◎変わること・・(変化)の説明【時間】
~4つの領域と事業展開プロセス~
「変化を読み、味方につけよ!」
・「4つの領域」から市場の変化が読める―
・<事業展開プロセス>
・海外市場こそ、変化多様化している―
・新規開拓の商談プロセスは、「4つの領域」の場面展開―
・領域によって、重要商談場面は変わる。メリハリをつけよ!―
・「変わらないこと」と「変わること」の関係―
・セールストークも領域によって、重視するトークが変わる―
・実践モデルとは、目的、場、プロセスに至るトータル体系である―
―「4つの領域」から市場の変化が読める―
一方、この「4つの領域」は時間的な変化をあらわしています。なぜなら縦軸と横軸にとったそれぞれの要素が、市場の変化多様化を促す2大要素になっているからです。
市場の変化多様化の要因は、社会が情報化成熟化していることにあります。
そこでは時間の経過とともに、お客様は素人→玄人に移行し、提案商品はオーダーメード→レディーメードに移行すると考えられるでしょう。この図から言えば、変化は左下の領域から始まって、右上の領域に移行するということです。
つまりこの「4つの領域」は、市場が変化多様化する場面の展開をあらわしていると考えられるのです。
実際、事業の展開プロセスを追ってみると、市場との関係で次のようなステップになっていることがわかるでしょう。
<事業展開プロセス>
市場の立ち上がり期:パートナーシップ対応領域
↓(新しい切り口の提案を素人のお客様におこない、一緒になって「新しい創造」を生み出していく。)
市場の浸透期 :エンジニア対応領域
↓(お客様が徐々に玄人化する中で、少しづつ問題解決事
例を蓄積し、自社の専門的な強みを磨いていく。)
市場の急成長期 :ハイスピード対応
↓(もはや提案する内容は標準化、パッケージ化されてお
り、競争関係も激化する中、いかにスピーディに市場に展開していくかが問われることになる。)
市場の停滞衰退期 :コストダウン対応
(商品も市場に溢れ、お客様も玄人化しているため、
圧倒的シェア―を握り、いかにコストパフォーマ
ンスを上げられるかが問われる。)
見方を変えるならば、変化の動きを予測することで、4つの領域の戦略スタ
イルを複合的に組み合わせ、事業の展開ステップとしてモデル化出来るとい
うことです。
「現在、事業の位置は○○の領域にある。と言うことは、次には○○と言
う領域に移行すると予測できる。その先は○○だ。だから競合他社に先駆
け、先手を打って次の領域を見越した××という対策を打とう。」
変化の激しい時代、変化の先を読んだ戦略が求められています。
市場の変化にメリハリよく対応できなければ、一時繁栄を謳歌したとして
も、市場が次のステージに移行したとたんに、一気に業績が落ち込む可能
性も高いでしょう。
―海外市場こそ、変化多様化している―
日本企業の海外展開において、一時うまくいっているように見えても、市
場の変化についていけずに失速しているケースが多いようです。
現在の状況ばかりに目がいって、変化を前提にした戦略が欠けていたこと
に原因があるのではないでしょうか。
特に、単品的な強みをもって参入したものの、現地企業や中国・韓国など
の追い上げにあい、コスト競争で負ける、さらには欧米企業の高付加価値
競争にもついていけない、といったことが多いようです。
(前者は「ハイスピード対応」領域から「コストダウン対応」領域への移
行です。
後者の場合、「コストダウン対応」から「パートナーシップ対応」
或いは「エンジニア対応」といった新たな領域への意図した移行と考え
られるでしょう。)
新興海外市場こそ、変化多様化の激しい市場となっているよう思います。
マトリックス営業戦略は、そうした海外戦略にも適応することでしょう。
(変化を味方にする戦略として、さらに
「事業展開戦略」「領域最適化戦略」「独自領域創造戦略」「先手必勝戦略」
を考えました。今後詳細説明にて、解説したいと思います。)
