社長に対して経営コンサルタントができること

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 社長に対して経営コンサルタントができること

 (「社長!儲ける営業に変えましょう」日本実業出版社刊より)

経営コンサルタントには2種類いる


 社長は孤独である。社長の仕事は社内外のすべての範囲に及び、そのすべての最終責任を負う。社長は最高のトップセールスマンであり、最高の開発責任者であり、人事・財務・総務・経理の統括責任者でもあるわけだ。

 もちろん、アドバイザーやサポート役、代行者はいるが、その結果は一人で背負うしかない。決断は常に自分一人の責任であり、その一挙手一投足が会社の組織全体に大きな影響を与える。

 だから、細心の配慮と注意が必要だが、一方で「エイヤー!」と決断して、わかりやすく方針と目標を示し、社員たちを計画の実行まで引っぱり、成果を上げるまで導いていかねばならない。

 そんな、辛くて、でも楽しくてしかたがない(一度やったらやめられない)社長の仕事を、一緒にサポートするのが経営コンサルタントの役割だ、と私は思っている。

 そこで本書の最後に、外部の専門家である経営コンサルタントを活用する手法とそのメリットを説明したい。

 

 経営コンサルタントと言っても、大きく2種類に分かれる。パッケージ型とオーダーメード型だ。前者は業種やテーマで特化し、テクニックや管理手法において独自の専門ノウハウを蓄積している。最近はコンサルティング会社も企業化しているため、効率的に専門ノウハウを提供するパッケージ型コンサルタントが圧倒的に増えている。

 一方、独立系の熱血型コンサルタントも人気が高い。営業マンのモチベーションを上げていく、独特の個性とカリスマ性は得がたいものである。

 利用するみなさんも、それぞれの強みを理解して、その外部ノウハウを適宜うまく活用すればいい。ただし事業や営業の現場はさまざまであり、実際に業績アップを実現するためには、お客様の事情に深く入り込んだ個別対応が求められる場合が大半だ。また自社の強みやとりまく環境もさまざまである。

 となれば、事業・営業を支援する我々コンサルタントも同様に、個々のお客様企業の個別事情に深く入り込み、個別対応によって問題解決を図らなければ本当の成果は上がるわけがない。しかし、そうした経営コンサルタントは数少ないのが現実だ。

 私は後者のコンサルタントのつもりである。だからこそ「事業・営業の問題をトータルに解決する、オーダーメードコンサルティング」をモットーにしている。

経営コンサルタントを活かすも殺すも社長次第

 以降で述べることは、営業を変革し業績アップを実現するための手段であり、ステップだ。だから社内でやれるにこしたことはない。しかし、社内の人材や体制ではなかなかむずかしいのが現実だろう。そのために外部からの支援が必要となる。

 ただし外部コンサルタントは、どんなにがんばってもサポート役にしか過ぎない。使い方次第で、すばらしい業績アップを実現し、会社の新たな飛躍のきっかけともなるが、誤れば何の役にも立たないばかりか、会社の混乱と失墜の原因ともなる。活用するのは、あくまで社長次第と心得てほしい。

 それでは具体的な活用方法を見ていこう。

(1)外部の専門家からの目で見た自社事業および営業活動の課題を鮮明にと  

らえることができる。またその課題を全社、営業部隊全体の共通認識にさせることができる

 変革の第一歩は、自社のトータルな現状分析と課題の共通認識からはじまる。

 問題意識は誰でも持っているが、「自分たちはせいいっぱいがんばっているが、環境が悪いから(会社が、上司が...悪いから)うまくいかない」と思っている者は多い。だから変革はかけ声だけで終わり、何も進んでいかない。

 それに対して社長やトップリーダーが、「環境や会社のせいではない。自分たちに問題が...」といくら言っても、社員からはいつもの業績低迷の責任追及、単なる叱責・批難としか受け止められないだろう。

 また問題があっても、社員の共通認識となっていない場合も多い。認識がバラバラでは、後ろ向きの言い訳や、他部門への責任転嫁で終わってしまうことになる。

 そこで外部コンサルタントの診断を受け、現実をふまえた自社の課題と今後のあるべき姿についての提案を受ける価値がある。そこから前向きな議論をはじめることができるからだ。

 またそうした診断結果を社員の前で語ってもらうことの効果は大きい。たとえば、私の場合なら、「夢と危機感」をキーワードに語る。時代が激変する中、多くの企業が大きな曲がり角にある。それはピンチである一方、チャンスともとらえられる。そうした現実をズバリと指摘するようにしている。

