事例4 : 小口単品販売から脱皮し、大型トータル販売の立ち上げを成功させた事例

―生産財機器部品メーカーの新分野、新規事業の立ち上げ―

現状と課題

生産財機器部品メーカのS社は、これまで自社独自の部品単品の生産販売を主体とした事業活動を行っていましたが、部品単品の販売では差別化が難しく、継続的に新商品を開発して売り上げは確保するものの、利益率は年々縮小していく傾向に悩まされていました。

そこで新規事業として、自社部品を使った特定用途向けの、装置やメンテナンスを含めたトータルシステム販売をスタートさせることにしたのです。

ところが従来商品は単品で1万円前後、ロット発注でも数10万前後であり、少額金額の引き合い対応中心で、商談があってもハイスピード型の単発営業が主体でした。ところがトータルシステムでは、一回の商談で300万~1000万前後の金額が前提になります。もちろんターゲットとするお客様も窓口も違います。鳴り物入りで営業活動をスタートさせたものの、従来の営業とは、まったく異なる新規事業のため、その活動は思うように進んでいかない状況でした。

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改善計画と実施

コンサルティング内容とその成功ポイントは次の通りです。

①あらためて新規事業推進に当たっての課題、対策を整理し、全メンバーで共有化。(ヒヤリングからスタート。⌈新規事業推進のための診断報告書⌋の作成と課題の共有化)
  • スタートに当たって、トータルシステムの商品特徴を今一度確認し、一方で新規の営業活動方法をヒヤリングして、どこに課題があり、今後どんな対策が必要になるか。またそのためにどんなステップで進めていくべきかを⌈新規事業推進のための課題、対策⌋と言うテーマで診断報告書に整理した。
  • その内容をトップ、幹部及びプロジェクトメンバー全員の前で発表し、全員の共通認識をしてもらった。(⌈新規事業推進⌋第1回会議として)
  • ※従来の営業領域は、マトリックス営業では⌈ハイスピード対応⌋から⌈コストダウン対応⌋に当たるが、今回のトータルシステム販売では⌈パートナーシップ対応⌋から⌈エンジニア対応⌋の領域に入り、全く異なるビジネスモデル、営業方法を取らなければならない。だから営業のやり方を抜本的に変える!戦略と作戦が必要。このことをしっかりみなさんに認識していただいた。
②提案コンセプトと訴え方、提案トーク・ツールの見直し(CBCの⌈3段論法トークストーリー⌋をベースに)
  • 作戦検討会としては、まずトータスシステムの提案コンセプトを今一度見直して、ターゲットユーザー毎の訴求点を鮮明にした。その上で提案のセールストークと企画提案書を再度整理した。
  • ※この場合、CBCの⌈3段論法トークストーリー(顧客・商品・満足)⌋をもとに整理しました。
③ターゲットユーザー(セグメント)の見直しと新規商談プロセスの設計(商談プロセスに、独自な工夫と作戦のしかけづくり)
  • またあわせてリストアップされていたターゲットユーザー毎に顧客事情の再分析を行い、攻め方の違いで、ターゲットを明確に区分け(セグメント)した。
  • そして、そのセグメントのターゲットユーザーを想定して、新規開拓の商談プロセスを再設計した。具体的には、事前準備から始まり、初回訪問のやり方・ツール、次のステップへ向けた仕掛けづくり(サンプル、デモ、展示会…)、技術者同行での詳細情報収集、より上位者を巻き込むトップ商談のしかけ、多人数での展示勉強会の開催とそこでの議題の進め方・・・等と言った内容を今一度ステップを踏んで検討していった。
④チームリーダーによる司会と議論のリード(プロジェクトリーダーの育成と役割の明確化)
  • アイディアはCBCで出すが、あくまで実行はS社のプロジェクトメンバー自身である。出来るだけS社のプロジェクトリーダーのMさんが司会を行い、リードしていく形をとって進めていける形を取った。
  • またその事で、プロジェクトリーダーMさんに新規事業の情報が集中的に入ることになり、技術部隊との連携もよりスムーズにはかれることになった。
⑤実際の商談検討会の実施

見込み客シート(顧客情報、ヒヤリングシート)を作成し、実際にアプローチ予定の見込み客のロールプレイングを実施した。さらに途中からはロールプレイングだけでなく、実際の商談を対象にして、現状での具体的な課題をそれぞれ整理し、今後の推進対策を検討する商談ミーティングを継続的に進めた。

今回の商談を成功させたポイントは、次の通りです。

  1. 単品機能の提案ではなく、ビジネスのトータルメリットを訴える提案に切り替えた。
  2. キーマンを現場担当者から技術総括責任者やISO推進室長等、より上位者や上位部署の責任者に切り替えた。また、一人ではなく関係関与者を広く味方につけるような活動に切り替えるようにした。
  3. 個人プレーではなく、商談プロセスにあわせて役割分担を明確にし、チームプレーで商談を進めるようにした。(すべての商談に、チームリーダーのMさんが参画するようにした。)
  4. 技術部隊とも見込み客へのアプローチ段階から情報交換することにし、よりタイムリーにスムーズに連係プレーが出来るようにした。
  5. ターゲットとなるユーザー企業や工場の条件を出来るだけ明確にし、より的確な見込み客への活動を進めた。(見込み度の低いターゲットについては、わり切って優先順位を後にした。あるいはファーストアプローチで見切りをつけられるようにした。)

新規事業や新分野への進出に際しては、トップの強力な関与、及びプロジェクトリーダーの力量とリーダーシップが一番のポイントになります。S社の場合、毎回の作戦会議やミーティングにS社社長自ら参加され、プロジェクト活動を率先してリードしたこと。またMさんとのコミュニケーションを日々行い、トップのチームリーダーへのサポートが円滑に行えたことが、成功に導いた最も大きな要因であったと思います。

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改善効果

新規事業を推進するコンサルティングに入り、プロジェクトメンバー6名を中心に実戦的な作戦検討会とミーティング方式の教育研修を継続的に進めることで、約1年後には小額物件で7~8件、1000万円を超える大型物件2件を成約出来、その新規事業を軌道に乗せることが出来たのです。

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