合理化。
―各領域と主な業種、商談場面―
それでは領域毎の内容や当てはまる典型的な業種、さらには成功ポイントについて整理してみましょう。
1.ハイスピード対応(単品単発営業)・・
商談窓口 |
一般担当窓口 |
商談タイミング |
お客様の計画段階(後期)あるいは、計画と実行の間 (市場のライフサイクル:急成長期) |
代表的な 業種等 |
飛び込み訪問販売業、建売住宅販売、マンション販売、店頭での新製品の接客販売、単発スポット受注の広告代理店営業、1~3回で決まる法人営業(個人営業も・・) |
営業の場面 |
新規開拓の初期商談場面、キャンペーンの一斉提案活動等 新製品の単品提案、 |
訴えるポイント |
商品の分かりやすい特徴とその満足の魅力を簡潔に訴える。 |
商談トーク |
基本三段論法トークストーリー(による簡潔な殺し文句) |
組織形態 |
標準的なマニュアルを持って一気に動く 「横一線軍隊組織」 |
<活動の成功ポイント>
□①対象とする顧客を決める・・⇒顧客特性ごとの3段論法の殺し文句を作る
□②簡単なプロセスで決める・・⇒見切り見極めを早期に行う(一回~三回) ⇒標準的な営業方法を決め、ツール資料を準備する
□③量とスピード ・・⇒短期集中(三ヶ月で、ターゲットと売り方を
見直す
⇒件数実行評価、日々の管理の徹底
2.パートナーシップ対応(大型企画提案営業)
商談窓口 |
トップ・上位キーマン |
商談タイミング |
方針段階(コンセプト設計段階) (市場のライフサイクル:新市場スタートの生成期) |
代表的な 業種、活動等 |
自由設計の住宅販売、消費者素人向け生命保険販売業 事業提携・FC事業提案、中堅中小企業向けトータル情報システム提案、素人向け大型(高額)商品サービス販売等 |
営業の場面 |
会社対会社の大きな事業構想を提案する商談 会社としての大きな取り組みを投げかける場面 |
訴えるポイント |
夢と危機感を持った大きなビジョン、意義価値を訴える。 |
商談トーク |
未来大三段論法トークストーリー |
組織形態 |
トップ営業中心の柔軟な「サッカー型チーム組織」 |
<活動の成功ポイント>
□①トップ向け提案コンセプトづくり。
⇒夢と危機感の訴え、トップ向けタイトルの工夫
□②トップキーマン・上位者狙い。
⇒初めのアプローチから、トップ上位者狙いの
宣言。顧客巻き込みのストーリー化
□③トップ商談の仕掛けづくり。
⇒トップを呼び、巻き込む展示会、
デモ・提案・説明会・商談会の企画開催
□④トップ人脈づくり、トップ中心のチームプレー。
⇒当社でも、トップ役職者の活用
(トップ営業との連係)
3.エンジニア対応(問題解決型営業)
商談窓口 |
専門知識のある実務責任者・リーダー |
商談タイミング |
計画段階(概要設計、技術設計段階) (市場のライフサイクル:市場の浸透期) |
代表的な 業種、活動等 |
生産財の設備、機器、装置、部品のメーカー・商社 専門分野向け法人営業、大手企業向けソリューション営業 特殊玄人向け専門対応の技術サービス業等 |
営業の場面 |
場面 |
訴えるポイント |
専門家の相手に自社の専門的な強みこだわりを伝え、お客様の問題解決が出来るという信頼とイメージを与える。さらに期待以上の成果があがることまでわからせる。 |
商談トーク |
「実例三段論法ストーリー」による、成功事例の紹介。自社の問題解決力を訴求し、顧客の実務的な問題の核心部分を突っ込んで聞き込む。 |
組織形態 |
横ラインの技術専門チームとの連携をスムーズに進める「マトリックスの野球型チーム組織」 |
<活動の成功ポイント>
□①成果を上げる独自な専門ノウハウと成功事例づくり
⇒営業担当者の専門ソリューションノウハウの育成。ノウハウのブラックボックス化と事例を使った絞り込んだ鮮明な訴え
□②専門チームとの連携としかけづくり
⇒技術専門部隊とのち密な連携。技術勉強会等の相手側専門家を巻き込む仕掛け作り
□③事前顧客情報のより突っ込んだ収集分析の徹底
⇒その為の人脈づくり、お客様の味方つくり
(本当のキーマン、タイミング、ニーズの本質、関係者と購買条件、競合動向等の情報収集)
□④今ではなく、将来へ向けた顧客の方向と課題の鮮明化
⇒顧客の期待を超える問題解決の提案を行い、
商談のイニシアチブを握る
(各論提案だけにとどまらない、未来大三段論法ストーリーづくり)
4.コストダウン対応(営業カット・徹底合理化)
商談窓口 |
購買担当者、日常注文者 |
商談タイミング |
最後の実行段階 (市場のライフサイクル:市場の浸透期) |
代表的な 業種、活動等 |
(どの業種にもあてはまる) インターネット公開買い付け、価格条件交渉等・・ |
営業の場面 |
価格や納期など提供する商品のQCDや対応条件が一番の決定要素になる交渉場面。差別性の無い既存成熟品販売場面 |
訴えるポイント |
商品のQCD№1とともに、商品を超える、それ以上のメリット満足を訴える。 価格訴求だからこそ、より信頼性の強調による安心感を与える。 |
商談トーク |
「一番安いです!その余った予算で、・・が出来る事が大きなメリット思います。」「さらにそれ以上に、信頼出来ます」 |
組織形態 |
工場型縦ライン組織 |
<活動の成功ポイント>
□①営業マンカット・・ ⇒営業マンは、この領域で戦わないことが原則。他の領域での戦いに移行させる
□②サポート専門体制づくり⇒営業マンをなくした、合理的な取引注文
及びサービスフォロー体制の整備
□③価格を超える提案づくり⇒営業としては、コストで勝つ商談であればあるほど、それ以上の満足価値を訴える
□④他の領域への移行・・ ⇒単品提案から、お客様を巻き込む包括提案
(パートナーシップ対応)に切り替える
※それぞれについての、より詳しい解説は
今後「マトリックス営業戦略詳細解説」(仮称)にて行う予定です。
この続きは、
「 マトリックス営業戦略の基本解説②-4
◎変わること・・(変化)の説明【時間】
~4つの領域と事業展開プロセス~ 」を参照下さい。
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