 このとき、事前にできるだけ、今成果を上げている問題意識の高いリーダーや営業マンのヒアリングを行なうとともに、販売データも案件ごとや、顧客・商品ごとに突っ込んで分析する。だから大きな方向に誤りはない、という確信はある。

 しかし、現況を否定するだけに、はじめは「外部の人間が勝手なことを言っている」といった強い反発も出て、社内に波風が立つことも多い。だが、表立って波風が立つぐらいのほうが、かえって改革に手をつけやすい。陰でいろいろ言っているくせに、私や社長の前では大人しい社員ばかりの会社では、改革はなかなか進まない。

(2)改革の方向性を具体化し、新たな営業戦略の立案や具体的な  

営業のやり方の改革を進めることができる

 第1章において「ビジョン・方向を示してトライ・アンド・エラーせよ」と書いたが、正解がない時代だけに、社内だけでは何も結論を出せないことも多い。そこで論理的な整理を行なって社長の決断を手助けする経営コンサルタントが大いに役に立つ。

 私も営業支援に際しては、経営トップや営業トップリーダーに対して、戦略的な方向や具体的な対策についての提案を行なうことが多い。営業マン教育でも、基本の方針・方向をしっかり確認しておくことにしている。ビジョンと方向に合致していなければ、決して成果は上がらないからだ。

 ビジョン・方向とか営業戦略と言っても、机上ではなく現場からの発想が必要である。私は特にできる営業マンや営業リーダーからの成功事例の聞き込みに重点を置く。多くの場合、そこにビジョン・方向のヒントがあるし、営業改革の具体論があるからだ。そのヒアリングの結果から、新たな方向が見出せ、大きな戦略転換ができたケースは数多い。

 ただ、残念なことに、彼らのノウハウの詰まった話が、社内で共有化されていないことが多い。本当にもったいないことだ。

(3)外部の独自な専門ノウハウを吸収して、具体的な営業活動の変革を進め 

ることができる

 営業改革を進めるために一番大事なことは、日々の営業マンの行動パターンや営業スタイル、すなわち一人ひとりの動き方を具体的に変えさせることである。

 提案トーク、商談の進め方、顧客対応方法、営業ツール、販促等のしかけ、しくみ、営業教育、リーダーの部下指導、レビュー、管理方法等々。専門コンサルタントであれば、それぞれ独自のノウハウを保有している。そのノウハウを社内に導入することで、業績アップを図るとともに、営業マンの活動を変えることができるだろう。実際、私も日々のコンサルティングでは、具体的な方法のお手伝いが多い。

 ただし注意したいのは、専門コンサルタントは、自分のノウハウを中心に据えて全体を考えやすいことだ。ノウハウはあくまで手段であるから、社長がその前に全体の改革の方向を明確にしておくことが必要である。

(4)直接的な外部からの支援を受けることで、業績アップのための新たな作  

戦を進めることができる。あるいは、新たな発想の営業体制や業績評価制度等の構築・導入を進めることができる

 当面の業績アップを実現させるためには、個人の営業活動だけでなく、全社的な開拓作戦や、大きな枠組みでの組織・制度の見直しが必要となる。こうした新しく、かつ大きなテーマの活動は、これまで社内ノウハウが蓄積されていないこともあり、社内のメンバーだけでは推進しづらいものである。またその活動は、1つの担当部署だけでなく、社内のさまざまな関連部署との協力や調整が発生する。多くの場合、プロジェクトや委員会といった体制をとることも必要となる。

 こうしたプロジェクトを推進していく際に、そのテーマに強い外部の専門コンサルタントを活用すれば、大きな効果が上がることが多い。

 私もさまざまなプロジェクトの社外メンバーになって、その推進を支援してきた。社外メンバーとして一番大事なことは、プロジェクトの推進状況にあわせて、その立場や役割を柔軟に変えていくことである。基本計画から詳細内容の詰め、推進ステップづくり、実際のツール、マニュアル作成、営業実践教育、同行支援、成功事例分析共有、他部門責任者への根回し、経営トップとの共感に基づくコミュニケーションとその意思の共有化、普及などである。

 プロジェクトが低滞したり、障害が発生したときの臨機応変の対応をプロジェクトリーダーやメンバーをはげまし一緒になって行なう。その障害を乗り越え、成果が上がったときは、外部メンバーといえども、その喜びはひとしおである。

 ただし、あくまで主体者は社内の人たちである。その主体者が覚悟をもってプロジェクトを推進させようとするなら、外部の専門家である経営コンサルタントは、間違いなく大きな支援となるはずである。



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このページは、CBC総研が2011年12月14日 23:15に書いたブログ記事です。

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