事例1 : 経営計画で抜本的に数値計画づくりを見直したM社の事例

~棚ぼた・流れもの・自力獲得計画、MAX(チャンス)・MIN(リスク)予測~

現状と課題

中堅優良食品メーカ―兼商社であるM社のことです。

M社の経営計画づくりは、既存得意先別にリストアップして前年実績数値をもとに今年度の目標数値を設定し、それぞれの得意先別に対策項目を列挙する。一方商品別にも新商品発売やキャンペーンに合わした販促策を挙げて、年間計画表に落とし込む。さらには新規開拓の目標件数を挙げ、代表的なターゲット先を列挙して、そこにも数値目標を設定する。そうしたやり方でした。

しかし期初から3カ月もすると目標数値と実績のかい離が大きくなって、その後修正を繰り返し、期末には計画段階とは全くずれた結果になっていたのです。新規開拓についても、既存客のフォローに追われて、ほとんど進んでいかない状態でした。これでは、計画を立てること自体意味がなくなっていたといってもいいでしょう。そこに、M社の社長も強い危機感を持ったのです。

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改善計画と実施

経営計画の策定に当たって、まず数値計画の立て方自体を抜本的に見直すことになりました。まず、数値を次の3つに区分けすることにしました。

棚ぼた数値
全く予測をしていなかったが、たまたまお客様から引き合いがあり、成約できた数値。営業活動において、こうした「運」が味方することもしばしばある。しかし「運」次第のため、計画からははずす。
流れもの数値
既存のこれまでの取引から予測がつく数値。予測はつくが、得意先の事情等の外部環境に左右される部分が多く、自分達ではどうにもならない部分も多い。
自力獲得数値
すべて自分達で計画し、企画提案して、新たに獲得する数値。新規開拓や既存客でも今まで取引の無かった新テーマ商材を新規提案活動による数値が当てはまる。

そして、ここが一番のポイントですが、「流れもの数値」をMAX(最大…チャンス)、MIN(最少…リスク)で予測してもらいました。

MAX予測
現状延長でどれだけ業績を伸ばせるかを予測する。そのため営業のチャンスを見出す姿勢が大事になる。出来れば、既存客での競合他社品の情報収集を徹底しでポテンシャル(販売伸長可能額)を把握し、新規提案等の計画を立てられるまで考えたい。
MIN予測
現在の取引で、最悪どのくらいまで業績数値が落ち込むかを予測する。縮小マーケット下では、既存の数値が落ちるのはむしろ当然であり、その前提で対策を考えなければならない。営業としては、甘い期待を一切取り除きリスクを厳しく見積もった数値予測をすることが必要になる。

その上で、MIN予測をベースにして、めざす目標数値とのギャップ数値をはっきり設定しました。

目標数値
会社として、どうしてもここまではやりたいと言う数値。(必達目標、基準目標、チャレンジ目標の3つの区分け)
MIN予測数値
既存取引の延長で、ぎりぎり最低を見込んだ数値。
ギャップ数値
目標数値 ― MIN予測数値=ギャップ数値(自力獲得数値)

するとM社では、約3.5億円のギャップ数値が明らかになりました。つまり放っておくと、3.5億円ものマイナスが発生してもおかしくない!という現実が、明らかになったのです。

この最悪を想定した3.5億円というギャップ数値こそ、外部環境の良し悪しに関係なく、自分達が自力で埋めていかなければならない数値目標と言うことになります。

ここからが、本来の意味の数値計画づくりです。新たな作成対策を考え、数値を積み上げていかなければなりません。ここでは対策一つ一つと目標数値が直接結びつきます。

  • 例:①○○作戦:対象顧客○○、対象商品○○、期間○○、担当○○
  • 数値計画として…○○円×○件×○セット×○期間=○○円

また、対策内容は単に数値を積み上げるのではなく、どうやったら成功させるのか、その方法論を詰め、実際のスケジュールまで行動計画として落とすことにこだわりました。

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改善効果

こうやって考えられる様々な作戦対策をアイディアレベルから議論したうえ、優先順位をつけて「作戦計画と行動計画」として詰めていったのです。そして最終、4億円弱の自力獲得計画を立てることが出来ました。なにしろ、絵に描いた餅にするわけにはいかないのです。ここまできてようやく数値計画に魂を込めることが出来ました。

もちろん計画には、直接数値に結び付かない対策もいろいろあります。しかし、はっきり数値目標を意識して必ず達成すべき計画内容(作戦対策)と、それ以外の計画を区分けすることにより、作戦対策を必達する重要性がよりはっきりすることになりました。

1年後、どうなったか。残念ながら計画通りの達成はなりませんでしたが、95%を超える達成が出来ました。何より作戦対策と数値実績に対する姿勢が大きく変わり、業績を自分達自らが自力で上げるという意識が著しく高まることになりました。営業体質が大きく変わったのです。そのことが、M社の次の飛躍につながったことは間違いないでしょう。

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