-新規開拓の商談プロセスは、「4つの領域」の場面展開―
一方、新規開拓の場合、どのようなプロセスが考えられるでしょうか。新規開拓とは、お客様と営業との関係性を高めていく活動であり、そこにも変化の考えが重要です。お客様との関係が変われば、営業のやり方も変わるのです。
但し、ここであらわれる変化のプロセスは、事業展開のプロセスとは若干異なります。
次のように考えられるでしょう。
<「4つの領域」の場面展開としての商談プロセス>
第一ステップ:初期提案【ハイスピード対応領域】
↓⇒新しい切り口の提案を持って、一回毎の商談には時間をかけずに標準化して、一気に市場にアプローチしていく。
第二ステップ:トップ上位商談【パートナーシップ対応領域】
↓⇒見込み客が生まれたら、今度は深くお客様の中に入り込み、トップや上位者へ向けてより大きな提案を仕掛ける。会社対会社の関係を築いていくきっかけを作ることが新規商談では重要。
第三ステップ:専門実務商談【エンジニア対応領域】
↓⇒その上でより深くお客様現場の問題解決を目指した商談を進め、継続的なつながりを持った信頼関係づくりを目指す。
第四ステップ:条件交渉、日常受発注【コストダウン対応領域】
⇒そして商談も最終段階に入るなら、より合理的な条件を提示し、コストパフォーマンスを重視した対応を心掛ける。また成約後の受発注も、より合理的な体制が大事になるだろう。
<新規開拓では>
◎鮮明な「新しい切り口」提案がなければ、会ってくれない。
⇒『ハイスピード対応』でスタート
◎但し、口座開設は、会社対会社の取引関係づくり
⇒故に、『パートナーシップ対応』がなければ、本格的な取引にはならない!
(しかけしくみ)
◎また、単発から継続取引にならなければ、新規は成功したことにならない。
⇒継続化を進める『エンジニア対応』の関係作りを実現する。
◎そして、日常取引になれば、出来るだけ効率的な関係を作り、コストパフォーマンスを良くして、お互いのメリットを最大化する。
⇒効率的な『コストダウン対応』体制を築き、より安価正確スピーディな受注納品を実現する。
なぜ新規開拓の場合、ハイスピード対応領域から始まるのかと言えば、お客様に鮮明なわかりやすい提案をしなければ、お客様の興味を引くことが出来ず、初期商談まで至らないからです。つまり新規開拓とは「三段論法ストリー」で仮説を立てて対象となるお客様にアプローチしていく、テストマーケティング(仮説検証)の意味合いが強いのです。
※基本三段論法ストーリー
「どんな事情のお客様に・・・ (顧客)
どんな特徴の商品サービスを提案(提供)し、 (商品)
どんな素晴らしい満足を実現するのか」 (満足)
上記の仮説を検証していくのが、新規開拓。
―領域によって、重要商談場面は変わる。メリハリをつけよ!―
但し、その商談の位置している領域によって、商談プロセスの重要場面が変わることは、注意して下さい。
例えば、新規開拓と言っても、新製品の単品を一気に売っていくような場合は、営業領域としては、「ハイスピード対応」に属すると考えられます。ですから、商談プロセスとしても、重要なのは初期商談の『ハイスピード対応』場面です。ターゲット客を決めて、一気にアプローチを掛け、スピーディーに商談を決める。それが成功パターンになります。一人の営業で済む場合も多いでしょう。
ところが、優良大手企業に大型企画提案をすすめて、大きな商談をモノにするような新規開拓の場合には、「ハイスピード対応」の場面よりも、はるかにトップ上位者の説得やその後の専門対応力が大事になるでしょう。そうなると商談プロセスとしては、「パートナーシップ対応」場面や、その後の「エンジニア対応」場面がより重要と言うことになるのです。営業担当一人ではなく、社内の上位者や技術部隊との連携も重要になってくるでしょう。
このように見ていくと、置かれている領域を考慮しながら、時間の経過とともに変化する市場状況やお客様との関係性にあわせて、事業や営業のやりかたをメリハリよく変えていかなければならないことがわかるはずです。
マトリックス営業戦略のモデルを適応するならば、そのメリハリある戦略的な転換とその準備が出来るでしょう。
―「変わらないこと」と「変わること」の関係―
さてここまでお話ししてきて、「変わらないこと」(セールストーク)と「変わること」(領域とプロセス)は全く別の話と思われている方もいるかもしれません。しかし、そうではないのです。
「変わらないこと」は、「商品サービス」と「お客様の事情」を深く交流させることで、「お客様満足」を実現するというストーリーで表されました。
一方、変わることを表すマトリックス構造の図は、「顧客」と「商品サービス」の軸で成り立っています。ということは、その図から表されることは、「お客様満足」の中身ということになります。
すなわち、基本となる三段論法ストーリーで表される顧客と商品の要素が、市場の成熟化情報化によって変化多様化することで、"お客様満足(の中身)が変化する様子"を表したのが、この「マトリックス営業、4つの領域図」ということです。
「変わらないこと」の本質をあらわす世界観が基本の枠組み(コンセプト)としてあり、それが「変わること」の現実の世界を構成し、さらに論理的なひろがりをもって表現されている。このことが、はっきり見えてきます。
商品軸の変化: オーダーメード ⇒レディメード
顧客軸の変化: 素人 ⇒玄人
お客様満足内容の変化: 4つの領域の変化
(ハイスピード、パートナーシップ、エンジニア、コストダウン)
―セールストークも領域によって、重視するトークが変わる―
言いかえるなら、目的をあらわす提案ストーリーの基本構造はどんな場面でも変わらないけれど、お客様や商品サービスが変化多様化することによって、その中身の作り方やポイントは大きく異なってくる、ということです。
実際、同じ商品、同じお客様でも、時間の経過とともに、説得力を持ったセールストークは、4つの領域にあわせて大きく変わることになります。
領域の違い 適応するセールストーク
・ハイスピード対応領域
⇒基本三段論法ストーリーでの殺し文句づくり
・まずわかりやすい三段論法での、強い関心を引く提案ト
ークをつくる。
・パートナーシップ対応
⇒(未来)大三段論法ストーリーでのお客様の巻き込み
・相手のトップ上位者を説得し、大きな決断を促せる大き
なビジョンの話をつくる。
・エンジニア対応
⇒実例三段論法ストーリーによる、お客様事情の聞き出し
・専門家が聞いても納得できるような「問題解決の事例」
を投げかけ、実務的な突っ込んだ問題を聞き出す。
・コストダウン対応
⇒基本三段論法ストーリーによるコストメリット訴求
⇒実例三段論法ストーリーでのコストメリットの実証
(お客様満足内容を数値メリットで表現)
―実践モデルとは、目的、場、プロセスに至るトータル体系である―
このように見ていくなら、セールストーク、領域、プロセスが相互に強く関連しているのがわかるでしょう。
理論の中身をバラバラに説明しても、実践モデルとしては実は片手落ちになります。
実践モデルとは本来、目的(価値)を前提に、場の設定(空間)からプロセス(時間)に至るトータルな体系でなければならないと思います。
そうしたトータルな体系だからこそ、事業や営業活動の様々な場面に、このマトリックス営業戦略のモデルを活用することができるでしょう。
マトリックス営業戦略の部分的な内容を理解して活用することは可能ですが、トータルに理解して頂くことが、より大きな成果に結びつくことと思います。
※以上、マトリックス営業戦略の概略を説明しました。
ご興味のある方は、以降の説明
「マトリックス営業戦略の成り立ち(お客様企業での実例を中心に)」
「マトリックス営業戦略の詳細解説」(仮称)
をご参照ください。
またCBC総研のホームページにて、マトリックス営業戦略を活用した事例として、事例3,4,5を掲載しています。あわせてご参照下さい。
コメントする